「橙木犀」さんのページ

総レビュー数: 63レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年05月29日

私が谷川史子さんという作家さんを知るきっかけになった作品です。
他にも短編が収録されていますが、飛び抜けて表題作の「積極 愛のうた」に惚れ込んでしまいました。

愛情深く奥ゆかしく、そして高い知性と教養をさり気なく漂わせる鳥野教授。美幹ちゃんが心から惹かれ、想いを寄せずにいられないのが分かります。
本当に誰かを愛することを知ったために失ったもの、自分の最低さを思い知って、それでもやっぱり、美幹ちゃんは鳥野教授に出会えて良かったのだと、読んでいて自然に思えました。

教授が美幹ちゃんに渡した物、それが最後の最後に題名とつながって、その意味がわかったときに目の奥が熱くなりました。こういう温かさと教養と愛情に満ちた想いの伝え方、受け取ることができた美幹ちゃんはとても幸せだったと思います。

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[投稿:2013-01-09 10:52:25] [修正:2013-01-09 10:52:25] [このレビューのURL]

内容あらすじにあるように、四季をテーマに優しく切なく、時に痛みを伴った4つの恋物語が収録されています。
表題作の「蛍火の杜へ」は夏の物語。アニメ映画化もされ、作者の緑川ゆきさんの代表作のひとつだと思います。

ヒロインと彼女が想う相手との関係はそれぞれのお話で異なりますが、胸が痛くなるまでの一途で切ない恋心はどのヒロインにも共通していると感じました。
いつの間にか芽生え、徐々に募っていく想いの微笑ましさ、美しさ、そしてその恋を阻むものにぶつかってしまったときの哀しみ。
どのお話も手を握りしめつつ、彼らの幸せを祈りながら読まずにいられませんでした。

4編それぞれにみんな大好きなのですが、私は秋をテーマにした「くるくる落ち葉」が特に好きです。他の3話よりも一見あっけらかんと明るい雰囲気なんですが、ヒロインの椿の暴走気味な突っ走り具合と向き合うべきことから目をそらせなくなり葛藤する様子のギャップが愛しくてなりません。

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[投稿:2013-01-09 09:30:18] [修正:2013-01-09 09:30:18] [このレビューのURL]

朗読ってこんなに深くて熱いんだ!というのが第一印象でした。
声に出して読むことが、作品の世界観を理解し表現する上でとっても大切なんだと、素直に納得できました。こんな国語の授業を受けたかったなぁ。
音がいっさい聞こえない漫画で、朗読をどう表現するのかが一番気になっていたのですが、不思議とページから朗読者の声や作品の中で描写されている音が聞こえてくるんです。そして、いつの間にか自分も一緒に声を出して作品を朗読してしまいます。
自信なさげでいつも色々と小さくなってしまっていた主人公の花ちゃんが、朗読を通して居場所を見つけ、友達に恵まれ、次第に生き生きとしていく様子に胸が温かくなります。
花ちゃんの朗読に心打たれ、自分の悩みに素直に向き合い、また前を向けるようになっていく人たちの心の動きにも感動。
次に朗読される作品は何なのかと、今からとても楽しみです。

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[投稿:2011-12-09 17:41:31] [修正:2011-12-09 17:41:31] [このレビューのURL]

主人公の関根くんは2巻まで、ひたすら痛々しいです(端から見たら不憫すぎて逆に面白いのですが)。
自分の心にも周囲にもきちんと向き合ってこなかったため、遠くから眺めている分にはとても魅力的で満たされているように見えるのに、彼の内面に近づけば近づくほど本当は空っぽで痛々しいのが分かってしまう。
ところが3巻目で関根くんの内面に大きな変化が!彼が自分の気持ちを自覚して意識的に行動したのって、これが初めてなんじゃないかっていうくらい不器用ですごくハラハラしてしまいます。
関根くんがそんな風に変われたのって、サラちゃんのおかげなんだろうなとしみじみ思います。これまで関根くんの周囲にいた人たちは基本的に、外から見た印象と勝手な思い込みに留まり、彼の内面に踏み込もうとも、まっすぐに向き合おうともしてこなかった。けれども、サラちゃんは関根くんについて不思議に思ったこと・良くないと思ったことを本人に指摘し、彼女なりの方法と言葉で向き合ってきた。関根くんにとってそういうことしてくる存在、(特に女性では)初めてだったんだろうな?。
3巻での彼の空回りっぷりが可笑しくて気の毒で、そしてなんだか愛しく思えます。関根くんの恋が実を結びますように!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-12-02 16:58:28] [修正:2011-12-02 16:58:28] [このレビューのURL]

一言で言うと面白いです。
音楽業界や歌手を主人公にした作品は結構あると思うのですが、ここまで切り込むのか!?と読んでいてびっくりしました。勿論、全てが事実だとは思っていませんが、虚実の境目が全然分からないです(ちなみに、スタジオミュージシャンという職業もこの作品で初めて知りました)。
理子(マッシュ)、アキ、心也の三角関係については、実は私は心也派です。
7巻まで読んできて、心也にとってまっすぐ自分に向かい合って、自分の気持ちに応えてくれた初めての相手が理子なんじゃないか、理子のことが可愛くてたまらなくて彼にとって大切な存在になっていってるんじゃないかと思わずにいられません。
第一、心也はあまりに気の毒すぎる!高樹社長やアキに(本人はそんなつもりはないんだろうけど)いいように使われてしまって。心也だってひとりの人間だ、幸せを求めて何がいけないんだ!と読みながら時折心の中で憤ったりしてました。
あと、3人が恋する相手に対して抱いている「ただ一人のひととして愛する気持ち」と「アーティストとしての才能を愛する気持ち」の比重が、それぞれに異なっているみたいで、そこはかなり興味深いです。特にアキは、完全に矛盾した二つの気持ちを本音として心の中に抱えているので、心也が完全に理子に対する想いを自覚して本気になったら、いろんな意味で危ないような気がする。
なにやら不穏な空気がいろんな場面・場所で漂いだしていますが、音楽や恋やその他諸々に彼らがどう向き合い、立ち向かっていくかが楽しみです。

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[投稿:2011-12-02 16:09:37] [修正:2011-12-02 16:09:37] [このレビューのURL]

戦国の世を己の才と教養でしなやかに生きた、謎の美女・小野於通。
美貌と才智に恵まれ、幾多の知識と教養を己のものとし、様々な美を理解しつつ自らも創造する。
決して身分高くはない武家の出身ながら、時の最高権力者たちから信頼され重用されつつ、更に公家社会に溶け込み、その中で学び得た優れた趣味教養で公家の社会でも高い評価を得ていく。
なんて素晴らしい女性なんだろうと読み進む度に溜め息が思わず出てしまいました。史実ではどんな女性だったんだろうとちょっと調べてみると、実際に様々な伝説に彩られた、そして多くの謎に満ちた人だったことが分かり、また吃驚です。
あれだけの諸説をこれだけしっかりと一つの物語にまとめあげ、魅力的な少女の姿を生み出すなんて、さすがは大和和紀先生だな?と思わずにいられません。
安土桃山時代が主な舞台なので、大河ドラマや時代劇、歴史小説で有名な人物がバンバン出てきますが、その全てが血の通った一人の人間として描かれ、「ああ、この人はこんな人だったんだろうな」と自然に感じられるのが心地良いです。特に、私は茶々の描写に驚かされました。今まで様々な作品で見たり読んだりしてきた中で一番魅力的に感じられたからです。利発で愛らしく、誇り高く勝ち気で、そして大胆な野望を胸の奥に秘める…。
3巻まで読んでなんとなく、於通が表の主人公なら裏主人公は茶々なのではないかと思えてきました。同い年の二人の女性の人生がこれからどのように紡がれていくのか、そして於通の人生がどのように彩られていくのか、これから先も楽しみでなりません。

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[投稿:2011-08-04 23:12:57] [修正:2011-08-04 23:12:57] [このレビューのURL]

四季の移ろいと身の回りの文化や歴史、そして優しく穏やかに(時に賑やかに)見守ってくれる八百万の神様たち。
そんな神様たちと個性豊かな地歴部員との温かくほのぼのとした日々を描く神道&高校部活漫画といったところでしょうか。
神様がきちんと「見える」のは(今のところ)主人公の棗(と、ある女の子と条件付きでもう一人)だけですが、地歴部の面々がそれぞれに土地の歴史や文化とそれにまつわる神々の存在を理解し、感じ、大切にしているので、異能者が主人公の作品にありがちな孤独や寂しさが全く感じられず、物語全体がとても優しい雰囲気に包まれているように思います。
日本の四季や地域それぞれの行事に込められた意味や想いの温かさに「日本ていいな」「人は決して一人じゃない」と語りかけられているように感じました。

4巻まで収録されている「私と神様」(シリーズ)も人間関係の大切さや言葉の持つ力の大きさを考えさせてくれる深くて素敵な物語ですが、5巻収録の「おいてけぼりの棲処(すみか)」は特にオススメ!登場キャラの可愛らしさや温かさにほっこり癒されます(笑)

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[投稿:2011-08-04 18:00:18] [修正:2011-08-04 22:15:46] [このレビューのURL]

様々な悲劇と祖国を覆う戦乱の中、自らの未熟さと世界の厳しさをまっすぐに見据えて進む少年将軍の物語。
弱冠17才で国を動かす力を持つ将軍に任じられたという設定から、完全無敵な天才タイプかと思いきや、深謀遠慮の域にはまだ到達しておらず、主人公のマフムートは確かに聡明で武術に優れているものの、自分の感情にまかせて単独行動に走ったり、矜恃から来る過信でミスをしたりしています(既読3巻までの中で)。
ですが、清廉で思いやり深く、自分の間違いを振り返る冷静さを併せ持ち、時に甘いとさえ言える優しさをふと見せる。なので、彼の成長を自然と応援したくなります。
ただ、大陸全土を巻き込む戦乱期を舞台としているため、相次ぐ戦乱と戦闘描写にちょっと疲れてしまうかも。時折でいいので、ほのぼのとしたり心温まるような話も織り込んで欲しいです。
登場する国や民族はモデルとなったであろうそれらが推測でき、「あ、この国はあそこがモデルだな」「この民族はあの2つの民族が組み合わさって作られてるのかな?」と考えたりするのが、とても楽しいです。
敵方や嫌悪したくなるような人間にも、そこに至る事情や信念、政治哲学があるので、単純な勧善懲悪ものに止まらない物語に興味を抱かずにいられません。
あと、タイトルの「アルタイル」の意味が分からず調べてみた時、物語と相まって元々の言葉の意味に思わず胸打たれてしまいました。若き鷲が飛翔するさまを手に汗握り、見届けたいと思います。

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[投稿:2011-06-16 00:56:05] [修正:2011-06-16 00:56:05] [このレビューのURL]

美しさ、思い出、幸福、愛情。
「貴方にとって“それら良きもの”とはどういったものですか?」と一話一話を通して尋ねられているような感覚を受けました。

登場人物が基本的に無表情なので、時折口元や眼差しに感情を浮かべたりすると、より心に染みてきます。
特に、市江さんが(見られていると気づいていない)藤井さんをそっと見つめている時の表情、(私的に)かなりときめいてしまいました。
市江さんの作る服をこよなく愛し、ありのままの彼女を受け入れる。
そんな藤井さんと市江さんのこれからの関係も楽しみです。

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[投稿:2011-05-20 23:08:29] [修正:2011-05-20 23:08:29] [このレビューのURL]

表紙の絵の美しさに感動して、即購入しました。
作品全体の詳細な描き込みが美しく、まるで自分が十九世紀の中央アジアに飛び込んだような気がします。
基本的に登場人物みんなが朴訥な良い人々で、読んでいて気持ちが良いです。
特に、作者の趣味が詰め込まれているヒロイン・アミルが凛々しくも可愛らしくて、格好いい!とうっとりしつつ、ほのぼのとした気持ちにさせてくれます。

一巻目は物語の背景・設定をじっくり描いている部分で終わっています。二巻目からお話が動き出すんじゃないかな?
物語の展開次第で、すぐに8点9点に跳ね上がりそう。
期待大な作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-10-25 13:46:07] [修正:2009-10-25 13:46:07] [このレビューのURL]

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