「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

8点

バレエという珍しい題材を扱った作品ながら、素晴らしい出来。

ただ単に主人公が天才という訳ではなく、その特異な才能の背景、生い立ちが丁寧に描かれているので説得力がある。
心理描写が上手く、様々な人物の思惑や信念がしっかり表現できている一方で、未知の世界の存在も無理なく描けている。盛り上げるところは最高に盛り上げてくれるし、見せ場への持って行き方も良い。読んでいて鳥肌を立たせられる場面が何度も。
非常に思い切った場面転換や構成の上手さも随所に感じられ、普段全く踊りなどに興味の無い僕にもバレエという世界の奥の深さが伝わってきた。

第二部へのつながりに少し無理があったり、人物像のところどころに破綻があるなど粗も見られるが、それを補って余りある魅力を放っている。第三部に期待。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-25 18:49:22] [修正:2007-06-25 18:49:22] [このレビューのURL]

5点 ONE OUTS

ルールの穴を突いたかけひきや、中盤以降チーム改革に乗り出すところは面白かった。

しかし全体的に展開があまりにもインチキ臭く、セリフや説明が多すぎて読む気にならないし、読んだ後の満足感は薄い。作者が野球好きなのは分かるが試合描写はかなりお粗末で迫力に欠け、プロ野球を舐めてるとしか思えないような場面も目立つ。「試合中にグラウンドで喋ってることが相手ベンチや観客席どころか放送席にまで聞こえるはずないだろ…」と何度も思った。
一番盛り上がるべき終盤の展開がモロにダイジェストなのも疑問。
作者は「あらゆる野球漫画へのアンチテーゼ」として描たそうだが、それは言いすぎ。先人に失礼。

確かにエンターテイメントとしては良作。が、過大評価されすぎな気がする。
ここの高い評価を期待して読んだ分ガッカリ感の方が大きかった。
普段野球に興味がない人は楽しめると思うが、野球経験者やプロ野球好きには粗が見えすぎるのでお奨めできない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-25 18:16:56] [修正:2007-06-25 18:16:56] [このレビューのURL]

荒木飛呂彦先生ならではの奇抜なアイデアの数々。
戦闘描写は抑えられており、何度見ても楽しめるサスペンス色の強いショートドラマに仕上がっている。

ジョジョファンなら誰もが狂喜する人物の再登場があったり、巻末の解説に作者のマンガに対する思いが綴られていたり、とファンとしては大満足。
「そうきたか」と唸らされるような仕掛けが、あるときは思わぬオチとして、あるときは状況そのものとして張り巡らされており、見所が多すぎて飽きが来ない。
常識的に考えればあり得ない状況が、実際に自分の身の周りで起こっていることのようなリアリティーとともに見る者に迫ってくる。

どのエピソードも作者の遊び心に満ちており、荒木流の良いところが凝縮されたような一冊。
「ジョジョが気になるけど長いし…」という人にも最適な作品になるのでは。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-23 20:59:10] [修正:2007-06-23 20:59:10] [このレビューのURL]

重い題材をサクッと描いてしまうのがこの作品の魅力。

真面目で大人な性格のかずいと、無垢で子供な虎弥太。対照的な二人を中心として話は進む。
他人を不幸に陥れている人間をいとも簡単に殺していくかずいだが、そこにあるのは一元的な「善悪」の価値観ではなく、全ての現実を理解した上で自分が罪を引き受ける心だ。
最終的には全ての人物に救いが与えられているところに作者の優しさが感じられる。

作者の画力・構成力の未熟さゆえか、脇役の面々にあまりに薄っぺらな人物が多かったのは少し残念。期待していた次作はもっと残念なことになってしまったが・・・。

深読みせず、淡々と読んでいくと良さが分かってくるはず。
ジャンプ黄金時代末期の隠れた良作。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-23 00:51:19] [修正:2007-06-23 00:51:19] [このレビューのURL]

5点 BLEACH

少年漫画の王道と言える路線を突っ走っているがため、良い面と悪い面がくっきりと分かれているように見える。

「オサレ漫画」の烙印が押されている原因の一つに、独自の世界観に対する説明の不十分さが挙げられる。
死神や虚の存在、ソウルソサエティの設定自体は面白いアイデアだが、その世界が存在する必然性の説明や定義が十分になされないまま勢いだけで話が進行していくことが多いため、ふと現実世界とのリンクの曖昧さに気付いたときに一気に醒めてしまう自分がいる。
また再三言われている通り現状酷いインフレーションに突入しており、こうなってしまうと今の路線のままではもう盛り返しは難しいかも…と思ってしまう。

とはいえキャラクターはそれぞれ立っており、戦闘描写もそれなり。エンターテイメントとしては悪くない。
余談だがどこかで「一護とそれを取り巻く人間関係はうしおととらのオマージュだ」という指摘を見たことがあった。なるほど、納得。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-23 00:14:44] [修正:2007-06-23 00:14:44] [このレビューのURL]

9点 神童

今でこそ「のだめ」や「ピアノの森」が一世を風靡してるけど、これを読んだ当時としてはクラシックを扱ったマンガはとても斬新だった。

主人公うたが物語を通して人間としての成長を遂げていく様子にどんどん引き込まれる。
最初は世間の大人や気取ったガキどもをピアノの腕で黙らせていく痛快さに、やがてある重大な事件を契機にまさに「音」を「楽しむ」ことを覚えていく過程に、奥の深い面白さがある。
全ての物事を音楽を介して捉えている描写は新鮮で、雑味がなくある意味ですがすがしい。また必要以上に自己主張をしないサブキャラクターたちにもテーマの一貫性を感じることができ、好感が持てる。

「この音は神様にかえすよっ!」
「全ての響きを合わせて 今 一しずくの音からはじめよう」
等、さり気なく心に残るセリフも多く、全編を通して登場人物や作者がいかに音楽を愛しているかが伝わってくる。絵が微妙だからとスルーしてしまうのはあまりに勿体ない。
渾身の力がこもったラストシーンには痺れた。未読の方は是非。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-22 23:47:54] [修正:2007-06-22 23:47:54] [このレビューのURL]

この作品で土田先生と出会った。

自己を主張することも、他人を疑うことも知らないドンのひたすらにまっすぐな思いには胸を打たれる。
自分の幸せとは自分の好きな他人の幸せ。
そこにあるのは自己犠牲の精神でも博愛の精神でもなく、ただ自分を、そして人間という生き物を信じる心だ。罵られ、嘘をつかれ、裏切られ、どんなに傷つけられても、関わったすべての人たちに人間としての真の誇りを見つけさせていくドンの生き様は本当に不器用だけど、本当にカッコイイ。

生きることはそれ自体が大きな苦痛だ。でも「永遠の場所」は、必死に生き抜くことの中に自分で見つけていくしかない。それは現実の刹那さを突いた心理だけど、同時に人間の暖かさも教えてくれる。
多分僕がドンのように純粋な愛を持つことは一生かかってもできないんだろう。
でも、いつかはそうありたいと願う。

まさに魂を揺るがし、僕の人生観を大きく変えた作品。
おそらく今後も、これほどの影響を与えてくれるマンガに出会うことはないだろう。

『ドン、おはよう! おまえが大好きだ!!』
 

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-22 22:16:57] [修正:2007-06-22 22:16:57] [このレビューのURL]

7点 Damons

原作は知らないし、これが初の米原作品になる。
友人に薦められ何の先入観も持たずに読み始めたが、なるほど、よくできてるし面白い。

一貫して主人公ヘイトの「憎しみ」「復讐」を中心に話が進み、それ以外の思想や心理は徹底的に排除されている。そのため所詮は単純な戦闘漫画であると言えるかもしれないが、断片的に描かれるヘイトの過去や憎しみの背景は切実なリアリティーを以て訴えてくるし、シリアスな展開には燃える。
これは最近の「バガボンド」にも感じたことだが、余計な要素を排して描きたいことを一点に絞った作品というのは、それがうまくいっているうちは物語を前に推し進めるストイックなエネルギーに満ちている。
この話が復讐劇の終わりを以て完結するのか、それとも別の展開が用意されているのかは分からないが、少なくともヘイトがこの復讐を成し遂げるまではどんどん力強く進んでいくだろう。

個性的な絵柄に慣れるのに少し時間がかかったが、見慣れると荒木飛呂彦先生の描くキャラクターのような不思議な魅力があると思った。
戦闘描写は迫力満点。熱い漫画を求める人に是非お奨めしたい作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-22 02:03:56] [修正:2007-06-22 02:03:56] [このレビューのURL]

僕の世代ではギャグマンガの2大頂点とされる稲中とマサルさんが両方こんな位置に甘んじていることに、時代の変化を感じずにはいられない。

有無を言わさず突っ走る意味不明なエネルギーに満ちた展開に、フーミン(一応主人公?)ごと読者も置き去りにされること請け合い。
その訳の分からない変態さに徐々に染まって行ってしまう周りの人物を見ていると、ある種の哀愁とともに笑いがこみ上げてくる。そして自分もいつの間にかその仲間に。
あの謎のエネルギーと発想はどこから来ているのか、多分作者自身もよく分かってないのだろう。

とにかく言葉で表現するのが難しい部類のギャグだが、全編通してあざとさは一切感じられず、ネタがないときは本当にやる気なく話が進む。
そして最終話の壮絶な終わり方。すごい。誰にも真似できない。

いろんな意味でギャグマンガに革命を起こした作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 20:35:37] [修正:2007-06-21 20:35:37] [このレビューのURL]

自衛隊の新鋭イージス艦「みらい」がそのまま太平洋戦争真っ只中のミッドウェー沖にタイムスリップし、アメリカ軍と壮絶な戦いを繰り広げる…。
戦争や兵器に興味があるなら誰もが一度は夢想したであろうこんな活劇が、この作者の手にかかると深い倫理観を内包した複雑な群集劇に変化する。
今まで歴史を扱った作品は数あれど、こういった形で大戦を振り返った切り口はある意味で斬新。

また実在の人物の捉え方には卓越したものがある。彼らと「未来人」である主人公たちの接触によって生まれた変化はリアリティーに満ちており、良い意味で非常に思い切った歴史の改変がされている。
各者の思考は互いに影響力を持っており、常に先が読めない展開にドキドキしっ放し。

問題は「沈黙の艦隊」でも感じた、主要人物たちのキャラの薄さ。それはもう、しばらく読んでないと名前すら思い出せないほど。(今思い出せない)
むしろ現代人ではない草加の方が圧倒的に存在感が大きく、しかし草加は行動や思考の全てが明らかにされない「鍵を握る人物」として描かれているため、強力に感情移入させられる対象が見つからず、読者が宙ぶらりんな状態に置いて行かれる。
もっとも今作の場合は第三者的な視点に置かれることではじめて見えてくるものもあり、それが作者の狙いなのかもしれない。

非常に今後の展開が気になる作品の一つ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 19:12:13] [修正:2007-06-21 19:12:13] [このレビューのURL]