「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

8点

毎年のように報道される冬山の遭難者のニュースを見て、「なんでこんなバカげた危険を冒す人間が後を絶たないんだろう…」と思ったことはないだろうか。僕もその一人だった。
この漫画はそんな疑問に対する答えの一つを示してくれると同時に、日常においても常に生と死が隣り合わせであるという現実の厳しさを語ってくれる。

人と人との関わり合い、人と自然との関わり合い、そして生者と死者との関わり合い、そんな「言葉以上の」コミュニケーションの描写が非常に上手い。主人公・三歩の救助活動に向き合う姿勢のまっすぐさには尊敬の念すら覚える。
画力にものを言わせて山岳の風景の素晴らしさを見せるのも一つの(最も簡単な)方法だが、この漫画はそれをやらない。しかしなぜか、あまり描かれることのない山頂からの壮大な眺めが頭の中にしっかりイメージできる。作者の持つ構成力の高さの産物だろう。

他の方の指摘にもあるように、巻を重ねるごとにマンネリ気味になってきてる印象は否めない。どんな終わり方を見せてくれるのか、そして個人的に好きなキャラであるザックの出番が増えることに期待を込めて。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-05-20 12:08:08] [修正:2008-05-20 12:08:08] [このレビューのURL]

「デカスロン」以来の山田芳裕。まず絵柄が全くと言っていいほど変わってないのに驚いた。
正確に言うと少し紙面はスッキリしたのだけど、この作者の最大の持ち味だった「勢いだけ」な突っ走り感が衰えてないのがすごい。

そして何と言っても着眼点がおもしろい。今まで様々なメディアでさんざん取り上げられ、いささか食傷気味だった戦国時代も、数寄という文化的な面から見ることでこれほど新鮮に映るものなのか。
武士道らしい禁私的な精神は隅に置かれ、欲望と野心に忠実な好き者:数寄者たちが幅を利かす。それが格好悪いことでも何でもなくて、ただただ粋!
そんな中で主人公・古田左助は茶の湯を通じ「侘び」の精神に惹かれていくことになるのだが…その顛末がまた実に黒くて、でもどこか滑稽に描かれるのがおもしろい。

改めてうちの国にかつてこんなにも素晴らしい時代があったんだなーと感心させられる。
かなりオススメ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-12 00:54:15] [修正:2008-01-12 00:54:15] [このレビューのURL]

ちゃんと略奪したり黒い政治に関わったりする海賊漫画。
内容自体はごく王道でありふれてるものの、それを力技で熱さに変えてしまうのがすごいところ。不器用そうな作者だけど、キャラの魅力と真っ直ぐさで見事に長編を描き切ってる。

中盤で張った大きな伏線をあっさり放棄して終わっちゃうあたり少し拍子抜けしたけど、ココの成長物語としては最高の締め方。海賊ファンタジーとして十分な読み応えがあります。
いや、いー作品だわ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-26 19:23:09] [修正:2007-12-26 19:23:09] [このレビューのURL]

8点 ARMS

画・設定ともにハイレベルにまとまっている。
特に設定の大胆さが素晴らしく、作中最大の「謎」が最後まで読めないため、それを知りたいがためについつい次の巻に手が伸びてしまう。

惜しむらくは、人物描写や物語の展開がやや甘いこと。
主人公サイドの成長を描いたり、動機付けをしっかりさせるためとはいえ、戦闘=殺し合いを安易に「善vs悪」の構図で扱いすぎる傾向が気になった。また敵サイドに信念の弱い使い捨てキャラが多すぎることが物語の盛り上がりに水を差しているように思える。
第五部に蛇足感が否めないのも残念。

しかしこの作品の持つエネルギーは同じサンデーの名作「うしおととら」にも全く引けを取らない。設定の秀逸さにこの熱さが加わり、王道展開でありながら読む者を新鮮な気持ちをもって迎えてくれる。
最終話の締め方は見事。個人的にもっと評価されてもいいと思う作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-11-21 22:59:19] [修正:2007-11-21 22:59:19] [このレビューのURL]

それほど画力がすごい訳ではないと思う。
ただ、演出が抜群に上手い。気の利いたセリフ回しや立居振る舞い、奇妙な武器やファッション、背景の細かな描き込みに至るまで、構成要素の一つ一つが全く違和感無く統一されている。
一見デタラメな世界観に見えるが、しかしそこには完璧な「エセ江戸時代」が完成されているのだ。

もう一つ特筆すべきが、キャラクターの魅力。特に女性の描き方が素晴らしい。
ファンタジーものに必ず一人は出てくるような、問答無用に強い女性というのは出てこない。
が、戦いの場における女性の絶対的な劣位性(力の弱さや精神的なもの、全て含めて)という現実を踏まえた上で、それでも「儚くも強い」。ある意味理想的な戦う女性像を見事に描いている。

加賀編まではストーリーの組み立ても最高だった。ダルーい監禁編がようやく終わったここから、どんな結末に向かっていくのか楽しみ。注目。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-11-06 23:44:40] [修正:2007-11-06 23:44:40] [このレビューのURL]

この漫画の持ち味は、特殊な世界を舞台としているにもかかわらず鋭い現実感覚を持ったリアルな人間描写にある。
虚栄と自己嫌悪という二面性の葛藤と戦いながら敵とも戦う、そんなネクラな主人公・新城君の人間像がこれまでになく魅力的。

また戦闘時の緊張感や各人物の思考回路の表現が秀逸。
小説が原作だけにさすがに戦況の設定もバランスよく練られてて、八方塞がりな状況をギリギリ切り抜けていく様子が適度なスリルと爽快感を与えてくれる。
修羅場を潜る度にだんだん神経が麻痺していき、死に対して鈍感になっていく感じがよく表現されてるのも上手いなーと思った。
画力も高く、重要な場面での構図の大胆さには目を見張るものがある。

少し人を選ぶかもしれないけど、この迫力と緊張感に満ちた展開は一読の価値あり!今最も注目してる作品の一つ。

(07.10.11追記)
…とかなりの期待を寄せてたのに、急に連載が終わってしまったらしい…。まだまだこれからという感じだっただけにすごく残念。
どうやら原作者とのトラブルが原因らしいので、なんとか和解して再開されることを願ってます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 14:47:31] [修正:2007-10-11 01:19:17] [このレビューのURL]

ずっと気になってた作者さんだったけど、やっと1作読めた。いや、スゴイわ、この人。
次から次へと目をそらしたくなるような光景が突きつけられて、でもイマイチ現実感が湧かないのが正直なところなんだけど、これって決して架空の出来事じゃなくて全部実際に日本で起こってるんだよね。そう思うととてもフィクションだと笑い飛ばす気分にはなれない。
確かに今の世の中で一番欠乏してるのは、周りに流されず「悪いことは悪い!」と言うことができるシンプルな価値観なのかもしれない。でも、そんな強靭な精神を持つことは生やさしいことじゃない。
そんなもどかしさまで作中で表現しているのは本当に見事だ。

小学生編の途中まではほぼ文句なしだったんだけど、ただ終盤のアレはさすがにやりすぎじゃないかなーと。
一読者がこんなこと言うのは少し気が引けるけど、キーチたちがもう少し成長した後でああいう行動に出たんだったらもっと納得できる結末になってたんじゃないかと思う。

ともかく、久々にガツンとくる作品だった。もうちょっと時間が経てば感想も変わるかもしれないけど、ここは今の興奮をそのままに、ってことで。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-09-22 23:21:30] [修正:2007-09-22 23:21:30] [このレビューのURL]

セリフや動きの多いものだけが良い作品ではないと思う。
ここ最近の展開には「静」の中にある深い精神世界、動かないことによる動きや駆け引きが意識的に描かれており、非常に惹き付けられるものがある。
おそらく小次郎をあえて聾唖にしたのも、こういった世界が描きたかったからだと考えている。

絵は言うまでも無くハイクオリティ。これまでの漫画の手法にこだわらない自由な表現方法によって人物たちが生き生きと描き出されており、物語に一層の緊張感を持たせている。
また「強さ」という一元的な観点でしか物事を見ることができていない、という点は同意できるが、逆にその一点をこれほどストイックに深く掘り下げて描いている作品は近年あまり見ない。
それが「単純だ」と捉えられてしまうのは今の時流なのかもしれないが、ぜひこのスタイルは貫き通して欲しい。

パラパラと読んでしまえばそれで終わりだが、注意深く読んでいると見るべき点はいくつも浮かび上がってくる。
噛めば噛むほど味が出る、ではないが、ちゃんと噛まないと本当の味が分からない。

07.09.10追記:
26巻を読んでかなりガッカリ。詳しい内容はネタバレなので省略するけど、せっかく心理描写の良さがじわじわと出てきたと思ってたのに、あの無茶な戦いはちょっと…。1点マイナス。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 20:21:35] [修正:2007-09-10 15:25:55] [このレビューのURL]

これぞ土田節の真骨頂!
バカで、カッコつけで、臆病で、貧乏で、どうしようもなく不器用だけど、とてつもなく人間味溢れる愛すべき人物たちの生き様がぎっしり詰め込まれた秀作揃い。
特に「キャット空中一旦停止」がおもしろかった。
自殺を覚悟した人間が最後に見る走馬灯が、彼の置かれた状況とは裏腹にコミカルに、楽観的に描かれるのがなんともおかしい。しかし結末でグッと現実に引き戻される。
生と死の間の極限の状況をとことんシリアスに描ける一方で、ここまでユニークに表現することもできるのは、やっぱり作者の人間観の土台に卓越したものが備わってるからだと思う。
表題作でベンツのエンブレムばかりを盗むオッサンを見たときは思わず「それ何てカイジ?」と思ったけど…。

落ち込むことがあっても、これを読めば生きる活力が湧いてくる。土田世紀入門にもうってつけの一冊。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-08-22 13:03:08] [修正:2007-08-22 13:03:08] [このレビューのURL]

あくまで「銃夢」の正統な続編になるので前作を読んでることが楽しむための前提になるけど、まさに期待を裏切らない出来。

まず格段に絵が上手くなった。デジタル加工のおかげで線がすごくすっきりしたのに昔と変わらない熱さが感じられるのはすごい。
やけに男ぎったキャラとか無駄に熱いノリも受け継がれててうれしい。この人間感溢れる描写と無機質なSFの世界観のミスマッチがたまらない。戦闘のスピード感も相変わらず抜群で、十分前作に匹敵するテンションの高さ。特にカエルラのカッコ良さは一見の価値あり。

難点をいえば、やたらSF用語が出てくるがゆえの説明文字の多さ。一回目は軽く読み飛ばしてストーリーだけを追って、二回目以降で噛み砕くのが吉。
また前作に比べて人物の心理描写や世界観の説明を丁寧に描こうという意図が見受けられる。それ自体は悪いことではないが、ややガリィの葛藤の描写がくどいのと、展開がスローなので月刊ペースの現状のまま最後まできちんと描ききれるかどうかちょっと不安。

ともかく今一番続きが楽しみな作品の一つ。
SF世界が好きな人は前作から通してドバッと読んじゃって下さい。
(07.07.18加筆)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-07-05 22:34:47] [修正:2007-07-19 04:47:08] [このレビューのURL]

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