「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

8点 リアル

登場人物の発する言葉の一つ一つが読者の今までの人生に問いかけてくるようで、読んでるうちにだんだん沈んだ気持ちになっていくのは僕だけだろうか。
障害者スポーツにスポットを当ててはいるが、ただ「がんばってる様子」を描くだけの偽善や自己満足に終わることはなく、現実と直面する各人物の容赦ない心理描写が印象的。

障害をものともせず戦い続ける戸川、現実から逃げ続けながら自分の居場所を必死で探す高橋、そして健常者として彼らの生き様を目にしつつ自らも現実の中でもがき続ける野宮。
三歩進んで二歩下がり、少しずつ前に向かっていくそれぞれの様子はまさにリアルで、ご都合主義なドラマの表現の域を超えて心に訴えかけてくるものがある。

読むたびに暗くなってしまうが、最後には「自分もがんばろう」という気持ちにさせてくれる。スラムダンクの成功に満足することなく、とことんまで踏み込んだ絶望と希望の人間像を見せ続けてくれる井上先生に拍手!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-18 20:16:03] [修正:2007-07-18 20:16:03] [このレビューのURL]

独自のSF世界を舞台に繰り広げられる、自分のルーツを探求するサイボーグの主人公、ガリィのあてどもない旅。

コロコロと主人公の置かれる立場が変わり、その都度違ったエンターテイメント性を見せながら徐々に物語の核心に近づけていく手法にはマンネリを感じなかった。
ときに繊細に、ときに大胆に描かれる絵には魂が宿っている感じがする。戦闘時のスピード感は抜群。
また人物描写がかなり濃いめで戸惑ったが、慣れるとサイボーグを含め実に人間味のあるキャラクターばかり。ただのアクションものに留まらない魅力を放っている。
少々無茶な設定や時代を感じさせる展開がところどころに見られたが、話も広がりすぎず結末に向けてきれいに収束しており、後味は良かった。

好みが分かれるだろうとは思うが、とにかく濃密な空気に満ちている作品。
絵がOKなら一読の価値あり。

07.07.16追記:
改めて読み返してみると、かなりの深読みができる内容だったことに気付く。エンターテイメントの本質を保ちながらここまで哲学的にも洗練された世界観が描けるのはすごいね。1点プラス。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-23 01:39:57] [修正:2007-07-16 14:59:30] [このレビューのURL]

画太郎ワールド全開!
最初は「今回はちょっとマシかな?」と思わせておいて、だんだん堕ちていき最後には完全にクソと化すいつもの手口の中でも、これは秀逸なクソさ。
野球のルールを徹底的に無視した展開、必要以上にコピーを使いまくるやる気のなさ、意味不明な登場人物、意味不明な番外編、強引すぎる結末。すべてがとことん狂ってるとしか言いようがない。だが、それがいい!

まさにクソマンガ(というよりクソ漫画家)という名が相応しいが、意図的にクソにしてるので好きな人は最高、合わない人にはゴミ以下。
極端に好みが二分するのはまず間違いない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-07 15:35:18] [修正:2007-07-07 15:35:18] [このレビューのURL]

8点 編集王

マンガ業界の現実を、その世界に身を置く人間の視点から痛烈に描き出すというアプローチは面白い。
少し誇大ではないかと思える表現も多いけど、漫画家の中でもいささかはみ出し者的な存在の土田先生ならではの問題意識の高さと、マンガへの情熱が伝わってくる。

目線をずらせば明らかに実在する漫画家や業界体質への批判にも見えるが、ただの批判で終わることなく問題点をきちんと見据えているのが評価できる。人間描写も相変わらず秀逸。一見カッコ悪いことをカッコ良く見せてしまうのがすごい。
またあからさまな自虐ネタ(マンガ業界を批判的に描くこと自体が自虐ではあるけど)も滑稽でグッド。

話が長引くにつれて間延び感がすることや結局キャラが立ち切らない人物が多いのは難点だが、それを補って余りある内容の濃さ。
マンガ好きを自負するならぜひ読んでほしい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-06 23:23:55] [修正:2007-07-06 23:23:55] [このレビューのURL]

高橋ツトムの死生観、ここに極まれり。他のスカイハイシリーズと違った観点で描かれてはいるが、集大成と言って良い出来。

怨念、宿命、転生…。いかにもホラーものにありがちなキーワードが散りばめられてるけど、そこに「カルマ」という鍵が与えられることによって物語の軸がしっかりと定められ、ただのホラーの域を超えたリアリティーがある。
かなり仏教概念の影響が色濃く出ているが、主人公がもともと宗教に無関心な少女なので、読んでる側も無理なくこの世界に入っていけた。小難しいことは抜きにしても、結末に到るまでのドラマチックな展開は見事。
また震えるような迫力の怨霊描写がすごい。決してホラー的な「怖さ」を感じさせる部類の絵ではないけど、力強くがっちりと絡みつくようなタッチが強く印象に残る。

程よい長さに収まっているので中だるみもなく、内容が濃い。良質中編漫画。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-07-03 23:21:57] [修正:2007-07-03 23:21:57] [このレビューのURL]

8点 レベルE

着眼点や発想の面白さは言うまでもなく、王子を筆頭にキャラクターもそれぞれ最高に魅力的。作者の変人ぶりがフルに発揮されている作品。
かなり非現実的な設定なのにもかかわらず現実とのリンクがものすごく上手くいってる。また構成も良く、シリアスかと思ったらオチはコメディー、というやり方には何度騙されたことか。それでも許せてしまう「発想の斜め上をいく」茶目っ気がこの作品にはある。

とにかくやりたいことが無駄なく納められており、他の長編のだれっぷりを見るともう「短編だけ描いてください」な気分。
たった3冊でこれほどの満足感を与えてくれた漫画は他にない。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2007-06-26 00:02:48] [修正:2007-06-26 00:02:48] [このレビューのURL]

8点

バレエという珍しい題材を扱った作品ながら、素晴らしい出来。

ただ単に主人公が天才という訳ではなく、その特異な才能の背景、生い立ちが丁寧に描かれているので説得力がある。
心理描写が上手く、様々な人物の思惑や信念がしっかり表現できている一方で、未知の世界の存在も無理なく描けている。盛り上げるところは最高に盛り上げてくれるし、見せ場への持って行き方も良い。読んでいて鳥肌を立たせられる場面が何度も。
非常に思い切った場面転換や構成の上手さも随所に感じられ、普段全く踊りなどに興味の無い僕にもバレエという世界の奥の深さが伝わってきた。

第二部へのつながりに少し無理があったり、人物像のところどころに破綻があるなど粗も見られるが、それを補って余りある魅力を放っている。第三部に期待。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-25 18:49:22] [修正:2007-06-25 18:49:22] [このレビューのURL]

僕の世代ではギャグマンガの2大頂点とされる稲中とマサルさんが両方こんな位置に甘んじていることに、時代の変化を感じずにはいられない。

有無を言わさず突っ走る意味不明なエネルギーに満ちた展開に、フーミン(一応主人公?)ごと読者も置き去りにされること請け合い。
その訳の分からない変態さに徐々に染まって行ってしまう周りの人物を見ていると、ある種の哀愁とともに笑いがこみ上げてくる。そして自分もいつの間にかその仲間に。
あの謎のエネルギーと発想はどこから来ているのか、多分作者自身もよく分かってないのだろう。

とにかく言葉で表現するのが難しい部類のギャグだが、全編通してあざとさは一切感じられず、ネタがないときは本当にやる気なく話が進む。
そして最終話の壮絶な終わり方。すごい。誰にも真似できない。

いろんな意味でギャグマンガに革命を起こした作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 20:35:37] [修正:2007-06-21 20:35:37] [このレビューのURL]

自衛隊の新鋭イージス艦「みらい」がそのまま太平洋戦争真っ只中のミッドウェー沖にタイムスリップし、アメリカ軍と壮絶な戦いを繰り広げる…。
戦争や兵器に興味があるなら誰もが一度は夢想したであろうこんな活劇が、この作者の手にかかると深い倫理観を内包した複雑な群集劇に変化する。
今まで歴史を扱った作品は数あれど、こういった形で大戦を振り返った切り口はある意味で斬新。

また実在の人物の捉え方には卓越したものがある。彼らと「未来人」である主人公たちの接触によって生まれた変化はリアリティーに満ちており、良い意味で非常に思い切った歴史の改変がされている。
各者の思考は互いに影響力を持っており、常に先が読めない展開にドキドキしっ放し。

問題は「沈黙の艦隊」でも感じた、主要人物たちのキャラの薄さ。それはもう、しばらく読んでないと名前すら思い出せないほど。(今思い出せない)
むしろ現代人ではない草加の方が圧倒的に存在感が大きく、しかし草加は行動や思考の全てが明らかにされない「鍵を握る人物」として描かれているため、強力に感情移入させられる対象が見つからず、読者が宙ぶらりんな状態に置いて行かれる。
もっとも今作の場合は第三者的な視点に置かれることではじめて見えてくるものもあり、それが作者の狙いなのかもしれない。

非常に今後の展開が気になる作品の一つ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 19:12:13] [修正:2007-06-21 19:12:13] [このレビューのURL]

数多くのパロディーやオマージュが込められており、作者の野球に対する愛がひしひしと感じられるとともに、少しマニアックな内容になってしまっている印象は否めない。
まあマニアックなのはハロルド先生のお家芸なので…。

ストーリー自体はある弱小球団の快(怪)進撃といった単純明快なエンターテイメントで、野球に詳しくなくても十分楽しめる。
スポーツものに伝統的に見られる超常現象じみた展開は極力抑えられており、挫折と苦労と努力の末に主人公たちが成長していく様子には現実感が感じられ、とても親近感が持てた。
躍動感のある絵柄や効果音にもこだわりが感じられ、作者ならではの味がよく出ている。
また見せ場の作り方がとても上手く、苦労してきた選手が開花するような場面は、線の強い絵の迫力も相まって爽快感に溢れている。特に最終日のあの人の活躍は鳥肌もの!

個人的に今までで最高の野球漫画。プロ野球好き、特にパ・リーグ好きなら間違いなく楽しめる。
噂では松坂大輔も愛読してたとか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 07:41:15] [修正:2007-06-21 07:41:15] [このレビューのURL]