「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

今最も注目してる漫画。「特にこのシーンが!」というのはないけど、ストーリーの完成度の高さは歴代ジョジョの中でも一、二を争う出来じゃないかと思う。

第五部あたりから気になり始めた構図・コマ割りの見づらさから一歩抜け出し、かっしりとした絵柄に落ち着いた。ここぞの場面の迫力はさすがで、静動のメリハリが利いた非常にリズム感のある構成になった印象。
驚いたのはヘタレだったジョニィの変貌ぶり。単に戦闘能力・乗馬能力が向上しただけでなく、精神面での成長が確かに伝わってくる。

序盤〜中盤はセルフパロディーや単純な戦闘がメインなためマンネリも感じたが、「遺体」争奪戦が激しくなってきたあたりからの緊張感が凄い。以前よりもスタンドが直接戦闘に影響する度合いが薄くなり、より精神面の駆け引きが描かれるようになった。これを地味と感じるか、熱いと感じるか。僕は後者だ。

今はまだどういう結末が待っているのか見当もつかない。だからこそわくわくする。
物語の本当のゴールがどこにあるのか明確に示されていないのが、今までのジョジョと最も違うところかもしれない。
(08.5.20改筆)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 16:53:05] [修正:2008-05-20 15:07:59] [このレビューのURL]

それぞれのエピソードの奥深さが素晴らしい。かなり専門的な知識を素人にも理解しやすく、かつしつこくなりすぎないように料理して物語に溶け込ませてるのがすごい。
かといってコテコテの雑学ものでもなく、情のあるドラマとサスペンスが随所に散りばめられてるから飽きが来ない。エンドレスで話が繰り返されるのではなく、世界情勢の変化に伴ってゆったりと時間の進行を感じさせてくれるのも良い。

これだけの内容を基本1話完結方式で惜しげもなく投入できる引き出しの多さにはただただ感心。このとてつもなく幅広くて深い知識はいったいどこから生まれてるのだろうか。ああ、それにしても、褒めるところしか見つからない…。

登場人物のさり気なく気が利いたセリフや、行動の1つ1つが「知ること」の楽しみと「生きること」の素晴らしさを教えてくれる。
これを外して浦沢直樹は語れません。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-29 12:06:38] [修正:2008-01-29 12:06:38] [このレビューのURL]

完全にイカレてる。
ちっぽけな81マスの盤上に、この世の全てをごちゃまぜにして突っ込んだような狂気が満たされている。どんなバトル漫画よりも静かなのに、ボードゲームとは思えないほど激しく勝負の臨場感が伝わってくる。

淡白で無鉄砲な主人公の代わりと言わんばかりに、次々と登場する濃ーい棋士たちが見所。どう見ても変人としか思えない彼らにも彼らなりに様々な生き様があり、それぞれの揺るぎない信念がある。それでこの作者の描く汚い爺さんたちがまた、不思議なことに、読めば読むほどにカッコイイのだ。
命を削った勝負を経て成長していく将介の姿に心踊り、強敵を次々と打ち負かしていく様子にカタルシスを感じる。
何よりこの漫画が素晴らしいのは、対局に勝った者だけに未来が用意されているのではないというところ。敗者のドラマもまた、同じぐらい眩い光に満たされてる。

将棋が分かるかどうかなんて関係ない。ここにあるのはただ壮大な人間ドラマだ。傑作!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-22 23:38:41] [修正:2008-01-22 23:38:41] [このレビューのURL]

9点 三国志

名作の名に恥じないおもしろさ。脱帽。
今まで三国志の世界は正史でしか知らなかったけど、これほど魅力あるものだったとは。
できればもっとはやくこの作品に出会いたかった。

他の方々の指摘の通り、登場人物が多すぎて顔とキャラを描き分けられてないのは難点。
ただ同じ中国古代ファンタジーを原作とした「封神演義」と違い、こちらは律儀なまでに原本に忠実な様子。堅実な作りで分かりやすく、もともとの話がおもしろいせいでどんどん読めてしまう。無駄が一切なく、必要な部分のみしっかり描いている。
多くの故事に触れることもできるので、そういった面でもいろいろとためになる。

万人にお奨めしたい作品。60巻なんてあっという間です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-11-15 23:03:35] [修正:2007-11-15 23:03:35] [このレビューのURL]

まずは騙されたと思って読んでほしい。
笑い、涙、出会い、別れ、勝利、敗北、努力、友情、そして夢。
少年漫画に必要な全ての要素がまさかこのふざけた競馬漫画に詰まってるとは…正直思わなかった。

序盤の低レベルな下ネタやベタな成長物語はほんのさわりみたいなもの。
そこから中盤の急展開はまさに競馬のレースさながら、息つく間もなく駆け抜ける圧倒的迫力!読むたびに心の底から痺れる本物の名勝負の連続。
特にあの衝撃的シーンと有馬記念の決着はいつも涙で歪んで…。

分かりやすく競馬初心者にも優しい作りで、馬が人間よりよく喋るというトンデモ設定も実に違和感無くこの世界に溶け込んでる。
天下一武道会と化したWC編以降がなければ文句なしの10点。
これこそ王道! 超おすすめ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-09-02 14:19:37] [修正:2007-09-02 14:19:37] [このレビューのURL]

構成の過不足のなさ、キャラの魅力、独創的な構図やタッチ、意外な結末…全てが素晴らしい。

才能を持て余す能天気なペコと、才能を生かす気のないクールなスマイル。作者得意の二人の対比を中心に描かれる青春像は、天才であるがゆえの苦悩や孤独、努力では超えられない壁にぶつかった者の挫折感、スポーツをやっている人間なら誰もが感じる、けど誰も決して声を大にしては言えなかった、そんな真実を痛快に表現している。
主役級の二人から脇役に至るまで、それぞれの思いを胸に卓球に命を賭ける姿は、みんなどうしようもなくカッコイイ。

また、粗さと繊細さが見事に溶け合った絵は濃すぎず、薄すぎず、一度見たら忘れられないインパクトを持っている。ほとんど動きのない「静」の絵にこれほどのメッセージを込められたマンガがかつてあっただろうか。

青春という2文字をたった5冊の中に見事に集約してみせた作者の感性は驚異に値する。
文句なしに傑作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 19:14:27] [修正:2007-06-29 19:14:27] [このレビューのURL]

9点 神童

今でこそ「のだめ」や「ピアノの森」が一世を風靡してるけど、これを読んだ当時としてはクラシックを扱ったマンガはとても斬新だった。

主人公うたが物語を通して人間としての成長を遂げていく様子にどんどん引き込まれる。
最初は世間の大人や気取ったガキどもをピアノの腕で黙らせていく痛快さに、やがてある重大な事件を契機にまさに「音」を「楽しむ」ことを覚えていく過程に、奥の深い面白さがある。
全ての物事を音楽を介して捉えている描写は新鮮で、雑味がなくある意味ですがすがしい。また必要以上に自己主張をしないサブキャラクターたちにもテーマの一貫性を感じることができ、好感が持てる。

「この音は神様にかえすよっ!」
「全ての響きを合わせて 今 一しずくの音からはじめよう」
等、さり気なく心に残るセリフも多く、全編を通して登場人物や作者がいかに音楽を愛しているかが伝わってくる。絵が微妙だからとスルーしてしまうのはあまりに勿体ない。
渾身の力がこもったラストシーンには痺れた。未読の方は是非。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-22 23:47:54] [修正:2007-06-22 23:47:54] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

言わずと知れた少年漫画の金字塔。

果てしない力のインフレ、「死」の持つ重みのなさ、数々の矛盾点など、穿った見方をしようと思えばいくらでもできるが、その全てを補って余りありすぎる魅力に溢れている。
一番良かったと思うのはいわゆる「Z」初期のサイヤ人来襲のあたり。サイヤ人の持つ圧倒的な強さとそれに果敢に立ち向かう地球人たち。一度は絶望の底に叩き落され、悟空の登場で盛り返し、最後は全員の力を合わせて撃退に成功する。
これほど熱い展開は他に類を見ない。リアルタイムで読んでたならさぞかし毎週ワクワクしただろうなぁ…。

とにかく敵味方問わずキャラクターの立ち具合が尋常でなく、シンプルな構図ながら圧倒的な迫力のある画力によって展開する戦闘シーンはもうそれだけで大満足。他の欠点は全てどうでもよくなってしまう。
純粋なエンターテイメントとして見たとき、これを上回る作品は現時点では存在しないと思う。
史上最も偉大な作品の一つであることは間違いない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 16:39:36] [修正:2007-06-21 16:39:36] [このレビューのURL]

史実を大きく外れた漫画的な展開や人物の評価が偏っているところに多少疑問は感じるものの、歴史をベースにした長編作品としては抜群に出来が良い。各人物は旧来のイメージを壊すことなく、かつ新しい人物像で生き生きと描かれており、様々な人物が複雑に絡まりあってできた幕末の潮流を絶妙なバランスで再現している。
特に人斬り以蔵や武市半平太、新撰組や亀山社中の面々には並ではない愛が感じられる。と言っても溺愛ではなく、それぞれの光と闇をしっかり分別して描いているのが評価できる。

序盤に「身分差別への反発」というテーマが強烈なインパクトとともに突き付けられ、この骨格を非常に明確に示していることが作品全体に説得力を与えている。
また要所のやりとりは創作とは思えないほどリアリティーがあり、重要な場面とそうでない場面の描き分けが上手い。
歴史の授業ではある種ミステリアスな印象を与えられる竜馬が、この作品の中では誰よりも人間味に満ちた竜馬なのだ。

最大の見せ場である薩長同盟成立以降の展開が少しだれるが、大河ドラマの必然なので仕方ないところ。
よくここまでやり切った! と素直に賛辞を送りたい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 15:30:08] [修正:2007-06-21 15:30:08] [このレビューのURL]

9点 地雷震

ある重要人物の死を境に前半と後半でかなり話の見せ方が変わっており、それに伴って話の主題も変化している特殊な作品。(ちなみに絵柄も同じ時期を境にかなり変化している)

前半は主人公である飯田が積極的に捜査に関与しているため主観的に話が進んでおり、また扱う事件も犯罪者の異常心理や麻薬、催眠といった「犯罪色」の強いものが多い。
この時期の事件内容自体は比較的ありがちとも言えるが、飯田が犯人を追い詰める過程にハードボイルド小説的な面白さがある。

後半は飯田が捜査そのものに絡むことは少なくなり、犯罪者自身やそれに関わる第三者を中心として、より客観的に事件が展開する。扱うテーマは連載当時の時代背景を反映した「社会問題」が意識的に取り上げられており、作者の関心の高さが伺える。
虐待が虐待を呼ぶ悪循環、いじめ問題、自殺の美徳化、酒鬼薔薇聖斗事件を思わせるような未成年者による惨殺事件、脳死や魂の在り処…といった非常に現実味のある問題が独自の切り口で描かれている。
特にこの後半に多く見られる「セリフ」ではなく「空気」にものを言わせる描写の鋭さは圧巻の一言。

どのエピソードも重い内容ながら、少なからず現代社会に身近に存在する「心の闇」について考えさせられる。一見大人向けの作品だが、ぜひ高校生ぐらいの人に読んでもらいたい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 06:57:34] [修正:2007-06-21 06:57:34] [このレビューのURL]

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