「FSS」さんのページ

総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

[ネタバレあり]

あくまで今見るとバトル漫画としては物足りないが、原作小説が書かれた時代を考えれば、出てくる忍者の使う奇抜な忍法のアイデアの数々は非常に斬新で秀逸。

現代のバトル漫画のように戦闘シーンにおいて複雑な戦略や心理戦がある訳ではないが、ゴム人間とか、ステルス人間、写輪眼の原型とも言える「瞳術」などなど、今あるバトル漫画に出てくる「特殊能力の原型」がほとんど出揃っているというのはスゴい。

ストーリーや人物描写に深みは無いが、その分、伊賀と甲賀の忍者同士の10対10マッチはテンポが良く、全5巻ですっきりあっさり話が終わるところが潔い。

ぽっちゃり型の女性の絵柄などもエロくて良い(笑)。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-11 10:38:41] [修正:2008-02-11 10:38:41] [このレビューのURL]

「受験漫画」としてほとんどギャグやラブコメを廃し、かなり真っ当に受験ノウハウの教授に取り組んだ作品。そういう意味では斬新。

もちろん、この漫画のやり方だけで東大に入れると本気で思った人はまずいないだろうが、仮に、この漫画を読んだからと言って受験に落ちるような受験生はもともと勉強が出来ないだけ。東大入試以前の問題で、漫画のせいにするのはお門違い。

勉強法としてはかなり理想論的な部分も多いが、それでも勉強の仕方や取り組む際の心構えなど、方法論としてはなかなか参考になる部分もあり、読んでも損は無いだろう。受験に限らず役に立つ場面もあるはず。

ただ、受験ノウハウが中心なので、ストーリー性や登場人物が醸し出すドラマ性が薄いのは確か。漫画として面白いかどうかは微妙なところだが、とりわけ酷評するほどの内容でもない。最終話はだいたい予想通りの展開。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-09 22:00:46] [修正:2008-02-09 22:00:46] [このレビューのURL]

4点 男坂

[ネタバレあり]

車田ファンの自分としても、この作品はさすがにフォローし辛い。

通説では「登場人物が多くなりすぎて収拾が付かなくなった」事が原因と言われているが、そんな事より最大の問題点は、主人公たちの「言っている事とやっている事」にあまりにもギャップがあり過ぎて、さすがに読者が呆れたという事が原因だろう。

と言うか、チ○毛も生え揃ってない、自分で働いて金を稼いでもいない中学生のガキ共に「オレはいずれ日本のドンになる」とか、「人の上に立つ人間のタイプを知っているか」とか言われたところで、「はいはい」としか言い様が無いだろう。しかも、やっている事がひたすら「ケンカ」ときた日には、もう笑うしかない。たぶん大半の読者の突っ込みも「ケンカも良いけど、まず義務教育を卒業しようね」だったはずだ(笑)。実際、作中での「ドン」は明らかに「番長」レベルの話ではなく、将来を見越したもっと大きい意味での「権力者」的なニュアンスで使われていたから滑稽感はなおさらだ。

純粋に格闘漫画として見ても、本来、出し惜しみすべき「ボスキャラ」であるはずの各国の「ドン」を、最初から全員顔出ししてしまったというのも大きなマイナス要因(しかも全員ショボイやっつけデザイン)。

また主人公にケンカの秘訣を教えるためだけに出てきた「喧嘩鬼」もご都合主義以前に意味不明な存在。教えてる事も「相手から目をそらすな」とか「敵の攻撃は紙一重でよけろ」とか、当たり前な心得ばかり。おまけに特訓期間はわずか十日間だけ(笑)。それで一気に仁義が強くなり、人間的にもデカくなるというのはあまりにも杜撰だろう。戦闘力なんてよほど実戦経験を積まなくては身につかないものだし、まして人間的な成長はそれ以上に長い人生経験を必要とするもののはずだ。そしてそんな仁義を一目見ただけで各地の硬派(笑)が会ったその日に軍門に下るという展開のご都合主義。この辺のいい加減な展開のせいでより人物像が薄っぺらくなっていったのだろう。

終了間際の怒涛のやっつけ展開と、ラストの「未完」の文字はもはや伝説。違う意味で楽しめる漫画ではあるが…。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-03 16:54:21] [修正:2008-02-03 16:54:21] [このレビューのURL]

今見ても絵やギャグにほとんど古さが感じられない。これが80年代の初頭に描かれたものなのだから、やはりこのセンスはズバ抜けている。漫才ブームとほぼ同時期と言うことを考えれば、当時の漫才がすでに古臭くなってしまっているのに対して、「ひばりくん」の世界はまったく色褪せていないのだから、いかに普遍的かつ不変的なセンスを持っていたかが分かるというもの。

作者が文庫版のあとがきで、「時代の意志とか気分とか、何か大きな力で動かされた。自分の力だけで創られたものじゃない」というような事を書いているが、まさにそんな評価がふさわしい。

「マカロニほうれん荘」や「うる星やつら」もそうだが、計算だけじゃなく、その時代の雰囲気とか価値感、作者の年齢といったものの相乗効果による化学変化があって始めて作り出される奇跡的な作品のひとつなのだと思う。80年代という時代の中だからこそ創られた漫画と言える。

今でも続編希望の声は多いだろうが、たぶん、今、作者がやる気を出しても、若さや青さを含んだ「未完成であるがゆえの勢い」とか、当時の「空気感」まで再現することは不可能だろう。

以下、作者あとがきからの引用。

ひばりくんはそんな僕を見下しもせず、買いかぶりもせず、いつも超然とそこにいて「描けるんだったら描けば。ボクはいつでもいいよ」。ひばりくんはいつも僕にそう言って、凛とした笑顔をたたえているのです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-02 17:29:53] [修正:2008-02-02 17:29:53] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

何だかんだでこれも長期連載になってきた。一応、連載開始時から全巻買ってはいるから、つまらない訳じゃないけど、取り立てて面白いと言うほどでもないのは何故だろう。

第二次世界大戦前の上海という舞台や、ヤクザの抗争に巻き込まれて行くという設定は面白いが、主人公の拳志郎の立ち位置が微妙に中途半端で、わざわざ「北斗神拳伝承者」を作品に絡ませていく必然性が弱いように思う。ヤクザの関係者に「北斗」絡みの人間が出てくるから戦っているだけ、という印象が強い。

重要人物がきっちりと死ぬ展開があるので、そう言う意味では緊張感があるが、敵として出てきた相手が戦いを通じて仲間になる、もしくは良いヤツになるという王道パターンも健在で、良くも悪くも予想通りの展開が多く、戦いの動機付けの弱さと共に、それに伴うメインキャラの人物像も薄っぺらくなっている。

それと不遜を覚悟で言わせてもらうと、やはり原哲夫氏はいわゆる下手ウマの逆、上手ヘタ(?)タイプの作家だと思った。絵を描いている人なら分かると思うけど、つまり「細密に描かれた絵」=「上手い絵」ではないという事なのだ。リアルに描く事は簡単だが、漫画として面白い動きや魅力のある絵を描く事とは別で、そういう意味で原哲夫氏の絵は漫画的な意味での「面白味」に欠けると言わざるを得ない。そのせいで戦闘シーンにいまいち迫力やメリハリが感じられないのだろう。例えば「ドラゴンボール」の戦闘シーンと比較すると一目瞭然で、鳥山氏の絵にはキャラの動きに流れが見えるが、原哲夫氏の絵はリアルではあるが、動きのダイナミズムや迫力に欠けていて全体的に静止画のような印象が強い。

またストーリーに関して言えば、「北斗の拳」も後半は迷走気味だったが、今作もギース死亡以後は迷走している感じ。特に最近のヤサカ編は引き伸ばしそのもの。飛燕が死ぬ展開など、非常にキャラの扱いが中途半端で不満が残る。この辺も「北斗の拳」の悪しきパターンを踏襲している。ヤサカもキャラとして魅力が無い。

この作品もヤサカ編が終わったら潔く終わって欲しい。

PS.それにしても「西斗月拳」と言うネーミングは、もう少し何とかならなかったのだろうか?ヤサカ編が終わったら「東斗星拳」とかw。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-22 21:06:25] [修正:2008-01-22 21:06:25] [このレビューのURL]

8点 ZOOKEEPER

動物園の新米飼育員と動物の触れ合いを描いた「ほのぼの漫画」かと思いきや、変に動物を擬人化する事もなく、人間と動物、どちらか一方の視点に偏る事もなく、動物と人間の関係性や、自然と文明の在り方などをテーマに描いた、意外なまでにシビアな作品。

かと言って、説教臭い話や理想論的な話は少なく、あくまで人間の主観である主人公の視点に感情移入しつつ考えさせられるシナリオ作りになっている。特に「何故、コアラは人気がある看板動物なのに、観客の滞在時間が短いのか」という動物園の経営問題から入り、コアラの生態を考え、新たなコアラブームを作ろうとする。そして、ようやくコアラの問題について解決できたかに思えたが、そこには人間本位の考え方と動物園そのもののあり方が問われる事に…、というシナリオ作りには感心した。

また主人公の「温度を視認できる」という特殊能力も目新しく、その能力をちゃんと作品の中で有機的に絡ませていく使い方も上手い。

動物園の園長も外見とは違い一筋縄では行かない人物で、その「黒い」性格が作品のスパイスになっているし、主人公を動かす的確なアドバイザーとしても機能している。

あえて難点を言えば、絵柄には好き嫌いが出るだろう。この作品が作者のデビュー作だからなのか、技術的にもあまり高いとは言えず、個性と言うにはかなり線描が雑に見える部分が多く、絵柄に関してはあまり良い印象が持てなかった。もう少し丁寧に描いて欲しいところ。

ただ先述したように、動物園経営を通して、人間と動物の在り方や、文明とは何か、自然とは何か、と言ったような哲学的なテーマに至るまで考えさせられるシナリオは非常に質が高い。小、中学校などで授業の教材としても良いくらい。

一度は読んでも損は無い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-22 20:02:11] [修正:2008-01-22 20:02:11] [このレビューのURL]

<1巻のみの評価>

いわゆる「変身ヒーロー」ものだが、好き嫌いがはっきり分かれる作品である事は間違いない。

「シグルイ」にハマった私も、これは無理w。

確かに他には無い独特なテンションや熱意のようなものは感じるが、あまりにも絵柄やノリがB級的と言うかカルト的と言うか…。ギャグなのかシリアスなのかもさっぱり分からない敵のキャラデザや世界観に戸惑わされる。

絵柄が劇画調という事もあってか、出てくる敵キャラは明らかにギャグ路線なんだけど、主人公が思いっきりシリアスにヒーローを演じているせいで、主人公の存在自体もギャグになっている、しかし「本質的にはギャグではない」という、実に奇矯なアクション漫画。

作者の初期作品だけあって作画が未熟な事に加え、内容が内容だけに、「ブリーチ」や「ナルト」のように真っ当な少年向けバトル漫画を読むような感覚では読めない。

正統嫌いな人や、既存の漫画に慣れ切っている人が斜めに読んで楽しむという作品だろう。これを好きな人は、映画などでも「スターウォーズ」より「スペース・ボール」といったB級作品を好んで観るタイプだと思う(笑)。

何にせよ、間違っても万人にはお奨め出来ないので、バランス調整のためにもこの点で。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-31 14:51:20] [修正:2007-12-31 14:51:20] [このレビューのURL]

これだけ精神的に病んでいる主人公というのも珍しい。それだけに拒否反応が出る人も多いだろうが、こんな作品は多様で柔軟な感性を必要とする漫画文化を持つ日本でしか作られないだろうし、日本の漫画の中でも類例が無い。少し前の漫画とは言え、このご時勢によく出ていると思うし、それゆえに薄甘い事なかれ主義に対するカウンターウェイトとしての意味も持っていると思う。

たしかに強烈な残酷表現が多く、その怒涛の展開に終始圧倒されるが、「のぞき屋」の頃から常に人間の持つ精神の「暗部」に光を当てる作者の人間描写には一貫性があり、今作も始まりから終わるべくして終わる物語としての「必然性」を内包している。

異常と正常は常に表裏の関係。誰の中にも異常性は潜んでいるし、その定義すら相対的である事に自覚的でないとちょっと危険。それだけに表面的な残酷表現にばかり気を取られてしまい、その異常性の持つ「普遍性」を理解しないと、現実世界でもちょっとした事でバランスを崩してしまう事になるかも知れない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-06-06 22:45:05] [修正:2008-06-06 22:45:05] [このレビューのURL]

今まで未収録だった漫画を一冊にまとめた短編集で、各作品ごとに掲載年代や絵柄のタッチなどに大きな違いがある。なかには「あたしンち」と同じ作者とは思えないものも。

純粋に漫画として評価すると正直イマイチだが、けらえいこ氏がカット描きから漫画家に転身する際の葛藤や工夫が色々と垣間見えてファンとしては興味深い。

けらさんファンなら持っているべきコレクショングッズw。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-04-16 01:07:47] [修正:2008-04-16 01:07:47] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

一見、単純なパニック系バイオホラーかと思いきや、漫画では珍しい社会派のサスペンスホラー。

取り立てて斬新なアイデアや設定がある訳ではないが、その脚本構成や作画など、全体的に非常に丁寧な作りであり、ジャンル以前にひとつの作品としての完成度が高い。その点は高く評価されるべきポイント。

ただ前述したように、基本的に社会派サスペンスホラーであり、凶悪犯罪の加害者と被害者の立場や有り様、社会的制裁とは、といった重々しいテーマには好き嫌いが分かれると思われる。

そういう意味で、漫画としての完成度は高いが娯楽性は低いので、何度も読みたくなるような内容ではないのが残念。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-04-12 23:47:30] [修正:2008-04-12 23:47:30] [このレビューのURL]