「FSS」さんのページ

総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

8点 DEATH NOTE

[ネタバレあり]

やはり日本の漫画はナメたらいかん。

私の知る限り、ここまで天才同士の複雑な心理戦を描いたサスペンス作品は、古今東西のミステリー小説やハリウッド映画にも無いだろう。

あえてジャンプ誌上で完全にアクション要素を廃し、頭脳戦にのみ特化した点を評価すべき作品。1巻目から話の規模が大きく、テンポも良い。ふたりの天才同士の騙し合い、知恵比べが面白すぎ。

普通「ノートに名前を書いた人間を好きなように殺せる」という設定だと、いじめや自殺をテーマにして、ノートを巡る学園内でのドロドロとした人間ドラマが中心になりそうだけど、この作品はノートを使って人類浄化を始めた主人公「月」と、それを追う謎の名探偵「L」との心理的な駆け引きが見所の頭脳戦をメインに描いているのが斬新。

ノートも好き勝手に殺せるわけではなく、相手の本名と顔を知っていなければならないし、物理的に無理な死に方はさせられないという制約がある。それに対して、「L」は警察やCIAなどと連携を組みつつ、天才的な推理力で「月」に迫ろうとする展開は非常にスリリング&サスペンスフル。

特に感心したのは、序盤で「L」が「月」の目的や住んでいる地域などを早々と特定していく過程。思わず「なるほど〜」と膝を打ってしまったw。

確かに「L」死亡後の展開はいまいちだし、何度も読み返したくなるタイプの内容ではないが、少年漫画でここまでサスペンスに特化した作品を描いた事は高く評価すべきだと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 20:04:23] [修正:2008-02-02 20:04:23] [このレビューのURL]

一巻を読んだだけでは伝わらないかも知れないが、メイン以外にも登場キャラの描写が丁寧なので、その地道な造形の積み重ねのおかげで、巻を重ねる毎に確実に物語に血が通ってきている。

歴史上の実在の人物の絡め方など、虚実入り混じった物語構築も上手い。そして、彼らとセスタスの邂逅がより物語を重厚なものにしている。

戦いに派手さは無いが、各キャラに個性があり、彼らの生き様や考え方が、そのまま戦いの勝敗にも影響するというシビアな描写がリアル。まさに人生とは戦いって感じで、誰にでも等しく感情移入が出来る。

ただ、残念なのは、基本的に戦闘シーンが売りの格闘漫画としては、ちょっと地味という事。原因は作者の絵柄が丁寧すぎる事と、カメラワークに工夫が無い点。いつもほとんど同じ位置(目線)や距離であるため、画面にメリハリが無く、迫力も感じられない。こういうのを見ると、やはり「バキ」の戦闘シーンの迫力の凄さが分かる(物語はともかくw)。

まあそれでも十分面白いので読んで損は無い作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 19:04:54] [修正:2008-02-02 19:04:54] [このレビューのURL]

いかにも古賀氏らしい、キャラとギャグ、世界観で、個人的に一番親しみが持てる作品だっただけに、もう読めないのは寂しい限り。

ギャグの発想が独特な方向で先鋭化されつつも、プロの作品として決して独りよがりやオタク受けだけにならない、良い意味での万人向けのバランス感覚と客観性がある。

バカバカしい台詞回しにも、作者の持つセンスと経験、そして計算が浸透しているからこそ、あの独特な面白さが醸し出されると思う。

そう言う意味でも、ギャグ漫画として完成度の高い作品。

ただ、あえて苦言を呈すると、作者の個性や資質の問題なんだろうけれど、話に「広がり」を出すのは苦手な人みたい。その場その場の「お祭り騒ぎ」は楽しいものの、後にも先にも話が続かないと言うか、こういう作風は下手をするとひたすらグダグダな展開になりがち(事実、この4巻では既にその兆候が…)。

続けようと思えば永遠に続けられるタイプの漫画だが、ダラダラと続けるよりは、面白いところで終わって、また次回作に向けて充電してくれた方が作者にとっても読者にとっても良い結果を生むと思う。

PS.あとがきで「くのいちが、きゃっきゃ、ウフフしている漫画が描きたかった」と作者が語っているのを読んで、さすがだと思ったw。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 17:17:57] [修正:2008-02-02 17:17:57] [このレビューのURL]

4点 PLUTO

[ネタバレあり]

鉄腕アトムの「地上最大のロボット」のリメイク。

基本的なテーマはそのままに、ロボットのデザインや演出全般を徹底的にリアルにアレンジしてある。と言うか、この世界のロボットは、見た目や言動、思考形態が完全に人間で、さすがにちょっとやり過ぎ。

また、アトムをどう出すのかと思ったら、やっぱり見た目は完全に人間の子供(笑)。七大ロボットだから性能バツグンというのも分かるけど、人間の「感情」を理解できるところまでいっちゃってる。ここまで来るとほとんど「ロボットとして描いている必然性」すら失っている。ある意味、リアルである事の弊害が出ている。

ロボットが感情を持ってしまったらとか、感情を持たない人間と感情を持ったロボットとではどちらがより人間なのかとか、自分は何者なのか、みたいな「アイデンティティを問うテーマ」は、この手のSFに限らず、今や漫画では基本中の基本であり、さすがに今さら感は否めない。

また、この作者の他の漫画を見てもそうだが、全体的なプロットや演出の仕方が完全に「パターン化」していて(よくあるのが「無感情だった人間が家族愛や友情に目覚めた途端に殺される」パターン)、非常に商業的かつテクニック的でそこが鼻につく時がある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 16:59:30] [修正:2008-02-02 16:59:30] [このレビューのURL]

長く続いた「ゆず」シリーズの最終巻で、どこの感想でも「泣いた」とあるし、私もファンとして十年以上の付き合いがあった作品だけに、ゆずの最期には号泣するかと思いきや、あまりにも須藤さんや旦那さんの入り込んでしまっている悲嘆ぶりに、正直、ちょっと引いてしまった。

長年、可愛がっていたネコが死んだんだから、そりゃ悲しいのは分かるけど、ゆずほど幸せなネコもいないんじゃないかと思う。漫画のキャラとしてみんなに愛され、漫画の中で永遠の命を与えられた訳なんだから、笑って送ってあげようよ。それこそ、その辺の人間よりもずっと幸せな人(猫)生に思うけどなあ。

この辺の描き方は、ある意味、映画「初恋の来た道」に通じるものがある。要するに内容のほとんどが「悲しみ」しか描かれていないのだ。何よりも死者が生者に望むことは、死んだ者が残してくれた多くのものから、その悲しみを乗り越える前向きな強さと生き方を得てくれることのはず。その辺の描き方がかなりに希薄に感じた。

たとえば半年も経たないうちに、別の子猫を飼い始めるのがそうで、結局、「ゆずがいなくなったのは悲しいけど、新しいネコちゃんを飼い始めたから悲しくなくなったよ」という感じの終わり方に違和感がある。こういうペットを飼う人に共通の心理は、ペットを飼わない自分としては理解しがたいものがある。なんか泣く泣く別れた女がすぐ別の男と付き合ってた、みたいなw。

それと内容的には直接関係ないけど、今まで一切出てこなかった旦那がこの巻から突然出てくるのも、結婚してたなんて全然知らなかっただけに、めちゃくちゃ違和感があったw。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 15:56:19] [修正:2008-02-02 15:56:19] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

他の方にも指摘されているように、なるほど、車田氏は失敗を学習しない人のようだ(笑)。まあ、その唯我独尊的な発想があるからこその天才なのだろうが、さすがにこの作品はヒドい。

設定やキャラデザなど、基本部分は完全に「星矢」の二番煎じであり、ほとんど自己パロディの域。車田氏ほどの人でもヒットの甘味は忘れられないのだろうかとファンを失望させた、「男坂」の失敗とはまた違う意味での伝説的失敗迷走作品。

もちろん二番煎じというやり方が必ずしも悪いわけではないが、問題は車田氏本人が、前作「星矢」がどういう形でファンの期待を裏切っていったのかをまったく理解していない事だ(この頃から車田氏の作家としての「引き出し」が無くなりつつあり、それゆえに客観性を失っているように思われる)。

そういう創作姿勢だから、今作も序盤を過ぎた辺りから当然のように迷走し始める。序盤はカッコ悪い恐竜のような敵ばかりが多かったため人気が出ず、これではダメだと、急遽、紫龍と瞬にそっくりな「美形キャラ」を投入するような安易さ。結局ちゃんとした背景描写も無いままに出したキャラなど、外見の良し悪しに関わらず魅力が無いという事を証明してくれている。

そのくせラスボスの容姿は完全なる「やられキャラ」の典型的デカブツ(もっともそれすら連載が続いていれば中から「美形の人」が出てくるという媚び展開もあり得たがw)。組織の全貌を早々に明かしたのもマイナス要因。結果は…、言うまでも無い。

ラストの<NEVER END>の文字は、ある意味、「男坂」の<未完>よりも物悲しい。

そして「リングにかけろ2」や「冥王神話」に至っては、迷走ではなく、もはや暴走に近い。特に星矢の前世話である「冥王神話」は設定的には破綻していると言っても過言ではない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-28 13:04:29] [修正:2008-01-28 13:04:29] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

80年代ジャンプ黄金期を支えた作品の一つ。

それまでありそうで無かった「美少年+鎧装着」というジャンルの元祖。すでに連載開始から数えると二十年以上も前の作品という事を考えれば、この着眼点は非常に斬新。いまだに人気があるというのも頷ける。

やはり国内のみならず、海外でも人気が沸騰するようなキャラを作れる車田氏の才能は並ではない(特に今作は「風魔の小次郎」や「男坂」での失敗以降、「離れたファンを取り戻すのはいつでも出来る」とメジャー路線として描き、実際にヒットさせたという背景がある)。

ただ残念なのは、それまでは順当に展開していたストーリーが、編集部に引き伸ばしを強制されたからか、最大の戦いの山場であるはずのハーデス編の後半から無意味なイベントや無理のある展開が多くなった事だ(瞬がハーデスの肉体だったとか、その瞬を殺したシーンが幻覚だったとか)。他にも、ハーデスの結界により力を失うという理屈で、やっと活躍するだろうと期待されていた黄金聖闘士たちがコキュートスに強制退場させられたりw、さらにアテナの無謀な単独先行のせいで、嘆きの門を破壊するためだけに黄金聖闘士が全員死ぬハメになったり、あげく「アテナの血を付ければゴッドクロスに変わって次元もひとっ飛び!神とも戦えるぜ!」という超ご都合主義的設定が出てきたりと(それならハーデス戦の始めから全ての聖衣に血を付けとけっつーのw。それまでにも付けた血によって聖衣に変化が出るのは分かってる事なんだから。そうすればハーデスの結界で黄金聖闘士がやられる事もなかった、等々)、看過できない突っ込みどころが頻出し、明らかに車田氏が迷走しまった事だ。そのせいでファンの期待との乖離が起こり、結果人気は急落した。ハーデス編の前半の盛り上がりがウソのような落ちぶれっぷりだった。「男坂」ほどではないにしても、中途半端な形で終了してしまったのも当然の迷走と言える。

ただ、それでも一大ブームを作った功績や漫画業界に与えた影響の大きさは評価すべきだし、実際、終盤での迷走までは十分に面白のも確か。

十二宮編9点、ポセイドン編6点、ハーデス編(前半9点〜後半3点)で、平均すると7点辺りが妥当なところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-28 12:00:44] [修正:2008-01-28 12:00:44] [このレビューのURL]

<原作は二十年来のファン>

つい表紙の美しさに惹かれて中身を確認せずに衝動買いしてしまったが、はっきり言って大失敗。たぶんこの作者は依頼があるまで原作を読んだ事が無いのだろう。

と言うよりも、何故かは知らないが、作画に抜擢された作家の本業が漫画家ではなくイラストレーターらしく、そのせいで漫画としての体を成していない、素人の同人誌レベルになってしまっている。

漫画とイラストは似て非なるものとは言え、全体的な描画や演出センスを見る限りとてもプロとは思えない。

もともと天野喜孝氏の美麗なイラストによりキャライメージが出来上がってしまっている作品でありながら、鷹木骰子氏の技量が未熟すぎる事と、原作に対するリスペクトが無いから、とてもじゃないが原作の魅力を漫画として昇華できていない。

とにかく「この人の個性」と評価するには、あまりにも線描が雑すぎる。さらにベタやスクリーントーンの使い方が下手なせいで画面全体の白黒のバランスが悪くなっていて、非常に画面が見づらい。

基本的なコマ割りとキャラの配置の仕方、それに伴うカメラ(視点)の動かし方、背景とキャラの明度のバランス、セリフや効果音の書き方に至るまで、漫画としての「魅せ方」というものが分かっていない。

また編集と相談したのか独断なのかも知らないが、D以外のメインキャラのデザインもイマイチ。

特に、小説の表紙や挿絵で描かれる事の多いDの姿形はそのままの流用だから良いとしても、新規デザインとして任されたであろうドリスのキャラデザは最低。最初に読んだ時、街道でドリスと出会うシーンでは、「え?誰これ?いきなりラミーカが出てきた?」と思ったほどw。いくら鞭を使うとは言え、ドリスは「美人だけど純朴な田舎娘」であって、SMの女王様じゃないんだからさあ(この点に関しては原作の挿絵もイマイチw)。麗銀星もただの「ロン毛の美青年」というだけのデザインで、原作にあった、つかみ所の無い飄々とした不気味さがまったく出ていない。

とにかく「吸血鬼ハンターD」シリーズは長く続いていて、すでにキャライメージや世界観が完成されている作品。それだけに濃い原作ファンも多い。そんなファンの期待を裏切らないように、最低でも「妖殺行」を原作に製作されたアニメ版くらいはがんばって欲しかった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-05 19:25:25] [修正:2008-01-05 19:25:25] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

<全巻読了>

少年時代のノスタルジーをテーマに直結させた着眼点は良かったけど、やはり広げ過ぎた風呂敷を畳めずに終わった感じ。最終的に何が一番言いたかったのかすらぼやけてしまっている。

序盤は色々な伏線の張り方と、情報の小出しのバランスが良く、読んでいて先が気になる怒涛の展開だったが、後半は伏線の回収と先延ばしに必死で、どうしてもストーリー展開に無理が出てしまった感がある。後半などは同じような展開の連続で「こいつら何やってるんだっけ?」と分からなくなることもしばしば(笑)。そのせいでグダグダ感が出まくっている。

それと、「モンスター」もそうだが、もともとこの作者の漫画の描き方は、良くも悪くも非常に「商業的」と言うか、「テクニック的」と言うか、「ここで新たな謎を出せば読者の興味を持続させられる」とか、「ここで家族愛を強調させてからこのキャラを殺せば泣ける」といったように、ある意味パターン化されたプロットの切り張りで作品を描いている印象が強くあり、その小器用なやり方が鼻に付く時がある。そのやり方がプロとして上手いので作家視点で見ていないと気付かないかも知れないが、今作はちょっと「読者の興味牽引のための二転三転」をやり過ぎた感は否めない。所謂「意外性のための意外性」に陥ってしまったと換言しても良いだろう。

一度読めば十分。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-31 15:42:46] [修正:2007-12-31 15:42:46] [このレビューのURL]

<1巻のみの評価>

どこでも高評価なので試しに買ってみたが、個人的にはイマイチ。

基本的に前半はギャグやコメディで笑わせて、その後ちょっとした事件や事故といったシリアスなイベントを挟み、それを乗り越えて感動させる、という物語構成。

その構成やキャラ設定、絵柄などは、全体的に丁寧な仕事ではあるものの、良くも悪くも古典的というか、パターン化され過ぎていて、「ここで感動させよう」とか「ここで笑わせよう」という作者の計算が露骨に見えてしまうので、正直読んでいて興ざめしてしまった。その作者の計算のようなものが、本来ほのぼのとした脱力系であるべき今作から感じる「力み」でもあるように思う。無理して感動させようとし過ぎと言うか…。

また、やたらオーバーアクションが多いだけのギャグシーンもはっきり言ってセンスが古く、感覚的にはふた昔前くらいに感じるほど。そのせいで、一見、生き生きしているように見えるキャラも、実際は作者に「動かされている」という印象を受ける。

南の島という舞台自体は良く描けているが、やはりどうしても漫画の舞台としては狭さを感じ、登場人物も少ないので、起こるイベントに「広がり」や「意外性」が出ていない。

今後、どういう風に話を広げていくつもりなのかは分からないが、はっきり言って先が気にならないので、続巻を買おうとは思えなかった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-31 14:11:53] [修正:2007-12-31 14:11:53] [このレビューのURL]

12345
次の10件>>