「blackbird」さんのページ

総レビュー数: 185レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年03月31日

だんだんと20年8月に向かうにつれ、来るべき運命を知る身としては
怖くて読み進みたくないと思うのですが、読むのを止められない。
でも全体的に、あまりに悲壮感や絶望感に包まれすぎないのは、
すずの愛すべきキャラであり、深刻なシーンでもついつい笑いにオチる
家族たちのおかげ。
でも、哀しすぎると、笑いながら涙を流してしまう、
そんな切ない、ちょっと湿った笑いなんですよね。

また、この作者の描く夫婦像って、つかみ処がなく、最初はすず達もそうでした。
特にあの時代に、急遽夫婦になる人たちはこんな感じなのかもなあと。
でも、リンさんや水原さんの話が出てきてから、夫の人間ぽさや、
様々な感情を持て余すすずの複雑な表情が浮き出てきて、
ようやく人らしい感情、夫婦らしさが感じられるようになってきました。
最後にはいい空気が漂うようになりましたね。

映画のように、上から描写した家族の絵。
夫の不在中、留守を守れないと断言するすず。
右手を失い、今までできていた事を思い返すすず。
だんだんすずの存在を認めていった義姉。
すみちゃんの腕のシミ。
戦争が終わって、国の正体が見えてしまった時の悔しさ。
そして、生き残った者が何をするべきなのか見えた時の希望。

書ききれないほど、数々のシーンに涙が止まりませんでした。

呉の話は聞いていたものの、やはり戦争の話となれば原爆と東京大空襲の話。よくここまで詳細な記録を丁寧に集めたなあと感心しました。
欄外に書いてある情報も、今後きちんと読んでいきたいと思います。
また、戦中の野草などの貧しい食事事情、戦意を高揚させるスローガンや、燃料など生活物資の話をうまく取り入れたもの。
・・・名作と思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-06-14 13:33:22] [修正:2011-06-14 13:33:22] [このレビューのURL]

同じアパートに小さい頃から住んでいる幼馴染。
近すぎて好きと言えない、女として見ることができない、
家族のような存在になってしまうんでしょうね。

親を失ったクンちゃんの悲しみを、何とか受け止めてやわらげてあげたいと抱きしめる優しいチャコ。
それを暖かく見守る達ちゃん。
カッコ良すぎです。

達ちゃんが理想の男の子、というのは、くらもちファンの中でもかなり多いのでは。

古い作品ですが、くらもちふさこの絵柄としてはこの作品が一番好きで、何度も読み返します。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-03-31 23:35:03] [修正:2011-05-07 23:13:21] [このレビューのURL]

私の医療系知識のベースは、ブラックジャックから学んだものです。
すごく分かりやすかったですね。

話によっては、人間として恰好いいものから、「え、こんな終わり方!?」という非情なものまで、今改めて読むと驚くものも。
そもそもピノコの存在自体、そしてキリコの存在感がすごいですね。

一方でヒョウタンツギやおむかえでごんすなど、手塚キャラが随所に出てきて楽しませることも忘れなかったのも絶妙なバランス。

これが少年向けの週刊連載だったんですよね。
すごいなあと思います。

願わくは、これ以上下手な映像化はやめてほしい。
あれは白と黒の世界の中で読みたいですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-06 16:53:23] [修正:2011-05-06 16:53:23] [このレビューのURL]

数々の幕末漫画・小説を読んできたにも関わらず、小栗上野介という人が何をしたのか全くと知らなかったが、本作品を読んで、正直恥ずかしくなりましたね。
こんな人物がいたなんて、あまりにも扱われなさすぎでしょう!
・・・と、急に小栗ファンになったりして・・・

竜馬や新撰組と、分かりやすく強いキャラばかりにスポットが当たり、数々の優秀な人物が、幕末の時代に埋もれてきたのは確か。
最近になってようやく、幕臣側にも見直されるべき優秀な人材がいたと取り上げられるようになったが、それにしてもまだまだ埋もれてる感がある。

小栗が最初から最後まで、しっかりと時代を見つめ、世界の中で日本の進むべき姿を考え続け、お役御免を繰り返しても、出来る事を淡々とこなす姿は、この時代にあって、何て冷静なのだろう。
身分も関係なく、経済を重視して、先を見る目は、立場こそ違うが竜馬と重なる自由なもの。

自分がいなくなっても、幕府が無くなっても、やった事は受け継がれると信じて、最後まで自分の運命を粛々と受け止める。

・・・泣けます。男です。

正直、薩摩薩摩ととらわれ過ぎていた西郷がもともと好かなかった私。
かなり悪役に描かれているので、西郷好きには耐えられないと思うが、個人的にはすごく納得。
立ち位置が変わるだけで、こんなにも歴史観が変わるんだなと感じました。

架空の人物は一人のみ。史実に基づき見事に著した作者の力量も素晴らしい。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2011-04-18 17:13:26] [修正:2011-04-18 17:13:26] [このレビューのURL]

10点 SWAN

数あるバレエ漫画の中でも、代表的な名作と言えるでしょう。
ただの熱血スポ根でも、サクセスストーリーでもありません。
バレエとは一体何か、バレエの魂、バレエに魅かれてやまない人達、
表現する感情、クラシックとモダンの表現の違い、作品・役の解釈、
そして、真のパートナーと恋愛・・・と、実に深くバレエ世界の事が掘り下げられている。

その為内容的には若干難解で、バレエが総合芸術であるという事はわかっても、本当にその意味を、この少女漫画の読者が理解できたのか、わかって読んだ人がどれだけいたのかは分からない。
それ程までにバレエと真剣に向かい合った作品。

絵はとにかくきらびやか!
お花が飛んだり、コマぶち抜きでひらひら飛ぶような少女漫画の古典。
青ざめて白目をむくわ、口は大きいわ、下まつ毛がびっちり描きこまれて
怖いわ、日本人離れした金髪巻き毛やストレートのロン毛にすごい長い脚。
しかも、登場人物は大半がティーンエイジャーですよ。
物語が終わった時でも、おそらく20歳位。なんて大人!!
ソ連の人とも言葉はすぐ通じちゃうし、レポートまで書いてしまう。
そんな設定だけど、一度読みだすとSWANワールドにどっぷりです。

前半は半端な教育しか受けていない真澄が、超エリートコースへ抜擢され、
躓きながらも厳しい試練を乗り越えて、才能の片鱗を現していく。

後半はNYに舞台を移し、ルシィとの激しい愛と踊りを追求する心の間に揺れ、そして本当のパートナーを見つけていく姿を描く。

最初から最後まで、ぶつかって傷だらけになりながら試練を乗り越えて
少しずつ成長していく真澄。
いつも泣いて誰かに甘えようとしているようだけど、その芯の強さが周りを魅了してやまない。

病に冒されて真澄の愛を独占しようとしたルフィ。
真澄と深い因縁のある、師弟とも恋愛ともいえない、微妙な関係のセルゲイエフ。
恋愛感情を持ちこまないと決めた故に、なかなか真澄と公私ともにパートナーになれないレオン。
断られてもなお、ずっと真澄を見つめ続ける葵。
どの男性も魅力的です。(もちろん女性陣もすごいんですが)

なんと2011年には、続編としてSWANモスクワ編が開始。
「アグリーダック」の再演からどこまで描かれるのか。レオンや先生との関係もきちんと明かされるのか楽しみなところ。
また、真澄の娘のバレエ生活を描いた「まいあ」もあり、それぞれの時代をきちんと繋いでくれるのか、ファンは心から期待している。
絵柄は、かなり丸くなっているので、雰囲気は柔らかに変化しているが、厳しいバレエの世界を描く姿勢に変わりはないようです。

こんな稚拙なレビューでは、とうてい書ききれない作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-13 23:19:43] [修正:2011-04-13 23:19:43] [このレビューのURL]

70年代の作品というのに色あせない名作。もう30年以上経っているなんて信じられない。

中学、高校、浪人時代、いろいろな悩みにぶつかり、人間関係に悩み、恋に悩む等身大の女の子に、どれだけの子が共感して泣いただろうか。

無口で、でも本質を見抜いてて、やることはちゃんとやる線のかっこ良さ。
くらもちファンの間では、この作品の線と「いろはにこんぺいと」の達と、どっちがかっこいいかって、1,2を争ったものです。
くらもちさんが描く男の子ってなんでこんないい奴が多いんでしょう・・って、女の子の理想だから現実的にはいないんですがね。

でもこの作品の人物で忘れてはいけないのは立川先生です。
嫌われ者だけど、悩む加南に、さりげなく「自信のあるところと無いところがバランスよくある人間がいい」、という「てんびんばかり」の話をしてくれます。多感な頃に、こういう話をしてくれる先生に出会えるなんて幸せなことだと思いますね。

蛇足ですが、登場人物の名前が、都内の駅や電車にまつわるのが面白い。
大体「線」だし。
他にも国分寺やら立川やら荻窪、四谷・・・こういうちょっとしたところもいいですね。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-04-12 18:39:46] [修正:2011-04-12 18:39:46] [このレビューのURL]

「うおォン」「うん、これこれ・・・って、何がこれなんだろう」
「これは子供のころ嫌いだった味だ」

・・・と、心の中のつぶやきがいちいちツボに入る。

渋めのおじさんが一人飯で成功したり失敗したり。
一人で初めての店に入る時のちょっとした勇気や、酒飲みでない人が頼むメニューが難しかったりとか。
そんなシーンが何となくはまってしまう。

谷口ジローの細かい描写がまた、このあるような無いような内容に妙にマッチして、気づくと手にとってしまう、そんな不思議な一冊。

それにしてもこの主人公、よく食べるなあ。
渋いおじさんなのに、いくらなんでも頼みすぎでしょう、あり得ない頼みかたでしょうってとこもおかしい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-10 15:26:41] [修正:2011-04-10 15:26:41] [このレビューのURL]

よつば最強!!

そして、周りの大人も最高!

こんなにゆったりと長く続くのに、ずっとひと夏の話。
それでも引き込まれる。
まだずっとこの夏が続いてほしいなあと思ってしまう。

疲れた時に手に取ってほしい。
丁寧に描きこまれた一コマ一コマに、ほっとします。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-06 23:56:27] [修正:2011-04-06 23:56:27] [このレビューのURL]

バレエの技術的なこと、指導法、勉強との両立、女の世界の嫉妬やねたみ、
そして、エリートとして周りの期待を背負って歩む者の孤独など、
今までのバレエ漫画とは一線を画す作品。

同じ山岸先生の昔のバレエ漫画、「アラベスク」とは、まったく違います。

また子供に対する衝撃的な描写があったり、
いじめなどの、中学生位が当たり前に接する問題を描いたり、
さすが山岸先生、そう突っ込んできますか!と、驚きを隠せませんでした。

日本でバレエのプロを目指すことの現実がぎっしり詰まっていて、
涙なくしては読めません。

特に伝説となっている10巻は、わかっていても何度も泣きます。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-03-31 00:56:37] [修正:2011-04-04 23:48:26] [このレビューのURL]