「shun」さんのページ

総レビュー数: 60レビュー(全て表示) 最終投稿: 2014年07月14日

前作燃えろペンに比べ、だいぶファンタジーフィクションに寄せた内容となった。
特に前半は迷走しているのがよく分かる。迷走していながらも一定の面白さを保っているのは作者の実力。
無駄な大ゴマや見開きがあるが、個人的には面白さの一つとなっている。

屁理屈を熱さで突き通す熱量は、作者もホントにそう思っているんじゃないかと感じさせ、作品とは別の角度で面白い。
しかし月間連載ということも有り、1話で起承転結を繰り返す内容は熱さも伴い胸焼けしてくる。
さすがに食傷気味になってきた所にライバルキャラが出てきて、一気に盛り上がりを見せた。

終盤は連載を集結させるために無理やりまとめた感もあり、少し消化不良ではあったが全体として楽しめた。
しかし、激アツ激辛の珍味なようなもので、好き嫌いは分かれると思う。

画は現在では珍しい入り抜きしっかりした書き筋で、筆や効果を巧みに使っており非常に濃い。
多少古臭さは感じるものの、デフォルメから写実的まで幅広く描写ができて漫画が上手い。
漫画の描き方が理論派で、色々計算して書いてあるのが作中からも画からも読み取れる。

作者の漫画への愛が大いに感じられるこの作品は、漫画読みとして感慨深いものがあった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-29 16:59:31] [修正:2014-08-29 16:59:31] [このレビューのURL]

9点 青い花

単純に同性愛を扱った漫画というには失礼なほど、感情の動きを描写で繊細に表現されており、
ただ単に同性愛を許容し、女性が好きになりました、と言うだけの展開ではなく、
一個人の女性を好きになっていく、という表現が大切に描写されている。

細いのに迷いのない画のタッチが、透明感のある世界観を作り上げている。
必要なものだけを描いた綺麗な世界だが、仰々しい綺麗ではなく、
精神的な観点で、綺麗として受け取れる内容になっている。
漫画の中ながら、演技臭くないという印象。

「好き」と、それとは違う意味の「好き」の間で揺れる少女達の、
見てはいけない世界を覗いているような気がしてくる。

完全に内向的でもなく、一般社会における「そういう人」の位置を隠さず表現し、
「気持ち悪く思わないで」、「怖い」等のネガティブな印象も受け止めながら、
少女の成長とともに、女性が女性に恋をするという感覚を少し味わえる。
性別を超えて、作品世界にのめり込ませる力が素晴らしい。

画も作風とあっていてよいし、お嬢様学校の雰囲気を違和感なく描写できている。
キャラの書き分けがうまく、髪型を変えてもキャラの同一性を保てている。

いろいろなエピソードを織り交ぜているが、長くもなく短くもない調度良くまとめられている。
非常に完成度が高い作品といえる。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-08-25 15:03:13] [修正:2014-08-25 15:03:13] [このレビューのURL]

「この物語はフィクションだが、全ての漫画家がこうであると思って欲しい!」
真実を書いたが、あくまでフィクションと言い切るいわゆる「漫画家漫画」

炎尾燃シリーズのスタートであるこの作品は、作者が当時主張したかった事が表現されており、とても熱い。
その上、熱すぎて面白いというこの作者特有のジャンルを踏襲し、今でも変わらず笑える内容となっている。

正直に言って絵柄や表現は古い。しかし読みにくいことはなく、荒削りな熱血漫画家表現を楽しめる。
何より熱い内容と表現が合っているので良い。

全編にわたって作者の主張が展開されるが説教臭くはなく、作者はこういうつもりで書いている、他の作者もそのハズだ。
と思わせる書き方なので、押し付けがましくはない。作者の偏見は面白いが、こんなのはこの作者だけだと思えるムチャが面白い。
フィクションは交えてるはずだが、ほとんど真実だと信じたくなる、清々しい熱さを感じる。

この作品以降、炎尾燃シリーズは続いていくが、より詳細化、キャラクター化されて延命されていく。
一番温度が高く、濃度が濃いこの作品を読んで、まだこの世界を楽しみたいのであれば、吼えろシリーズに手を出してみては。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-22 14:07:31] [修正:2014-08-22 14:07:31] [このレビューのURL]

作者の自伝というか1980年台描写漫画と言える。
当時の芸大の雰囲気や、当時のオタクの雰囲気を、作者のフィルターを通してみることが出来て面白い。

面白さの一つは、作者の分身である主人公を通してオタクの観点を解説するところにあると思う。
現代のビデオやインターネット等の、情報があふれた時代では考えられない情報への渇望が、
熱すぎるほど伝わってくる。もちろん特殊な観点なのかもしれないが、熱すぎて面白い。

あだち充や高橋留美子や原秀則などの才能を開花させ始めた漫画家たちに、自分がやりたかったことを先取られたと落胆するが、
面白さの分析を交えた賞賛と、第三者の未熟者ならではの見下しの観点により、卑屈ではあるが嫌味に感じない。

「俺だけはわかるが実は作者はこういう事を考えているのだ。しかも楽だ。俺にもできる!」(しかしやらない)
基本的にこの流れで話は進んでいくが、今や様式美となっている漫画のテクニックを、
主人公を通して、それを最初にやった素晴らしさがよく分かる内容になっている。

主人公だけだと、落胆→賞賛→見下し→やらない のループで単調になりがちだが、
主人公と錯綜するGAINAX設立メンバーが時代を掴むまでのストーリーを交えて、
2つのストーリーが同時進行し、単調にならないようになっている。
こちらもまた、キャラクターが生きていて面白い。

なかなか前に進まないもどかしさが大きくなってくるが、展開が遅いというよりも
当時の時間を大切に(濃度を濃く)進めていると感じた。

漫画の方程式を崩し始めたニューウェーブ達を、今も楽しめる良い作品になってきた。
当時をリアルタイムに味わっていない私でも、十分に楽しめた。1980年台以前の生まれの方は、なお一層楽しめるだろう。
吼えろシリーズとは違った面白さがある良作です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-21 10:59:24] [修正:2014-08-21 10:59:24] [このレビューのURL]

無断使用の件で休載となったので、漫画としての評価を今の時点で評価します。

私は格闘ゲームに傾倒したわけではないが、リアルタイムにゲーム隆盛期を味わった世代であり、
ゲームセンターが大いに賑わったあの時代を生きたので、ノスタルジーを覚えるとともに
ゲームが発展していく時のあの熱さを思い出し、胸が暑くなった。
この時代以降に産まれた世代でも、かつてあった時代を利用した群像劇として、十分に楽しめると想像する。

主人公の自問自答はゲームのキャラクターが主人公に話しかけるという演出で、効果的に行われており、
ゲームで育った世代にはたまらない演出。
主人公はヒロインの代弁者でもあり当時の時代の解説役だが、その瞬間だけ自我が現れ、
非常にドラマチックになり、物語を盛り上げている。

画はホラーチックで歪な造形だが、ゲームにのめり込む無邪気さと感じ取れて逆に良い。
なんといっても眼が印象的で、眼で女性のミステリアスさを表現することに成功してると思う。
女性は未知で不可解なものという、男子目線の世界観があの眼力に現れている。

個人的に、
この作品がきっかけで格闘ゲームやアーケード筐体を再評価されることになれば嬉しい限り。

余談だが、
一部無断使用になってしまったが、例の会社の作品の存在なしにあの時代は語れない。
なんとか良い方向に動いて、作品が存続できるようになることを祈る。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-08-15 11:57:37] [修正:2014-08-15 11:57:37] [このレビューのURL]

原作のゲームは未経験だが、世界観は十分に伝わった。
しかしヴァルキュリアなる戦士の力の説得力は、正直あまりなかったと思う。
ただ「スゴイ攻撃力・回復力を持った人種」という漠然としたもので、
破壊描写が限定的であったためか、迫力が足らなかった。
ただ、もとがゲームといえば納得できる。そういう存在がいる世界なのだろう。

ストーリーは終盤の強引さが多少気になるものの、及第点。
最後の幕引きはかなり駆け足感を感じたが、物足りないというよりも、
原作のゲームに誘われているような印象を受けた。
ゲーム一本の内容をギュッとまとめたら、こんなものでしょう。

漫画的評価で言えば、可もなく不可もなくな出来といえる。
この漫画で大まかなストーリーは知ってしまったが、原作も少し気になった。
原作未経験でも理解できないところはなかった。
メディアミックス作品としては優秀なのではないか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-14 11:25:13] [修正:2014-08-14 11:25:13] [このレビューのURL]

大きな展開があるわけでもないのに、不思議と飽きない。
画力が高いわけではないが、表情豊かで趣深い。
一話完結で、最終ページは余韻が残るような書き方をしているが、
伝えたいメーッセージが弱いため、少し効果が薄い。
考えさせられるわけでもなく、ただ静かに終わっている話も多い。
終始落ち着いた作風で、ストーリーは毒にも薬にもならないが、
主人公のゆっくりとした成長をいつまでも見ていたくなる。

とても評価が難しい。物足りないようで、これでちょうど良いとも思える不思議なバランス。
あちらを立ててないのに、こっちは立った。みたいな印象で、
つまらないとは決して言えない。
点数はつけにくいが、漫画的な評価として厳し目に。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-08 14:11:11] [修正:2014-08-08 14:11:11] [このレビューのURL]

オリジナルルールのゲームで物語を構築し、主人公がルールの特性に気付き、
システムの穴を突きクリアするという、多くの漫画で見られる流れを作った作品と言える。

特に素晴らしいのは、心の葛藤をドラマチックに描くことで、動きのないシーンを大胆に見せているところ。
心理戦がより白熱して感じられ、緊迫感が増していく。

ショッキングなフレーズで登場人物の動揺を誘うが、読者もそのフレーズに打ちのめされる。
よくある登場人物に大ゴマ大声で言わせて押し通す展開とは全く違い、淡々と語られる
不思議と胸に突き刺さるワードセンスは抜群。説教臭くも感じなかった。

ゲーム自体は一見大したことないようにも感じるが、そのゲームに奥深さを与えるルールづくりや、
それを突破する展開づくりには圧倒させられた。

画もコマ割りも致命的に苦手だが、自分が描ける範囲内で最大限の努力を感じる。
綺麗ではないが気持ちは入っているため、ストーリーの深刻さで読み進めることができる。

麻雀やカジノを扱うギャンブル漫画はこれまであったが、オリジナルでここまで引きこまれた作品は初めて。
画で敬遠するにはもったいない作品。一つのジャンルを作ったような、ムーブメントを作ったような印象を受けた。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-07 14:01:58] [修正:2014-08-07 14:01:58] [このレビューのURL]

ヤンキー漫画は普通の漫画を見る回路とは違う回路で見なければいけない。

すべて、「ヤンキー漫画の中では」という前文句がつくが、
画は最先端を行っていて、見やすさ迫力では申し分ない。世の不良が憧れるのもわかる。
キャラクターの魅力や世界観も、作者の思うカッコイイ像が一貫しているためブレがない。
話が進むごとに、周りのキャラクターの魅力が出てきて、話に厚みが出てきた。
作者イチオシのバンドのアピールには辟易したが、それも慣れれば暖かい目で見れた。

作中のキャラの強さには裏付けは全くないが、根性と覚悟で全て納得させる
作者の思いの強さを受け入れる事ができれば、素直に楽しめると思う。
ある意味これも雰囲気漫画か、熱さや不良的なカッコよさを感じるには十分な作品。

しかし決して冷静になってはいけない。カッコイイ言葉や人物が一気にスカした言葉や野郎に成り下がる。
どれだけこの世界に入り込めるかの想像力か、素直に受け入れられる空っぽの頭があれば、楽しんで読めるはず。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-06 11:48:13] [修正:2014-08-06 11:48:13] [このレビューのURL]

6点 結界師

全体としてはまとまっているが、設定の面白さに作者の器が応えきれなかった印象。
前半、だんだんと面白くなる展開に読者のハードルが上がったのかもしれない。
主人公の凄さの表現が、「淡々とやっているけど、実はスゴイ」で留まり、
誰が見てももの凄い実力。という表現ができなかったのが残念。
能力の性質上難しかったと思うが、わかりやすい必殺技的なものが欲しかったところ。

キャラクターデザインも地味で、ヒロインも少しは可愛いが、落ち着きすぎて物足りない。
動きや構成は問題ないし、話だけがまとまっていて、あとは画力と迫力さえあれば、というところ。
中盤から終盤にかけて、大きく盛り上げることができれば、名作になりえたかも知れない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-08-06 11:08:50] [修正:2014-08-06 11:08:50] [このレビューのURL]

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