「shun」さんのページ

総レビュー数: 60レビュー(全て表示) 最終投稿: 2014年07月14日

衝撃的な内容であるが、これは明らかに時代と共に楽しむ漫画であり、
連載当時からすると鮮度が落ちている。連載当時の中高生で見た人が一番得をする鮮度重視漫画だと思う。

古典として読む形になったが、当時作者が作り上げたコメディタッチの中に、バイオレンスを大胆に織り交ぜ、
衝撃的な展開と圧倒的なアクションシーンの迫力は、当時の読者を大いに楽しませただろうことは予想がつく。
今見ると古臭さが鼻をついて、読むのが少々辛い部分があるが、退廃的な漫画の元祖として学んだという印象。
現代の漫画がこの漫画を経由して、整理された展開になっているのだと痛感した。

画は作者特有のクセがあり、キャラクターデザインはさすがに古さを感じるも、とても印象的。
暗い世界観を、濃くて重い画と緊張感のある構成で構築できている。

終盤は、漫画界を越えて色々なジャンルの文化界に影響を与えたというのも理解できる衝撃的構成。
作者の狂気と作品の勢い、魂に訴えかけてくる熱いチカラを感じた。
この重厚さで全5巻というまとまりの良さも素晴らしい。できれば連載当時に見てみたかった。
そして、これ以降の作品達の、アイデアの源泉となった事実を大きく評価したい。

しかし、今の私の(できるだけ)フラットな目線で漫画的評価をすると、少し下げざるを得ない。
これは鮮度の落ちた漫画を評価するにおいてしかたのないことで、経典・古典としての評価と相殺した評価をした。
ホラー・バイオレンス・SF漫画の教科書として、漫画ファンなら読むべき漫画の一つであろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-09 11:01:31] [修正:2015-02-09 11:01:31] [このレビューのURL]

これまで給料を主眼として描いた漫画はなかったように思う。
それも左の中継ぎという、先発転向も抑えも考えられる立ち位置と、
成績も微妙な投手というスタートにすることで、読者にとってリアルな金銭的感覚に落とし込めている。
主人公の周りの成功者と脱落者を描くことで、両方のエピソードを面白おかしく紹介するスタイル。
グラウンドに銭は落ちていると言いつつも、成功者の野球選手の周りには銭はグラウンド外でも銭は落ちているし、
脱落者もグラゼニは拾えなくとも生きていくという両面と、まだグラゼニをつかめる主人公という構成は面白い。

画ははっきり入って、うまくはない。しかしこの漫画はスポーツ漫画ではなく、
ビジネス漫画・もしくは野球職業漫画であり、重くもない若干デフォルメされたキャラ達は
特に問題とは思わなかった。
それでもここ一番の表現力のなさは気になるところではあり、成功時のカタルシスと
絶望感の表現をもっと深くできれば、よりドラマチックに起伏あるストーリーにできると思う。
淡々とした作風は良さの一つでもあるが、もっと作品に入り込みたかった。

一端の結末を迎えたが、次章へ続くという終わり方。
正直、結末の移籍球団の決断までの持って行き方は強引であり、移籍した球団内のいざこざを描きたいのは明白。
その決断に至る土台作りにあと一話欲しかったのが本音。それでも続編には期待する。

1軍2軍を行き来する選手たちのストーリーの面白さと、成功者・脱落者のその後を描き、
スポーツとしての面白さではなく、職業としてのスポーツ選手の面白さの表現は、
野球漫画だけでなく、新しいスポーツ漫画の描き方だと評価できる。

ところどころに入る、主人公の高校時代のエピソード回は冗長であり、単行本のおまけくらいの内容。
もっと簡潔にするか、もっと内容を充実させて欲しかった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-09 10:32:51] [修正:2015-02-09 10:32:51] [このレビューのURL]

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ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-09 10:01:59] [修正:2015-02-09 10:01:59] [このレビューのURL]

10点 火の鳥

このシリーズを一つの作品としてカテゴライズして、評価することは難しい。
小学生の頃から何度も読み返してきたが、何度読んでも面白いと感じた。
ギリシャ・ローマ編だけは少女漫画誌に連載され、当時の少女たちに向けたストーリー漫画なので毛色が違うが、
その他の作品は、構成・テーマ・実験的要素が全てが素晴らしい。
もちろん古臭さは否めないが、現代の全ての漫画が手塚氏を経由して今に繋がっていると考えれば、その凄さがわかる。

それぞれの作品を評価するとキリがないので、端的に評価する。
現代の漫画の古典なので、漫画ファンとしては読むべき作品の一つ。
古典でありつつも、面白く奥深い。基本でありつつも応用を目指す向上心の高さが感じられる。

漫画を一大文化として昇華した手塚氏の手腕を、このシリーズを見れば実感できると思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-06 17:38:11] [修正:2015-02-06 17:38:11] [このレビューのURL]

手塚治虫氏のエピソードを集めた短篇集。
幾つかは聞いたことのあるエピソードだったが、当事者を取材して漫画で再現することで
手塚治虫氏の魅力的な人間性をさらに掘り下げることに成功している。
そこまで大きな出来事でなくとも、当事者の目を通した視点と構成の巧さで物語を盛り上げている。

画に関しては、少し古臭い絵柄だが当時を語るに適した古さで味がある。
ギラギラとした漫画家や編集者、漫画創作における狂気と情熱が表現できている。
手塚氏をみんなが思っているイメージと、実際の姿を掛けあわせたような姿で描いており、
手塚ファンとして納得の職人のおっさん感が出ている。
他のキャラも、ちょうどいいデフォルメ具合で漫画に入り込めた。

話の面白さは手塚氏関連のエピソードが面白い事だけが理由ではなく、
作者の着眼点と話の構成、物語の終わらせ方の旨さが際立っていると思う。
半分くらい、手塚氏ではなく取材をした人物を掘り下げる内容になっており、
手塚氏のエピソードだけ見たいという人には、余分に感じるかもしれない。

手塚氏が最も苦労したであろう、ブラックジャック前後以降・アニメ事業に焦点を当てており、
非常に崖っぷち感が出ていて面白かった。
奇人であり漫画の神である手塚氏の人間性を、新たな発見とともに楽しめる名作。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-02-06 13:29:49] [修正:2015-02-06 13:29:49] [このレビューのURL]

女装が気になる男の子と、女性化を拒む女の子が主体の物語。
思春期の多感な時期と、淡い友情や性の目覚め、異性意識など、
端的に言葉で表せない事柄たちを、主人公二人を通して味わった気持ちになれる。
男性の中にある女性への(異性としてではない)あこがれに触れ、共感を覚え。
女性の中にある女性化していく身体への拒否反応を、感覚的にわかった気持ちになった。

画は終始安定しており、作者の持つ個性で十分に世界観は保たれている。
この物語を表現するに当たり、かなり適した絵柄だと感じる。

物語に起伏はあまりなく、登場人物の心理状況を考えなければ、かなり退屈な漫画だと思う。
しかし、無意識下の「単純に異性が好き」という普通の群衆の中でこそ、それ以外の存在の異質さは現れない。
異質な主人公たちを、そういう人達もいて当然じゃないか、と意識誘導されていることに
読んでいる間は気づかなかった。
とくに差別意識があるわけではないが、「何とも思わない」というニュートラルな姿勢を、
実際に身近に「そういう人たち」がいたら演じきれるかどうか・・・演じる?と考えさせられた。

ゲイ・レズといった扱いではなく、心理的に女性寄りという主人公で、
生々しい部分は全くないきれいな世界なので、嫌悪感もなく受け入れることが出きた。
主人公たちが成長していく様を見守れるのも面白さの一つとなっている。

女装男子をいち早く扱った作品として、ブーム(?)の下地にもなったかもしれない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-04 14:03:07] [修正:2015-02-04 14:03:07] [このレビューのURL]

7点 CLAYMORE

最後まで物語の世界観を崩さずに、うまくまとめきれた秀作。
キャラクターの成長と広がりはかなり順調に行ったパターンだと思う。
物語の構成は大変良く、無駄なエピソード自体は少ない。
しかし個人的には長すぎた印象。序盤・中盤・終盤全てで少しずつダレる部分がある。
とくに飽きることはなかったが、戦闘シーンが多すぎる印象は受けた。

画力が素晴らしく、見ているだけでも楽しい。
キャラの描き分けに関しては、白髪白眼の女性という縛りを付けた割には検討していると思う。
覚醒者の見た目は個体によって様々だが、デザインセンスは抜群で、物語を肉付けするに当たり
かなり成功している部類。覚醒者の禍々しさがこの物語の魅力と思っている。
アクションシーンも迫力があり、壮大な戦闘シーンが描けている。

シリアスな展開が多く、もっと緩和された部分があっても良かったように思う。
しかし洗練されていく戦闘シーンと、イメージが爆発していく覚醒者を見る面白さが有り、、
ベルセルクと並ぶファンダジーバトル漫画の秀作として、もっと周知されるべき漫画の一つだと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-02-04 13:29:44] [修正:2015-02-04 13:29:44] [このレビューのURL]