「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

面白かった。1巻完結ということで深い話にはなってないけど、広がりすぎずシンプルにまとまってるところが潔い。

やはりこの作者の持ち味である「異質感」は、歴史の舞台でこそ発揮されると思う。あの一見普通だけど隠しようもない狂気が滲み出る目の描き方を見てると、「ああ、戦争に明け暮れてた時代の人間ってこんな目をしてたんだろうな」というのが伝わってくる。
また連載時期を考えると、この作品からヒストリエへのつながりも見えて興味深い。
あまりに主人公が優等生なのと、小奇麗に終わりすぎてるところに物足りなさも感じた。欲を言えばもう少しこの舞台で話の続きが読みたかったかな。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-08-08 14:02:39] [修正:2007-08-08 14:02:39] [このレビューのURL]

7点 H2

リアルタイムで読んでたはじめてのあだち充作品だったので思い入れはそれなりにある。
野球マンガというよりは恋愛色が強いけど、野球の描写も要所は押さえてある。登場人物がみんなあっさりしすぎてるからあくまでフィクションとしてしか読めなかったけど。

結末がやっぱりどうしても中途半端、というかうまく逃げられた感じがする。後味はすっきりしてるし良い終わり方だとは思うけど、あれだけ引っ張ってきた末に結局うやむやになった気がしてちょっと不満。

あとマンガで泣けたのがこれが初めてだった。普段が軽い雰囲気で進むだけにあのシーンはグッときた。
「タッチ」や「みゆき」とかの古い作品の方が評価が高いみたいだけど、個人的にはこれもけっこう親近感が持てて好きだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-11 23:18:03] [修正:2007-07-11 23:18:03] [このレビューのURL]

高校野球という題材を扱う上で、ありがちな向こう見ず的展開にならないのは良い。
かなり細かく取材されてる印象で、元高校球児の僕から見ても現代の高校野球をよく再現してると思う。

気になるのは戦術や発想の占める割合が大きすぎる点。あまりにも監督や選手の思う通りに事が運びすぎるのがちょっと非現実的。
プロの選手でも100%思い通りのプレーは絶対にできないのに、このマンガの中ではほとんどのプレーが計算どおり、予想通りに動いてしまう。たとえ甲子園で優勝するようなチームでも、本来高校野球はもっともっと不確定要素が多いはず。野球は「確率のスポーツ」なのだから。
公式戦で大した成績も挙げてないのに記者やメーカーがホイホイついてくるのも疑問。

全体的に出来が良いため粗もそれなりに見えるが、ただのスポ根や超人野球とは一味違うリアルな高校野球を描こうとしてるのはかなり好感が持てる。
ありきたりな野球マンガに辟易してる人にオススメ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-07-09 18:56:52] [修正:2007-07-09 18:56:52] [このレビューのURL]

「カイジ」の正統な続編ということで、黙示録のテンションをどこまで引き継げるかに注目してたけど、さすがによくできてる。
カイジをはじめとするダメ人間なりに筋の通ったキャラクターは魅力的。相変わらず心理描写も秀逸で、多少オーバー気味に表現される追い詰められた人間の思考や読み合いの奥の深さは他の追随を許さない。

シリアス一点張りじゃなくて、ところどころギャグ要素が取り入れられてるのも成功だと思う。当人たちはいたって真面目に振る舞ってるのに、どこか滑稽に見えるのはこのマンガならではの笑いの表現。
ただやっぱり黙示録での文字通り「身を削った」緊迫感には少し届かなかったかな、という印象。これは設定を考えると仕方ない気もするし、作者も分かってることだと思う。
もう少しコンパクトにまとまってればなお良かった。良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-09 00:18:00] [修正:2007-07-09 00:18:00] [このレビューのURL]

7点 DEATH NOTE

かつてないほど邪悪な主人公と緻密な構成、そして何よりデスノートの発想が印象的。

散々言われている通り、Lとの一騎討ち的な頭脳戦対決は非常に面白い構図で、「まず行動ありき」な少年漫画の王道パターンを覆す斬新さがあった。Lのキャラクターは何度見ても秀逸。
第二部の出来はとりたてて悪くはないが、やはり第一部のインパクトが大きすぎてどうしても比較して見てしまう。より「行動」を重視させたスピーディーな展開はこれはこれでおもしろいのだが、もはや麻痺してしまった感覚からすれば確かに物足りなさはあった。
わざわざ第一部第二部と分けて描いてなければ、これほど比較されることはなかったかもしれない。結果的に第一部の完成度の高さが作品全体の印象を悪くしてしまったのではないかと思う。良くも悪くも第一部の存在感が全て。

とはいえ、終始ぐいぐいと先を読ませられる説得力とサスペンス感は抜群。戦闘ものでもないのにこのテンションの高さは特筆もの。ドライで繊細な絵柄も雰囲気がよく出てる。
話題性が大きいので評価が難しいが、きちんと内容は伴っている。十分賞賛に値する良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-07 02:04:21] [修正:2007-07-07 02:04:21] [このレビューのURL]

まず僕たちにとって今のところあまり身近な存在ではない古代ヨーロッパを舞台にしたという設定が良い。この作者特有の異質感がうまく表現できる時代だと思う。

話自体はオーソドックスな伝記ものながら見せ方が非常に上手く、はやく先が知りたい衝動に駆られる。言葉にできない心の叫びが絶妙に描かれており、特にエウメネスが叫ぶシーンやカロンが涙する様子には心をゆさぶられる。
また奴隷や戦争が当たり前のように存在していた当時の時代背景を伝える小話もさり気なく散りばめられていて、話の本筋とは別に興味深いものがある。
絵もシャープさを増しており、戦闘描写やリアルな残酷表現も違和感なく見れる。ただしかなり生々しいタッチなので苦手な人は避けた方がいいかも。

まだ3巻ながら、かなりの手ごたえが感じられる。今後の展開に注目。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-07 00:48:38] [修正:2007-07-07 00:48:38] [このレビューのURL]

7点 HELLSING

古本屋で立ち読みしたときはゴチャゴチャした絵が受け入れられなくて放り投げたけど、本腰入れて読んでみるとこれがなかなかおもしろい。
「狂ってる」っていう表現ができるマンガはいろいろあるが、その中でもこれは非現実の世界をとことん突っ走ってる感じの狂いっぷりが好き。グロい表現やかなりヤバい思想も、フィクションの世界だと割り切って読めるから単純にエンターテイメントとして楽しむことができる。
ときどき入るギャグパートも作者の遊び心やいい感じの手抜きが感じられて良い。

また敵味方問わずキャラクターが非常に魅力的。主人公が最初から強いマンガはあまりおもしろくないのが多いけど、これはそもそも設定自体がぶっ飛んでるから不快感はなかった。先が読めるシーンも多いけど、とにかく熱さと勢いで乗り切っている。

しかしこのマンガ、よくイギリス国教会やバチカンから抗議が来ないもんだ…(かなりの言語に翻訳されてるというのに)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-07-02 23:19:46] [修正:2007-07-02 23:19:46] [このレビューのURL]

7点 ONE PIECE

何と言われようが、「10巻までの雰囲気が好きだった」という意見は変えられない。

その後のあまりにも人が死なない理不尽さや短絡的な思考が多すぎるのに嫌気が差して何年か読むのをやめていたが、久しぶりにまとめて読んでみると、やっぱり良いところも数多く持ちあわせているマンガなんだということを再確認。
とことんまでバカに徹するキャラクターになったルフィはこれはこれで魅力的だし、中途半端なキャラだった頃よりはだいぶ良くなった。
世界観や登場人物なんかもどんどん広がってるし、伏線も張られまくりだけど、不思議と消化できるような気がして安心して見てられるのはこの作品独自の魅力。

ただ死を描かないことはどうしても戦闘の緊迫感を損なうし、そもそもの航海の部分もかなりおろそかになっている。その点において「海賊」っぽさは相変わらずちっとも伝わってこなかった。
海洋冒険ファンタジーとして読むには十分に面白い。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 17:14:09] [修正:2007-06-29 17:14:09] [このレビューのURL]

明るめな展開が多くなっているのは個人的には好き。
前作が「現世の汚さ」を描いているなら、今作は「現世の素晴らしさ」を描いた人間賛歌と取ることができる。つくづく人間とは裏表の生き物なんだなぁ。
特に猫の話は思わずウルッとくる。

ただ前作とあわせて5巻、6巻と続くにつれさすがに題材が尽きてきたのか、あまり入り込めないエピソードもちょくちょくあった。
それでも着眼点が良いというか、主題の見つけ方が上手いと思わせられる話が多く、全体的にクオリティーは高い。
誰が読んでも見所を見つけられる作品だと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 19:48:49] [修正:2007-06-27 19:48:49] [このレビューのURL]

死を前提にしているだけあり、全体的に暗い雰囲気が漂う。死んですぐの人間の視点で現世を描くというのは新鮮味があった。

天国に行って転生を待つか、死を受け入れず現世で彷徨い続けるか、人間を一人呪い殺して地獄に行くか。
淡々と死者にこの選択を与えていくだけのストーリーだが、それぞれの選択に深い人間模様が描かれていてマンネリは感じなかった。
幸せを奪われた者、不幸のうちに死を迎えたもの、全くの事故で命を奪われた者、数多くの死が描かれているが、他人を殺めるということがどんなに不幸を与えるのかを教えられる。
どんな人間であれ命というものは重いんだなぁ、と。
子供が多く出てくるので絵が少し柔らかくなった感じがするが、相変わらず上手い。ただ「地雷震」後期の方が鋭さがあって好きだった。

地雷震から続けて読むと作者の社会問題への関心と人間観の変化が感じ取れて面白い。
サクッと読むことも深読みすることもできる良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-27 19:33:27] [修正:2007-06-27 19:33:27] [このレビューのURL]