「霧立」さんのページ

総レビュー数: 33レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年05月13日

ファンタジー入った歌舞伎町みたいな街を舞台に、ケンカや窃盗などを重ねながらも逞しく生きる二人の少年とそれに関わっていくヤクザやおまわり、その他諸々の物語。人と街がテーマになっているので、少なくともどちらかに感じ入ることができるかどうかでこの作品を楽しめるかそうでないかが分かれる気がします。主人公の少年たちに関しては、暴力性の中に光る純粋さという奴は分からなくは無いのですがそうした表現が好きか、そうしたキャラが好きかと問われると個人的には共感出来ないんですよね。舞台となる街もとても立ち寄りたいすら思えないレベルなので物語の中で徐々に失われ、変貌していく風景にも何の感慨も持てない。というわけでどちらとも駄目だった自分としてはこの点数。
ただし、荒んだ舞台でありながらそれをあまり感じさせない、どこか夢想的な情景描写は流石松本大洋と言ったところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-11-05 15:06:49] [修正:2014-11-05 15:06:49] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

力こそ全てのヴァイキングの世界で本当の戦士とは何かを問い、力なき敗者たちの最後の理想郷としての「ヴィンランド」を探し求める物語。
全ての人が不幸にならない為にはどうすればいいのか。一見ありがちなテーマを奪う側(王、ヴァイキング)奪われる側(農民、奴隷)それぞれの視点から丹念に語る事で説得力を生み出し、大河的な話ながら場面場面での先の読めない展開に興奮できる構成力は見事。
何より殺戮と略奪に生きるヴァイキング達が生き生きと描かれているのが良いですね。また、主人公の理想論も多くの痛みと絶望の末に語られる物なのでさほど薄甘さを感じることもありません。
ただ、本当の戦士になったトールズもトルフィンも、数多の命を奪ったのちにようやくその境地へたどり着いたという事実。言い換えれば人々を救い守り育てる力とは、結局のところ同じほどの命を奪わなければ得られないのだという残酷な真実を突きつけているようでもあります。そう考えると救いが無さ過ぎますか。
突き抜けてはいないが全てにおいて本当に高いレベルでまとまっている作品。あとは無事に物語を畳んでくれれば名作確定です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-11-04 16:52:49] [修正:2014-11-04 16:52:49] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

昭和の薫り漂う工場跡地にある少年たちの秘密基地で繰り広げられる殺戮劇。実際のアングラ舞台の演目を漫画化したものだそうです。帝一の國でもそうですが、この作者は昭和的な舞台設定が好きなようですね。
最初は「少年たちの純粋な仲良しクラブがその閉鎖性から徐々に理性のタガが外れ、些細な仲間割れから遂に一線を超えてしまう…」的なお話を想像していたのですが、いざ読んで見ると少年たちは冒頭から人を手にかけており、「最初からイカれた少年たちがその暴力性を仲間に向けて殺しあう内ゲバ物(う〜ん昭和な言葉!)」だったので一線を踏み越える背徳感や罪悪感はさほど無く、淡々と崩壊していく様を眺めるようでした。
(前日譚的な外伝も有るようですが、それはあくまで別作品なのでここでは除外)
物語は最後に種明かし的なものもあり、一気に読めてしまう迫力もあるので決して悪い作品とは思いません。しかしこの手の話はある程度レビューに頼らないと手にする機会が非常に少なく、かといってレビューを読んで過度な期待をもって臨むとやや肩透かしを食ってしまう、難しい作品だなと感じました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-11-01 13:59:15] [修正:2014-11-01 13:59:15] [このレビューのURL]

オシャレや恋愛、結婚に全く関心がないけどいざ身なりを整えればスレンダー美女に大変身(勿論体型はバッチリキープ。ほうれい線?何それ)なアラフォー女が、元同級生で元ブサメンの現イケメン精神科医妻帯者からストーカーされた挙句にセックスしまくるというまあそんなお話。
そもそもこの手の作品は読者対象が明確な訳で、ハートウォーミング系かと思い絵柄とタイトルだけで手を出した自分の間抜けさ加減にこの点数。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-10-29 13:49:42] [修正:2014-10-29 13:49:42] [このレビューのURL]

生徒会会長就任を人生の究極目標におく主人公が権謀術数を尽くして野望を掴もうともがき足掻く物語。学園内の政治闘争を本人たちは大真面目に、しかし読者視点ではコミカルに描くこのセンスが軽妙で面白い。人を選ぶテンションかも知れませんが、話術や洞察力、胆力といった人の持ち得る武器だけを駆使して闘争を繰り広げる姿はある意味新鮮。能力バトルなどに食傷気味の方にオススメしたい作品です。※褒めてる癖に6点なのは、点数基準に準拠している為で、素直に楽しめる良作漫画。この表現がピッタリくる漫画です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-10-29 13:30:16] [修正:2014-10-29 13:30:16] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

序盤は面白かったのだが、巻数を重ねる毎に気になる点が目立ち始めた。
くどいくらい詰め込んだ人間関係、流れ作業のようにカップリングされていくキャラクター達、財閥だヤクザだ令嬢だ使用人だのの現実離れしたキャラ設定、引きこもり解消の御都合主義…
随所に熱くなれる台詞や展開もある。それはいい。ただそれが共感として心に響く為にはやはりある程度のリアリティも伴う必要があることを知って欲しいのだが。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-09-24 10:30:23] [修正:2014-09-24 10:30:23] [このレビューのURL]

ウンチクとしては面白い題材だし、勉強になる部分も沢山ある。
しかし、それらの多くは教授の長セリフで済まされており、
実際のストーリーにうまく組み込めていない。それが
読者に「読解」を強いる形となっており、敬遠されることも
あるのだろう。テーマは面白いだけにもったいないと思う。

また、人間のキャラクターが掘り下げられていないため、
彼らの葛藤や導き出す結論に感慨がわかない(割とどうでもいい)。
正直、菌たちのキャラや小話の方がよっぽど面白いので、この漫画が
作者のいう「ユルユルダラダラ」なものであるのなら、
むしろ中途半端な人間ドラマはいらないのです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-23 22:30:27] [修正:2013-02-23 22:30:27] [このレビューのURL]

第二次世界大戦前後を舞台とした
ヒトラーの出生の秘密をめぐる「アドルフ」の名を持つ
男たちの運命を描く作品。

手塚治虫らしい、正義の客観視をテーマにしつつ
ストーリーも読みごたえがあり
伏線の回収も見事。
物語としての完成度は非常に高い。
とりあえず盛り上げることだけに腐心して、一つの作品として
まとめ上げることを軽視しがちな今の漫画家は手塚のこういう
ところを見習ってほしい。

欲を言えば
最後の中東編をもう少し掘り下げて欲しかった、というより
カミルの暗黒面を詳らかにして欲しかった。
カウフマンが人生を通じてこの作品のテーマを存分に体現したのに
対し、カミルはどうしても「いい人」だけの役回りで
キャラクターを活かしきれなかったのがもったいなかった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-05-25 02:08:52] [修正:2012-05-25 02:08:52] [このレビューのURL]

サーカス団の日常が中心のサーカス編と
自動人形との戦いを描くからくり編。
それぞれに散りばめられた伏線をきっちり回収しつつ
一つの流れにまとめていくという構想はとても面白く、
また圧倒的なキャラクターの存在感と描写力で
見る者を引き付けてやまない、すばらしい作品でした。
…途中までは。

多くのレビューが黒賀村編からのダレを
指摘しています。自分ももちろん同感なのですが
個人的に一番がっかりしたのは最後を結局
「バトル」で決着させたことです。

二つの話がシンクロする前までは、からくり編の
悲劇を最終的に救うのはサーカス編だと思っていました。
力ずくのバトルで決着をみるのではなく、
サーカスを通じた幾多のエピソードを経て、
エレオノールの見せる笑顔がきっとすべてを氷解させると。
「世界を救うのなんて、案外こんなもの」なんて
仕掛けをこの作者ならきっと見せてくれたはずと今でも
信じています。

結局は両編のキャラクターを巻き込んでバトルに突入した
訳ですが、どうみても戦闘スペックに差がありすぎる
サーカス団連中が無理くりバトルをしている展開と、
そもそも戦闘的カタルシスはサハラ編でピークに
達していたことも相まって、後半の崩れ具合は連載時見ていて
とても辛いものがありました。

それでも前半部だけでも読む価値はありますので、読んでほしい
作品ではあります。
パウルマン&アンゼルムス戦は正直泣きました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-13 15:54:06] [修正:2010-11-13 15:54:06] [このレビューのURL]

作者がいい意味で肩の力を抜いて
好き勝手できている作品。

90年代のキャンパスライフをベースに
恋愛・痴情・復讐(笑)などをちりばめた
テンポのよいストーリーで大いに笑い、
ちょっぴりの感動も心得ている。

サブキャラたちが面白すぎるので
主人公が埋没しているのが少し残念ですが
そんな所も気にならない、とにかく楽しい作品です。

同作者の「無限の住人」を読んでも読んでいなくても
楽しめます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-13 00:01:24] [修正:2010-11-13 00:01:24] [このレビューのURL]