「霧立」さんのページ

総レビュー数: 33レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年05月13日

結局のところ蝕までが「面白すぎた」のがこの漫画の不幸だったのかもしれない。蝕までの面白さの本質はガッツとグリフィスの関係が織りなす夢と絶望、友情と裏切り、人生とは何かという人が一度は思い悩む「人間の内面」にこそあったのだが、盛り上がり過ぎてしまった作品は新たな面白さを求めて「一大ファンタジー叙事詩」を目指してしまった。
結果としてその後の話は世界観も戦闘もスケールアップしてはいるが、作品の生み出す熱量は比較にならない。そして壮大になりすぎた展開は作者の筆の歩みを遅めるとともに、「おそらく完結しないだろう」という緩やかな絶望を読者に与えている。
ゴットハンド達と彼らが創造する世界全てに答えを出す事に囚われず、ガッツとグリフィスだけの決着を描ききっていればあるいは…などと詮無い事を考えてしまうほどに勿体無い作品になってしまった。名作として完結させるというのはこうも難しいのか。とはいえ蝕までで十二分に作品の価値はあるのでこの点数。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-05-23 18:46:02] [修正:2015-05-23 18:46:02] [このレビューのURL]

まあベタな展開ではあるんです。
シングルファーザーの教師が教え子の女子高生と一緒に料理を作って食べる…文字にしただけで「ああ…」ってなります。
そんな中でも自分がこの作品を許容できるのは娘のつむぎの存在です。この子がいる限りは先生と小鳥が一線を越えることは無いと思うので、男にとっていかにも都合の良い「小鳥の淡い恋心」もある程度微笑ましく見られる訳です。そうした三者のバランスの良さがこの漫画の肝のような気がします。
という訳で今後先生と小鳥がくっついたら「そういうの求めて無いから」と評価マイナス2にします(笑
最後になりましたがストーリーは毎回テーマとなる料理を作って食べるだけのもの。強い感動はありませんがどれも暖かいお話です。現実は女子高生に声かけられる妄想する前に料理くらいしときましょうってなもんですが。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-05-19 17:00:13] [修正:2015-05-19 17:00:13] [このレビューのURL]

6点 聲の形

言いたい事はたくさんある。
小学生男子のヒエラルキーは一にも二にも「腕力」に依存する。よって主人公のような「喧嘩のできる男子」をハブる「勇気」などその他大勢のクラスメートは持ち合わせていないし、男子も死を決意する程の根暗に堕ちる事もない。現実はさしたる報いも受けず、案外快活に育って社会的成功まで収めたりしてしまうのだ。
ヒロインが取って付けたような儚げな美少女である事も頂けない。贖罪がテーマの一つなのだから会う事自体がボーナスステージのような女の子では意味がないだろう。はっきり言うがブサイクだからこそ胸を打つシチュエーションというものもこの世にはあるのだ。
ただ、それでもこうした障がい者のいじめといったテーマを週刊少年雑誌というステージで連載し、エンターテインメントとして商業ベースでの成功(これが大事)にまで持っていった作者と編集者達には賛辞を贈りたい。少年漫画にはもっと色々な作品があっていい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-03-16 13:49:50] [修正:2015-03-16 13:49:50] [このレビューのURL]

正直、近年これほど先が気になる作品には出会ったことがありません。
あえて詳細な紹介は避けますが、作品としては、時が巻き戻る設定と過去現在の事件が複雑に絡み合って進むSF的要素を含んだサスペンスものです。
タイムリープものというとどこか既視感を覚えてしまいますが、物語としては本格派の部類です。何よりこの漫画の最大の素晴らしさは、伏線のしたたかな張り方や先の読めないハラハラする展開といった「ストーリーテリング」と、登場人物たちの悩み・苦しみ・喜びといった心の機微を読者の心に刻み込む「熱量」を見事に両立させている所です。やや大袈裟かも知れませんが、まるで児童文学と推理小説が融合したような感覚を味わうことができます。
殺し合いだのサバイバルだの戦争だのと極限状態に無理やり持ってきてハラハラさせ、その死をもって安易に泣かせようとする作品が多い中、この作品の無理のなさ、無駄のなさは特筆に値します。
この手の作品は風呂敷の畳み方が大事なので最終的な評価はまだ早いのかも知れません。完結して評価が定まってから読む読まないの選択をするのもありでしょう。しかしそれでも自分はこの作品を「今」読むことを勧めます。「先が気になるもどかしさ」というものは連載中の今しか味わえませんから。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-01-23 13:51:16] [修正:2015-01-23 13:51:16] [このレビューのURL]

作者は以前、「何を描いてもジョジョになってしまう」と言ったらしいが、この作品を読む限りジョジョというより「スタンドバトルしか描けなくなっている」と言った方が正解ではないだろうか。
未知の能力が襲ってくる→訳もわからず逃げたり防御したりで恐怖を印象づける→攻撃の特性などからミステリーの謎解き的に攻略の手がかりを掴む→華麗に逆転勝利
こういったフォーマットはそれは盛り上がる事は間違いないし能力のパターンさえ変えれば延々と物語が作れる訳だが、現状は能力バトルのパイオニアである作者が自らのスタイルに甘んじてしまっているようにしか見えない。
この作品に関して言えば謎や設定がまずありきで人物はそれに沿って動いている感じがしてどうにも生き生きとしていない、要はキャラ立ちが弱すぎる。肝心の謎もそれ程強烈な関心を呼ぶものでは無いので、8巻までいってもただ何となく話が進んでいる、起伏のないまま「読まされている」感覚に陥ってしまう。今後に期待したいが正直期待薄。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-01-08 08:18:59] [修正:2015-01-08 08:18:59] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

序盤は面白かったのだが、巻数を重ねる毎に気になる点が目立ち始めた。
くどいくらい詰め込んだ人間関係、流れ作業のようにカップリングされていくキャラクター達、財閥だヤクザだ令嬢だ使用人だのの現実離れしたキャラ設定、引きこもり解消の御都合主義…
随所に熱くなれる台詞や展開もある。それはいい。ただそれが共感として心に響く為にはやはりある程度のリアリティも伴う必要があることを知って欲しいのだが。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-09-24 10:30:23] [修正:2014-09-24 10:30:23] [このレビューのURL]

サーカス団の日常が中心のサーカス編と
自動人形との戦いを描くからくり編。
それぞれに散りばめられた伏線をきっちり回収しつつ
一つの流れにまとめていくという構想はとても面白く、
また圧倒的なキャラクターの存在感と描写力で
見る者を引き付けてやまない、すばらしい作品でした。
…途中までは。

多くのレビューが黒賀村編からのダレを
指摘しています。自分ももちろん同感なのですが
個人的に一番がっかりしたのは最後を結局
「バトル」で決着させたことです。

二つの話がシンクロする前までは、からくり編の
悲劇を最終的に救うのはサーカス編だと思っていました。
力ずくのバトルで決着をみるのではなく、
サーカスを通じた幾多のエピソードを経て、
エレオノールの見せる笑顔がきっとすべてを氷解させると。
「世界を救うのなんて、案外こんなもの」なんて
仕掛けをこの作者ならきっと見せてくれたはずと今でも
信じています。

結局は両編のキャラクターを巻き込んでバトルに突入した
訳ですが、どうみても戦闘スペックに差がありすぎる
サーカス団連中が無理くりバトルをしている展開と、
そもそも戦闘的カタルシスはサハラ編でピークに
達していたことも相まって、後半の崩れ具合は連載時見ていて
とても辛いものがありました。

それでも前半部だけでも読む価値はありますので、読んでほしい
作品ではあります。
パウルマン&アンゼルムス戦は正直泣きました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-13 15:54:06] [修正:2010-11-13 15:54:06] [このレビューのURL]

1点 MONSTER

かなりがっかりした作品。
導入部はとても面白く、深いテーマ性を
感じさせる展開に見え、期待も大きかったのだが
見事に裏切られたのでこの点数です。

もっとも残念だったのは、ヨハンが「描かれなかった」こと。
彼を通じて、作品中にも出た言葉「絶対悪」を
いかに表現し、読者に問うのか。人が狂い、狂わされる道程、
そこに至る絶望や苦悩をどれだけ説得力を持って紐解いてくれるのかを
期待していたのだが、全く読み手に伝わってこず、
彼自身から何の恐怖も悲しみも見いだせない、
なんとも薄っぺらなキャラクターになってしまった。
本人の思考の遷移が納得のいう形で読者に提示
出来なかったのも致命的。
結局彼は何がしたかったのか。
思わせぶりに色々なことに手を出した挙句、
妹に勘違いを諭されて破滅の道を歩むとか、
小物感が満載です。

とはいえ、見方を変えれば
この物語はヨハンを中心とした一連の流れに巻き込まれた、
テンマを中心とした多くのサブキャラクター達の心の傷、
葛藤を描き、また前へと踏み出していく心の勇気の物語。
ヨハンはその人々の心に影を落とす亡霊のようなもの。
そういう風に割り切れば展開もまとまっていますし
粗末にされているキャラクターもなく、物語として完結して
いるといえます。
つまるところこの作品に何を求めるかで評価が変わってくる
作品だと思います。
そうした意味ではこの点数は一面的かもしれません。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-25 12:54:58] [修正:2010-06-25 12:54:58] [このレビューのURL]

主人公のコータローは狂言回し的な立ち位置で、内容は柔道(武道)にそれぞれの想いを持つ者たちの群像劇。醍醐や美杉、鮫島父など一件性悪な敵役にしか過ぎない風に見えるキャラクターにもそれぞれの矜持やバックボーンを与える事で基本的捨てキャラがいない作りになっており、伏線の貼り方も含めたストーリー構成も見事。
武道に関する深い問いかけも作品の根底に流れており、非常に高いレベルでまとまった作品。
決して品が良いとは言えず、時としてテンポを悪くするギャグが不快な人もいると思うが、それを差し引いても読む価値のある作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-05-05 11:01:27] [修正:2021-05-05 11:01:27] [このレビューのURL]

ミステリーの合間合間に日常に対する疑問を主人公がぶち込んでくるという構成。勿論人死には多いが絵柄のせいか比較的淡々と話は進む。主人公の主義主張が基本的に「欧米」連呼の出羽守なので、そこに共感できるかどうかで評価が分かれる作品。
長編と短編とがあるが、長編はやや設定が浮世離れのものが多く、短編の話の方が切れ味が良い印象。
あと全編を通じて、犯罪者の背後の存在(ラスボス?)を匂わせているが、こういうのは期待値高まる分ガックリ感も高いので、期待しすぎないのが吉。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-03-17 05:19:00] [修正:2021-03-17 05:19:00] [このレビューのURL]

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