「霧立」さんのページ

総レビュー数: 33レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年05月13日

女性専用アパートに宇宙人が居候する話なのに9割方宇宙人が関係ないという斬新な漫画。じゃあその9割は何かと言うとしょうもない下ネタや下世話なガールズトーク。でもそれが実に面白い。
外ではすましていても家では…なんて女性は漫画でも別に珍しくないんだけど、この作品は作者のタッチもあいまって女性たちが良い意味で生々しい。8ページのショートストーリーなのに捨て回があまりない。そして基本女子が部屋で駄弁るだけなのでセリフばっかり。でもそれもいい。
休日にゴロゴロしながら読むのがぴったりの緩さですが男性でも十分楽しめる作品なのでオススメです。友人の形容するのに「量産型ゆるふわパーマ」なんて出てきたら興味湧きません?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-05-18 08:39:06] [修正:2015-05-18 08:39:06] [このレビューのURL]

4点 87CLOCKERS

こうした「オタクな業界作品」では鉄板とも言える「マニアな美人に惹かれて気がついたらのめり込み」というベタベタなファンタジー展開をのだめの作者がやるとは思わなかった。
マイナー故に知られざるその分野の魅力を伝えるのがこの手の作品のテーマのはずなのに、「女でもぶら下げねーとこんな世界片足どころか足指一本突っ込まねーよ」と自ら白旗を揚げているようで、安易な話作りをしているなと残念な気持ちになってしまう。
オーバークロックにしても自作全盛期の2000年前後ならともかく、今となっては現実的な価値が見出せない中で「世界が変わる」「世界平和のため」という作中のセリフをどこまで読者に実感させられるか。今の所「マニアの自己満足」の域を出ていないのだが風呂敷を畳まれるまで我慢できる自信が正直ない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-05-16 10:04:26] [修正:2015-05-16 10:04:26] [このレビューのURL]

6点 聲の形

言いたい事はたくさんある。
小学生男子のヒエラルキーは一にも二にも「腕力」に依存する。よって主人公のような「喧嘩のできる男子」をハブる「勇気」などその他大勢のクラスメートは持ち合わせていないし、男子も死を決意する程の根暗に堕ちる事もない。現実はさしたる報いも受けず、案外快活に育って社会的成功まで収めたりしてしまうのだ。
ヒロインが取って付けたような儚げな美少女である事も頂けない。贖罪がテーマの一つなのだから会う事自体がボーナスステージのような女の子では意味がないだろう。はっきり言うがブサイクだからこそ胸を打つシチュエーションというものもこの世にはあるのだ。
ただ、それでもこうした障がい者のいじめといったテーマを週刊少年雑誌というステージで連載し、エンターテインメントとして商業ベースでの成功(これが大事)にまで持っていった作者と編集者達には賛辞を贈りたい。少年漫画にはもっと色々な作品があっていい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-03-16 13:49:50] [修正:2015-03-16 13:49:50] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

森永あいの作品ということで楽しく笑えるかと思ったがちょっと風合いが違った。
想い人の異性と身体が入れ替わる話なのだが肝心の想い人とは一向に恋愛が進展せず、お互い異性の体のまま自分達の親友(つまり同性)と関係を深めていってしまう。
つまり見かけ上は男女のつきあいでも本質的にはBLであり、それが許容できる読者でないと基本受け付けない作品なのだ(当然他方では百合も発生するがそちらはヒロインが元来粗暴なので全然期待できない)。
森永あいの笑いは、基本的に無垢な善人が不運や人格破綻者に翻弄される悲劇を同情しつつ笑い飛ばす事にある。しかしこの作品では主人公の想いがブレる事が原因で話が拗れるため正直あまり同情できない。それはすなわち笑えないという事になるのだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-23 15:36:31] [修正:2015-02-23 15:36:31] [このレビューのURL]

古代ローマと現代日本を温泉というキーワードで繋げた発想は面白いし、こうした作品を描くには相応の造詣というか作者自身のバックボーンが必要なのでそこは素直に感服します。
ただ全巻読み終えて感じるのは何か「足りない」という事。印象に残るエピソードも、もう一度読みたいシーンも、思い出し笑いしてしまうようなギャグも、おっと思わせるような台詞も、あーこいつ好きだわと思えるようなキャラクターも見つからない。じゃあ破滅的につまらなかったのかと言えばそうでも無い。
ただ間違いないことはもう一度作品を読み直そうという気にはならないということ。厳しい言い方かも知れないが作者の「熱量」をあまり感じられない作品に思えた。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-05 22:01:18] [修正:2015-02-05 22:01:18] [このレビューのURL]

正直、近年これほど先が気になる作品には出会ったことがありません。
あえて詳細な紹介は避けますが、作品としては、時が巻き戻る設定と過去現在の事件が複雑に絡み合って進むSF的要素を含んだサスペンスものです。
タイムリープものというとどこか既視感を覚えてしまいますが、物語としては本格派の部類です。何よりこの漫画の最大の素晴らしさは、伏線のしたたかな張り方や先の読めないハラハラする展開といった「ストーリーテリング」と、登場人物たちの悩み・苦しみ・喜びといった心の機微を読者の心に刻み込む「熱量」を見事に両立させている所です。やや大袈裟かも知れませんが、まるで児童文学と推理小説が融合したような感覚を味わうことができます。
殺し合いだのサバイバルだの戦争だのと極限状態に無理やり持ってきてハラハラさせ、その死をもって安易に泣かせようとする作品が多い中、この作品の無理のなさ、無駄のなさは特筆に値します。
この手の作品は風呂敷の畳み方が大事なので最終的な評価はまだ早いのかも知れません。完結して評価が定まってから読む読まないの選択をするのもありでしょう。しかしそれでも自分はこの作品を「今」読むことを勧めます。「先が気になるもどかしさ」というものは連載中の今しか味わえませんから。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-01-23 13:51:16] [修正:2015-01-23 13:51:16] [このレビューのURL]

2点 ブッダ

[ネタバレあり]

本編と同様、鹿に例えてみるが、生き物の世界に「無駄な殺生」などありはしない。
人が戯れに鹿を射ったとて、その亡骸は飢えたハゲワシやカラス、ハエや蟻たちの命を繋ぐかもしれない。
打ち捨てられた皮や骨はやがて分解され、大地の恵みとなるだろう。
その鹿が死んだことで食べられずに済んだ植物は新たな命を繋ぐ事ができよう。その植物がまた別の鹿や馬、昆虫の命を養うかもしれない。
そもそも捕食以外の殺生を行うのは人に限った話ではないし、食べるためでなくともその殺生は必ず他の命に影響を及ぼし、結果として他の生物の利となったり不利となったりする。ただそれだけの話であり、そこに善悪という判断基準が介入する余地はない。
また、生物が自らだけでなく、他の生物の事を考えるべきと言うのも解らない。全ての生物は自分達が生き残る事のみを最大の目標として他の生物と争い、捕食し、利用し、共生して来たからこそ進化や多様性を育んできたと言うのに。全ての生物が真摯な「生きるという欲望」のぶつかり合いしてきたからこそ、この星の生命の豊穣を生み出してきたと言うのに。各々の生き物が他者の生存や繁栄に想いをめぐらせたのなら、そこにあるのは安定という名の停滞であり、続く未来は進化が止まった末の破滅でしかない。

この作品は人間世界でしかありえない善悪という概念を生物全体に当てはめて物語を構築している。それが仏教の本質かどうかは分からないが、ともあれそれ故に私はこの作品を支持しない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-01-09 15:53:34] [修正:2015-01-09 15:53:34] [このレビューのURL]

7点

[ネタバレあり]

女の美醜というありふれながらも扱いの難しいテーマに正面から切り込まんとする作品。
主人公は絶望的な醜い容姿でありながらも演劇に魅せられ女優を目指す。母から託されたあるものを使って…
醜女であるが故に、自分ではない誰かになりたいという強烈な欲求が芽生え、それを具現化する手段として演劇の才能を極限まで磨き上げる主人公。そして「誰かになる」という形容が比喩に留まらない禁忌的行為…主人公の執念と、自らの醜さ(外見だけとは限らない)と罪深さに対する葛藤・絶望は非常によく表現されて引きつけるものがある。
物語としてはこれからが佳境のようなので、当初のこのテンションをそのまま維持できるか、きちんと風呂敷を畳めるかなどまだ未確定要素はあるし、今やタレント芸人アイドルが跋扈する演劇の世界に「舞台女優」として名を成すことの違和感(やや古臭さ)もある。それでもここまでの展開は十分読ませるので期待値を込めてこの評価を。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-01-08 23:03:00] [修正:2015-01-08 23:03:00] [このレビューのURL]

作者は以前、「何を描いてもジョジョになってしまう」と言ったらしいが、この作品を読む限りジョジョというより「スタンドバトルしか描けなくなっている」と言った方が正解ではないだろうか。
未知の能力が襲ってくる→訳もわからず逃げたり防御したりで恐怖を印象づける→攻撃の特性などからミステリーの謎解き的に攻略の手がかりを掴む→華麗に逆転勝利
こういったフォーマットはそれは盛り上がる事は間違いないし能力のパターンさえ変えれば延々と物語が作れる訳だが、現状は能力バトルのパイオニアである作者が自らのスタイルに甘んじてしまっているようにしか見えない。
この作品に関して言えば謎や設定がまずありきで人物はそれに沿って動いている感じがしてどうにも生き生きとしていない、要はキャラ立ちが弱すぎる。肝心の謎もそれ程強烈な関心を呼ぶものでは無いので、8巻までいってもただ何となく話が進んでいる、起伏のないまま「読まされている」感覚に陥ってしまう。今後に期待したいが正直期待薄。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-01-08 08:18:59] [修正:2015-01-08 08:18:59] [このレビューのURL]

もやしもんの作者の描く平和を愛しその為には手段を選ばない処女で少女な魔女の物語。
どんなに不条理な行いがあっても人の営みに一切干渉せずに結果平等を図る神様と、不平等上等で目に映る戦争を片っ端から止めていく魔女とのイデオロギー対決といった所でしょうか。
正直テーマは青臭いしキャラのやり取りも説教臭い。というのも彼等が各々の主義主張を獲得する経緯(痛みと言うべきか)の描写が十分でなく、結論ありきのディベートになっているため、只の言葉遊びの応酬に写ってしまうのです。
また、こうした歴史物を描く際にありがちなのですが、どうしても書き手(読み手も)が現代の感性で当時の人のありようを語ってしまい、その「基準」で戦争=悪、平和=善と単純に切り分けられてしまっているのも少々残念なところ。
画力は高いものがあるし(人物描き分けは下手だけど)話としては三巻でさっくり纏まっていますしつまらなくは無いのですが、人に勧めるにはやや物足りないというところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-11-27 17:59:51] [修正:2014-11-27 17:59:51] [このレビューのURL]