「blackbird」さんのページ

総レビュー数: 185レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年03月31日

不思議な縁で一緒に暮らすことになった3人姉妹プラス異母妹。
それぞれの個性が楽しく、喧嘩もしながらもなんだかんだと、仲良く暮らしている光景がほほえましい。

ただのほのぼのという訳ではなく、すずのチームメイトの怪我や挫折、失恋、前の家族への複雑な思いなど、苦い思いも織り込まれいている。小さいころから色々な思いを心に刻んできた、すずの大人っぽい考え方や冷静な分析が、時折ちくんと胸に刺さり、ようやく表面に出てきた中学生らしい無邪気さがアンバランスだけど、嬉しく感じる。

「嫌い」は「好き」より早く伝わるのかも・・とか、
(好きだった子に)これからも会うたびに心がざわつくのだろうとか、
多感な頃に、一つ一つ気づいていくんですよね。
そういう思いが丁寧に、でも程よい笑いも織り交ぜられて綴られている作品。

鎌倉や江の島など、お馴染みの土地の風景があちこちに描かれ、
それが物語とマッチしているのがくすぐったいようであり、嬉しくもある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-11 22:53:11] [修正:2011-05-11 22:53:11] [このレビューのURL]

ヒミコ(この物語では日女子と書かれます)が、かなり凶悪に書かれている珍しい作品。

「聞こえさま」という特殊な能力があるか無いか・・・これがこの物語の中心にあります。
日女子が、日女を貶めてまでもしがみついたその地位。
時折この能力の片鱗をのぞかせる壱与は、あくまでこの能力が「ない」ことを主張し、最後には島へ帰る事を望みます。そして最後にはクロヲトコであるシビとの人生を選ぶ結末が、結構喜ばしかったです。
人の死を扱う職業を、尊いものだと断言した壱与、辛い人生の中から真実をしっかり見つめる目を養ったんですね。

欲を言えば、シビ、もう少し恰好良く描いてほしかったなあ。そんな美男である必要はないんだけど。かなり男っぽくていい奴なんですが。
(余談ですがクチヒコが石田衣良とクリソツなのは有名な話)

面白かったのは日女子の歯と老化の話。
胎児の・・・というのはぞっとしますが・・・まあ、分からないでもない話です。

相変わらず夢に出てきた残酷な場面や、日女子の最期などはかなりの恐怖感を持って描かれます。こういうところは本当にうまいです。
また、この資料のない時代の事を、見てきたかのように描ききる作者の力量は、いつも感嘆するしかありません。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-05-02 20:10:50] [修正:2011-05-02 20:10:50] [このレビューのURL]

8点 ヴィリ

普通バレエ漫画というと、少女が主役。
でもこの作品は違い、40代ですでに母親でもある女性が主役。
つまり、バレエ漫画というよりも(いや、バレエ漫画なんですが)、プロとして若者に抜かれていく、ぎりぎりの年齢の女性の心情を描いた、ちょっとつらい作品。

ライバルはバレエ団を出て行った真実であり、自分の娘。
海外から戻ってどんどん実力をつけていく真実。
そして、やる気がないだけと思っていた娘の舞に至っては、なんと(なぜか)自分が「プロポーズされる」と信じ切っていたパトロンの高遠まで奪われてしまう。この話と、バレエの名作「ジゼル」の「愛=許す」ことというテーマを、うまく絡めている。

しかも後半からは霊まで出て、お得意のぞっとする描写が続くが、最後の最後は何とか希望の持てるエンディングになっていて、よくぞ一巻でまとめたなと感心。

さすが山岸先生。ちょっと違う角度からのバレエ漫画でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-27 22:25:16] [修正:2011-04-27 22:25:16] [このレビューのURL]

最初はただの散歩ものだと思ったが、歩数をきっちり数えて計測している風なところからだんだん「あれ?」と思うように。

程よく「あ、あの辺か」とか美味しいものを食べていたりと、ストーリー以外の光景も楽しめる。
江戸の人は、色々と文化や季節のイベントを楽しんでいたんだなあと、その豊かさに改めて驚かされた。

話の展開もとてもよかった。読後もすっきり、涼やかな風が吹くよう。一巻完結でちょうどいい作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-27 13:42:57] [修正:2011-04-27 13:42:57] [このレビューのURL]

いやあ、この点数は「ザ・少女マンガ」の王道ということで。
設定もすごいわ、ジェットコースター的展開、何でもありです。
名作というか・・・色々な意味ですごい漫画です。

親に捨てられ、知らぬ間に恋したのは実は父親だったり、怪我でモデルはあきらめるわ、謎の金持ちが出現して彼女をデザイナーに仕立てるとか、婚約直後に判明した事実とか。もう、出るわ出るわ・・・衝撃的事実のオンパレードです。

設定もすごいけど、やはりキャラや70年代的背景がこれまたすごい。

「コンツェルン」の跡継ぎに英才教育を施された朱鷺は、なんと18歳。
それなのにレミーマルタンを愛飲し、すごい家具(何調っていうのかな)にクッションなんていう椅子で仕事をこなし、アッチ系的ねっとりした秘書に甘え、ネグリジェのような恰好で寝て、クラシックカーやF1カーみたいな車まで乗り回す。
話す口調も時代がかってますね。

一方、亜美を1年でデザイナーにするべくスパルタ教育をするフランス人の一団もすごい。
縦ロールやロッカーみたいなすごい「外人」さんに特訓される亜美も、フランス語堪能だったの??・・・なんて事は言ってはいけないんでしょう。

デザインされる服も、フリルやフレアたっぷりのワンピースやら、ザ・70年代!バー(?)も、床に座ってドラッグでもやっちゃいそうなアヤシイ雰囲気です。

まあ、このようにツッコミどころ満載なんですが、話としてはおそらく当時の少女マンガの世界ではかなり衝撃的で大人の雰囲気を持ったというか、ただの恋愛ものではない、ある意味骨太な作品だったに違いないでしょう。
デザイナーという、常に最先端を走り、流行を作り出していかねばならないプレッシャーに潰されそうな職業を突き進む母親。最後に1から出直すそのプロ意識に、華やかだけではない厳しさを感じた人も多いでしょう。
そして、ラストも結構ショッキングだったのでは。

昼ドラにもなったようですが、話の展開としてはまさにそんな感じです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-25 23:50:13] [修正:2011-04-26 08:28:51] [このレビューのURL]

津軽三味線という、またレアなテーマの漫画。
漫画界ではどこまで特殊な業界もの?に光を当てていくんだろうか。まさか三味線漫画まで出てくるとは。

主人公は恰好いい高校生。でもべたべたな津軽弁。
時々何をしゃべっているかわからない程だけど、本気になって三味線を弾き始めたらこれがすごい。

大体、三味線の音に「ドン!」「ザン!」というのもすごい表現。
近年「吉田兄弟」やロックとの共演、速弾きなど、色々な所で目にすることになった楽器だけど、まさかこんな表現とは。
いや、でもそのくらい迫力ある音なんですよね。
あの緊張感や張りつめた音をよく表現していると思います。これがたった三本の弦から生み出されるってすごいと、読者にも感じさせます。

雪君の周りに、なかなかバリエーションに富んだ人物が集まってきていて、今後が楽しみ。
ただ、「○○甲子園」での活躍を・・・という話の展開は、比較的「ありがち」になってしまいがちなので、そうならないことを祈りたいという期待を込めて、現在この点数です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-24 23:05:39] [修正:2011-04-24 23:05:39] [このレビューのURL]

日本では珍しいアイスダンスを扱う。コーチは「愛のアランフェス」でアイスダンスに転向した筒美ペア。懐かしい。

天才スケーター・松木恵と、恵に引っ張られて成長していく樹里。この二人が日本人らしからぬ大人っぽいムードでダンスの世界を築いていく。
作者が「読者をほっぽらかしにして描いた」というような表現をしたほど、のめりこんで描いたように、絵も最高潮、とっても引き込まれた。恵と海堂が並んだ時のあの緊張感。怖いけど美しかったですね。

内容的には、スケートももちろんだけど、狭いどろどろの人間関係、愛憎劇。後半は憎しみの塊になって、どうしようも無くなった海堂が悪魔みたいになってしまい、暗い!
救いがないじゃないかと思ったけど、エンディングでは、海堂の、寂しくもやわらかくなった表情が一瞬見られてほっとした。

初めて樹里達が結ばれた日、ヨーロッパから樹里が怪我をして帰国した時・・・樹里の祖母の、人生のいい先輩として、親がわりとして、厳しくも愛情込めて樹里達を見守っている目が、暖かい。
槇村さんの作品では、こういう年配者の厳しくも優しいキャラが、作品を引き締めますね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-17 23:20:06] [修正:2011-04-20 19:43:41] [このレビューのURL]

看護婦漫画の走り?
色々取材しただけあって結構リアルなように感じましたが、その辺は関係者でないのでよく分かりませんね。

裏の話、涙の話、笑える話、緩急あって楽しめます。
この作者の作品で一番面白かったです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-19 20:43:48] [修正:2011-04-19 20:43:48] [このレビューのURL]

大変詩的な作品です。

こんな貴族的で、詩的な空気をもった、切ない作品は無いでしょう。
時間も場所も少しずつずれている短編の連続なので、これが誰だったか、何のエピソードだったかすぐには繋がらず、何度も読んで理解していく感じ。
人によって合う・合わないがあるでしょう。
まあ、貴族やら寄宿舎やら自体が、かけ離れてる世界なんですが。

巻が進むにつれ、何のために生きているのか、というエドガーの切なさが際立ってきます。

これがもう何十年も前の作品とは。
いや、むしろ今となってはこんな作品は生まれないでしょう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-19 20:18:01] [修正:2011-04-19 20:18:01] [このレビューのURL]

表題の「ブルー・ロージス」は、親や家族からの負の暗示で自分に自信を持てず、男性を愛したことがなかった女性が、初めて恋愛し成長していく話。

愛されることは、自分にも自信が持てることであり、自信が持てれば、自分に浴び去られる心無い言葉にも暗示にも、踊らされる事はない。
それが気づけただけでも、主人公の人生でこの恋愛は無駄ではなかったのですね。

「パエトーン」は、チェルノブイリ事故の後に描かれた作品。
現在、大震災後にこの作品が再度注目されて、色々なところで取り上げられているそうですが、原発の恐ろしさ、必要なものなのかを問いかけたものです。

イラスト的作者が飄々と原発の事を話して行くので、軽い雰囲気があるものの、やはり内容的には重い。神話とも絡め、人間の思い上がりの愚かさを鋭く切り込む。
賛否はともかくこの作品を何年も前に描いた作者が投げかけたものは大きい。

他にも読み応えのある作品が並ぶ。短編集といえども、この人の作品は読む前に気合が必要かも。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-16 16:56:31] [修正:2011-04-16 16:56:31] [このレビューのURL]