「まれら」さんのページ

総レビュー数: 112レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年02月12日

絵の上手い下手で漫画を評価したくはないが、いわゆる上手い絵から意図的に遠ざかろうとしている作者は稀少だと思う。しかし野太い線と大胆なコマ割りで描写される世界は、いかにも熱い話に似つかわしい。
もともとストーリーを読ませる作風でもないが、それにしても読者がついて行けないほどの突飛な展開が続く。将棋漫画でありながら将棋の醍醐味を描くつもりでもないようで、現時点では方向性を見いだしにくい。ただ作者が巨大な何かを描こうとしている情念だけは伝わってくる。今後が楽しみな作品である。得点は暫定。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-03 00:55:56] [修正:2008-02-03 00:55:56] [このレビューのURL]

時代が前後する複雑な構成に戸惑ったが、作品世界の全貌がおぼろげに掴めてくるあたりで引き込まれる。良質なミステリーのような味わいで、相当の力量が窺える。永遠に生きる者の宿命と悲しみを繊細かつ緻密に描いており、不朽の名作としての評価も納得。絵も古典的なタッチながら、ファンタジー世界を芸術的に描き出している。
そこまで理解した上であえて難点を言えば、あまりに格調が高すぎて敷居が高い印象を受けるところか。漫然と読んで楽しむような作品ではないので、あまり無節操に他人に勧められない。国境を越え時代を超えて輪廻するエピソードを相互に関連づけながら読むのは思いのほか骨が折れるし、美文調の散文詩のような表現も技巧に過ぎるように思う。
読者側にも味わうためのスキルを要求されており、そういった部分も含めて実に大作然とした作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-23 21:13:50] [修正:2008-01-23 21:13:50] [このレビューのURL]

ヤクザネタであり、ややくどい画風と相まって少し敬遠する向きもあるかと思う。
ただ内容は面白い。一言で言えばバカで下品でくだらない作品だが、ここまで徹底すれば文句ない。「頭からドリルが生える」だの「地底人と兄弟」だのといったギャグの設定になぜヤクザが必要かということからして可笑しい。組長やサブがギャグの中心ではあるが、黒田の醒めたツッコミぶりも見逃せない。
各話の間に挿入されるページのイラスト風ギャグが時々ツボにはまり、「ニョロ−レロ−ゲルロ」では死にそうになった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-12 10:35:19] [修正:2008-01-12 10:35:19] [このレビューのURL]

最初期から10年間程度の範囲の短編集。作者自身が後書きで語るようにホラー中心になっている。同じホラーでも絶叫する類ではなく、背筋がぞくりとするようなものが多い。以下寸評。
「不安の立像」日常に潜む実体のない恐怖を描く。デビュー間もない頃の作(デビュー作との表記もあり)でありながら、既に完全な諸星ワールドを形成している。(6点)
「子供の遊び」謎の生き物が実に猟奇的で、おぞましい姿なのに見入ってしまう。同様のモチーフはその後の作品の中に繰り返し登場する。結末も秀逸。(7点)
「復讐クラブ」シニカルな小品だが、毒の利いたオチがいい。(5点)
「海の中」穏やかな詩情漂う作品。こう描けばいかにも美しい話のようであるが、その実は水死体のモノローグというところが異様。(5点)
「ユニコーン狩り」作者は照れているが、きわめて真っ向から夢と向き合ったファンタジー作品。すべての作品の中で最もポジティブな作かも知れない。『今年はじめて見る一角獣』のフレーズが実に美しい。思春期の不安定な精神状態を直撃すれば、人生が変わるかも知れない。子供の頃に読みたかった。(9点)
「真夜中のプシケー」比較的正当なホラー漫画。装丁(表紙)のモチーフにもなっているようで、基調となる位置づけかも知れない。(6点)
「袋の中」猟奇的な作品であり、殺人や屍姦など何でもありなのだが、それ以上に人間の心理描写の方が怖い。(6点)
「会社の幽霊」近代社会の脆さや組織の異常さを描きながらも、妙に戯画的なドタバタに帰着するところが可笑しい。ブラックユーモアの味わい。(5点)
「子供の王国」頽廃的な味わいの中に奇妙な不安感が織り込まれている。面白い話なのだが、読むのが苦痛なほど嫌悪感を感じてしまい、それでいてどうしても読んでしまう。作者はロリコンに対するカリカチュアである旨の自己評をしているが、幼女街娼のくだりなどは作者一流のリアリズムに溢れ、軽薄な批判以上の黒い世界を感じさせる。(8点)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-03 16:41:10] [修正:2008-01-03 16:41:10] [このレビューのURL]

作者特有の多様な作品群ではあるが、現代から近未来を舞台にしたSFが中心。例えば「不安の立像」等と比較すると、怪奇的な作品が少なくなっている替わりに、虚無的な作品の比率が高いように感じる。以下寸評。
「商社の赤い花」大企業の異常性を描くシリーズに入るのかも知れないが、一層諦念的で悲惨な印象。(6点)
「食事の時間」このまま映画化しても面白そうな近未来SF。醜悪な話ではあるが、シニカルさが先に立つ。(7点)
「夢みる機械」コメディタッチの軽い作品ながらよくできた話。星新一の短編のような印象。ただ、収録作の中では最も作風が異なり、なぜ表題作になったのかは疑問。(6点)
「猫パニック」社会の脆さをドタバタで描く小品。事件の異常さと発端やオチの矮小さがおかしい。(5点)
「地下鉄を降りて…」誇張やデフォルメはあるものの、基本的には虚構ではなく現実の描写。都市自体が持つ狂気をじわりと描いており、2度目に読んだら怖くなった。(6点)
「遠い国から」虚無的な作風の嚆矢になるかと思う。淡々と綴られる旅行記の体裁で展開する絵物語だが、文章もきわめて美しく、そのまま朗読しても詩として成立しそうな気がする。大好きな作品の一つ。(8点)
「感情のある風景」虚無的な作風ながら、前作の「遠い国から」とは絵柄も技法も異なる。恐怖や絶望の内容を語らず、感情を失うという虚構を通して読者により大きな恐怖と絶望を感じさせる。(8点)
「地獄の戦士」珍しいハードSF。ブレードランナーをバッドエンドにしたような印象。(7点)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-31 02:51:35] [修正:2007-12-31 02:51:35] [このレビューのURL]

マニアックかつシュールなギャグ作品に、シリアスなSFが加味され、不思議な世界を形成している。
ギャグパートはSF・特撮・映画・時事などのネタが満載で、よほどの知識がないとパロディ元がわからない。わからなくても十分面白いが、恐らく作者の意図はもっとマニアックな笑いにあるのだろうという気がする。シリアスパートは打って変わって極上のハードSFになっており、ちょっとトラウマになりそうな重苦しさを持つ。
作品の中心はあくまでギャグなのだが、2つの話題が離れず融合せず適度の距離感を保って進行することで、話に深みが出ているように思う。
中断や再構成などで一貫性に欠ける傾向にあるが、ハイセンスな佳作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-24 00:53:44] [修正:2007-12-24 00:53:44] [このレビューのURL]

ギャグマンガの体裁ゆえ強烈にデフォルメされてはいるものの、群雄各々の人物像がしっかり捉えられている。大名と朝廷の関係や臣下同士の確執など、かなり高度な歴史シミュレーションをギャグで描ききる手法は見事。笑いながら読み終わると、何故か大作歴史映画を見たような不思議な読後感が得られる。
著名な大名もさることながら、松永弾正や細川藤孝といったかなり通向きの武将の登場も嬉しいところ。果ては疋田文五郎や教如など、ギャグ漫画に登場するのは初めてなのではないだろうか。
資料的価値はともかく、歴史嫌いにも日本史入門編として薦められるレベルかと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-20 23:35:48] [修正:2007-12-20 23:35:48] [このレビューのURL]

作品自体が穏やかで暖かいものであり、読んでいても「凄さ」を感じることはないが、概して平凡な登場人物の平凡な日常を綴るだけで上質のエンターテインメントを創り上げるあたり、作者の技量の非凡さを感じる。平凡な日常をゆるく描くという手法、あるいは萌え4コマというジャンルにおいては、おそらく転換点となった重要な位置にあるのだろう。しかしあまりレッテルを貼るほどのアクははなく、万人受けしそうな内容である。
実際にありそうでいて絶対あり得ないような仮想郷愁ギャグは今後も出てくるだろうが、この作品だけはスタンダードとして記憶される作品になるかも知れない。
へーちょ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-15 16:03:05] [修正:2007-12-15 16:03:05] [このレビューのURL]

小気味よいハチャハチャSFとしては秀逸な出来であり、ハイセンスな絵柄やギャグも空前のものだった。後半は迷走気味ではあったが、ラブコメ路線を守りきったため、さほど気張らずに楽しめる。
アニメ、それも特に劇場版の印象が強すぎるせいか若干軽く見られがちだが、別個に考えた方がよい。特に「ドリーマー」や「愛とさすらいの母」などは、キャラだけ拝借した全くの別作品だと理解している。
それにしても、こんなポップな世界で形而上の事象を描く押井守も偉いし、押井守に好きにさせても壊れない世界観やキャラクターを作り上げたのも凄いと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-14 20:55:54] [修正:2007-12-14 20:55:54] [このレビューのURL]

おそろしくバッドテイストで、救いのない話が多い。それでいて読み始めたら止めることはできず、人間の醜さ・愚かさを嫌になるほど見せつけられる。確かに社会問題などを題材に採ってはいるが、プロパガンダというよりも諦観的な視点の方をより強く感じ、軽薄な半可通とは一線を画する。
時事ネタめいたものを切り口にしている話などは若干風化気味だが、今の中高生あたりにも是非味わって欲しい作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-12 21:06:44] [修正:2007-12-12 21:06:44] [このレビューのURL]