「FSS」さんのページ

総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

何気ない日常の出来事をこれだけ面白おかしく描く事が出来る作者の才能は凄い。爆笑するタイプの笑いではなく、誰でも経験がある事に対して「自分も同じ事を考えた事あるよ〜」とか「こんなヤツいたな〜」と感情移入して楽しめる漫画。

恐らく実際に自分の家族や友人関係であった事をカリカチュアライズしてあるのだろうけど、普段からよほど観察眼を鍛えて、日常に対する疑問や感動を鋭敏に感じ取ってストックしておかなければ、なかなかこうした日常の中の見え隠れする「妙味」を漫画化する事は難しいと思う。

日常をテーマにしたコメディ漫画が好きなら読んで損ナシ。

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[投稿:2008-02-25 20:51:52] [修正:2008-02-25 20:51:52] [このレビューのURL]

8点 DEATH NOTE

[ネタバレあり]

やはり日本の漫画はナメたらいかん。

私の知る限り、ここまで天才同士の複雑な心理戦を描いたサスペンス作品は、古今東西のミステリー小説やハリウッド映画にも無いだろう。

あえてジャンプ誌上で完全にアクション要素を廃し、頭脳戦にのみ特化した点を評価すべき作品。1巻目から話の規模が大きく、テンポも良い。ふたりの天才同士の騙し合い、知恵比べが面白すぎ。

普通「ノートに名前を書いた人間を好きなように殺せる」という設定だと、いじめや自殺をテーマにして、ノートを巡る学園内でのドロドロとした人間ドラマが中心になりそうだけど、この作品はノートを使って人類浄化を始めた主人公「月」と、それを追う謎の名探偵「L」との心理的な駆け引きが見所の頭脳戦をメインに描いているのが斬新。

ノートも好き勝手に殺せるわけではなく、相手の本名と顔を知っていなければならないし、物理的に無理な死に方はさせられないという制約がある。それに対して、「L」は警察やCIAなどと連携を組みつつ、天才的な推理力で「月」に迫ろうとする展開は非常にスリリング&サスペンスフル。

特に感心したのは、序盤で「L」が「月」の目的や住んでいる地域などを早々と特定していく過程。思わず「なるほど〜」と膝を打ってしまったw。

確かに「L」死亡後の展開はいまいちだし、何度も読み返したくなるタイプの内容ではないが、少年漫画でここまでサスペンスに特化した作品を描いた事は高く評価すべきだと思う。

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[投稿:2008-02-02 20:04:23] [修正:2008-02-02 20:04:23] [このレビューのURL]

いかにも古賀氏らしい、キャラとギャグ、世界観で、個人的に一番親しみが持てる作品だっただけに、もう読めないのは寂しい限り。

ギャグの発想が独特な方向で先鋭化されつつも、プロの作品として決して独りよがりやオタク受けだけにならない、良い意味での万人向けのバランス感覚と客観性がある。

バカバカしい台詞回しにも、作者の持つセンスと経験、そして計算が浸透しているからこそ、あの独特な面白さが醸し出されると思う。

そう言う意味でも、ギャグ漫画として完成度の高い作品。

ただ、あえて苦言を呈すると、作者の個性や資質の問題なんだろうけれど、話に「広がり」を出すのは苦手な人みたい。その場その場の「お祭り騒ぎ」は楽しいものの、後にも先にも話が続かないと言うか、こういう作風は下手をするとひたすらグダグダな展開になりがち(事実、この4巻では既にその兆候が…)。

続けようと思えば永遠に続けられるタイプの漫画だが、ダラダラと続けるよりは、面白いところで終わって、また次回作に向けて充電してくれた方が作者にとっても読者にとっても良い結果を生むと思う。

PS.あとがきで「くのいちが、きゃっきゃ、ウフフしている漫画が描きたかった」と作者が語っているのを読んで、さすがだと思ったw。

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[投稿:2008-02-02 17:17:57] [修正:2008-02-02 17:17:57] [このレビューのURL]

8点 ZOOKEEPER

動物園の新米飼育員と動物の触れ合いを描いた「ほのぼの漫画」かと思いきや、変に動物を擬人化する事もなく、人間と動物、どちらか一方の視点に偏る事もなく、動物と人間の関係性や、自然と文明の在り方などをテーマに描いた、意外なまでにシビアな作品。

かと言って、説教臭い話や理想論的な話は少なく、あくまで人間の主観である主人公の視点に感情移入しつつ考えさせられるシナリオ作りになっている。特に「何故、コアラは人気がある看板動物なのに、観客の滞在時間が短いのか」という動物園の経営問題から入り、コアラの生態を考え、新たなコアラブームを作ろうとする。そして、ようやくコアラの問題について解決できたかに思えたが、そこには人間本位の考え方と動物園そのもののあり方が問われる事に…、というシナリオ作りには感心した。

また主人公の「温度を視認できる」という特殊能力も目新しく、その能力をちゃんと作品の中で有機的に絡ませていく使い方も上手い。

動物園の園長も外見とは違い一筋縄では行かない人物で、その「黒い」性格が作品のスパイスになっているし、主人公を動かす的確なアドバイザーとしても機能している。

あえて難点を言えば、絵柄には好き嫌いが出るだろう。この作品が作者のデビュー作だからなのか、技術的にもあまり高いとは言えず、個性と言うにはかなり線描が雑に見える部分が多く、絵柄に関してはあまり良い印象が持てなかった。もう少し丁寧に描いて欲しいところ。

ただ先述したように、動物園経営を通して、人間と動物の在り方や、文明とは何か、自然とは何か、と言ったような哲学的なテーマに至るまで考えさせられるシナリオは非常に質が高い。小、中学校などで授業の教材としても良いくらい。

一度は読んでも損は無い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-22 20:02:11] [修正:2008-01-22 20:02:11] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

今では当たり前にあるが、剣と魔法を扱ったファンタジー漫画の先達という点では評価すべき部分も多い作品。作者の漫画家としての技量は非常に高いし、戦闘シーンにおける演出センスなども良い。

実際、破壊神の復活→箱舟攻防戦の辺りまでは非常に盛り上がった。だが残念な事に、それ以降の引き延ばしのせいで、それまでは辛うじて守られていた設定や伏線も完全に破綻してしまった。地獄に落とされた地点でポルノ・ディアノに手も足も出なかったD.Sが、どうやって6人の悪魔王から「ユダの痛み」を抜き取ったのかとか、「竜戦士」は箱舟で破壊されたんじゃなかったかとか、いくらなんでも人類が作ったものにしては強すぎるだろとか、数え上げるとキリが無い。

また、天使と悪魔を出した事による戦闘力のエスカレートは、ジャンプ連載作品の中でもダントツでトップw。ある意味ではドラゴンボールをも軽く凌いでいる。特に単行本23〜24巻現在での戦闘シーンでは、すでに旧キャラのガラやネイどころか、四大天使や七人の悪魔王たちすら蚊帳の外w。もはや漫画における戦闘シーンの演出表現でも限界に達している(そういう点では見るべき部分はあるが)。

ただ、物語の行き詰まり感は誰の目にも明らかながら、それでも「竜戦士」を何とか使おうとしたり、人類側の救世主アダムという新キャラ(?)を出したりと、出来るだけまとめようとする努力の後も見られる。ここまで破綻しつつある物語を続けられる事を、逆に応援してしまいたくなるほど(まあ、今さらエルフやドワーフ、人類を含めた「汎人類連合」なんかを出されてもなあ、というのもあるがw)。

何にしても、ここまでリアルタイムで読んできた作品だけに、どんな形であれ最後まで付き合うつもり。その日がいつになるかは分からないけどw。

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[投稿:2008-02-24 21:54:47] [修正:2008-02-24 21:54:47] [このレビューのURL]

7点 バキ

[ネタバレあり]

このシリーズも前半までは「予想は裏切り、期待は裏切らない」だったが、後半からは「予想は裏切り、期待も裏切る」という、単なるサプライズ漫画に成り果てた。

「グラップラー刃牙」は真っ当な格闘漫画として完成されていたし、この「バキ」も序盤の死刑囚登場のインパクトは凄まじいものがあった。実際、独歩の手首をワイヤーで切断したり、爆薬を使ったりするのを見ると、「そこまでやるか!」と戦慄したほどだった。しかも、その死刑囚たちを狩る怪物、オリバの登場など、先が読めない展開にワクワクしたものだ。

しかし中盤辺りから勇次郎レベルの戦闘力の持ち主かと思われていた死刑囚たちがだんだんと劣化していくようになる。戦闘も花山vsスペック戦が頂点で、それ以降はちょっと小競り合いをしたらどちらかが逃亡、もしくは邪魔が入るというパターンが増え、無駄な時間稼ぎ(つまりページ稼ぎ)のせいでグダグダな展開になっていく。

特にドリアンと柳の結末はひどい。意外性はあっても、その展開は到底納得の行くものとは言い難かった。ドリアンは逃亡がしつこ過ぎてグダグダで意味不明な終わり方に。また、もともと暗器使いの柳が、「武器に頼っているからダメ」という理屈で、同じく武器を使っている本部ごときに何故あそこまで遅れを取るのか?。さらにそこへ勇次郎が乱入して滅茶苦茶な幕引きに。せめて因縁のライバル、渋川と戦わせて欲しかった。あげくドイルもシコルもヘタレ化し、はっきりとした結末が無いままに何故か中国の武術大会「擂台賽」へと話が進む。

オリバvs書文、勇次郎vs郭は多少なりとも盛り上がったが、結局、強大なパワーの前に技術は負けるというオチ。おまけに「血統シリーズ」への伏線として出したはずのキャラ、範海王がその名前から早々に読者に予想され、あっさりとアライjr.に瞬殺→退場w。

しかも擂台賽後、今度は鳴り物入りで登場した(恐らく当初の予定では範海王同様、バキのライバルとなるはずであった)そのアライjr.が金的でバキに瞬殺→退場w。範、春成に続き「いったい何だったんだキャラ」の三巨頭w。

ここに「予想は裏切り、期待も裏切る」板垣流が完成した。

確かにその場のインパクトは強いし、先の読めない展開や強烈なキャラクターたちには期待してしまうだけの魅力が備わっていると思う。しかし全体を通して読むと、その場しのぎをしているがゆえの整合性の無さや、無駄な先延ばしが際立ってしまうのが痛い。

死刑囚編前半10点、死刑囚編後半5点、擂台賽編8点、アライjr編からラスト2点で、平均6.5点。おまけで7点辺りが妥当な評価。


☆☆☆勝手に死刑囚レビュー☆☆☆

1位・ドリアン

海王の称号を持つだけの事はあり、拳法の技術体系は完璧。それに加え超人的な肉体、卑怯な手段を平気で使う精神性、強力な催眠術など、死刑囚の中でも群を抜いて凶悪キャラ。小細工を弄さずともメインキャラを圧倒するだけの戦闘力を持っていた。ゆえに後半、「武に対する心構え」という精神論だけで独歩に一方的にボコられる展開には納得がいかなかった。その後、烈との絡みで完全に着地点を失いグダグダな展開に。遊園地のシーンで終わっておけば…。

2位・スペック

本人の望み通りすべてを出し切って敗北した唯一の幸せな死刑囚(笑)。今見れば戦い方に卑怯なところはなく、武器を使う時もその場にあるものだけを使うという潔さ。相手が花山で良かった。

3位・柳

天才ゆえの器用貧乏?何にしても本部に遅れを取ってしまった地点で株価大崩落。いまだに「武器に頼っているからダメ理論」はよく分からない。あげく勇次郎の乱入で無理やり退場させられた。

4位・シコル

勇次郎、オリバ、ジャック、バキ、ガイア、と悉く戦った相手が悪かった。指の力が凄いというのも売りとしては地味すぎ。他に特化した部分が無いのが痛かった。にしても猪狩に拘束された時に頭を撃たれてたら終わってたんじゃないの(笑)。

5位・ドイル

肉体的資質は他の死刑囚に劣らないだろうが、身体に仕込んだ刃や爆薬に頼り過ぎていたためか、真っ当な空手家や拳法家を相手にすると手も足も出ない弱さ。あと負けそうになると逃げすぎ。また一番どうしたいのか分からないキャラ。

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[投稿:2008-02-13 22:56:23] [修正:2008-02-13 22:56:23] [このレビューのURL]

7点 CLAYMORE

[ネタバレあり]

3巻まではキャラや世界観の構築のためか、いまいち盛り上がりに欠ける印象だったが、4巻から加速度的に面白くなっている。

迫力やインパクトが足りないと思っていた敵キャラに、「覚醒者」という強大で魅力的な怪物を出したことで、それを狩るクレイモア側にも魅力が出てきて、相乗効果的にキャラに深みが増している。

戦闘シーンはジャンプ特有のインフレバトルに近いが、クレイモアの設定上、「一対複数」というバトルも多いため、あまり不条理な勝ち方や負け方は少ない(あくまで私見だけど、今後、インフレで長引かせる事はないはず。あの世界設定で、さすがに「深淵の者」以上の存在が出てくるような無節操な展開になる可能性は低いし、あっても組織の内部抗争や秘密に関したラスボス的な存在の場合だけだろう)。

ただ、基本的に女性キャラばかりで、デザインも似通っているので見分けがつきにくい事や、「異常食欲者」と言われるように、欲望に負けたから覚醒したのに、妙に覚醒者が人間的で冷静だったりと(イースレイやリガルドなど)、突っ込みどころや不安定要素はあるものの、今後も先が気になる作品である事は間違いない。

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[投稿:2008-02-11 21:31:51] [修正:2008-02-11 21:31:51] [このレビューのURL]

月刊コミックビームに連載されていた、作者が「おさんぽ」と称して出かけていった先の出来事を体験談として漫画にする、ゆるゆるエッセイ漫画。この作者の暖か味のある絵柄が、何とも言えないゆったりとした独特な空気感を醸し出している。

海外旅行に行く時もあるが、基本的に出かける先は都内が多く、作者の住宅近辺という近場ばかり(笑)。

でも、そんな何の変哲もない近所でも、ちょっと視点を変えて観察すれば色々な出会いや発見があり面白い。

自分もおさんぽがてら近所をのんびり散歩してみたくなる。

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[投稿:2008-02-04 17:20:58] [修正:2008-02-04 17:20:58] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

<8巻までのレビュー>

トレパネーションという設定や幻覚の視覚的演出は非常に斬新なんだけど、結局、それ以外の事を考えないまま連載を始めちゃった感じ。

序盤、頭蓋骨に穴を開けて幻覚が見えるようになり、ヤクザの親分の心の闇を払う件までは、時間を忘れて読みふけってしまうくらい面白かったが、女子高生の話あたりから展開が行き当たりばったりで、ダラダラと続けているだけになってしまっている。多分、主人公が出会った人々の「心の闇」の象徴であるホムンクルスを取り除いていく、という話をやりたかったのだと思うけど、その辺が上手く描けていない。

これは(意図的かどうかは微妙なところだが)、主人公のキャラ付けを中途半端なままにしてある事に起因している。まさに作中で主人公自身が自分の人生の進退について迷っているがゆえに、作品自体も迷走しているのだと思われる。

最近の展開も、どう決着をつけたら良いか方向の見当が付かず、明らかに作者が迷走しているのが丸分かり。下手したら「作者急病のため休載します」とか言って、未完のまま終わる可能性すらある。

それでもまだ今後に期待したい気持ちはあるだけに、何とか盛り返して欲しいところ。

とは言え、現代人の病理を表象するホムンクルスと、それを取り払うというアイデアは評価できるので、まあ、6〜7点前後が妥当なところだろう。

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[投稿:2008-02-03 16:35:57] [修正:2008-02-03 16:35:57] [このレビューのURL]

かわいい絵柄に似合っているのか似合ってないのか。それはともかく、実にアホらしく、バカバカしい下ネタ満載のほのぼのエロバカ漫画。主人公たちの「おっぱい」と「ぱんつ」への執着は、ある意味、清々しさすら感じてしまう。と言っても、成年指定ではなく、あくまでギャグ漫画。戦闘力ならぬ「エロ数値」が出てくるのも面白い。

基本的には同人誌のようなノリであるが、エロいことに命を掛けるランジェリータウンの人々の日常は、良い意味でアホなことに徹底している作者の真剣な創作姿勢そのもの。

ダウンタウンの松本も言うように、「バカな事をやるにも真剣にやらないといけない」というギャグの基本が理解できていないと、この漫画の「計算されたバカさ」ゆえに醸し出される魅力には気付かないだろう。

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[投稿:2008-02-03 11:27:13] [修正:2008-02-03 11:27:13] [このレビューのURL]