「FSS」さんのページ

総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

一巻を読んだだけでは伝わらないかも知れないが、メイン以外にも登場キャラの描写が丁寧なので、その地道な造形の積み重ねのおかげで、巻を重ねる毎に確実に物語に血が通ってきている。

歴史上の実在の人物の絡め方など、虚実入り混じった物語構築も上手い。そして、彼らとセスタスの邂逅がより物語を重厚なものにしている。

戦いに派手さは無いが、各キャラに個性があり、彼らの生き様や考え方が、そのまま戦いの勝敗にも影響するというシビアな描写がリアル。まさに人生とは戦いって感じで、誰にでも等しく感情移入が出来る。

ただ、残念なのは、基本的に戦闘シーンが売りの格闘漫画としては、ちょっと地味という事。原因は作者の絵柄が丁寧すぎる事と、カメラワークに工夫が無い点。いつもほとんど同じ位置(目線)や距離であるため、画面にメリハリが無く、迫力も感じられない。こういうのを見ると、やはり「バキ」の戦闘シーンの迫力の凄さが分かる(物語はともかくw)。

まあそれでも十分面白いので読んで損は無い作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 19:04:54] [修正:2008-02-02 19:04:54] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

80年代ジャンプ黄金期を支えた作品の一つ。

それまでありそうで無かった「美少年+鎧装着」というジャンルの元祖。すでに連載開始から数えると二十年以上も前の作品という事を考えれば、この着眼点は非常に斬新。いまだに人気があるというのも頷ける。

やはり国内のみならず、海外でも人気が沸騰するようなキャラを作れる車田氏の才能は並ではない(特に今作は「風魔の小次郎」や「男坂」での失敗以降、「離れたファンを取り戻すのはいつでも出来る」とメジャー路線として描き、実際にヒットさせたという背景がある)。

ただ残念なのは、それまでは順当に展開していたストーリーが、編集部に引き伸ばしを強制されたからか、最大の戦いの山場であるはずのハーデス編の後半から無意味なイベントや無理のある展開が多くなった事だ(瞬がハーデスの肉体だったとか、その瞬を殺したシーンが幻覚だったとか)。他にも、ハーデスの結界により力を失うという理屈で、やっと活躍するだろうと期待されていた黄金聖闘士たちがコキュートスに強制退場させられたりw、さらにアテナの無謀な単独先行のせいで、嘆きの門を破壊するためだけに黄金聖闘士が全員死ぬハメになったり、あげく「アテナの血を付ければゴッドクロスに変わって次元もひとっ飛び!神とも戦えるぜ!」という超ご都合主義的設定が出てきたりと(それならハーデス戦の始めから全ての聖衣に血を付けとけっつーのw。それまでにも付けた血によって聖衣に変化が出るのは分かってる事なんだから。そうすればハーデスの結界で黄金聖闘士がやられる事もなかった、等々)、看過できない突っ込みどころが頻出し、明らかに車田氏が迷走しまった事だ。そのせいでファンの期待との乖離が起こり、結果人気は急落した。ハーデス編の前半の盛り上がりがウソのような落ちぶれっぷりだった。「男坂」ほどではないにしても、中途半端な形で終了してしまったのも当然の迷走と言える。

ただ、それでも一大ブームを作った功績や漫画業界に与えた影響の大きさは評価すべきだし、実際、終盤での迷走までは十分に面白のも確か。

十二宮編9点、ポセイドン編6点、ハーデス編(前半9点〜後半3点)で、平均すると7点辺りが妥当なところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-28 12:00:44] [修正:2008-01-28 12:00:44] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

前作「バキ」で完成した、「予想は裏切り、期待も裏切る」板垣流は新シリーズでも全開。

相変わらず無駄な時間稼ぎや肩透かしな結末が多すぎる。

特にゲバル編はひどい。勇次郎、オリバに並び、各国に動向を監視されるほどのアンチェインなのに、結局、こいつもオリバの単純パワーの前に敗れるオチ。これまで同様、オリバはどんなに攻撃されてもダメージが無く、そのまま力で相手を捻じ伏せるというパターン。花山もジャックも同じタイプなのでさすがにこういう戦い方は見飽きた。一方、ゲバルもラストでモノ凄い「地球パンチ」を出しておきながらあっさり顔面潰されて終了。と言うか、あのシーン自体、幻覚なのか実際にあったのかも不明なまま。撃ったのなら空中のオリバがどうやってパンチをかわしたのか説明されていない。明らかな手抜き。

さらにメインである「バキvsオリバ戦」も輪を掛けてひどい肩透かし。「勇次郎を倒すためには小細工なしでオリバを倒さなくてはならない」という理屈は分かるが、入所当時、顔面を殴ってもまるっきりダメージを与えられなかったバキが、どうして何の修行もせずに、わずか数日後に勝てるのか説得力が皆無。結局、いつもの「範馬の血」という反則技のおかげで勝てたというだけ。そんな事では読者は納得できないし、何より格闘漫画としての醍醐味が無い。修行をしてない分、スーパーサイヤ人よりも戦闘力アップに説得力が無い。死刑囚編同様、バキがパワーアップしたんじゃなくて、オリバが弱体化したようにしか見えないのが問題。

さらに現在のピクル編に至ってはほぼ暴走と言っても過言ではない。確かに意外な展開にインパクトはある。出てくるキャラも魅力的だ。だから文句を言いつつも見てしまうのだが、その場のインパクト以上にキャラの魅力を引き出した中身のある戦いになっているかは甚だ疑問と言わざるを得ない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-14 17:15:48] [修正:2008-06-10 00:11:06] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

一見、単純なパニック系バイオホラーかと思いきや、漫画では珍しい社会派のサスペンスホラー。

取り立てて斬新なアイデアや設定がある訳ではないが、その脚本構成や作画など、全体的に非常に丁寧な作りであり、ジャンル以前にひとつの作品としての完成度が高い。その点は高く評価されるべきポイント。

ただ前述したように、基本的に社会派サスペンスホラーであり、凶悪犯罪の加害者と被害者の立場や有り様、社会的制裁とは、といった重々しいテーマには好き嫌いが分かれると思われる。

そういう意味で、漫画としての完成度は高いが娯楽性は低いので、何度も読みたくなるような内容ではないのが残念。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-04-12 23:47:30] [修正:2008-04-12 23:47:30] [このレビューのURL]

「右手が恋人」というと奇抜な発想のように思えるけど、日常生活にパラサイトが入り込むという設定はよく見掛ける形式。寄生獣のミギーやド根性ガエルのピョン吉とか(笑)。

内容的にも笑いあり、涙あり、恋愛ありと、ごく普通のラブコメ。絵柄を含め基本的に丁寧な作品作りに好感は持てるものの、ギャグもエロスも恋愛ドラマも少年誌向けに無難なところで抑えてある内容には物足りなさを感じるのも確か。そのせいで漫画としていまいちハジけ切れずに終わってしまった感がある。

この辺の万人向けで無難な内容を読みやすいと取るか、物足りないと取るかは個人差があると思う。

実際、4〜5巻辺りからすでにネタ切れ気味で、無理やり話を作って、その「台本」に則ってキャラが動かされているような印象が強い。いわゆる「キャラが命を持って動いていない」状態。もはや右手が美鳥である必然性も薄くなっていた。

時折デフォルメされるキャラの可愛らしさやおマヌけな感じは好ましいものの、肝心のストーリーに勢いが足りず、失速していった印象を受ける。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-04-07 23:42:12] [修正:2008-04-07 23:42:12] [このレビューのURL]

6点 BLEACH

[ネタバレあり]

過去作品から革命的な変化こそ遂げなかったが、良くも悪くも、「ドラゴンボール」「聖闘士星矢」「幽遊白書」などのジャンプ特有の王道バトル漫画の正統進化系であり、その伝統を最も色濃く受け継いでいる作品である事は間違いない。

特に旧来のチャンバラアクションを演出するビジュアル面や言葉遣いのセンスは高い。この辺のアクション演出のセンスやアイデアはやはり日本の漫画が群を抜いている。

連載の長期化により顕著になってきたインフレバトルに嫌気がさしている人が多いのも分かるが、この手の「強敵現る」→「修行して撃破」→「新たな強敵現る」→「真の能力覚醒」→「敵も覚醒」→「友情や愛のパワーで辛勝」みたいな王道バトル漫画はあっても良いし、インフレがあるからこそ燃えるという部分もあるだろう。そう言う見地で評価すれば、某巨大掲示板やAmazonのレビューで酷評されているほどひどい漫画ではない(事実、ソウルソサエティ編まではバトル漫画として十分に面白いし、各キャラの背景描写なども丁寧で、全体的にバランスが取れていたから、幼稚な私見を挟まずに総合的かつ客観的に評価すれば、いくら何でも2点以下はあり得ない)。

ただ問題が多いのも確かw。

すでに多くの人の指摘にもある通り、虚圏編に入ってから、そのインフレ展開にあまりにも説得力が無い事(特に主人公サイドの戦闘力)、虚圏編とソウルソサエティ編の設定の酷似、無駄な新キャラの量産によるダラダラとした時間稼ぎ(仮面の軍勢や十刃落ちなど)、旧キャラの使い方のバランスの悪さ(人気のある隊長になかなか活躍の場が与えられず、逆に今までも見せ場の多かったキャラ(石田、チャド、ルキア、恋次etc)を使い続ける)など、明らかに引き延ばしの弊害が作品の質を落としている。特に最近(単行本31〜33巻)のザエルアポロ戦やグリムジョー戦の露骨な引き延ばしによるダラダラとした展開は、さすがに看過出来ないものがある。

この虚圏編が終わったら潔く終了してくれる事を願うのみ。

ソウルソサエティ編までが8点、虚圏編が4点として、平均すれば6点辺りが一番妥当な評価でしょう。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-04-06 14:29:40] [修正:2008-04-06 14:29:40] [このレビューのURL]

6点 度胸星

[ネタバレあり]

非常に面白い作品だが、山田芳裕氏の個性的な絵柄と過剰気味な演出は、良くも悪くも人を選ぶのは確か。

主人公の度胸は、「努力」「ド根性」「バカ正直」「信念は曲げない」というように、漫画の主人公としては典型的なキャラクター設定だが、よくある「明朗快活な熱血キャラ」ではなく、必要なこと以外はほとんどしゃべらず、いつもムスッと黙りこくっている方が多いという、一見、陰気なキャラとして描かれている。もちろん、やる時にはやるし、凄まじい馬力を発揮して仲間を助けたり、仲間を裏切る事もないが、やはり主人公としてはあまりにも地味すぎた。いつも目を閉じているような顔付きもそれに拍車を掛けている。この主人公以外にも、ヤクザの組長とか、生意気な天才肌のガキとか、存在感の薄い中年夫婦とか、これまた陰気な女とか、意図的な設定ではあるだろうが、この「外し方」のせいで微妙に感情移入しにくいキャラばかりで、打ち切られてしまったのも、ある意味では仕方ない部分はある。

また肝心のストーリーにしても、宇宙飛行士を目指すための訓練が「水中で機械を操作する」とか「閉鎖空間で何日か過ごす」とか「厳しい環境下でのサバイバル」というようなありきたりなものばかりで、リアリティがある反面、意外性や面白味には欠けていて、やはり漫画としてはイマイチ地味だったと言わざるを得ない。

唯一、火星にいた「テセラック」という謎の存在(四次元生命体?)を出したところがユニークだが、どちらかと言えば、主人公たちを火星に行かせる「動機付け」のための存在といった印象を受ける。恐らく連載が続いていても正体がはっきりする事はなかっただろう。

仮にテセラックと度胸が対面しても、度胸はそんな事より他の仲間たちを助ける事のみを先決したはずで、結局、テセラックの事はそうしたドラマを描くためのギミックとしてしか描かれなかったはずだ。あんな物理攻撃の通じない四次元生命体が相手では、たとえ主人公の努力と根性を持ってしても対処の仕様がないだろう(笑)。

確かに良質な漫画だが、主人公の地味なキャラクター性、微妙なところで尖がっている個性のメインキャラたち、展開の意外性の無さなどにおいて、漫画として読み続けさせるには今一歩「何か」が足りていないのが残念。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-29 23:54:48] [修正:2008-02-29 23:54:48] [このレビューのURL]

めったに少女漫画は読まないけど、これは男でも普通に読める良質な作品。

内容としては、主人公の女の子を中心に三角関係が出来たりして、登場人物の心象の変化を描く、よくある恋愛もの。ありきたりではあるけど、それだけに恋愛ものとして安定しているので安心して読める。何より人間描写が非常に丁寧で好感。

難点としては、せっかくケーキ屋さんを舞台にしているのに、スウィーツに関するウンチクやそれに纏わるドラマがあまり出てこない点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-28 19:56:17] [修正:2008-02-28 19:56:17] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

きちんと全体の設定や構図を考えて、丁寧に謎や伏線も張ってあるが、それが返って物語全体をこじんまりとさせてしまった感がある。「寄生獣」と違い、作者が心から描きたい作品というより、頭から入っていった作品といった感じ。

序盤のストーリー展開には非常に興味をかきたてられるが、主人公を始め、ほかの登場人物の反応も、また世界全体の反応も妙に淡々としているので、本来もっと面白く、スリリングな展開に出来そうな設定なのに、いつまで経っても盛り上がって行かないもどかしさがある。

確かに謎解きに関しては説明すべき部分は綺麗に説明してある。ただ残念ながら、その「宇宙人オチ」といった基本設定に意外性が無く、はっきり言えば、どうでもいいような細かい謎解き(旗の紋様の謎、祭りや地形の説明など)に終始してしまった感がある。

主人公以外の登場キャラクターの存在理由も中途半端で、この辺もあまり上手く動かせているようには思えなかった。

丁寧な作りではあるが、テンポの悪さや意外性の無さが足を引っ張っており、何度も読みたくなるような作品ではないのが惜しい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-11 21:46:05] [修正:2008-02-14 01:05:13] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

あくまで今見るとバトル漫画としては物足りないが、原作小説が書かれた時代を考えれば、出てくる忍者の使う奇抜な忍法のアイデアの数々は非常に斬新で秀逸。

現代のバトル漫画のように戦闘シーンにおいて複雑な戦略や心理戦がある訳ではないが、ゴム人間とか、ステルス人間、写輪眼の原型とも言える「瞳術」などなど、今あるバトル漫画に出てくる「特殊能力の原型」がほとんど出揃っているというのはスゴい。

ストーリーや人物描写に深みは無いが、その分、伊賀と甲賀の忍者同士の10対10マッチはテンポが良く、全5巻ですっきりあっさり話が終わるところが潔い。

ぽっちゃり型の女性の絵柄などもエロくて良い(笑)。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-11 10:38:41] [修正:2008-02-11 10:38:41] [このレビューのURL]