「白い犬」さんのページ

総レビュー数: 116レビュー(全て表示) 最終投稿: 2005年12月06日

この作品は完結するまでレビューを書かないつもりでした。先ほど連載誌で完結したのでレビューします。
等価交換という錬金術の仕組みはシンプルであるようで画期的なものであると思っています。
ジョジョのスタンド並みの発明といっていい。
私は漫画で魔法が出てくるものが苦手でした。印を結んだり呪文を叫ぶだけで火柱が立ったり凍結したりするのが納得できなかった。
漫画だから、といえばそれまでですが虚構の世界だから求められるリアリティというものがある。
現在の少年漫画に出てくる能力モノはどうもご都合主義で、私には読めないものが多かった。(ただのババアになって感性がにぶくなっちゃっただけだろ、とツッコれたら言い返せないけどね)
錬金術は等価交換、つまりその場に材料があってそれを錬金術師が練成して物を作る、火をおこすという仕組み。これは裏を返せば材料がなければ何もできないという弱点でもある。
さらにはそういったバトルだけの要素ではなく、物語全編において等価交換の概念が主人公(とすべての登場人物)に課題を与え、悩ませ、最終回で答えを見つけ出すという構成のうまさもすばらしい。

以下ネタバレですが、主人公たちがたどり着いた、等価交換を壊すたった一つの冴えたやり方は、交換するものに、少しだけでもこちらから上乗せするというもの。
シンプルな等価交換のルールの鎖をとくのはやはりシンプルな答えだったけれど、それだけで壊れる。世界は変わる。
私は上乗せして与える人になりたい。そう思いました。

で、ここまでほめているのに9点。
あと1点は何かというと、この漫画が後世にちゃんと語り継がれるかどうか、もう若くない私には判断できないから。
メディアミックスなどで、その時代において一時バーッと売れる漫画は実はけっこうあるけれど、次の世代まで感動を受け継ぐ漫画って少ないんですよ。
つまり名作は次世代に受け継がれて完成するんです。
私は若人の君たちが、この漫画をどれくらい受け継いだか見届けた暁に1点をプラスしようかなと思っています。
・・・・って健康で事故に遭わず生きれば平均寿命まであと40年はあるんですけどね。
若人よ、三十路なんて遠いようであっという間だぞ。面白い漫画にたくさん出合えよ!  



ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-07-16 21:13:31] [修正:2010-07-16 21:13:31] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

これはこの漫画に限ったことじゃないけどエロがテーマの
漫画にはわかりやすい事件に強姦がでてくる。
自分が女ということもあるのだろうけど
ドラマを盛り上げるのに安易に強姦をいれてほしくない。
そりゃあ世の中には強姦というシチュエーションに
興奮を抱く男性読者が少なくないことは知っている。
フィクションだからいいじゃないか、と思われるかもしれないが
物語が始まりそれぞれのキャラクターに感情移入して毎週楽しみに
している人間にとってはやっぱり不愉快だ。
(感情移入しているからこそ強姦に更なる興奮を得られるという
客層がいるんだろうな・・・)

唯一ほめられる点は強姦された側にもした側にも
カウンセリングをすすめるシーンがあることだ。
ちさ×ポン読んでて唯一の救いかな、それが。

ああ、なんだか漫画における強姦への批判になってしまった。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-05-08 23:47:53] [修正:2006-05-08 23:47:53] [このレビューのURL]

良質、この一言に尽きるであろう。
一話一話のクオリティが高く、このページ数でよくまとめられた
もんだ、と感心する。浦沢氏がポスト手塚をささやかれるのも
わかる気がした。でも浦沢氏は浦沢氏で手塚は手塚だけど。

よんでいてあることに気づいた。
これだけすばらしい人格のキートンさんはなぜ離婚したのか?
物語内でいろいろと語られてるようだが私の結論は
キートンさんは男としてセックスアピールがないということ。

俗にいういいひとであっていい男ではないというやつだ。
そう結論付けると離婚で失った男性としての自信を
「鍛えなおす」べくインテリの座をなげうって
軍隊という体資本の場所に180度転換を図ったのに
合点がいくのである。

だけど男フェロモンでむんむんのキートンさんなんて・・・
いやすぎる・・・・・。


ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-03-16 16:06:52] [修正:2006-03-16 16:06:52] [このレビューのURL]

皆さんすごく好評価ですが私は読んでいて結構つらかった。
それは物語内にも出てくるが中学校に入って
否が応でも制服を着せられてしまうからだ。
つまり「着たい服を着る」というのが通用しない世界。
これから二人(二鳥君と高槻さん)は社会に出て
これまた否が応でも「男用」「女用」に分けられた世界を
知っていかなきゃならないかと思うとつらい。
(志村貴子は二人の社会人期まで描くとは思いがたいですが)
願う結末はただひとつ、「男は男らしく女は女らしくがイチバン!」
的なもの以外であること。
二鳥くんと高槻さんの幸せを描いてね、志村さん。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-03-10 18:36:25] [修正:2006-03-10 18:36:25] [このレビューのURL]

志村貴子の漫画はセリフが少ないし
描きこみも少なくて淡白な画面なのだけれど
その余白に誰にもまねできない何かが詰まっているような
気がします。
写真のような背景、叫びに近いせりふ、濃い描きこみ、
嵐のようなトーンワークの漫画がよしとされつつある
この時代に余白で表現をできる貴重な存在。

載っている短編はどれも好きです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-02-14 18:56:37] [修正:2006-02-14 18:56:37] [このレビューのURL]

0点 WILD LIFE

みなさんのレビューでは酷評だらけなので気になっていた。
それでも自分には何かひとつくらいはいいとこを見つけられる
だろうと読み始めた。
が、どうがんばってもどう分析してもほめるポイントが
見当たらない…。動物漫画なのに動物が下手というのは
ラブコメでヒロインが不細工と同じくらいたちが悪いよ!
それでもがんばって読み続けたがそのうちしんどくなって
「セカチュー」よろしく「助けてください!!助けてください!!」と漫画喫茶で叫びそうになり(漫喫の中心で毒をさけぶ)読破を断念。
こんなに酷いのは・じ・め・て☆

ナイスレビュー: 2

[投稿:2005-12-07 11:45:06] [修正:2005-12-07 11:45:06] [このレビューのURL]

ホーリーランドというのは大人でも子供でもないユウの聖地(ホーリーランド)なわけなんですけど、これは同時に男の子(男にあらず)の聖地ですよね。
「強い」「弱い」のみですべての人間関係の上下が決まる世界なわけで。
これが大人になると人間関係の上下は金を持っているだの、社会的地位だのに複雑変わるわけで、ホーリーランドは良くも悪くも混じりっけのない純粋な力の世界。
力の世界ってやつは強力な魅力があると思う。
黄金期のジャンプがパワーインフレだと非難されてもあれだけ少年たちの心を揺さぶったのは力のみがものをいうホーリーランドだったからです。
やがてユウたちはホーリーランドを出なくてはいけない時が来るでしょう。

格闘についてマニアからいろいろ指摘されていますが、私はそれよりもやたら出てくる「作者の実体験からすると・・・」のほうが気になりました。
代弁してくれるキャラクターに語らせるとか他にも演出の方法があるんじゃないでしょうか。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-06-10 01:51:45] [修正:2008-06-10 01:51:45] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

藤子・F・不二雄といえばドラえもんとかの方が有名だが
私は藤子Fの描くSF(少しフシギ)ワールドの方が好きだ。
特に「流血鬼」は衝撃だった。
世界中が吸血鬼のウィルスによって感染し、「人間」の方が
少数派になった世界での少年の戦い、その結末は心に
響いた。読み終わった数日間は心がもやもやした。
今思うと何がすごいって、普通の漫画家が連載してコミックス10巻は最低出す設定、世界観を読み切りの一話でやっちゃっていることだ。
他にも数々の濃い作品があって、その内容はハッピーエンドもあればシニカルなオチもあり、藤子Fのもうひとつのひきだしに圧倒される。
漫画家志望の人は短いページで話をまとめる参考になるんじゃないだろうか。
珠玉の短編集です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-03-12 02:26:50] [修正:2008-03-12 02:26:50] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

この作品は非常に完成度が高い。しかしマイナス点をつける人の
大半は「下品」「エロ描写が多すぎる」ということを
いっている。個人の感想なのでそう感じてしまうのはそれでいいことだ。
私が思うに、この作品が下品なのは徳弘テイストのお約束的下ネタギャグは仕方ないとして性描写の多さは「セックス」という肉体の繋がりが物語の核になっているからだと思う。(読者サービスもあるのだろうけど)
男と女が隔離されて人口制限されている近未来。セックスは政府の管理下におかれている。個人と個人の結婚、セックスは権力者のみの特権である。そんな世界でエリカは権力者により性的人権を踏みにじられ、
またプログラマーとして数々の男のむきだしの欲望を目の当たりにして
絶望の世界の中生きていた。そしてその世界からエリカを救ってくれたのは狂四郎とのセックスなのである。セックスで貶められた精神を癒せるのはセックス、という矛盾のようだがセックスの生殖目的以外の意味の二面性をSFという設定の中でよくぞうまく表現したものだと思った。いや、男女完全隔離というSFの世界だからこそ描けたのかもしれない。
物語は複雑化して政府を狂四郎&バベ+エリカが倒すことを期待した人にとってはようやく二人現実世界で出会って本部から抜け出しておしまい、という展開は納得がいかなかったと思う。(タイムマシンの伏線も
ほったらかしだし)徳弘の手腕なら狂四郎達がこのあと政府を転覆するくらいのストーリーが描けたと思う。でも徳弘はあとがきに書いているが物語はロミオとジュリエットであってあくまでもラブストーリーとしてのハッピーエンドを選んだ、とあった。たぶん徳弘本人も相当迷ったのではないかと思う。
でもはじまりがラブストーリーであったこの作品を途中作者が社会派に目覚めて風刺しだしたりするより(そういう漫画、長期連載だとたまに見かけますよね)いさぎよくラブストーリーで締めたことで私はすっきりした。めでたしめでたし、というところです。



あと下ネタのない徳弘漫画なんて牛肉抜きのスキヤキみたいなもんですよ。


それにしても、ここまで設定が完成されてると
ハリウッドあたりがしれっとぱくりそうですね。
ほら、ハリウッドって日本の漫画やアニメから
設定とかなにやらけろりとアイデア盗むじゃないですか。
なんて余計な心配してみたり。


ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-12-08 17:35:18] [修正:2007-08-07 15:24:15] [このレビューのURL]

中高生時代、いわゆる青春時代に夢中になれるものがあった人は幸せだ。それは部活などのスポーツ、恋愛はもちろん「青春を犠牲にした」とまで後に語られる受験勉強ですらそうだ。
だってそれらには結果がどうであれ目標、ゴールがあるから。スポーツなら大会優勝とか記録を出すとか恋愛なら好きな人と結ばれること、受験勉強は第一志望校への合格とか明確な未来へのビジョンがある青春。これを幸せといわずとして何といおうか。
ほとんどの人間は将来これといって目標がなく明確なビジョンがない、うだうだだらだらのらりくらりの「無駄な時間」をすごした青春時代を送っているのである。
青春時代の少年少女を主役にした漫画はほとんどがスポーツや恋愛のドラマである。
目標だゴールがあるとストーリーの基本、「起承転結」あって大波小波のメリハリがついて読者を引きずり込めるからだ。
しかし敷居の住人には誰一人目標だのゴールだのない。起承転結の起と承を延々と繰り返し転?結?な締めくくりである。しかしこれこそが
「無駄な時間」をすごした青春そのものなのである。
事件も何にもないのにその「無駄な時間」をすごした青春を漫画にして読者を引きずり込む志村貴子の力量はすごい。「日常の空気」をそのまま原稿用紙に描ける稀有な作家だと思う。
「なんにも事件らしい事件はおきないじゃないか」と読んでいてイラつく人がいるかもしれない。そういう人はきっと目標がある青春時代を送った人か、目標がある青春時代にあこがれていた人だと思う。(もしくはそういった青春期真っ最中)
この漫画を読んで面白いと感じた人は「無駄な時間」をすごし、そのなかでイラついたり自己嫌悪したり悪態ついて八つ当たりしたり敷居キャラのうだうだな日常に共感できるところがたくさんあったに違いない。

ついでに私は見事なまでに「無駄な時間」をすごした青春時代派なので敷居の住人の世界が心地よくて仕方がない。それは決して青春時代へのノスタルジーからではなく青春時代から今でも延々と続くうだうだだらだらのらりくらりの日常を敷居の住人から感じ取れるからだ。
ゴールなき日常、事件のない生活、ほとんどの人間の人生なんてそんなもんですよ。



ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-12-10 18:44:37] [修正:2007-08-04 20:01:12] [このレビューのURL]