「まれら」さんのページ

総レビュー数: 112レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年02月12日

新聞四コマのような普遍性をあえて捨て、続けて読まなければ理解できない深くて狭い世界を綴っている。よくある四コマだと思って適当な部分だけをつまみ食いしても、あまり面白くないだろう。四コマのくせに「順を追って」「続けて」読まなければ味が出てこない面倒な作品。
その代償としてキャラクターの確立は大成功で、小ネタの積み重ねで時代や人物像を浮き彫りにしていく手法はなかなか見事である。郷愁にゆるいギャグを織り交ぜやがて感動へもっていく構成が、最初から意図されたものかどうか不明だが、間延びしながらもなんとかフィナーレまで描き切っている。
怠惰で無意味な大学生活を経験した覚えがある者にとっては、じわりと記憶が蘇るような作品。

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[投稿:2008-01-15 21:05:02] [修正:2008-01-15 21:05:02] [このレビューのURL]

藤子作品だからといって教訓や風刺を期待してはいけない。ひたすら喪黒の独善ぶりを描く話であり、ブラックユーモアを一層推し進めた形でピカレスクものに近い。
まんが道やハットリくんの著名度のせいでかすんでしまっているが、本作や変奇郎・魔太郎などの作品群も強烈な印象を残す名作である。世間が思う以上にブラックな要素の強い作者だと思うが、自身の子供向けの作品やF氏の呪縛でブラックな作品にスポットが当たらないことは残念に感じる。
随分前にアニメ化されており、大平透氏の怪演が印象的だった。今読み直してみると喪黒の台詞で大平氏の声が蘇ってしまう。

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[投稿:2008-01-14 17:09:20] [修正:2008-01-14 17:09:20] [このレビューのURL]

一言で言えば野球ギャグなのだが、現実の試合にとどまらず、テレビ・スポーツ新聞・野球漫画などもごっちゃにしてパロディにされていく。野球の知識はほぼ不要で、むしろ往年の選手のキャラクターを知っていたほうが笑える。(ただ、土井や高田、広岡あたりのネタが今の読者にどこまで伝わるか疑問ではある。)
鋭いパロディの連発で選手を茶化していくのだが、不思議と嫌悪感はない。おそらく根底にスポーツや報道に対する思い入れが感じられるからだろう。
コマ内にごちゃごちゃ書きもまれている作者のツッコミなどが妙におかしい。

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[投稿:2008-01-13 20:14:51] [修正:2008-01-13 20:14:51] [このレビューのURL]

ヤクザネタであり、ややくどい画風と相まって少し敬遠する向きもあるかと思う。
ただ内容は面白い。一言で言えばバカで下品でくだらない作品だが、ここまで徹底すれば文句ない。「頭からドリルが生える」だの「地底人と兄弟」だのといったギャグの設定になぜヤクザが必要かということからして可笑しい。組長やサブがギャグの中心ではあるが、黒田の醒めたツッコミぶりも見逃せない。
各話の間に挿入されるページのイラスト風ギャグが時々ツボにはまり、「ニョロ−レロ−ゲルロ」では死にそうになった。

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[投稿:2008-01-12 10:35:19] [修正:2008-01-12 10:35:19] [このレビューのURL]

8点 壁男

[ネタバレあり]

表題作は「壁男」だが、雑多な作を詰め合わせた短編集になっている。前半部は表題作を中心とする現代社会もの、後半部(第二部)は幻想SFが収録されている。傾向も時期もバラバラで、統一的な評価はできない。以下各話寸評。
「壁男」現代社会を舞台とするホラー的作品だが、宗教や伝奇などの背景を持たずに展開する作風が却って異質。隣接するのに見えないという実に地味な恐怖をうまく描いているが、描写は漫画ならではのもののように感じる。何故映画化(未見)されたのかわからないが、あまり目立つ作品にはならないように思う。(6点)
「ブラック・マジック・ウーマン」随分古い作品で、コミカルなホラーという不思議な世界。(5点)
「鰯の埋葬」会社(組織)の持つ狂気は、繰り返し描かれるテーマ。本作では宗教を絡めてやや猟奇的に描写されている。(6点)
「会社の幽霊」これも組織の狂気ぶりを描くシリーズ。(5点)
「夢の木の下で」モボクが登場する話の一つであり、「遠い国から」のシリーズの原点となるエピソード。幻想的なストーリーの最後で一縷の希望を示して終わっており、第四信で壁越えが成功したことが暗示されている表現に繋がっていく。(7点)
「遠い国から第一信」既評(8点)
「遠い国から追伸カオカオ様が通る」前作の続きとして位置づけられており、旅情と虚無に溢れる展開が引き継がれる。ただ前作から15年以上の制作間隔があり、絵柄やストーリーは随分異なっている。カオカオ様の意味が最後まで語られないところが不安感を煽る。(7点)
「第三信ナルム山紀行」ナルム馬の解説のシュールさが凄い。(6点)
「第四信荒れ地にて」連作の最終作になると共に、主人公の旅の終着点になるのだろう。モボクや壁の現在が語られるが、「夢の木の下で」で示された希望とは裏腹に、絶望や虚無で終わっている。荘厳なラストは圧巻。(8点)

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[投稿:2008-01-12 10:34:11] [修正:2008-01-12 10:34:11] [このレビューのURL]

HPのシュールなイラストに惹かれて読んでみた。緩い萌え系の漫画を予想していたのだが、終始一貫して特有の暗さがあり、何か特異な印象を受けた。癒しや萌えと言うには少し陰がありすぎるし、ギャグというほど笑うようなものでもなく、今一つ位置づけを図りかねる感じがする。あえて言えば昔話の印象かも知れない。
ただキャラクターは完成されており、グッズやイラストには向いているだろう。

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[投稿:2008-01-12 03:16:27] [修正:2008-01-12 03:16:27] [このレビューのURL]

作者初の青年誌連載と言うことで、他の作品と比べると随分露出度が高い。(と言っても、今時は中学生でも喜ばない程度だが。)
あるいは制作側の意向であって作者の本意ではないのではないかと思ったのだが、後書きを見ると結構楽しんで描いているようである。
内容は良くも悪くも相変わらずで、超マイルドな味わいの割には本格的なSF仕立てになっており、考証も細かい。この路線でもっと読んでみたいと感じた。

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[投稿:2008-01-07 01:06:58] [修正:2008-01-07 01:06:58] [このレビューのURL]

6点 異界録

阿鬼と五行先生を主人公にした民話的作品と、独立した志怪小説的な作品が交互に並べられているため、あまり牧歌的にも陰惨にもなり過ぎず、心地よいバランスを保っている。以下各話寸評。
「犬土」軽い蘊蓄作品だが、アンチクライマックスの結末が却って深い余韻を残す。異世界の導入には程よいジャブになっている。(6点)
「異界録」表題作だけあって本格的な怪異談。虚実の境界をわざと曖昧にした導入から瞬く間に異世界へと話が移り変わり、まるで山海経の世界を思わせる幻想的な作品。(7点)
「妖鯉」阿鬼たちも登場するが狂言回しに止まっており、何か昔話を聞くような味わい。(5点)
「幽山秘記」性善説・性悪説や輪廻を題材にした面白い話だが、あまりにテーマが深く、その上登場人物がビッグネーム過ぎて、消化不良に陥っている感がある。長編で読みたい。(7点)
「鬼城」阿鬼と先生の出会いのエピソード。見鬼としてのデビューがいきなり殷墟という大物ぶりを発揮する阿鬼が見事。(6点)
「小人怪」寓話のような味わいだが、グロテスクにして滑稽な小人たちに妙な味がある。ストーリーとしては一番面白いかも知れない。(7点)
「魔婦」阿鬼のモテモテシリーズその1。春蘭が可愛い。(6点)
「三呆誤計」他作と打って変わったようなコメディ作品。道術ネタのドタバタギャグというのも類を見ない。(5点)
「花仙境」阿鬼のモテモテシリーズその2。(みょうがネタを引っ張っているし、本当にシリーズとの認識かも知れない。)公英が可愛い。(6点)
「毛家の怪」比較的軽い話が続いた後に来る怪談。時代設定も他と異なるようで、かなり異質な印象を受ける。(6点)
「連理樹」仏教的な題材が取り上げられるのは珍しい。ラストはやはり突き放したようなアンチクライマックス。(6点)

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[投稿:2008-01-07 01:06:01] [修正:2008-01-07 01:06:01] [このレビューのURL]

最初期から10年間程度の範囲の短編集。作者自身が後書きで語るようにホラー中心になっている。同じホラーでも絶叫する類ではなく、背筋がぞくりとするようなものが多い。以下寸評。
「不安の立像」日常に潜む実体のない恐怖を描く。デビュー間もない頃の作(デビュー作との表記もあり)でありながら、既に完全な諸星ワールドを形成している。(6点)
「子供の遊び」謎の生き物が実に猟奇的で、おぞましい姿なのに見入ってしまう。同様のモチーフはその後の作品の中に繰り返し登場する。結末も秀逸。(7点)
「復讐クラブ」シニカルな小品だが、毒の利いたオチがいい。(5点)
「海の中」穏やかな詩情漂う作品。こう描けばいかにも美しい話のようであるが、その実は水死体のモノローグというところが異様。(5点)
「ユニコーン狩り」作者は照れているが、きわめて真っ向から夢と向き合ったファンタジー作品。すべての作品の中で最もポジティブな作かも知れない。『今年はじめて見る一角獣』のフレーズが実に美しい。思春期の不安定な精神状態を直撃すれば、人生が変わるかも知れない。子供の頃に読みたかった。(9点)
「真夜中のプシケー」比較的正当なホラー漫画。装丁(表紙)のモチーフにもなっているようで、基調となる位置づけかも知れない。(6点)
「袋の中」猟奇的な作品であり、殺人や屍姦など何でもありなのだが、それ以上に人間の心理描写の方が怖い。(6点)
「会社の幽霊」近代社会の脆さや組織の異常さを描きながらも、妙に戯画的なドタバタに帰着するところが可笑しい。ブラックユーモアの味わい。(5点)
「子供の王国」頽廃的な味わいの中に奇妙な不安感が織り込まれている。面白い話なのだが、読むのが苦痛なほど嫌悪感を感じてしまい、それでいてどうしても読んでしまう。作者はロリコンに対するカリカチュアである旨の自己評をしているが、幼女街娼のくだりなどは作者一流のリアリズムに溢れ、軽薄な批判以上の黒い世界を感じさせる。(8点)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-01-03 16:41:10] [修正:2008-01-03 16:41:10] [このレビューのURL]

作者特有の多様な作品群ではあるが、現代から近未来を舞台にしたSFが中心。例えば「不安の立像」等と比較すると、怪奇的な作品が少なくなっている替わりに、虚無的な作品の比率が高いように感じる。以下寸評。
「商社の赤い花」大企業の異常性を描くシリーズに入るのかも知れないが、一層諦念的で悲惨な印象。(6点)
「食事の時間」このまま映画化しても面白そうな近未来SF。醜悪な話ではあるが、シニカルさが先に立つ。(7点)
「夢みる機械」コメディタッチの軽い作品ながらよくできた話。星新一の短編のような印象。ただ、収録作の中では最も作風が異なり、なぜ表題作になったのかは疑問。(6点)
「猫パニック」社会の脆さをドタバタで描く小品。事件の異常さと発端やオチの矮小さがおかしい。(5点)
「地下鉄を降りて…」誇張やデフォルメはあるものの、基本的には虚構ではなく現実の描写。都市自体が持つ狂気をじわりと描いており、2度目に読んだら怖くなった。(6点)
「遠い国から」虚無的な作風の嚆矢になるかと思う。淡々と綴られる旅行記の体裁で展開する絵物語だが、文章もきわめて美しく、そのまま朗読しても詩として成立しそうな気がする。大好きな作品の一つ。(8点)
「感情のある風景」虚無的な作風ながら、前作の「遠い国から」とは絵柄も技法も異なる。恐怖や絶望の内容を語らず、感情を失うという虚構を通して読者により大きな恐怖と絶望を感じさせる。(8点)
「地獄の戦士」珍しいハードSF。ブレードランナーをバッドエンドにしたような印象。(7点)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-31 02:51:35] [修正:2007-12-31 02:51:35] [このレビューのURL]