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総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

5点 彼岸島

[ネタバレあり]

<22巻までの評価>

ご多分に漏れず、長期連載の弊害で凡作に成り下がってしまった典型。10巻辺りまでは面白いが、それ以降の巻を買ってまで読む価値があるかは微妙なところ。

同じ「吸血鬼」を題材にした漫画としても「ジョジョの奇妙な冒険」の二部までと比較すると、明らかにオリジナリティや展開の意外性などで負けてしまっている。

よくある吸血鬼ホラーを和風テイストに仕上げた序盤は、独特な世界観といくつかの伏線や謎解き要素が上手く絡み合っていて、先が気になる展開だったが、ここ最近は、ほとんどアクション映画のようになってしまっている。特に「姫」との戦いなどはインディ・ジョーンズの映画かと思うようなリアリティの無いアクションシーンの連続で、見ていてシラけてしまった。絶望的な状況や強大な敵が現れるほど、主人公サイドの「ご都合主義度」もアップしていくという展開が多すぎるので、もう真面目にハラハラする事は出来なくなっている。逆に普通のザコ吸血鬼は弱すぎて、最近では障害物レベルの扱いで、これまた緊張感が薄い。それに加え、長期連載でダラダラと引き延ばされているせいで、一回毎の戦闘シーンも長くなっていて、余計に間延びした印象になっている(蜘蛛ババアとの戦いなど二巻近く費やしている)。

また、基本的に「島」という閉鎖空間が舞台という事もあって、ビジュアル的な変化に乏しいというのも難点。本来、閉鎖空間という舞台はアクションにしろ謎解きにしろ「短期決戦」というシチュエーションがあってこそ魅力が出せるもののはず。展開がダラダラし出すと閉鎖空間というシチュエーションが大きくマイナスに働く。これも長期連載ゆえの弊害。

あれだけ引っ張ってきた雅に関わる謎も、結局「日本軍の生物兵器の研究」オチというのも陳腐。同じく「ジョジョ」のDIOと比べるとボスキャラとしての魅力やカリスマ性にも欠けている。要するにそこまで凄そうに見えないのだ。

また、この作者の描く画にも好き嫌いが別れるだろう。何年も描いている割にほとんど上達が見られない。特に女性キャラの魅力の無さと横顔のデッサンがひどい。全体的に黒目をはっきり描かないので目にも表情が無い。

その他にも色々と突っ込みどころはあるが、何よりもこれ以上引き延ばしてしまうと、それこそ凡作から駄作に成り下がって終わってしまう可能性がある。

もうすでにやるべき事はやっているのだから、今後、ダラダラとした引き延ばしは止めて早期に終了すべき。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-17 20:08:47] [修正:2008-02-17 20:08:47] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

<1巻のみの評価>

若き日のラオウが拳王として覇業を目指す物語。

試しに1巻を買ってみたけど、最大の地雷はやはり絵柄。いくらなんでも原作の絵柄と違いすぎる。原哲夫氏のハードなタッチから一転、この白黒を強調したポップなデザイン風のタッチは、およそ世紀末には似合わないw。

ストーリー自体はラオウが拳王になる過程を描いていて、黒王との出会いや、聖帝サウザーとの戦いなど、原作では触れられなかったエピソードは興味深いところだが、やはりあの絵柄がどうしてもダメ。

また、劇場版『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』のオリジナルキャラクターが、「あの」ラオウとタメ口をきいているのにも大きな違和感がある。キャラデザ的にも魅力に欠ける。

「北斗の拳」ファンで、この絵柄にまったく違和感を感じない人にならお奨め出来るかも知れないが、個人的にはちょっと無理。

結果、1巻で挫折。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-17 19:30:08] [修正:2008-02-17 19:30:08] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

きちんと全体の設定や構図を考えて、丁寧に謎や伏線も張ってあるが、それが返って物語全体をこじんまりとさせてしまった感がある。「寄生獣」と違い、作者が心から描きたい作品というより、頭から入っていった作品といった感じ。

序盤のストーリー展開には非常に興味をかきたてられるが、主人公を始め、ほかの登場人物の反応も、また世界全体の反応も妙に淡々としているので、本来もっと面白く、スリリングな展開に出来そうな設定なのに、いつまで経っても盛り上がって行かないもどかしさがある。

確かに謎解きに関しては説明すべき部分は綺麗に説明してある。ただ残念ながら、その「宇宙人オチ」といった基本設定に意外性が無く、はっきり言えば、どうでもいいような細かい謎解き(旗の紋様の謎、祭りや地形の説明など)に終始してしまった感がある。

主人公以外の登場キャラクターの存在理由も中途半端で、この辺もあまり上手く動かせているようには思えなかった。

丁寧な作りではあるが、テンポの悪さや意外性の無さが足を引っ張っており、何度も読みたくなるような作品ではないのが惜しい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-11 21:46:05] [修正:2008-02-14 01:05:13] [このレビューのURL]

7点 バキ

[ネタバレあり]

このシリーズも前半までは「予想は裏切り、期待は裏切らない」だったが、後半からは「予想は裏切り、期待も裏切る」という、単なるサプライズ漫画に成り果てた。

「グラップラー刃牙」は真っ当な格闘漫画として完成されていたし、この「バキ」も序盤の死刑囚登場のインパクトは凄まじいものがあった。実際、独歩の手首をワイヤーで切断したり、爆薬を使ったりするのを見ると、「そこまでやるか!」と戦慄したほどだった。しかも、その死刑囚たちを狩る怪物、オリバの登場など、先が読めない展開にワクワクしたものだ。

しかし中盤辺りから勇次郎レベルの戦闘力の持ち主かと思われていた死刑囚たちがだんだんと劣化していくようになる。戦闘も花山vsスペック戦が頂点で、それ以降はちょっと小競り合いをしたらどちらかが逃亡、もしくは邪魔が入るというパターンが増え、無駄な時間稼ぎ(つまりページ稼ぎ)のせいでグダグダな展開になっていく。

特にドリアンと柳の結末はひどい。意外性はあっても、その展開は到底納得の行くものとは言い難かった。ドリアンは逃亡がしつこ過ぎてグダグダで意味不明な終わり方に。また、もともと暗器使いの柳が、「武器に頼っているからダメ」という理屈で、同じく武器を使っている本部ごときに何故あそこまで遅れを取るのか?。さらにそこへ勇次郎が乱入して滅茶苦茶な幕引きに。せめて因縁のライバル、渋川と戦わせて欲しかった。あげくドイルもシコルもヘタレ化し、はっきりとした結末が無いままに何故か中国の武術大会「擂台賽」へと話が進む。

オリバvs書文、勇次郎vs郭は多少なりとも盛り上がったが、結局、強大なパワーの前に技術は負けるというオチ。おまけに「血統シリーズ」への伏線として出したはずのキャラ、範海王がその名前から早々に読者に予想され、あっさりとアライjr.に瞬殺→退場w。

しかも擂台賽後、今度は鳴り物入りで登場した(恐らく当初の予定では範海王同様、バキのライバルとなるはずであった)そのアライjr.が金的でバキに瞬殺→退場w。範、春成に続き「いったい何だったんだキャラ」の三巨頭w。

ここに「予想は裏切り、期待も裏切る」板垣流が完成した。

確かにその場のインパクトは強いし、先の読めない展開や強烈なキャラクターたちには期待してしまうだけの魅力が備わっていると思う。しかし全体を通して読むと、その場しのぎをしているがゆえの整合性の無さや、無駄な先延ばしが際立ってしまうのが痛い。

死刑囚編前半10点、死刑囚編後半5点、擂台賽編8点、アライjr編からラスト2点で、平均6.5点。おまけで7点辺りが妥当な評価。


☆☆☆勝手に死刑囚レビュー☆☆☆

1位・ドリアン

海王の称号を持つだけの事はあり、拳法の技術体系は完璧。それに加え超人的な肉体、卑怯な手段を平気で使う精神性、強力な催眠術など、死刑囚の中でも群を抜いて凶悪キャラ。小細工を弄さずともメインキャラを圧倒するだけの戦闘力を持っていた。ゆえに後半、「武に対する心構え」という精神論だけで独歩に一方的にボコられる展開には納得がいかなかった。その後、烈との絡みで完全に着地点を失いグダグダな展開に。遊園地のシーンで終わっておけば…。

2位・スペック

本人の望み通りすべてを出し切って敗北した唯一の幸せな死刑囚(笑)。今見れば戦い方に卑怯なところはなく、武器を使う時もその場にあるものだけを使うという潔さ。相手が花山で良かった。

3位・柳

天才ゆえの器用貧乏?何にしても本部に遅れを取ってしまった地点で株価大崩落。いまだに「武器に頼っているからダメ理論」はよく分からない。あげく勇次郎の乱入で無理やり退場させられた。

4位・シコル

勇次郎、オリバ、ジャック、バキ、ガイア、と悉く戦った相手が悪かった。指の力が凄いというのも売りとしては地味すぎ。他に特化した部分が無いのが痛かった。にしても猪狩に拘束された時に頭を撃たれてたら終わってたんじゃないの(笑)。

5位・ドイル

肉体的資質は他の死刑囚に劣らないだろうが、身体に仕込んだ刃や爆薬に頼り過ぎていたためか、真っ当な空手家や拳法家を相手にすると手も足も出ない弱さ。あと負けそうになると逃げすぎ。また一番どうしたいのか分からないキャラ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-13 22:56:23] [修正:2008-02-13 22:56:23] [このレビューのURL]

<1巻のみの評価>

これもどこでも評価が高めなので試しに買ってみたが、個人的にはまったく受け付けないタイプの漫画だった。

まず読んでビックリしたのは、タイトルから格闘漫画かと思いきや、ギャグ漫画だったことw。一応、格闘シーンもあるが、本質はギャグメイン(1巻のみの評価)。

しかも作者の木多康昭氏は、以前から内輪ネタ(他の作家とか編集者)やら、芸能ネタ、時事ネタ、下ネタなどを刹那的に連発する事で、色々と物議を醸していた人らしい。

当然、ギャグも時事ネタ、芸能ネタ、下ネタ全開なので、賛否両論出るのも当然かなと思う作風。

確かに刹那的であるがゆえの勢いはあるから笑ってしまうシーンもあるけど、笑いとしては「バカバカしい事を真剣にやる」とか、「真面目にボケる」というパターンで、特に目新しい笑いは無い。

また、かつてジャンプで描いていた割には、はっきり言って画は見れたレベルじゃない。表紙はまともだが中身はヒドい。ヘタウマではなく、本当の意味でヘタ。画力以前に、色々な意味で全体のバランスが悪い。逆に言うと、真っ当にデッサンなんかの勉強をしている人にはとても描けないし、始めから描かないシロモノ。根本的に本人に「見る目」が無いがゆえに堂々と描けてしまうという典型。

まあ、その場の笑いが取れれば良いという割り切った作風の良し悪しは置いておくとしても、これを五年後、十年後に読んでも同じように笑えるとは思えない。

ある意味、「刹那的」=「その場だけのお手軽な笑い」というのは、まさに現代人向けの消費型漫画そのもの。

はっきり好き嫌いが分かれるタイプの漫画なので、バランスのためにこの点数で。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-12 00:15:32] [修正:2008-02-12 00:15:32] [このレビューのURL]

7点 CLAYMORE

[ネタバレあり]

3巻まではキャラや世界観の構築のためか、いまいち盛り上がりに欠ける印象だったが、4巻から加速度的に面白くなっている。

迫力やインパクトが足りないと思っていた敵キャラに、「覚醒者」という強大で魅力的な怪物を出したことで、それを狩るクレイモア側にも魅力が出てきて、相乗効果的にキャラに深みが増している。

戦闘シーンはジャンプ特有のインフレバトルに近いが、クレイモアの設定上、「一対複数」というバトルも多いため、あまり不条理な勝ち方や負け方は少ない(あくまで私見だけど、今後、インフレで長引かせる事はないはず。あの世界設定で、さすがに「深淵の者」以上の存在が出てくるような無節操な展開になる可能性は低いし、あっても組織の内部抗争や秘密に関したラスボス的な存在の場合だけだろう)。

ただ、基本的に女性キャラばかりで、デザインも似通っているので見分けがつきにくい事や、「異常食欲者」と言われるように、欲望に負けたから覚醒したのに、妙に覚醒者が人間的で冷静だったりと(イースレイやリガルドなど)、突っ込みどころや不安定要素はあるものの、今後も先が気になる作品である事は間違いない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-11 21:31:51] [修正:2008-02-11 21:31:51] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

ある意味、エッセイ漫画の最終進化形と言っても過言ではないかも。まさに心身を削って描いている。

日記形式やノンフィクションである事が大前提であっても、必ずしも実際にあった事を正直に描いているとは限らない、もしくは作品として客体化した地点で作者の真実からも離れていく、という点が、漫画や小説だけに限らず、受け手と送り手の双方が抑えておくべきポイントであり、そういう意味において、この作品における「現実と物語(虚構性)との重ね合わせ」の手法は非常に独特で興味深いものがある。

そうして現実の人間関係や自分の身の周りの出来事をカリカチュアライズする事で、現実の中に見え隠れする真実をより強烈に浮かび上げる事に成功してる。それこそ自分の心身を削るような思いで描いているがゆえに強烈に訴えかけてくるものがある。

しかし、この作品の面白さと危うさは、これまでのシリーズ(?)の経緯や作者の性格などを知っていて、かつまた、そんな作者自身の煩悶や自己否定などに感情移入できる程度に大人の読者でないと、たぶん伝わらないのが惜しい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-11 11:17:22] [修正:2008-02-11 11:17:22] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

あくまで今見るとバトル漫画としては物足りないが、原作小説が書かれた時代を考えれば、出てくる忍者の使う奇抜な忍法のアイデアの数々は非常に斬新で秀逸。

現代のバトル漫画のように戦闘シーンにおいて複雑な戦略や心理戦がある訳ではないが、ゴム人間とか、ステルス人間、写輪眼の原型とも言える「瞳術」などなど、今あるバトル漫画に出てくる「特殊能力の原型」がほとんど出揃っているというのはスゴい。

ストーリーや人物描写に深みは無いが、その分、伊賀と甲賀の忍者同士の10対10マッチはテンポが良く、全5巻ですっきりあっさり話が終わるところが潔い。

ぽっちゃり型の女性の絵柄などもエロくて良い(笑)。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-11 10:38:41] [修正:2008-02-11 10:38:41] [このレビューのURL]

「受験漫画」としてほとんどギャグやラブコメを廃し、かなり真っ当に受験ノウハウの教授に取り組んだ作品。そういう意味では斬新。

もちろん、この漫画のやり方だけで東大に入れると本気で思った人はまずいないだろうが、仮に、この漫画を読んだからと言って受験に落ちるような受験生はもともと勉強が出来ないだけ。東大入試以前の問題で、漫画のせいにするのはお門違い。

勉強法としてはかなり理想論的な部分も多いが、それでも勉強の仕方や取り組む際の心構えなど、方法論としてはなかなか参考になる部分もあり、読んでも損は無いだろう。受験に限らず役に立つ場面もあるはず。

ただ、受験ノウハウが中心なので、ストーリー性や登場人物が醸し出すドラマ性が薄いのは確か。漫画として面白いかどうかは微妙なところだが、とりわけ酷評するほどの内容でもない。最終話はだいたい予想通りの展開。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-09 22:00:46] [修正:2008-02-09 22:00:46] [このレビューのURL]

3点 蟲師

<1巻のみの評価>

どこでも高評価なので買ってみたが、妖怪、オカルト、民俗学などに興味のある自分には逆に合わなかった。

世界観やテーマを含め、柳田國男のような民俗学的な見地から、人間の感情や精神性などから表出する現象を「蟲」というイメージに還元しているようだが、漫画としてはあくまで「雰囲気」優先で、あまり中身があるようには思えなかった。

蟲の定義も、「生」と「死」、「物質」と「非物質」の狭間の存在という感じだが、それとは別に「幽霊」という概念も存在しているようで、非常に曖昧。現象的にも何でもアリで、この辺の曖昧さをどう受け取るかで評価は変わるだろう。時代設定がはっきりしないというのも、やはり中途半端な印象に拍車を掛けている。

またストーリーが基本的に一話完結な事と、主人公以外、その場限りのキャラがほとんどなので、この陰鬱でノスタルジックな世界観や絵柄などにハマれないと、他に読み続けさせる原動力が無いので、辛いものがある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-09 21:14:12] [修正:2008-02-09 21:14:12] [このレビューのURL]