「とろっち」さんのページ

ちょっと旅行に行ったり学校でイベントがあったりすると周りで殺人が起こるという不幸な星の下に
生まれた高校生が、ジッチャンの名にかけて犯人を指名し、指名された人がもれなく自白するお話。

推理小説を漫画というジャンルで描き、さらには犯人当てを読者参加企画にするという手法は
当時あまりにも斬新で、数多のフォロワー作品を生み出し、その功績は計り知れません。
有名作だけに批判の声もあり、中でも特に多いのが「こいつら殺人事件に遭遇しすぎ」というもの。
それは超長期連載だけに仕方ないとは思うんですけどね。
事件に巡り会うのも名探偵の証とはよく言ったものですけど、あれだけ目の前で何十人も殺されても、
金田一はもちろん、美幸まで精神障害やPTSDに悩まされることなく平然としているのは凄いですが。

むしろそんなことより他にツッコミどころが満載のこの作品。

金田一は公式に捜査協力を依頼されたわけでもなく、単に警部や警視と個人的に仲が良いだけの
民間人なのですが、捜査に関する情報(もちろん個人情報含む)が事細やかに入ってきます。
これって警察の重大な守秘義務違反じゃないのかなと思うのですが。 本来は懲役刑の対象です。

また、覆面や包帯を顔面に巻いた人物が頻繁に登場するのも気になります。
最初は叙述トリックが使えない漫画ゆえの苦肉の策かなと思って読んでいましたが、あまりにも多すぎ。
しかもこの人たち、結構活発に活動したりして、颯爽と現れてホテルなどに泊まったりもします。
明らかに怪しいです。 殺人に関係なくいろんな意味で。 ホテル側も身分等を確かめずに泊めてたり。

でも一番納得いかないのが、金田一が勝手に捜査し始めて容疑者たちが邪魔くさがったとき、
「この少年は名探偵・金田一耕助の孫なんだよ」「な、なんですとー!?」
いやいや孫だからって関係ないでしょ。 金田一耕助本人が来てそのリアクションならわかりますが。
普通なら「ふーん、お爺ちゃん有名だね。 で?」ってなるレベルの話かと。

確かに探偵ものとしては話が破綻している部分もあるかと思います。
派手な展開を好むことで有名な現在の原作者になってからは、人を殺すためにトリックを
考えるというよりは、トリックを見せたいがために人を殺すようにしか見えなくなってきました。
犯罪芸術家とか怪盗紳士とか訳の分からん者が出てくるようにもなり(コナンに対抗したのか?)、
現実的な感覚とはかけ離れてちょっとカオス気味にもなってきます。

ただ、再読に適していない推理漫画というジャンルながら、特に初期の話は何度読んでも楽しめます。
これはストーリー部分の構成がよく練り込まれていて秀逸ということでしょう。
質が低下してしまった最近では、私なんかは真剣にトリックを推理するというよりも、楽しみ方としては
秀逸なミステリー…ではなく、何人も人を殺すほどドロドロの人間ドラマ、あるいはいつ誰が死ぬのか
(いつものメンバー以外ですが)わからないサスペンス、として読んでいます。
感覚としては年配の人が水戸黄門やら暴れん坊将軍やらを楽しむ感覚に近いのかもしれません。
いつも同じような展開になる、言わばパターンが決まっている作品(悪く言えばマンネリ)ですが、
そのマンネリが楽しめる作品。
一度好きになってしまえば、いつまででも読み続けていられそうです。

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[投稿:2011-11-10 00:24:23] [修正:2011-11-10 00:27:02]