「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

はい、今さらながらドラゴンボールです。
何だかふと急に思い立って10年ぶりぐらいに読んでみたんですが、実に楽しかったです
(面白かった、とはちょっと違います。 詳細は後述)。

フリーザまでは15点ぐらい付けたいところです。
自分は実は漫画よりも一般書籍で育った人間なんですが、少なくともこの漫画(と他にいくつか)は、
もう単なる漫画の枠を超えて、自分の人生を形成した要素の一部といっても過言ではないです。
今の若い子たちにとってワンピース等がどれほどの存在かはよくわかりませんが、
子供たちをこれほどまでに熱狂の渦に巻き込むような漫画はもう出てこないかもしれませんね
(ワンピースのコミックスは半分ぐらいは大人が買っている印象があるので、
 純粋に子供たちを熱狂させるのとはまたちょっと違う感じがします)。

大げさな表現ではなく、本当に当時(自分が小学生ぐらい)は、ドラゴンボールを読んでいないと
友達と会話にならなかったんですよ。
トランクスが新キャラで出てきたときはクラス皆でその正体について真剣に話し合ったりとか、
クリリンと天津飯どっちが強いかでケンカになりかけたりとか、
「色を表す漢字を使った熟語を書きなさい」という国語のテストで「桃白白」って書いて
先生に怒られた子が何人もいたりとか。

読んでいて、そういう思い出が鮮明に蘇ってきて、実に楽しかったです。
ではなぜ10点ではないのか?
宇宙で一番強くて悪いヤツを、千年に一人現れる伝説の超戦士が倒す、という完璧なクライマックス。
強さの頂点まで達してしまったのに、あれ、まだ上があるの? しかも人造人間って……。
で、あの当時読むモチベーションがガクッと下がりました。子供心に悲しかったんです。
大人の事情というものもわからなかった年頃なので。
セルゲームとかはまだ皆でワイワイ言いながら楽しめましたが、
魔人ブウ編の頃はもう冷めちゃってました。読んでましたけど。

それでも、そうなるまでは毎週月曜日(ジャンプ発売日)と水曜日(TVアニメ放映日)は本当に本当に
待ち遠しくて楽しみでした。
自分が漫画であれだけドキドキワクワクすることは残念ながらもうないでしょうね。
何て言ったって、この作品には夢があります。 楽しいと思えるものが一杯に詰まっています。
思い出補正、などと言いますが、この作品は本当に良い思い出を与えてくれました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-26 23:09:21] [修正:2010-09-27 23:37:12] [このレビューのURL]

出所したヤクザが、なぜかケーキ屋に転身していた組長やその娘を助け、不慣れなままに
ケーキ屋としてがんばっていくお話。
絵柄も物語の設定もかなり好みなのですが、読んだ感想は、見事に面白くないです…。

面白くなりそうな要素をたくさん抱えていながら、なんでこんな中途半端な話になってしまうのか。
闘争とか喧嘩とかのシーンが多く出てきますが、見せ方もうまくないですし、
そもそもそんなシーンがこの作品にたくさん必要だったんでしょうか。
もっと人情系で進めていった方が良かったように思います。
登場人物もそれぞれクセのある人物ばかりで良さそうなんですが、会話が全く面白くないので、
登場人物に魅力を感じることが難しいです。

絵柄が綺麗なのが唯一の救いですかね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-26 22:49:30] [修正:2010-09-26 22:49:30] [このレビューのURL]

富江さん、何度も殺されたり分裂したり増殖したり再生したりして、大忙しです。

好意的に表現すれば、不条理で意外性のあるストーリー展開。
しかしてその実体は、理解の範疇を遥かに超越した意味不明な展開。
話の論理的な展開とか常識的な発想などとはもはや違う次元で繰り広げられる潤二ワールド。

もともとは作者が「死んだはずだよ、お富さん♪」と鼻唄を歌いながら構想を練った、とかいう、
何だかもうよくわからない話 (この歌を知らない人は初期のこち亀でも読んでみましょう)。
ホラーなのかギャグなのか、ネタなのかマジなのか、全てが紙一重。

ただ、この人の繊細な絵柄や独特な作品の雰囲気、気味の悪さはやっぱり凄いです。
この作者のホラーは、夜にトイレに行けなくなるような部類の怖さではないですが、
生理的な嫌悪感、不快感といったものをビシバシ刺激してきます。
作品にしても、読めば読むほどはまっていくような魅力や中毒性、面白さを備えていて、
さすが幾度となく映像化されただけのことはありますね。
現代におけるホラー漫画の第一人者、ここにあり、といった感じです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-21 01:25:04] [修正:2010-09-21 01:31:11] [このレビューのURL]

6点 RIDEBACK

突き抜ける。 光が溢れる。
今まで見ていた世界が変わる。
踊りの世界の中でのみ生き、そして踊りの世界にいられなくなった少女が、
ライドバックと出会い、閉塞した世界を輝きを放ちながら駆け抜ける。

作中の世界情勢は作り込みがすごく、かなり練りこまれています。
幾分か穴も見受けられますが、重々しくて濃い独特の作風を演出するのに一役買っているのは確か。
美少女+メカ+軍隊、というのは結構ありがちな設定の気もしますが、
その独特の世界観と詳細なライドバックの設定、スピード感に優れた作品です。

前半から中盤にかけてはかなり面白かったですが、終盤はいまいち消化不良。
作者は主人公の琳にジャンヌ・ダルクのような役割を与えたかったらしいですが、
彼女をうまく乗りこなせず、すっかりコントロールを失ってしまったとのこと。
終盤の琳は、好きな男と一緒に世界統治軍(GGF)に武力を以って抵抗する、単なるテロリストに
成り果ててしまった感があります。
そしてその彼女の変貌ぶりに、置いてけぼり感を(彼女の親友であるしょう子とともに)味わうことに。

巻末のライドバック解説ノートがすごいです。
こんなに凝っているのを見るのは某漫画の聖衣分解装着図以来かも。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-21 01:10:46] [修正:2010-09-21 01:10:46] [このレビューのURL]

夏休み。 とある喫茶店で起こるファンタジー。 夏の間の思い出か、それとも夢か幻か。
暑さと、儚さと、どこか懐かしいノスタルジックさが同居した作品。

登場人物の多くが戦中の淑女だからでしょうか、会話が全般的に落ち着いた雰囲気でなされ、
そのために作品自体もどこか落ち着いた印象を受けます。
やっていることはドタバタなんですけどね。
現在と過去とを行き来する話なのですが、この手の話には必ずついてまわるタイムパラドックスに
関しても、工夫してうまく折り合いをつけていると思います。

現在から過去に行った時、あるいは過去から現在に戻って来た時、読者も一緒に時代のギャップを
感じてしまうような、絵柄の差異、感覚の差異、雰囲気の差異の付け方が秀逸です。
差異を意識しすぎているのか、最近は過去の描写がちょっとオーバーな気もしますが。

作中のところどころで「死」という漢字の使用を敢えて避けている場面があります。
その使い方は、読んでいて違和感を感じてしまうほど。
死が遠いところにあると思っている現代人たち。 既に死を経験してしまった彼女たち。
「死ぬ」 ではなく 「しぬ」 と柔らかい表現を使うことで示されるのは、「死」への実感の無さか、
「死」をもう二度と思い出したくない深層心理の表れか。

主人公の少年たちがひと夏の間にどんどん成長していくのも好感が持てます。
対して、彼女たちの人生は止まってしまった。 人生を謳歌する前に幽霊になってしまった。

「実は私 恋愛を経験する前に 空襲で死んじゃったのよ」
「私達が生きられるのは 夏の間だけなんだもの ……そんなの切ないじゃん」

「命短し 恋せよ乙女」 ですか…。
これほどこの言葉が似合う作品もないのかな。

「だから 生きてるあなたは 恋をしなよ!」
 

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-09-15 01:34:07] [修正:2010-09-15 01:37:00] [このレビューのURL]

現代でも世界各国でそれぞれ言葉、法律、慣習、常識、ありとあらゆるものが違います。
日本だって「日本全国」なんていう言葉が今でも残っているぐらいなので、
昔はいろいろな国の集合体だったんですよね。
東北の人と九州の人とでは会話すらもままならなかったらしいので、
そのぐらいに言葉や文化が各地域で異なっていたということなのでしょう。

それぞれの国、それぞれのムラで行われていた独自の風習。
そこで浮き彫りになるのは、皆でやれば怖くない、というのと、皆と同じことをしなければならない、
という二つの考えに支配された、排他的な発想。 集団意識の恐ろしさ。
掟を破ったものに対する「村八分」がそこに暮らす者にとってどれほど致命的か。

ただその風習も、そこで生活する人たちが必要に迫られたから始めたわけであって、
それを外部の人が見て「正しくない」なんて言っても余計なお世話なんですよね。
そもそも、正しい、正しくない、っていうのも、見た人の風習に則って判断しているわけですし。

「大切なのは そこに住んでる者が それで幸せかどーかだっぺ」

この作品に話を戻しますと、そんな日本の伝統を軸に、古来からの風習の恐ろしさを感じさせながら、
同時にしっかりジュブナイルもやっています。
漫画的な面白さを追求しながらも、作品としてのリアリティを崩さず、すっきり読みやすく、
展開の速いサスペンスとして読者を引き付ける構成の上手さ。
仲間として認められたとき、禁忌に触れたときの、村人の手のひらを返したような態度が印象的です。

まぁ小難しく考えなくても、町に生きる相浦とムラに生きる澄子との純愛物語として読むのもありです。

ラストがすごく良いですね。
一方で、こうやってまた日本からムラが無くなっていくんだな、なんてしみじみ考えてしまいました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-09-15 01:26:32] [修正:2010-09-15 01:27:07] [このレビューのURL]

毎週木曜日の放課後のみに出現する保健室。そこでは学校を卒業するための特別授業が行われる。
選ばれた者だけが受けることができるその授業とは、夢の中で、ある物を奪い合うこと。
現実世界での心の歪みを投影した異形の姿で現れる生徒たち。 本性を剥き出しにして争い、戦う。
そうして試練に勝ち抜いて卒業できた者は、皆の記憶からその存在が消えてしまうこととなる。
「卒業」 とは一体何なのか。 そして授業を受ける者の空にのみ現れる 「黒い月」……。

これは予想以上に面白かったです。
自分がこういう先の読めないミステリーやダークファンタジーな雰囲気が好みというのもありますが、
謎が謎を呼び、それらが終盤ですべて綺麗に収束されていく構成は、息を呑むほどの見事さ。
広げた風呂敷をここまで見事に畳みきった作品は他にあまり記憶にありません。
伏線の張り方も素晴らしいです。読み直しの2周目に突入して最初っから度肝を抜かれました。

伏線をちゃんと回収すれば良作なのか、と言えば、もちろん必ずしもそうとは限らないですが、
ミステリー系の作品で全体をうまくまとめることは十分に評価の対象になりえると思います。
作者の「ほぼ事前のプロットの通りに(=思い通りに)進められた」との言葉にもあるように、
打ち切りも引き伸ばしもない、恐らくは特別待遇の中で描かれたこの作品。
連載当初から計算ずくで描かれたがゆえの完成度なんでしょう。少年誌では真似できないですね。

あとはもう好みの問題かと。
主人公のヘタレ具合や半陰陽のような設定を絡めた内容、そしてラストの展開が好みに合うかどうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-09 01:07:51] [修正:2010-09-12 10:57:27] [このレビューのURL]

大ヒットしたアニメ映画のコミカライズ版。

全3巻という短い中で、登場人物それぞれに見せ場を作り、読み応えのある話にうまくまとまっています。
それは話のテーマである「人と人とのつながり」や「家族の絆」にしっかり焦点を絞って描けているから。
軸がブレない作品は強いです。
昔ながらの黒電話で電話をかけまくったり、大事な場面で手紙がポイントになるなど、
デジタルの世界を描きながらも、アナログ的な要素にちゃんとスポットを当てているのも良いところ。
小道具の使い方には多少わざとらしいところもありますけどね。

のんびりした中での緊迫した戦い。
バーチャルな仮想世界での戦いが日本の原風景とマッチして、素晴らしい雰囲気を生み出しています。
作品の展開やテンポはどこか野暮ったく、あまり洗練されていない感じもしますが、
それが逆に良い具合で郷愁を感じさせてくれます。 そんな雰囲気にやられました。
開放感と爽快感が素敵すぎます。
なるほど、この雰囲気は夏じゃないとダメですね。 だからサマーウォーズ。

青年誌に連載されていたようですが、主人公の成長、先輩との恋愛模様、強敵とのバトル展開、
読んでいるときのドキドキワクワク感、そしてすっきり綺麗なエンディング、等々、
少年誌の方が向いていたんじゃないかな、という内容でした。
映画のコミカライズ版としてだけでなく、漫画作品としても良い出来だと思います。 良作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-09 00:56:36] [修正:2010-09-09 01:00:46] [このレビューのURL]

面白い話を描こう、というよりは、作者が強烈なメッセージを読者にぶつけたいがための
作品のように感じられます。
それでいて漫画としても綺麗にまとまっていて、素直に面白かったです。

読んでいて「痛い」とはそれほど思わなかったですね。
むしろ「痛々しい」という表現の方がしっくりくる感じです。
青木さんが「言葉は暴力」と自ら言うほどの鋭い発言でズバズバ斬ってくれるのが爽快だったり。
部員にもっと自己投影した方がよかったのかもしれないですが、登場人物になりきるだけが
漫画の読み方じゃないですからね。 まぁ性格悪い読み方かもしれません。


この作品に対するレビューは素晴らしいものが多くて、ちょっと気後れしてしまいますが、
以上、ここまでがこの作品の感想文でした。
確かに天原君なんかは悪例極まりないですが、一般人レベルで考えると、個人的には別に
感想文じみたものでもいいと思うんですよ。
プロの批評家がしかるべき場で読書感想文なんか披露したら、もうその人に仕事は来ないでしょうが、
我々はプロの批評家ではないのだし(と言うと無責任な逃げの発言になってしまいますけど)、
このサイトのレビューなどでもそうですが、「好きなものを読んで好きだと表現すること」 の敷居を
高くしたくないなあ、と思います。

でも必ず心に留めておきたいのが、自分の発言を聞いてくれる人に、文章を見てくれる人に、
そして何よりその作品に対して、敬意を表すること、ですね。
特に悪い評価を下すときは要注意。 褒めるよりも、けなす方が簡単なんですよね。
青木さんが言うように、作品を叩くことで「自己顕示欲」を発揮するだけのものは特に。
悪い部分ばかりを指摘したものは何となく本質を捉えているように錯覚しがちですが、
それは単なる批判であって、批評ではないのですから。

天原くんの非は、「批評と感想との区別がついていないこと」にあるのではなく、
「作品への愛情がない」ことと、「自分の意見を相手に押し付ける」ことにあると思っています。


さてこの作品、タイトルからして皮肉たっぷりですが、ただ切り捨て御免で終わるのではなく、
読者にとって希望も持たせてくれるところがちょっとばかり心憎いです。

「一所懸命は、悪くないよね? いいよ!」
「夢はつぶれたり、消えたりするものじゃなくて、ただ、形を変えるだけなんです。
16歳の青木杏さんの、今の夢は…?」

読み終わった後、つい自問自答したくなりました。

見たくないものもちゃんと見えているか? 聞きたくないこともちゃんと聞こえているか?
気付かないうちに自分に都合よく事実を歪めることはしてない……よな?

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-09-01 00:55:25] [修正:2010-09-01 01:19:26] [このレビューのURL]

そもそもが、作者たちが「取材合宿という名目で温泉地に行きたいがために」始めた作品。
ゆうき氏、とり氏、担当編集の3人が馬鹿話をしつつ出し合ったアイディアをベースに、
ゆうき氏が1人で予告編(ちゃんとコミックスにも収録)を描き、その雰囲気をつかんで
とり氏がネームを描き、それを基にゆうき氏が下書きをし、それにとり氏がペン入れをして完成。
そんな煩雑な手順を踏んで出来上がった、まさに合作です。

内容は……、これもまさにタイトル通り、いわゆる2時間ドラマのパロディです。
意味のないお色気シーン、愛嬌と渋みのあるベテラン刑事、安っぽい重要参考人の面々、
そしてクライマックスの場面はもちろん断崖絶壁ですよ。
あまり論理的とは言えない展開で、よくわからないままに話が進み、勢いのままに事件が解決する、
その丸ごと全てをギャグにしています。

合作と言いつつ、実際にはゆうき色がかなり強く出た作品になっている気がします。
予告編と本編とで同じシーンもあり、2人のタッチの違いなどを見比べてみるのも楽しみの1つ。
ゲラゲラ笑うようなギャグではなく、思わずニヤニヤするような皮肉やお約束が盛りだくさんのギャグ。
濃いなー。 もうこういうの大好き。
ゆうきまさみ的のんびりまったり日常マンガが好きな人には、この雰囲気はツボでしょうね。
「あんまり真面目に読んだり批評する類のマンガじゃない」と作者が言うので、この辺で終わっときます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-01 00:43:14] [修正:2010-09-01 00:43:14] [このレビューのURL]