「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

8点 洗礼

発想、構成、全体の雰囲気、絵の美麗さ。
個人的には作者の最高傑作の1つだと思います。

気味の悪い絵柄や、勢いで迫ってくるような怖さではなく、
読者の本能に訴えかけるような恐ろしさ、気持ち悪さ。
狂気と言うべきか、誰もが持ちうる人間の普遍的な欲望だと言うべきか。

楳図作品にはSFや心霊現象などを絡めた恐怖マンガも多いのですが、
こういう人の心の闇を描かせたら、やはり楳図氏は抜群に上手いです。

随分と昔の作品ですが、今でも色褪せないです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-01-28 21:33:06] [修正:2010-01-28 21:35:50] [このレビューのURL]

文明が崩壊した島での少年たちのサバイバルを描いた作品です。

最初の頃は良質のパニックサスペンスだったのですが。
赤く溶けた太陽、欲望を引き出された大人たち、そして亡者と化した人間といった
非現実的なものが作品の中核を占めてくるにつれ、
リアリティや緊迫感がどんどん失われていったのが残念です。

すっきりとした終わり方をしていて読後感は悪くないです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-28 21:13:04] [修正:2010-01-28 21:13:04] [このレビューのURL]

6点 茄子

読み返した時の方が楽しめました。変な作品です(もちろんいい意味で)。
凄く面白い話もあり、つまらない話もあり。
残念ながら手放しで絶賛するほどの感慨は受けませんでしたが、
作品からさりげなく漂ってくる、素朴で人間臭い雰囲気が魅力的です。

口当たりはあっさりしているのに、噛み締めると濃厚な味わいが広がるような作品です。

とりあえず、読んだあと無性に茄子が食べたくなりました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-24 21:46:15] [修正:2010-01-24 21:46:15] [このレビューのURL]

川原作品は個人的には短編集の方が好きなのですが。
独特のテンポ、ほのぼのとした展開、類まれな言葉選びのセンスとボキャブラリー、
川原節としか形容できないような凄さが、この作品でも申し分なく発揮されています。

本編となる前半部分も面白いですが、後半の短編3つの出来はもう素晴らしいの一言。

読み終わってほんのり良い気分になれる作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-24 21:34:51] [修正:2010-01-24 21:34:51] [このレビューのURL]

この作品はまさにタイトル通り、一人の女子大生が神戸で暮らしている生活そのものです。
大学でのこと、友達と買い物に行ったこと、家族とのやり取り、ふらっと街を散歩したこと。
誰もが経験するような日常の出来事を、誇張するでもなく、劇的に描くでもなく、
ありのままに描いています。

スピード感もなく、娯楽性にも乏しいこの作品。勢いで読めないので、
共感できない場合は拷問に近いかもしれません。
自分も2巻までは「読んで失敗したかな」などと思っていました。
その分、共感できれば自分の心の奥底までどんどん染み込み、溶け込んでいきます。

トーンも定規も使わない画風は、飾らず、素朴で、柔らかくて、どこか純粋で。
主人公である辰木桂のキャラクターをそのまま表現しているかのようです。
登場人物の存在感など、キャラが立っているとかのレベルを超え、作中で生きていると感じられるほど。

震災から3年後に開始したこの作品。
特に作品前半では、街並みにも人々の心にもその爪痕が色濃く残っています。
そんな神戸を舞台に、大学の授業、民族問題、友達との恋愛話、障害者、サークル活動、家族とのこと、
すべてごちゃ混ぜにして、桂の(部分的に林浩の)視点を通して等身大で描かれています。
生と死から目を背けず、良いことも悪いことも含めた現実に真っ向から向き合って。
等身大だからこそ、ありのままだからこそ、楽しいことも、辛いことも、こんなにも心に響いてきます。

居心地の良さ、ほんのり温かい雰囲気、ほのぼのとした日常。
押し付けがましくなく、控えめながら、神戸の魅力を存分に感じさせてくれます。
読んでいる人まで「神戸在住」な気分にさせてくれます。

震災から15年。今日、神戸の街に思いを馳せて。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-01-17 17:20:39] [修正:2010-01-17 17:20:39] [このレビューのURL]

推理ものとして考えるといま一つと言うしかないですが、
密室サスペンスとしてはなかなかの良作だと思います。

吹雪から逃れて落ち着くとともに、徐々に緊張感を増していく関係。
濃厚な心理描写。緊迫感。駆け引き。

ともすれば平凡になりえる話を、両巨頭が見事な力量で読ませてくれます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-17 17:07:16] [修正:2010-01-17 17:07:16] [このレビューのURL]

強烈な個性、練りこまれた世界観、抜群のセンス、敵味方関係なく人間臭くて愛らしいキャラクター、
ダークで殺伐としたホラーなのにゆるゆるでほのぼのとした展開。
なんだかよくわからないうちに引き込まれていきます。
面白いです。他の方のレビューにもあるとおりの良作だと思います。

が、そのゆるーい空気がずっと同じテンポで淡々と続き、メリハリに欠けるようにも感じられます。
なので、読んでいてすぐ雰囲気に満腹感を覚えてしまいます。
でももう腹いっぱいなのに濃いメニューがまだまだ出てくる感じです。美味なんですが。
まとめて一気に読んだらかなり疲れました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-11 21:29:03] [修正:2010-01-11 21:29:03] [このレビューのURL]

6点 神童

天才少女と冴えない音大受験生との交流、成長を、淡々と、しかしドラマチックに描いた作品です。

どうしても画力が足を引っ張ってしまっている印象が否めないですが、
実は読んでいるうちに結構慣れてきます。

うたも和音も、努力、苦悩があまり描写されておらず、物足りなさが残るのが残念です。
3巻の後半から物語は素晴らしい盛り上がりを見せるだけに、前半の野球の話がちょっと助長かも。
ただ、短い巻数で綺麗にまとめ、終わり方も秀逸なこの作品、なかなか心に響きます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-11 21:10:48] [修正:2010-01-11 21:10:48] [このレビューのURL]

害虫(ベクター)が引き起こす事件を女子高生・榎稲穂が解決していく事件簿(ケースファイル)。
主人公が女子高生の青年漫画でありながら、男の主要登場人物がおらず、
恋愛要素が全く感じられない稀有な作品です(現在7巻まで読了)。

前半は自然災害的な昆虫事件、後半は人為的な昆虫事件が主になります。
中盤からは中国娘やドイツ少女などが登場し、多国籍な様相を呈してきますが、
如何せん登場人物にあまり魅力が感じられないのが残念です。
ただ、作中の人物に感情移入しづらいので話にのめり込めないものの、虫のうんちくが面白いので
つい先へ先へと読み進めてしまいます。
話の展開に強引なところもあるので、ミステリーとして捉えない方が楽しく読めると思います。

基本的に害虫がメインとなるため、読者の反応を気にしているのか、直接的な描写を避けているような
ところもありますが、虫の苦手な方(私も苦手ですが)は心して読んだ方がいいかも。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-08 22:29:01] [修正:2010-01-08 22:30:55] [このレビューのURL]

タイトルから勝手にミステリーかと思いきや、だいぶ違いました。
二十面相と共に過ごした少女が、敵と戦い、事件に巻き込まれながら、
姿を消した二十面相を追い求めるお話。

非常に躍動感のある作品ですが、個人的に絵がとても残念です。
作品に漂う雰囲気は良いです。
ただ、二十面相が活躍した古き良き昭和ではなく、無国籍・無機質な感じがします。

粗探しをしても仕方ないですが、チコがたった2年で超人になったのがどうしても違和感ありです。

ちなみに、乱歩の二十面相はこんなに渋くて格好いいキャラではなかったと思いますよ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-08 22:12:44] [修正:2010-01-08 22:12:44] [このレビューのURL]

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