「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

歴史が動くとき、その裏側に常に陸奥圓明流あり。
陸奥圓明流の千年にわたる歴史を描いた、修羅の門の外伝的作品です。

源平合戦に始まり幕末・明治に至るまで、さらにはアメリカ西部劇にまで話は広がりますが、
史実に陸奥をうまく溶け込ませる手腕は素晴らしいです。
大きな歴史のうねりを体感でき、歴史上の有名な人物との絡みもこれでもかっていうくらいにあって、
臨場感、迫力、歴史の重み、それらを違和感なく存分に見せてくれます。
こういうのは正に漫画ならではの醍醐味。

修羅の門ではバトルを突き詰めていますが、こちらではバトルは作品に彩りを添える程度のもので、
非常に魅力的な登場人物と、彼らが織り成す熱い熱いドラマがとにかく秀逸。
自分の好きなように歴史の中で遊びたい、との作者の言葉どおりの作品です。
オムニバス形式なので話によって多少の差はあるものの、日本史に疎い自分でもとても楽しめました。
もっとも、疎いからこそ妙なあら探しなどせず、素直に楽しめたのかもしれないですが。
特にこだわりなくフィクションとして楽しめる人にはお薦めです。

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[投稿:2010-05-26 20:19:55] [修正:2010-05-26 23:57:14] [このレビューのURL]

確か松本人志だったと思いますが、
「『和』と『洋』とでは総合的にどっちの方が上とかはないが、少なくともトイレについてだけ考えれば
明らかに『洋』の方が優れている」と言っているのを聞いて、妙に納得したことがあります。
この観点で言うと、少なくとも風呂についてだけ考えれば、明らかに『和』の方が優れているでしょう。
そんな作品。

作者はポルトガル在住とのことですが、ポルトガルに住んでいても、
いやポルトガルに住んでいるからこそ入りたくなる日本の風呂。
日本人にとっての郷愁。世界に誇れる日本の風呂。

ただ、他の方のレビューにもあるように、日本の文化のみを褒め称えるのではなく、
ローマ文化にも尊敬の念を忘れていないのがこの作品の良いところ。
読んでいても誰も嫌な気分になることなく、好感が持てます。

まず着眼点がすごい。そしてその発想を昇華させ、ここまでの完成度に仕上げる構成力。
真面目な人が真面目にくだらないことをする作風だけに、その面白さも際立ちます。
元は一発ネタだったのかもしれませんが、どこまで引っ張るのか。上手くまとめれば名作かも。
読むと風呂に入りたくなる漫画。こんな作品、貴重です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-26 20:07:51] [修正:2010-05-26 23:54:39] [このレビューのURL]

時空を超えたラブロマンス。
過去から来た忍者が、自分の守るべき存在である姫君と瓜二つの女子高生に出会い…、というお話。

景虎の古風な素直さ、健気さ、献身的な愛情が、この作品の一つの特長。
現代では物珍しい感じですが、過去から来た人、と言われてしまうと妙に納得してしまいます。
うーん最近の男(もちろん自分含む)はそんなものを持ち合わせていないのかw
と身につまされる思いです。

単なる恋愛ものの枠を超え、途中からどんどんスケールが大きく拡がっていくこの作品。
タイムスリップものって、時間移動を連発すると収拾がつかなくなることが多いです。
この作品はその一歩手前の状態に見え、伏線張りまくりで上手く回収できるのか、とも思いますが、
ただ、ここ最近急激に面白くなってきました。終わってみたら点数が跳ね上がっているかも。
まだまだ続きそうですし、先の展開を楽しみにしつつ、ベテラン作家ならではの手腕で
きっちりまとめてくれることを期待します。

基本的には典型的な少女漫画なので、あまり男性向けではないかもしれませんね。
ちなみに、なんかヒロインが変わりすぎです。容姿も性格も。初めの頃とはまるで別人。

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[投稿:2010-05-23 07:35:30] [修正:2010-05-23 07:39:47] [このレビューのURL]

「11人いる!」をベースに、「火の鳥」やら「宇宙戦艦ヤマト」やら「21エモン」やら的な要素を加え、
川原的味付けで調理したような作品。
バトルあり、スピード感あり、緊迫感あり、と今までの川原作品とは一風変わったものになっています。
だけど読んでみるとやっぱり濃厚な川原作品なんですよね。その個性には恐れ入ります。

人間の動物に対する差別、迫害、虐待。
結構重いテーマも扱っていますが、重すぎず、くどすぎず。
深い視点、哲学的な味わいを、作品にサラッと織り込ませる手腕は見事。

ほんわか、ほろり、まったり、もぎゅもぎゅ。
こういうところが変わらないのが嬉しいです。
相も変わらずささやかな幸せが感じられるのがいいですね。

でも個人的にはやはりこの人は短編の方が好きだなあ、とつくづく感じてしまいました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-23 07:27:16] [修正:2010-05-23 07:27:16] [このレビューのURL]

絵がべらぼうに綺麗です。
作品に流れる、優しくて温かい時間と空気。
ところどころで琴線に触れる台詞やシーンがあったりして、特にコハルの頑張りにホロリとさせられます。
何ともコハルがかわいらしくていじらしいです。
時折見せるその物憂げな表情からいろいろな思いが伝わり、それがまた胸を熱くします。

それだけに、何か惜しい、もったいない、というのが正直な印象。
いいテーマを選んで、もっともっと面白くなっていく要素を多分に秘めた作品なのに、
自分の中でだけかもしれないですが、どうもしっくりこないんですよね。

その違和感がどこにあるのかと思ったのですが…。
正宗はまだ仕方ないとしても、コハルも、秋も、みんな大人の目線で考え、大人の都合の良い様に動き、
大人が納得できるような内容のことを喋っているような気がします。
全ての人がお互いをすごく大切に思い、尊重し、というのはいいのですが、
なんかそれが強調されすぎて、その描写があまり自然なものに感じられないんですね。
そこに違和感を感じたのかもしれません。
すごく綺麗な作品なのですが、あまりにも綺麗すぎます。

コハルはいつまでも自分を殺してないで、もっと感情をありのままに表現してほしいです。
正宗にずっと敬語なんか使ってないで。タラちゃんか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-17 22:34:19] [修正:2010-05-17 22:41:02] [このレビューのURL]

グダグダ、ズルズル、ダラダラ、ウダウダ、モヤモヤ。そんな作品。

この作品の本質を、思春期だから、反抗期だから、なんていう逃げの言葉で片付けたくない。
ダメなのは、主人公がダメだから。登場人物たちがダメだから。
でも現実では誰だって似たようなもんです。
完璧に生きていて、何かあったら自分が世界を救います、なんて人、いないですよね。
ダメなところがあって何が悪い、っていう人間臭いドラマです。そんなドラマだからこそ心地良くもあり。

そんなダメっぷりにそれほどの不快感を抱かない不思議な作風。面白いと断言できないような面白さ。
グダグダでも、登場人物に全く共感できなくても、作中で特に大きな山場がなくても、
それでも読み続けてしまった作品です。それだけの力がこの作品にはあるのかもしれません。

堂々巡りをしているようでも、前半の荒廃したダメダメさに比べて、後半はまだ潤いのあるダメダメさ。
登場人物もそれなりに成長してるのかな、という印象。
まあ成長を求める話ではないので、そこはどうでもいいんですけどね。

レビューもグダグダになってしまってごめんなさい。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-05-17 22:27:33] [修正:2010-05-17 22:27:33] [このレビューのURL]

死後一定時間内に取り出した無傷の脳をスキャナにかけると、
生前に見た過去数年分のすべての眼の記憶をスクリーンに再現できる。
その技術を凶悪犯罪の捜査に駆使し、事件を解決していく、というオムニバス形式のサスペンス。

簡単に書くとそういうことですが、本当に恐ろしい話です。プライバシーも何もあったもんじゃないです。
自分が普段どのような生活をしているのか、どういうものを眼で追っていったのか、
誰のことを見続けたのか、何を見てしまったのか…。
人間の頭の中を直接覗く行為。
秘密。どんなに隠しても逃れられない、秘密。

再現される映像は客観的な事実ではなく、あくまで主観的な眼の記憶。
自分というフィルターを通したあとで脳に焼き付けられたものが映ります。
麻薬中毒なら実際に幻覚が見えてしまうし、Aさんのことが好きなら実際よりも可愛く(格好良く)見え、
Bさんに対して強い強迫観念を抱いていれば、疑心暗鬼から周りの人がすべてBさんに見えてしまう。
そしてその映像には一切の音が無い。眼の記憶ですから。
その他諸々の技術的・倫理的・政治的制約もあり、いろいろと考えさせられてしまう深さを持ち合わせた
本当に上手い設定だと思います。

主に猟奇的な殺人事件を扱うこの作品。
連続殺人犯の頭の中も覗くわけで、その狂った世界に捜査員の精神が影響を受けない訳がない。
いま自分が見ているものは、他の人にも見えているのだろうか…。
いま頭の中にある記憶は、本当に自分自身の記憶なのだろうか…。
彼らは闇の世界、狂気の世界に引きずり込まれそうになりながらもなんとか正気を保ち、
事件解決のために奔走します。
主人公たちのそういうせめぎ合いもこの作品の見所の一つです。

ベテラン作家による綺麗でスマートな絵柄のため、決して見苦しくはないのですが
かなりエグい、グロい、重い作品です。
人体解剖なんて普通に出てきますし、大量虐殺のシーンとか、自分が惨殺されるシーンとか、
手を抜かずにしっかり描き込んであります。
「羊たちの沈黙」や「セブン」(っていう昔の映画です)なんかが苦手な人にはお薦めできないかも。
物語が単なるハッピーエンドで終わらず、時に残酷で、もどかしく、やるせなく。
それでも、息を呑むほどにとにかく面白い。良作です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-05-09 22:38:37] [修正:2010-05-09 22:41:04] [このレビューのURL]

この作者の描く女の子はいつも魅力的です。表情豊かで瑞々しくて。
対して男キャラは魅力薄。どの作品でも皆とにかく突っ走る系ですね。

そんなこんなで短命に終わってしまったこの作品。
やっぱり設定に難ありだったのでしょうね。
13男と17女とのラブコメに違和感ありまくりです。
他作品との差別化を狙ったのであれば、確かに独創的ではありますが、
読者の求めているところとは全くかけ離れたところに行ってしまった感じです。
姉妹が全くの見ず知らずの家に潜り込む理由も説得力ないです。

次作品に期待。今度こそはもっと長く続いてほしいなあ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-09 22:05:05] [修正:2010-05-09 22:05:05] [このレビューのURL]

部屋の掃除をしていたら偶然にも発掘。いい機会なのでレビューしてみました。

当時小学生の間で巻き起こった空前のドッジボールブームを牽引した(ブームに便乗した?)作品。
小学生を主人公とした、トンデモスポ根漫画です。

今の自分の目で読むと取り立てて可もなく不可もなくな作品ですが、
児童漫画に大人の目なんてあまり求められていないんですよね。
どれだけ子供を楽しませることができるか、が結局は重要なポイントです。
児童漫画へレビューすることもあまりないのでこの場を借りると、
どうも青年漫画等と比べて、児童漫画は格下に見られている節があるような気がします。
職業に貴賎なし、ではないですが、どちらが上とか下とかではないんですよね。
よくオーケストラに比べて大衆音楽は格下だ、とか、小説に比べて漫画は、とか、
政治経済と比べればスポーツなんて、とか。
比較する必要なんてなく、それぞれの領分、それぞれの良さがあると思うのですが。

まあ話が逸れたので元に戻しますと、とにかく、極めて移り気で飽きっぽい子供を楽しませる作品を、
いい大人が作る。これって凄いことです。
いかにわかりやすく、それでいて面白く、人生経験の少ない子供でも作品に感情移入できるか。
この作品はトンデモ展開の連続ですが、子供だってそんなにアホじゃない。
漫画どおり実際にできるとか思っちゃいません。
それでも子供をいかに引き付けられるかが良作の証拠。
この作品がどれだけ当時の小学生に受け入れられたかは、
あの頃のドッジボールブームを思えば一目瞭然です。

と熱く語ってみましたが、点数は5点です。
なぜかって、自分はサッカー小僧だったので別にドッジボールに愛着ないんで。
思い出補正がなければこのぐらいかと。
ちなみに発掘したこの漫画も実は弟のものですし(さらには弟もサッカー小僧)。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-06 21:54:08] [修正:2010-05-06 21:55:46] [このレビューのURL]

カノジョっていうから恋人設定なのかと思いきやそうではなく、
新人熱血編集者と売れっ子美人官能小説家とのやり取りを描いたラブコメです。

掲載誌のせいかもしれませんが、直接的なエロさは控えめになっていて、
官能小説に対する熱い気持ちだとか、編集者としての苦労話だとか、
そういう内情を中心にした、よくありがちな業界漫画の1つです。

とは言えこの作品、ベタな展開ですが全体のテンポも登場人物も良く、なかなか面白いです。
官能小説を舞台に選んだところが特異ではありますが、
でも2人の展開は昔ながらの古風でピュアなラブコメ。
ちょっとニヤニヤしながらも気が付くと随分読み進めているような作品です。

最近は当初の官能小説っぷりが薄れてきてしまい、なんか普通のラブコメと化しているように感じます。
個人的にはもう一化けして強烈な個性を発揮してほしいところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-06 21:29:35] [修正:2010-05-06 21:29:35] [このレビューのURL]