「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

8点 トリコ

この作品、最初に読んだときには妙な既視感がありました。
よくよく考えてみると、「HUNTER×HUNTERの美食ハンターの話を広げただけじゃん」と思ったり。

その他、バトル重視の展開に走りがちだったり、捕食レベルのインフレが甚だしかったり、
やっぱり品がなかったり、モンスターデザインがお世辞にも格好良いとは言えなかったりもします。

が、それらを補って余りあるほどに楽しい展開も待ち受けています。
そもそも話の目的が「敵を倒す」ことではなく、「人生のフルコースを完成させる」こと。
未知の食材を探しに秘境を訪れたりとか、伝説のスープを作ろうと試行錯誤したりとか、
冒険心、宝探し、そういう欲求をくすぐるようなことがものすごく丁寧に描かれています。
そしてバトル一辺倒にならないための「料理人」小松の存在感。 すごく良いです。

「夢と希望に溢れた世界」なんて今や死語もいい所ですが、この作品にはまだまだそれがありそうです。
読むたびにドキドキワクワク感を与えてくれる、数少ない良質の少年漫画。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-28 01:03:19] [修正:2010-12-28 01:25:42] [このレビューのURL]

何度もテレビドラマ化され、非常に有名なタイトルの作品。
ドラマも漫画も未見でしたが、先日、漫画版(というか原作)を初めて読みました。
うん、何だこれ?

事前のイメージから、「ほのぼのピュアなラブコメディ」を勝手に想像していましたが、そうきたか。
掲載誌が少女漫画雑誌ではなくガロの時点で気付くべきでした。
と言いつつこういうちょっとダークな方が個人的には好みだったりしますけど。

人間が小さくなる話なんて山ほどあると思います。 この作品もそのうちの1つ。
付き合っている彼女が突然10分の1のサイズになってしまった。 原因は不明。
ただ、ファンタジー溢れる設定ながら、この作品で主に描かれているのは現実じみた生活の様子です。
トイレの用意、風呂の世話、食事の残り物をいかにして調達するか、衣服や下着の作成。
そのうちに、南くんも彼女を恋人ではなくペットと同じように扱っていることに気付き、反省したりします。
性的な描写も多数あり、どぎつい表現も多数あり、ラストがまた衝撃的。

巻末の解説に納得。 確かにちよみではなく南くんが小さくなっていたら、小さくなった原因を
究明しようとしたり元に戻ろうとジタバタしたりして、こんな話にはならなかったと思います。
ちよみは小さくなった時点で他の選択肢は全て捨ててしまっています。 もう南くんしか残っていません。
小さくなったのがちよみだったから、「小さくなっても南くんと一緒にいられるのなら構わない」と
受け入れることができてしまったのかな。

ちよみの一途な想いと、それを受け止める南くんの優しさ、愛情。
受け止めざるを得ない南くんの葛藤。

考えようによってはものすごく深い作品です。 最後の小鳥との対比なんかは特に。
「ママ、ピーコはどうして……?」 「小さいからよ」

ちよみは幸せだっただろうか。
 

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-28 00:54:05] [修正:2010-12-28 01:23:33] [このレビューのURL]

高校の合格発表。 偶然風に飛ばされてきた受験票。
落とし主は超絶美少女。 運命を感じるような出会い。 だがしかし……。

一見いわゆる普通のラブコメ。
でもこの作品が普通でないところは、ヒロインが男であること。
しかもその秘密?がどこまでバレないか、というドキドキ感を楽しむ間もなく、
スタートしてたった3ページ目でクラス全体にカミングアウトします。 これは予想外。

無邪気で、小悪魔で、見た目も中身も女の子以上にオンナノコらしくて可愛らしいヒロイン?に、
ちょっかいを出され、振り回され、翻弄される純朴な主人公。
っていうかあんな子が男とか卑怯すぎる。 これはヤバい。
自分が主人公の立場だったらいろんな葛藤に押し潰されて発狂寸前になっているかも。
平凡なラブコメなのに、少し視点や発想を変えるだけで、良い意味でこんなに違和感ありまくりの
作品になるんですね。 その違和感を楽しむ作品と言えるかもしれません。

現時点ではかなり面白いと思いますが、ただこの作品、特にお薦めはしないです。
だって明らかに万人向けじゃないから。 その意味も兼ねてこの点数。
惜しむらくはコミックスに登場人物紹介がないこと。 サブキャラがわかりづらいのが難点です。
こういう作品はマンネリに陥りやすいので、これから先なんとかうまく乗り切ってほしいなあ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-21 01:26:28] [修正:2010-12-21 01:36:09] [このレビューのURL]

閉じた街は、同じ一日を繰り返す。 永遠に。

優しくて、おぼろげで、薄暗い中でほのかに輝くような叙情的な物語。
しかし癒しなどでは決してなく、毒や弱さも併せ持っています。
その不思議な世界観がどこか宮沢賢治を連想させる作品。 と言ったら褒めすぎか。

わかりづらい設定、会話のみによる説明の回りくどさ、序盤の低調さ、などから、
最初のうちは作品世界に溶け込むハードルが高めなのが残念。
その分、閉塞した世界の謎が明らかになっていく中盤以降の展開には目を見張るものがあります。

読後感がとても良いです。 ふと夜空を見上げてみたくなる作品の1つ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-21 01:19:35] [修正:2010-12-21 01:19:35] [このレビューのURL]

7点

山岳でのレスキュー漫画。
でも、危なかったけど助かってよかったね、というのとは違います。
むしろ手遅れだったり、救助中に力尽きてしまうことの方が多いかもしれません。

ただし、山って怖いよね、というのがこの作品のテーマではないです。
「悲しい事故が起こるのは山の半分、楽しいことがあるのも山の半分」
悲喜こもごも。 困難があり、それを克服して各々の目標を達成したときの計り知れない喜びもあり。
素人登山家にもプロのクライマーにもその喜びは等しく訪れます。 そして困難も。
結局のところ、山の魅力や怖さと言うよりも、山に関わってしまった人間達のドラマを描いた作品です。

必要なのは、ただ単に進むだけではなく、立ち止まる勇気、退く勇気、助けを求める勇気。

遭難した場合、生きるか死ぬかは紙一重。 たった数センチの差が生死を分けることも珍しくありません。
すべては山のご機嫌次第なのですが、だからと言って誰でも生きるために死力を尽くすのは当たり前。
負傷した痛みと戦い、凍えるような寒さと戦い、夜の暗闇と戦い、孤独と戦い…。
それがわかるからこそ、三歩は助かった人にも助からなかった人にも等しくこう声をかけるのでしょう。
「良く頑張ったね」
 

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-17 01:31:56] [修正:2010-12-17 01:53:44] [このレビューのURL]

突然大量のゾンビが出現して人々を襲う、というありがちな作品。
まぁゾンビが出る日常をありがちと言うのもおかしな話ですけど。
ホラー+パニック+エロ、というのも古典的な組み合わせ。 で、その殻を破り切れていない作品です。

登場人物が個性を持って自分の頭で考え行動すると言うよりは、作者の都合の良い様に
動かされているだけにしか見えないです。
だからそれぞれの行動原理がさっぱりわからない。 どこでどうスイッチが入るのか予測不能です。
特に主人公はそれが顕著ですね。

そう考えてみると、会話もものすごく不自然に思えてきます。
一介の高校生たちの会話じゃないです。
作者が難しい言葉を並べ立てて喜んでいるだけじゃないか、と感じてしまうぐらいに違和感があります。

なんだか厳しくなってしまいましたが、最初は結構楽しかったんですよ。
良い意味でちょっとおバカなノリで楽しめる作品だったんですけどね。 飽きるのも早かったです。
6巻まで続いているのに、原因究明にも問題解決にも一切近づいていないのが一番の問題かも。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-17 01:22:52] [修正:2010-12-17 01:26:44] [このレビューのURL]

殺人事件に限らず様々な事件が起こり、天才肌の少年と行動力に溢れた少女のコンビが解決する、
という構図はQ.E.D.と同じですが、Q.E.D.が「論理的思考力」ならばこちらは「科学的探究心」。
主に自然科学と雑学を駆使した、知的好奇心を刺激してくれるミステリーです。

考古学大好きなので作品のテーマとしてはこちらの方が好物ですが、
漫画としてはQ.E.D.の方がちょっとだけ面白いような気がします。
ミステリーにもいろいろありますが、「事件発生」→「解決」という流れをうまく見せることに対しては
「論理的思考力」の方が見せ物として向いているのかもしれません。
まぁあくまで好みの問題ですので、自分の得点もQ.E.D.につけたのと同じ7点です。

ついでに言うと、割と自分たちの周りで事件が起こるQ.E.D.と比べ、こちらの方がワールドワイドです。
いろいろな国に出向いていって事件に巻き込まれたりします。
遺跡巡りや名所巡りのような気分が味わえて楽しいです。
何カ国語も習得している森羅はいいとしても、七瀬さんもどこの国の人とでもしっかり会話できてますが、
そこは深く考えちゃダメなところでしょうか。

ともかく、1人の作者がこれほど趣きの違うミステリーを同時並行で連載できるのは凄いです。 脱帽。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-14 01:29:35] [修正:2010-12-14 01:30:39] [このレビューのURL]

実際の史実や考古学を絡め、人類最大の謎とされる伝説のアトランティスに迫る歴史ミステリー。

正にマスターキートンの二番煎じのような作品。 でも別に悪い意味で言っているわけではないですよ。
原作者もほぼ同じ(東周斎雅楽は長崎尚志の別名)ですし。
ところどころで織り交ぜられるショートエピソードなんかは本当にマスターキートンを彷彿とさせます。
ただ、画力や構成力はやはり浦沢氏の方が圧倒的に上手いと感じさせられますね。
この主人公とヒロインなどは美味しんぼの山岡夫妻にしか見えなかったです。
大きな違いと言えば、マスターキートンは基本的に一話完結のオムニバスですが、
この作品は一本の大きなミステリー仕立てのストーリーになっているところ。

この原作者の他作品(主に浦沢作品)と同様に、薀蓄たっぷりの作風で、
フィクションとノンフィクションとをごちゃ混ぜにしたような感じの作品です。
素人が見てもわかるような致命的な間違いも見受けられるので、のめり込みすぎるのは禁物です。
東方見聞録の祖本、ソロモン王の壷、始皇帝のミイラといった人類史上に残るようなお宝を、
入矢がちょっと考えただけですぐに到達・発見してしまうところなんかも若干リアリティに欠けます。

が、話の内容は、考古学が好きな人にはよだれの出そうなほどに本格的な歴史冒険もの。
アトランティスの謎をぼやかしたりせず、作品としてしっかりとした結論を出しているのは高評価です。
その是非はさておき。
アトランティスはいつ頃どこにあったのか? なぜ滅亡したのか?
アトランティスの存在よりも秘密にすべき「人類の禁忌」とは?
クロマニヨン人やネアンデルタール人、そして世界各地の文明、遺跡、伝説などが深く絡まり合い、
壮大で重厚なミステリーとサスペンスが楽しめます。

最後の方は抽象的な記述が多くて展開も速く、かなりわかりづらくなっていますので、
数多くあるイリヤッド検証サイト等を参考にしてみると、より一層理解が深まるかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-14 01:21:32] [修正:2010-12-14 01:21:32] [このレビューのURL]

奇妙な動物ばかりを扱うペットショップを舞台にした、一話完結のショートショート。
幻獣に人が喰い殺されるシーンなんかも結構ありますが、特段グロい漫画ということでもなく、
タイトルとは違ってホラーでもありません。
ちょっと不思議で残酷な要素を秘めた、オムニバス形式のファンタジーです。

毎回のゲスト(=ペットショップの客)がペット(というより幻獣)を購入し、トラブルが起こったり、
逆に抱えていたトラブルが解決したり、というのが一応の話の核です。
が、回を重ねるごとに、狂言回しの中国人店員と話をかき回す米国人刑事のコンビが前に出すぎて、
ゲストがだんだん目立たなくなっていきます。
まぁそういうもんかと思って読めますが、基本的に最後のドンデン返しが小さめなので、それでもオチに
期待して読むか、ストーリー全体を楽しんで読むかで、作品の評価が異なってくるかもしれません。

コメディ色が強いのも嫌いではないですが、それが故に話全体の緊張感が損なわれてしまうことが
たまにあるので、もったいない気もします。
話のレベルとしては各話そんなにばらつきがなく、それなりに安定している印象ですが、
たまに飛び抜けて面白い話もあり、こういうSF系のオムニバスが好きな人なら満足できると思います。

続編の「新 Petshop of Horrors」は舞台を歌舞伎町に移しただけで、基本的には同じです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-09 01:26:10] [修正:2010-12-09 01:27:35] [このレビューのURL]

仰々しいタイトル、不敵で尊大な主人公、そして独特の絵柄のおかげで、
何だかよくわからないようなオーラを発している作品。
ただし中身は単なるラブコメですけどね。

この作品の特徴は、ゲームのように女の子を「攻略」すること。
ということで、ヒロインたちはあくまで「記号」としてのみ扱われ、
主人公もヒロインを落とすという「目的」のためだけに恋愛感情なしで擬似ラブコメが展開されます。
ここまで開き直って徹底的にやられると、何だか斬新に思えてしまいます。
この作品が人気出たのもある意味時代を反映しているのかもしれないですね。 それは深読みしすぎ?

確かに面白いと言えば面白いです。 話作りも作品のテンポも良いと思います。
ただし、飽きます。 基本的にワンパターンなので。
このまま続けていっても、よっぽどパターンを変えない限りはグダグダになりそうな気がします。
もしこの作品がジャンプで連載されていたら、もう今ぐらい(10巻まで)には
とっくに死神との能力バトル展開に突入している頃かもしれませんね。

現在本誌では、過去に使い捨てたヒロインたちを再登場させて新展開みたいなことやっていますが、
そもそもが長期連載に向いている題材ではないので、適当なところでうまく作品を締められれば。
でも無理だろなー。
あんまり頑張りすぎないでほしいです。 この作品は程々に脱力している方がきっと面白いです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-09 01:07:00] [修正:2010-12-09 01:08:48] [このレビューのURL]