「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

「ラブコメの女王」が描き出したのは、醜悪な人魚と、その人魚の肉を巡るさらに醜悪な人間の本性。

人魚の肉にまつわる不老不死伝説と、それに関わる人々の悲喜を見事に描いた作品。
悲喜というのは違うかもしれませんね。 「喜」は無く、「悲」ばかりが繰り広げられます。
不老不死という壮大なテーマを扱いながらも、敢えて一話ごとの世界観を狭い範囲に絞ることで
却ってその登場人物の人間関係が浮き彫りになり、濃厚なドラマが展開されています。

絵的には、後の犬夜叉に通じる化物の造詣の巧みさ、和服姿のたおやかさが素晴らしいのはもちろん、
この作者は子供や老人を描くのが本当に上手く、伝奇ものとしての雰囲気が秀逸です。
そして何より、女性の艶かしさ。 これが描けるからこそ人魚伝説が描けると言っても過言ではないです。

この作者は一話完結の日常コメディを描けば並ぶ者のない程の名手だと思いますが、
こういうギャグを一切はさまないシリアスな短編も見事なのは流石と言うしかないですね。
特に、怨恨、復讐、無念さ、そしてオチのどんでん返しまで描ききった「人魚の森」は抜群の出来。

他のレビュワーの方と同じく、ぜひ続きが読みたい作品。
犬夜叉が終わった時は続編が来るかと期待してましたが、残念。
この作品は少年誌より青年誌の方が良さが発揮できそうな気がします。 続きがあれば、ですが。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-08-30 01:07:37] [修正:2011-08-30 01:08:47] [このレビューのURL]

周囲の評判がなかなか良かったので読んでみました。
何だか最近こういう設定の作品をよく目にするようになりましたね。
独身男性の主人公のところに女の子が転がり込んできて一緒に暮らすお話です。

久留里が「もふー」とか「はむー」とか言っちゃうので、まずはそういうのが苦手ではない人向け。
で、内容に関して言えば、話が進みそうでなかなか進まないです。
裏を返せば、このぬるま湯のような日常風景にこそこの作品の良さが込められているのでしょう。

この作品のポイントとなるのが、タイトルにもある「お弁当」。
簡単にパパッと素晴らしいものを作ってしまう一般の料理漫画とは違って、2人が頭を捻って工夫して、
時には豪華だったり、時には失敗したり、できた結果いかにも普通の弁当だったり。
基本は一話完結の話なので、当然ながらちゃんとその回のテーマ(食材)も盛り込まれています。

また、もう一つの特徴が「地理学」。 これがなかなか詳しく描かれていて結構面白いです。
研究の一環としてちょくちょく各地にフィールドワークに出かけ、研究がてらローカルな食材を楽しみ、
余った分を持ち帰って次の日の弁当のおかずにするなど、漫画としてもうまく連動しています。

弁当や日々の食事を介した家族の結びつきを描いた作品。
他の方のレビューにもあるように、無口で人見知りの激しい久留里がたどたどしいながらも
主人公に徐々に懐いていく様が微笑ましいです。 最近はちょっと懐きすぎですが。
個人的には大当たりではないものの外れでもなく、あったら何気なく読んでしまうような作品です。
こういうの好きな人はものすごく好きなんじゃないかなーという気がします。 悪い意味じゃなくて。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-30 01:00:59] [修正:2011-08-30 01:00:59] [このレビューのURL]

読む前は「青春もの、もしくはラブコメがメインで、それに数学をアクセントとして絡めた感じ」かと
思っていたら、違いましたね。 むしろ真逆。
「数学を楽しく読み解くことがメインで、それにアクセントとして青春ラブコメを絡めた感じ」の作品。

着眼点が新しくてなかなか個性的な作品ですが、間口が広くて誰にでも楽しめる、と言うよりは、
数学にある程度の知識や関心がある人が読んだ方が楽しめるかも。
物語は主要登場人物3人のみでほぼ展開されていきます。
各々の性格が物語部分だけでなく数学を学ぶ姿勢や発想、問題の解き方にまで如実に表れていて
その辺りが上手くできていると思います。

ただし数学部分を取っ払ってしまうと、可もなく不可もなくな普通の青春もの。
むしろ何がしたかったのか、どう展開させたかったのか、結局よくわからん内容でした。

別れの合図としてのフィボナッチサインは作中ではちょっと楽しげに見えて、数学青春ものっぽいです。
ただ現実で使うのは痛くてとてもできそうにないですけどね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-29 00:41:49] [修正:2011-08-29 00:43:22] [このレビューのURL]

変態おバカ紅茶漫画。

好きな子を親友に取られた主人公が、腹いせにオシャレな紅茶店でケーキをヤケ食いして
勧められるままに怪しげな紅茶を飲んだら、何と女性の身体になってしまい、
でそれに気付かずに女性の身体のまま好きな子に告白したら、彼女は実は……。
その後、主人公は身体を元に戻すために渋々紅茶店でバイトすることになるが、
飲むとおかしな効力を発揮する紅茶の被害者は主人公だけではなかったのだった、というお話。

中身が何にもない作品ですが、ここまで潔いと却って面白く感じます。
これだけ頭使わないで読めると楽しいです。
作者曰く、「元々は紅茶の漫画を目指していたが、作品のパンチ不足を
なぜかおっぱいで補うという暴挙に出た結果、こういう作品になってしまった」とのこと。
紅茶店の他のメンバーや親友の性癖までも少しずつ明らかになってきて、正に変態漫画。

難点があるとすれば終わり方。 まさかのタイミングで終了。
まあいいんですけど。 もうちょっときっちり終わってほしかった気もします。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-29 00:38:15] [修正:2011-08-29 00:38:15] [このレビューのURL]

王道まっしぐらの海洋ロマンファンタジー。
ジンクスと呼ばれる特殊能力を駆使して行われる能力バトルを繰り広げながら、
非常に大きなスケール感、可能性を感じさせるような設定、少年漫画のような勢いのある作品。

ただし、読んでいて妙に既視感を覚えるのも事実です。 とてもベタな雰囲気。
何だか他の作品の良いところをツギハギして作られたような感もある作品にも思えます。
言ってみれば、「ONE PIECE」のような世界観で、「HUNTER×HUNTER」のような能力を駆使して、
「ジョジョ」のようなバトルを繰り広げる作品。 でも全体的な雰囲気はなぜか「GetBackers」っぽい。

ジンクスとは、「極限まで強く思い込むことで実現させる」意志の力。
各登場人物がそれぞれ思い悩んでいたこと、トラウマになっていたこと、勘違いで思い込んでいたこと、
そういう「信念」が確固たるものとなって能力発動に至るので、それぞれのキャラの個性や背景と
強い関連性があって能力に結びつくという設定はなかなか面白いと思います。
まあ要するに念能力みたいなもんですけどね。 上手く使えばかなり面白く描けそうな設定です。

だからこそ見せ方がとても勿体無いです。
能力発動に至る経緯をもっと丁寧に深く掘り下げて描いていれば、さらに面白くなっていたでしょうに。
あと敵のジンクス能力が強すぎ。 読んでいてちょっと引くぐらいに強すぎです。
ネーミングセンスは何とかならないのでしょうか。 むしろわざと外しているのだと思いたい。

ストーリー展開としては、足場を固めつつゆっくりと世界観を明らかにしていき、
やっと大きく話が動き出したて面白くなってきたかな、と思った矢先にいきなりラストへまっしぐら。
終盤はかなり駆け足で打ち切りのにおいすら漂う感じですが、話自体は上手くまとめてあって、
なかなか綺麗な終わり方。 この辺りで終わらせた方が良いと作者が判断したのかもしれません。

個人的にはもうちょっと続けてほしかったですね。
作品のスケール感が大きかっただけに、惜しいなーという感じ。
こういうこと書くのもなんですが、作風的に週刊少年マガジンあたりで連載していれば
それなりにヒット作になったのではないでしょうか。 やっぱり惜しい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-25 01:28:08] [修正:2011-08-25 01:28:08] [このレビューのURL]

至極ストレートなドタバタラブコメ。
主人公はかなりモテるエリート会社員。そんな彼が、彼に思いを寄せる幾人もの美女の誘いを振り切り、
ほぼ一目惚れ状態の中国人の女の子に猛烈アタックを繰り広げます。

ただしなかなか感情移入がしづらかったです。
特に前半部分は中国の子の魅力的な部分がちゃんと描かれていないので、主人公が彼女のどういう
ところに惹かれたのかがさっぱり見えてこない。 だから当然主人公を応援する気持ちになりづらいです。
これ主人公がモテないキャラの方が話の展開がスムーズで良かったかもしれないですね。

主人公の恋愛観が異常に幼いのもマイナス要因。
他の方も書いているとおり、少年誌ならまだしも、大人向けの雑誌でこれはちょっときついです。

せっかく設定が良いのに、それを活かし切れていない感じ。
国や文化の違う2人が恋愛をする、という部分をもっと掘り下げてほしかったです。
後半は彼女の身の上話とか人探しに重点を置きすぎてグダグダになってしまっています。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-08-25 01:24:32] [修正:2011-08-25 01:25:04] [このレビューのURL]

地味な事件ばかりの探偵もの。

主人公がどこかに行ったら殺人事件に遭遇した……、などではなく、基本的には依頼人が探偵事務所に
仕事を依頼することから始まります。 いわゆる実際の探偵事務所や興信所を意識した話作り。
その仕事内容も派手なものではなく、人探しや物探しだったり、浮気調査みたいなものだったり。

にも関わらず作品自体がそれほど地味になっていないのは、キャラ作りの上手さの賜物でしょう。
一癖も二癖もある脇役キャラ、そしてUMAみたいな犯人役がどんどん話を掻き回します。
そしてそれに負けないぐらいに大暴れするのが主人公の探偵・妻木。
一見落ち着いたキャラで、一応は探偵らしく地味な聞き込みや足を使った捜査をするものの、そのうち
エスカレートして違法行為ギリギリ(と言うかたぶんアウト)になっていき、とにかくドタバタに。

「みっちゃん編」以降は絵も話作りも上手くなっていきます。
小道具と伏線も巧みに使いこなし、カメラワークも秀逸。 だから短い話でもビシッと締まります。
女性をとても綺麗に描けるのも特徴。 絵の上達っぷりがすごいです。
当時アニマルに掲載されていたときはこれが一番楽しみでした。
読んでいると妻木と涼子さんに情が移りますね。
余談ですが、女性の大家さん最強説はついでにとんちんかんを思い出しました。

個人的には、ギャグとシリアスとのバランスが良くてとても読みやすい作品だと思うのですが、
欠点としては、訴求力が明らかに足りない気がします。
そこがどうにももったいないなあという感じ。
なので自分としては8点を付けたものの、やっぱりここのレビューの平均点ぐらいの点数が
この作品の評価としては一番ふさわしいのかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-24 01:32:02] [修正:2011-08-24 01:32:02] [このレビューのURL]

ゆるくてぬるくて微笑ましい、まったりほのぼの脱力コメディ。
あるいは、何だかんだで純真無垢な天然娘をついつい見守りたくなる作品。ただしその娘がイカなだけ。
こういうの合わないかな、と事前に思っていましたが、読んだら案外いけました。

チャンピオンの読者年齢層よりも若干年下(12-13歳程度の設定らしい)の、ちょっと生意気だけど
でも憎めないような妹キャラに、どこまで愛着を持てるかがこの作品のポイントでしょう。

例えるなら、読めば読むほど味が出るスルメイカのような作品、と言うよりは、他の方も言うように
濃いーチャンピオンの中での箸休めというか刺身のツマ(もしくはイカ刺?)みたいな作品だと思います。
周りがドロドロに濃い中で、見つけるとふっと心が和む感じ。
いや、刺身のツマだって旨いですよ。 イカの刺身なんかもっと旨いですよ。
主役になれる作品とは言い難いですが、雑誌の中での自分のポジションをしっかり理解して
その中で自らが最も輝く方法をちゃんと実践している作品。

まあそういうことなので、この作品にあまり面白さを追求しすぎない方がいいと思います。
ギャグなんかはたまにクドいと思うこともあったりするものの、たまには頭の中を空っぽにして、
イカ娘のかわいさにほんかわするのもいいんじゃないでしょうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-24 01:25:51] [修正:2011-08-24 01:29:32] [このレビューのURL]

とりあえずいろんな意味でおバカな漫画。

エロさは自称少年漫画である「To LOVEる」とか「オヤマ!菊之助」とかといい勝負。
戦っててなぜか女の子の服だけすぐにビリビリに破けるものの、大事なところはしっかり残ります。
まあある意味北斗の拳みたいなもんですね。
作者の絵がビジネスジャンプにいた頃とは段違いに上手くなってきて女の子もかわいく描けており、
ゴチャゴチャしている割に読みやすい絵柄なので、それは素直に長所だと思います。

ストーリーについても色々と突っ込みたいところですが、全く意味がわからんので突っ込みようがない。
全巻なんとか頑張って読んでみてわかったことは、高校生が三国志だけに三つぐらいの勢力に
分かれて争ってるな、ってことぐらい。
そもそも彼らがなんで命懸けで戦っているのかすらよくわからないです。
高校生たちが素手でコンクリートとか校舎を破壊したり、気功波みたいなのを撃ったり、国宝級の真剣で
いきなり斬りかかったり、本当に殺したり、よくわからんうちに勝手に自害したり、そうかと思えば
「暴れすぎると警察沙汰になるぞ」とか「退学になるぞ」とか心配したりして、加減がさっぱりわからん。

登場人物に三国志の人物の名前が付いていなければ、恐らく誰の目にも触れずに終わっていた作品。
自分は取り立てて三国志に思い入れがないからかもしれないですが、その辺の作者のあざとさというか
発想の奇抜さにはちょっと感心します。 実際、曲がりなりにもヒットしているみたいですし。

もちろん三国志好きの方の怒りの気持ちも十分すぎるほどわかります。
言い過ぎかどうかはさて置き、好きなものを汚されるというのはこういうことかと。
ガングロでミニスカートでルーズソックスの関羽とか中国人が見たら引っくり返るんじゃないか。
どのぐらいぶっ飛んでいるかを例えて言うなら、金髪碧眼の織田信長と今川義元の青春ラブコメとか、
アラブ系の武田信玄が半裸でベリーダンスを踊るとか、それぐらいのレベルでカオスな作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-20 21:39:27] [修正:2011-08-20 21:42:56] [このレビューのURL]

短編としてストーリーを楽しむというよりは、作者の紡ぎ出す世界観、雰囲気、温度、空気、
そういうものを楽しむ作品集。

デビュー前に同人作家として発表した作品も含まれていて、普通ならそういうのは今では読むに
堪えないようなものも多いのですが、この作者の場合は非常に質が高いです。
最初と最後の話がなかなか良かったと思います。
「仏頂面のバニー」は作者には珍しく日本を舞台にしたコメディ。

個人的にはそこまでベタ褒めではないものの、とても丁寧に描かれた、素敵な絵本のような短編集。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-20 21:34:03] [修正:2011-08-20 21:34:56] [このレビューのURL]