「とろっち」さんのページ

総レビュー数: 300レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年10月09日

とにかく一言。 面白いです。

他の方のレビューにもありますが、史実と虚構とのバランスが絶妙です。
出自不詳の者や「史記」等であまり触れられていない者にもスポットを当てて魅力的な人物に仕立て、
数多くの登場人物を上手く動かしながら、壮大な歴史ドラマを紡ぎ上げていく手腕が抜群。
この作者はスケールの大きな人物を描くのが本当に上手いですね。
どちらかと言えば少年漫画的なノリで、熱量が半端じゃないです。 読んでいて熱くなれる作品。

最近は戦の場面が長すぎたりして、どうもテンポが悪くなっている気がします。
また、一部の超人的な武将が強すぎたりと、歴史ロマンではなく戦場バトルものになりつつあるので、
そこをうまく修正していければ今後比類なき名作になる可能性ありです。

井上雄彦を師匠とするだけあって、絵はかなり上手いと思うんですけどね。
特に戦場のシーンにおいて、あれだけ描き込みが細かいながらもゴチャゴチャせずに読みやすく、
迫力や緊迫感が存分に伝わってくるのは大したもの。
ただし人物の顔、特に目の描写が独特すぎて、そこがお気に召さない人も多いのかもしれません。

この作品の最大にして最強の敵、それは 「読まず嫌い」。
実際に手に取って読んだ人だけが体感できる、古代中国の大河ロマン。
熱い漫画を求めている人にお薦め。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-29 16:45:30] [修正:2011-05-29 16:51:20] [このレビューのURL]

すごく柔らかく、それでいて凛としている表題作。

意外性やどんでん返しなどとは無縁な作風で、そんな展開は起こるべくもないですが、
それでもこの終わり方は今まで読んできた漫画の中でもかなりの出来。

幸福、悲哀、充足、寂寥、出会い、別れ。
様々な感情、想いが入り交じりながら形成されたこの作品。
普通は色を重ねていくとどんどん濃く黒くなっていくものなのに、この人の漫画は違います。
そういう想いを重ねていくとどんどん透き通っていく。 実に不思議。

奥ゆかしいまでの、純然たる「積極」。
タイトルから何からすべてがほぼ完璧。 参った。
読み終えて読者の心に一片の光が射すような、そんな温かみのある作品です。


その他2作品収録。 その他扱いして申し訳ないですが、その他としか思えないぐらいに
表題作にインパクトがありました。
ただその中でも「スパイラル ホリディ」はテンポも構成もラストも良く、良質なドタバタコメディ。
「風の道」は普通の少女漫画かな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-29 16:40:51] [修正:2011-05-29 16:41:54] [このレビューのURL]

現代の高校生がタイムスリップして過去へ行き、織田信長となって活躍する歴史もの。
これだけだとよくありがちな設定ですが、とにかく異色な作品。 でも面白い。

主人公のサブローは、歴史に全く無知で興味も無く、物事をあまり深く考えず、気分屋で物怖じせず、
説教と退屈と面倒くさいことが何より嫌い、という現代っ子の高校生。
そんな彼が過去へと飛ばされます。 何故か?はこの作品ではどうでもいいらしく、経緯はあっさりカット。
「織田信長の名前ぐらいは知っている」レベルの知識しかない彼が、「とりあえず自分が天下取らないと
歴史が変わっちゃうんで」ぐらいの決意で戦国の世を駆け抜けていくことになります。

本来なら、今さら信長の伝記なんて見飽きたし先が読めてるし、っていう感じかもしれないですが、
この作品は一味違います。 何が起こるのかさっぱりわからないです。
読み進めてやっとコンツェルト(協奏曲)の意味がわかる辺り、実に上手く作ってあると思います。
全体に漂うユルさと軽さが自分の中ではまりました。 さりげないギャグや所々の小ネタも良好。

良くも悪くも展開が異常に速いこの作品。 一般的な信長のイメージとは全く違う性格のサブロー信長が、
これから起こるであろうあんな事件やそんな事件をどう処理していくのか。
いろいろと細かい伏線もさりげなく張ってあったりして、とにかく先を読むのが楽しみな作品です。
ラストは夢オチ、なんていうのはやめてほしいなあ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-05-24 00:50:39] [修正:2011-05-24 00:50:39] [このレビューのURL]

ミステリー要素が満載のダークファンタジー。

「不思議の国のアリス」をフィーチャーした(らしい)世界観。
謎が謎を呼び、読み進めていくごとに少しずつ全貌が明らかになっていく構成。
絵は綺麗だし、話もよく作り込まれていると思います。
また、良質なギャグ部分が世界観を上手く崩してくれるおかげでシリアス一辺倒にならず、
読みやすく親しみを持ちやすい作品となっています。

ただし、特に序盤は見せ方が上手くないです。 言い回しも妙に回りくどかったりして。
結果、最初の頃は非常にわかりづらく、何が起こっているのかさっぱりわからん。
種明かしのときぐらい正面から真っ向勝負でやってほしい気もしますが、
何事も斜に構えているのが最近の風潮なのか。
ストーリーも小ネタも面白いと思えるだけに、その辺りで好みとちょっと合わないのが個人的に残念。

それでも、作品世界に馴染んでくる頃には、いつの間にか全体像が何となくわかったようなつもりに
なっていて、どんどん先が読みたくなってくるから不思議。

登場人物も個性豊かで魅力的。 多すぎず少なすぎずで、キャラ達を作者が上手く制御できています。
でもみんな話せばわかるような理知的なキャラに見えてしまうのは、全体のバランスを重視した結果か、
それとも単に作者の実力の程なのか。
もっと狂い咲くようなキャラが主人公を喰うぐらいの魅力を発揮してくれても良いかも。

とグダグダ書いてきましたが、簡潔に言うと、話が進むごとに面白くなる作品。
コミックスでまとめて読みたい作品ですかね。 雑誌で読むと次号までに忘れそう。
どうでもいいけどこの手の話って本当にオッドアイとかアルビノとかの設定が好きですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-24 00:46:38] [修正:2011-05-24 00:46:38] [このレビューのURL]

面白いと周囲で評判だったこの作品。
友人に借りて読んでみましたが…、当初はあまりに面白くなさすぎてビックリしました。
そもそも、女子の3分の2が恋に落ちるという矢野くんがちっとも魅力的に見えないから困ります。
自分は残り3分の1なのか、とか思いながら、借りた手前仕方なく読み進めることに。

作品の独特のテンポにもちょっとずつ慣れてきた頃、とある出来事をきっかけにして
矢野くんが七美ちゃんのために必死に行動し始めるようになり、急に人間臭くなって良いキャラへ変化。
そうなると不思議なもので、だんだん尻上がりに面白く感じてきました。
その頃には今度は七美ちゃんの弱さがクローズアップされてきて、本当に報われない竹内くんの
切なさともども、知らぬ間に作品世界へと少しずつ引き込まれてしまいます。

とは言え、登場人物の気持ちは全く理解できないし、ちっとも前に進まない関係にやきもきしたりで、
そこまではよくある普通の少女漫画の範疇。
しかし他の方のレビューにもあるように、途中から急激に面白くなり始め……。
何だこれ。 どえらいことになってきた。 これがみんなの言ってた超絶展開ですか。
だから「僕等がいる」ではなくて「僕等がいた」なのか、なんて考えてみたり。

確かにこれは続きが気になります。
でも、どうも人の不幸を食い物にしているような気もして、のめり込みづらかったりするんですよね。
あとしつこいようですが、話が進んでもやっぱり登場人物の気持ちが理解し難いです。

作中のとある登場人物の言葉が、この先の展開を何となく暗喩している気がしてなりません。
「……みんなが、幸せになるわけには、いかないのかなぁ」

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-19 00:34:22] [修正:2011-05-19 00:37:21] [このレビューのURL]

作者の変態的な自叙伝。
小学生のときに学校に一升瓶を持ち込んで日本酒を飲むとか滅茶苦茶すぎます。

「きのうのわたしはよっぱらいであって、わたしじゃないのよ」
「(昨日の記憶が無く、部屋の惨状を見て)きのうのわたしはきっと楽しく幸せだったにちがいない」
「これはウーロン茶よ。 ビールという名のウーロン茶なのよ」
「(二日酔いの朝、冷蔵庫にビールしか無く)しかたないから、むかえ酒にチャレンジー」
「あんまり期待されたりするとわたしはダメらしい。 ボルテージあがらない。 チン○と一緒だ」

作者とお友達になりたい。
 

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-19 00:30:33] [修正:2011-05-19 00:30:33] [このレビューのURL]

8年7ヵ月の距離のすれ違い。

絵も雰囲気も極上なほどに綺麗な作品。
原作のアニメ未見。 というかアニメだったんですね。 自分はアニメに全く疎いので
タイトルすら聞いたことがなかったですが、かなり有名な作品のようです。

作品の設定はとても良いものの、ストーリー自体は至って普通。
ただそれが素直に面白かったです。
素直と言うのは読んで字のごとく、奇を衒ったりとか捻りに捻ったりとかではなく、
思いをストレートにぶつけてくる感じ。
直球でないと届かない思いもあるのだろうな。

他のレビュワーの方の評価がこのぐらいの点数になってしまう気持ちもわかります。
ストーリーも終わり方も淡々としすぎていて、さすがに高得点は付けづらいです。
でも、これは良い作品。 この切ない空気感と淡い思いが、頭ではなく心に直接届いてきます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-13 01:01:00] [修正:2011-05-13 01:01:00] [このレビューのURL]

この手の作品は大概「めぞん一刻」の影響下にありますが、
この作品は確かにどちらかと言うと「ラブひな」の影響を強く受けている気がします。

萌えーな感じの絵柄と、結構重めの内容とのギャップが特徴的な作品。
全体の構成が巧みで見せ方も上手く、常に遊び心を感じさせるような仕掛けも散りばめられていて、
こういう絵柄が苦手な自分でもすんなり読めました。

ただし、登場人物のキャラ造詣は、どうも読者受けを狙いすぎているというか、
上手く「配置」されているように感じて、ちょっと鼻につきました。

さて、この作品を語る上でヒロインのキャラについては外せないと思いますが、
「くしゃみをしたら人格が変わる」とか「水をかけたら性別が変わる」みたいにギャグの一環として、
「ヒロインの人格がコロコロ変わって楽しいなー」ぐらいにしか伝わってきませんでした。
多重人格の出てくる漫画なんて腐るほどあるので今更どうこう言うのもおかしいかもしれませんが、
少なくともこの作品では「病気だから対処していこう」というスタンスなので、そうであれば
もうちょっと真剣に取り扱って欲しかったなと思います。 その辺の扱いが中途半端な感じ。

ラスト(というか後日談)は良かったですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-13 00:57:14] [修正:2011-05-13 00:57:14] [このレビューのURL]

その古びたコインランドリーで、乾燥機の中から現れたのは、髪の長い女だった…。

ホラーのような表紙と絵柄ですが、そんな変態たちが集まるナンセンスギャグ漫画。

事前に思ってたほどはつまらなくなかったです。
作品の雰囲気は「荒川アンダー ザ ブリッジ」にちょっと似てるような感じ。
ただ、あちらの方がキャラがもっとぶっ飛んでますけどね。
そういう意味で、キャラ的にも作品のスケール的にも若干小さくまとまってしまった印象です。
本来ボケを担当すべき真魚子がツッコミに回るようではいかんですな。

可もなく不可もなくな内容ですが、何となく雰囲気でスラスラ読めてしまいます。
まあ確実に言えることは、画力の無駄使い。
というか絵柄と内容とのギャップが最大の売りっぽいです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-09 01:14:56] [修正:2011-05-09 01:14:56] [このレビューのURL]

天然美少女の宇宙人が突如現れ、主人公を巻き込んで繰り広げるドタバタラブコメ。
集英社が明らかに2匹目のドジョウを狙いに行ったように思える作品。

これが初連載とのことですが、雑な部分も多いものの絵はなかなか上手いです。
ただしギャグが致命的に寒いのが残念。 内容も例の作品と同じぐらいにスッカスカです。
その分キャラが際立っていれば良かったのですが、それほどキャラにも魅力が感じられませんでした。

そんなこんなで本家・矢吹氏がSQに移ってきて共喰い状態に。
そしてダークネス連載開始に合わせるように強制終了。 お疲れさまでした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-09 01:07:47] [修正:2011-05-09 01:07:47] [このレビューのURL]