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花田少年史やピアノの森で有名な一色まことの短編集。
一色まことの人間への愛にあふれた「ガキの頃から」シリーズと初期の読み切りを集めた「ばか。」シリーズの2つに分かれる。
帯の「ダメだけど ドジだけど 切なくて 優しくて 人間ってこんなにも愛おしい!」というキャッチコピーに惹かれて購入。大正解だった。

ガキの頃から…帯の言葉通り一色まことの人間への抑えきれない愛が感じられる人間賛歌。この人の作るキャラクターは何でこんなにも飾らないんだろう。平凡だけど、平凡だからこそ本当に愛おしい登場人物の数々。笑って、泣いて、切なくなって、最高だった。
個人的に好きだったのは姉ちん、いつも一緒の2つ。駒子は名編だが、一色作品に珍しく人間の悪意が露骨に出ていて読むのが辛かった。だからこそ最後の幸せにカタルシスが生まれるのだろうけど。

ばか。…初期の読みきりなのでまだ絵も話も荒い。しかし作者独特の人間観察の妙というものが見れて興味深い。
この作品群では「人間って馬鹿だよね。でも馬鹿だからこそ愛おしいよね」という一色まことの根底に流れる考え(と私が勝手に思ってる)がテーマに思える。傑作とはいえないものの気軽に笑って楽しめる作品が揃っている。

どちらかというと花田少年史が好きだった人に薦めたい一色まことの傑作短編集。この値段でこのページ数と質は買いです。ある程度古い作品もあるので時代がかった作品もあるものの、描かれていることは普遍的な人間の心情なので、誰が読んでも楽しめるでしょう。
一色まことの作品の中では日が当たってないように思えて悔しいですが、他の作品の影に埋もれてしまうのはもったいなさすぎる短編集です。
心温まる良作が読みたい人はぜひ読んでみてください。おすすめです

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[投稿:2011-07-24 22:44:15] [修正:2011-10-27 17:53:07]