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沙村広明の大迷作(もちろん褒め言葉)ハルシオン・ランチを読んでから、作中の台詞がすごく気になっていた。
「じじいのアップが絵になるのはオノナツメの漫画だけ・・・」

そうなのか、やたら最近名前を聞くオノナツメはそんなにいい感じにじじいを描ける人なんだ、そりゃ読まんとなぁなんて思っていたわけ。
で、読んだ。…沙村広明の言うとおり、じじいを描くスキルがやばい。

リストランテ・パラディーゾ(天国)はその名の通り、天国のようなレストランなのだけれど、誰にとって天国かというと間違いなく女性。女性が紳士に酔うレストラン。この漫画のターゲットも多分女性、でも男性でも十分楽しめる。

というのもここで言う天国は二種類あるから。
一つは既に述べたように紳士に酔うレストランということ。1巻という短い中で、オノナツメは容姿から中身まで多種多様の紳士を魅力的に描いている。しかしまじで名人芸だな。森薫なんかと同様に自らのフェティシズムを表現するのが巧みだからこその技。実際そうとは感じさせないけど上品なホストクラブみたいなもんだよねここ。

これだけだと女性限定になってしまうかもしれない。しかしここにはもう一つの天国がある。それは自分をみんなが見てくれているということ。自分が頑張っている部分を周りのみんなが見て、認めて、裏表なく応援してくれる。自分のすることで世界は少しでも動いていく。
こんな世界最高でしょ?、まあありえないから天国なのだけれども。

紳士に酔うという点では「娚の一生」もなかなかのものなのだけど、あれは現実を一緒に受け止めてくれる紳士への欲望漫画(と勝手に断定)だからまた色が異なる。そもそも娚の一生に関しては、その現実の書き方が好みではなかったわけで。

対してリストランテ・パラディーゾは現実を見つめていない。でも天国だからいいんだよ。
この漫画に救われる人はいないかもしれない、でもたまーに逃げ出したくなるときに読むとちょっとだけ心が癒される。

うん、これは良いじじい達と天国みたいなレストラン。沙村さん、紹介どもです。

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[投稿:2011-11-28 01:39:25] [修正:2011-11-28 01:39:25]