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 ショーン・タンのある少女の一日を描いた絵本。一コマ漫画。

 誰しも何となく憂鬱な日というのはあるだろう。誰も自分のことを考えてなくて、何にも素敵なことは起こらなくて、つまらないことばっかりが訪れる。そう、まるで世界に見放されたような…。ショーン・タンがそんな暗い何かに囚われてしまった少女を描いたのがこのレッドツリーだ。

 以前レッドツリーは同出版社から“希望まで360秒”という副題をつけられたものが刊行されていた。昨年日本でのショーン・タン人気の高まりを受けてか、あまり評判のよろしくなかった副題を取り除き、一回り大きなサイズの新装版が再び刊行されている。
 やっぱりショーン・タンの素敵な絵と魅力的なカラーリングは新装版の方がより際立って楽しめる。高いなと感じる方は英語はちょろっと絵に挟まれるくらいなので、洋書の方も選択旨に考えるとよいかもしれない。

 誰にも自分を分かってもらえない。窓の外を見ると、自分以外のみんなは楽しそうだ。そんな孤独感と寂しさをショーン・タンは奇抜だけれど、本当に私達の心の中を覗いているかのような想像力で絵に仕立て上げる。心の中には迷宮があり、怪物が巣くう。
 もちろん一枚の絵だけを見ても、素晴らしい。ただこれ程までに心に迫って、少女に深く共感してしまうのはやっぱり私にもこんな一日が訪れることはあるからだ。

 もちろん落ちることもあれば上がることもあるわけで、いつまでも沈んでばかりではいられない。最後には素敵な出会いが少女を、私達を待っている。

「時には、何も楽しみなことのない一日が始まることもある」

 そんな日にはレッドツリーを読むとちょっとだけ希望を分けてもらえるかもしれない。そして寝る前に読めば、明日はきっと何か良いことがあるはずだ、そんな気持ちにさせてくれる。

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[投稿:2012-01-15 11:49:12] [修正:2012-01-15 11:49:12]