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 原作小説の猟犬探偵シリーズは読んだことがないのだけれども、漫画化を考えた時に谷口ジロー以外に誰がやる?ってくらいにぴったりな小説だなと。だって犬×ハードボイルドの探偵ものですよ。これを谷口ジローが描いておもしろくないわけがない。

 失踪した猟犬の捜索を扱う探偵・竜門卓の物語。とりあえず思うのは、何てニッチな職業なんだ!ってことで。そんな風変わりな商売をやっていて、“小型犬は扱わないのだ”のように独自のポリシーを持っている。
 ハリー・モーガンのように、誰にも命令されない男。自分だけのモラルで動く男。金では動かぬ男。相棒と共に山に生き、フォア・ローゼスを飲む彼はまさに山のフィリップ・マーロウだ。

 もう谷口ジローの横綱相撲感が半端ない。絵にしろ構成にしろ匠の仕事に惚れ惚れします。魅せたい所と伝えたいことを過不足なくしっかりと見せてくれる実直な仕事。そして圧巻の、山と動物の魅力をこれ程までかと引き出す描写力。やっぱり谷口ジローは素晴らしい漫画描きだなと今さらながらに思った。さくさくとテンポ良く読ませてくれる一方で、感動と余韻はじっくりと味あわせてくれる。

 そしてまた竜門が格好良いんだ。仕事は完璧にこなした上で、自分のポリシーを貫く。言葉には出さずに、見返りも求めずに、そっと好意を置いていく。最高にリアリスティックな中にあるほのかな感傷というハードボイルドの醍醐味を堪能しました。憧れます。
 盲導犬のエピソードは特にぐっと来た。しびれますよ竜門さん。ため息が出て、温かな気持ちで泣ける。
 
 嬉しいことに続編も現在連載中ということで。また新たにこの傑作の続編も楽しめそうです。谷口ジロー好きはもちろん、ハードボイルドが好きな方はぜひぜひどうぞ。

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[投稿:2012-02-21 01:26:30] [修正:2012-02-21 02:03:29]