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 高橋葉介といえば、怪奇幻想系の作家として有名な御方。なかなか触れる機会がなかったのだけれど、夜姫さまの新装版刊行を機に手に取ってみた。

 内容は、10人の暗黒お姫様による幻想譚。まるで絵巻物のような妖しく奇妙な話が綴られていく。

 本当に高橋葉介の絵と物語は素晴らしい。夜姫さまにおいて描かれるのは、粋を尽くした妖美・妖艶だ。文字通り、妖(あやかし)の美しさであり艶めかしさだ。やばいと分かっていても逃れられない魔の魅力だ。気付いたら読んでいる私まで深淵に吸い込まれているように、目が離せなかった。
 いやぁ、すごいよな。だって生首は確かに盗みたくなるほど美しいし、内臓は本当に美味しそうだもん。それを為さしめているのは断じて猟奇趣味などではなくて、高橋葉介の絵の魔力なのだ。

 特に個人的に惹かれたのは「猫姫さま」「闇姫さま」。「闇姫さま」なんて親にも友人にも虐げられている女の子の話なんだけどね。エログロで、ロリで、残酷で、でもやっぱり何とも素敵で美しい。これを素敵と感じちゃう辺りが物語を読む人間の残虐な業だな、と思いつつもおもしろいのだからしょうがない。
 また「夜姫さま」は小女性を描いた作品として、高野文子の「田辺のつる」を引き合いに出したくなるくらい素晴らしかった。やっぱり老いても永遠に女の子なんだなぁ。高橋葉介の筆致だと最後がほぼホラーになっちゃっているのだけれど、引き出しの広さがよく分かった。

 漫画では怪奇幻想系の気に入っている描き手があまりいなかったので、今さらながら出会えて本当に良かったと思う。次に手を出すとしたらやはり夢幻紳士だろうか。夢野久作や乱歩が好きな人などは特におすすめ。

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[投稿:2012-04-10 01:44:27] [修正:2012-04-10 01:51:12]