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 去年より、DCが今までの設定等をリセットして歴史を新たに語りなおそうとしている所というのはアメコミ好きなら周知の通り。そんな大事件の発端となったのが、このジェフ・ジョーンズとアンディ・キュバートというトップ同士のコンビ手がけるフラッシュポイント。まあそこらへんの経緯はあまり詳しくないし、色んな所で詳細に説明されているので省略させてもらうことにして…。

 ある日居眠りから目覚めたフラッシュことバリー・アレン。しかし彼の周りの世界は決定的に変わっていたのだった。元の世界に戻るために、元の世界に戻すために、奮闘するフラッシュを中心としたDC世界改変のきっかけとなったクロスオーバー!…ということで。

 あんまり同意はされないだろうけど、ジェフ・ジョーンズは中村明日美子(特に短編における)に似ていると密かに思っていて。要はどちらも質の高い娯楽を提供してくれる一流の通俗作家ということなのだけれども。話の筋がとにかくおもしろくて、落とすべき所にばっさり落としてくれる。
 さらにジェフジョンのすごみというのは、その仕事のクオリティが本当に安定しているということで。ミラーやムーアのようにジャンルを横断する凄みはないにしても、逆に言えば限られたジャンルの中で最大限の仕事が出来る。

 このフラッシュポイントにしても、うまいこと歴史の改変に繋げていかなければならないわけだから相当ストーリーは制約されているはずなんだよね。しかしジェフ・ジョーンズはそこはあっさりクリアした上で、単体の多元宇宙ものとしてもいい出来に仕上げてしまえる。繰り返しだけれど、話の筋がとにかくおもしろくて、落とすべき所にばっさり落としてくれるのだ。決して新しいことや難しいことをしているわけではないのだけれど、ツボを絶対に外さない。

 とにかくもう「彼」を裏の主人公として登場させたというのがね…。それが全て。これ今まで誰も思いついてなかったのが不思議なくらい素晴らしいアイデアだったわけで、ここから全ての話が動き出す。
 決して叶うはずのなかった願いが叶う、というのは「フィールド・オブ・ドリームス」のようにそれだけで泣ける話ではあって。ただそれをこの多元宇宙の世界を利用して、しかも重要人物にも関わらずこれまでほとんど内面が描かれてこなかったあの人でやっちゃうというのがね…これは泣ける。泣かないわけがない。

 これ、ジェフ・ジョーンズはハルやブルースでもグリーンランタン(特に「Revenge of the Green Lanterns」)において実は似たようなアイデアを使っているのだけれど、語り口と物語の運び方の巧みさのためかあまりそうとは感じなかった。
 読み終わった後に最初の一人語りを読み直してもまたほろっとね。やっぱりジェフジョンは落とし所が最高に上手いなぁ。

 というわけで大満足のクロスオーバーでした。今夏に刊行予定というタイインも今から何が収録されているのかわくわくしてます。月並みだけれど、バットマンやスーパーマンは読みたいなと。

追記
・やはりフラッシュ:リバースくらいは読んでおいた方がよりフラッシュに感情移入できて良かったかも
・アクアマンやワンダーウーマンと違って、スーパーマンやハルは歴史が変化してもやはりヒーローであり続けるというのはやはりジェフ自身が手がけてきた贔屓目もあったのか?w

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[投稿:2012-05-22 20:02:26] [修正:2012-05-22 20:07:01]