「boo」さんのページ
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「闇夜に遊ぶな子供たち」の続きも読みたいけど、出ても同人になりそういうのは実に残念な話。
ホラーMがなくなったのはやっぱり痛い。
10点、9点…個人的なバイブル、名作。
8点、7点…お気に入りの作品。
6点、5点…十分楽しめた作品。
4点以下…うーんって感じの作品。わりと適当。

7点 サルヴァトール
犬のサルヴァトールはとても腕の良い自動車修理工。彼は「小さいやつ」と一緒に必要な部品を必死にかき集め、水陸両用の最先端の車を作る。そして、かつて親の都合で生き別れになったジュリーが住む南米へ赴こうとするのだった…。
こんな感じのストーリー。しかも表紙のサルヴァトールは実に可愛らしい生き物のように見える。ゆえに、可愛い犬が愛を求めて愉快な冒険の旅に出る…とかそういう物語を想像するのが至極自然だと思うのだけれども。そこはクレシー先生ということで、一筋縄じゃいかない作品に仕上がっている。
何といっても主人公のサルヴァトールの性格があんまりにも悪い。車を作るためなら泥棒やら騙しやら何でもござれ。パートナーの小さいやつに事あるごとに問題を押し付け、挙句の果てに南米に着いたら邪魔になるからと小さいやつを置き去りにしようとまで画策している。
またサルヴァトールの裏で進行している二つの別ストーリー。豚のアマンディーヌと子豚たちのお話。そして出産時にアマンディーヌと生き別れになった子豚のフランソワを巡るお話。このアマンディーヌが視力が壊滅的に悪いだけではなくて、思考力の方もド近眼。フランソワを探していく内にすごい勢いでどつぼにはまっていくことに。
基本的に読者は物語を読む上で主人公に感情移入していくものだと思うのだけれど、それにしてはひどく癖が強すぎるキャラクターたち。下手に感情移入してしまうと、色んな意味で苛々することは請け合いです。
多分このサルヴァトールという作品を楽しむためには、キャラクターに近づき過ぎてしまっては駄目なのだ。ちょっと一歩引いて彼らを眺めてみる。すると、途端にこの不愉快なやつらの愉快な冒険が楽しくなってくる。
サルヴァトールの腹黒い様々な試み。アマンディーヌの想像の斜め上を行く愚かさ。時折見せる小さいやつの素敵な笑顔。動物達が暮らす世界なのに、豚の切り身がスーパーに並び、牛は闘牛士に殺される。南米は近づくほどに遠くなっていく。物語は交差しそうで決して交差しない。JAPONでも見られたようなクレシーの実にブラックな文化批評。
そんな一筋縄ではいかないひねた物語は、クレシーの可愛らしく味わい深い寓話調の絵に乗せて語られていく。時折描かれる活劇もとっても素敵だ。絵と物語はどこまでもアンバランス。というか全てがアンバランス。
作品との距離感をつかめるようになれば、サルヴァトールを読むのがぐんと楽しくなってくる。約束事が通用しない…というか約束事がどんどん置き換わっていくような世界は実におもしろい。
だからまだ完結してないとは言っても、個人的には別に完結しなくても構わないなと思ったり。物語が交錯しそうで交錯せず、南米は近づくほどに遠のくのだから、結局ジュリーが登場しなくても良いのかもしれない。完結しそうで完結しなくても納得できるかもしれない。そんなこっちまでひねた気分になってしまうバンド・デシネ。
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[投稿:2012-07-12 22:41:35] [修正:2012-07-12 22:41:35]
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