「クランベリー」さんのページ

総レビュー数: 37レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年09月12日

美容整形の技術が著しく発達して、誰もが見た目の若さや美しさを思うがままに手に入れられるようになった世界を舞台にした短編集。

今の日本で整形手術を受けたことのある人はあんまり多くないと思うけど、それには恐らくパッと思いつく理由が3つあって、1つは手術を受けること自体が後ろめたいっていう世間体の問題、1つは手術失敗とか後遺症が心配っていう技術的な問題、それからもう1つは価格的な問題。
私は正直、整形手術を受けようと思ったことはこれまでないけど、でもこれらの問題が解決されてて、しかも周りのほとんどの人が手術を受けていたら、私だって受けてみようかなって思うもの。

自分で好きな顔を選ぶことができ、容姿に関係なく他人に評価してもらえる社会。
でも一方で、同級生たちの顔の見分けがつかず、見た目の年齢や性別さえも作り替えられた社会。

容姿を自由に選ぶことができても、それで容姿の悩みが減ったかと言えばそうじゃなくて。

他の方も挙げているけど、作中の言葉が印象的。
「キレイなだけじゃダメなの。 だからせめて、キレイにならないとダメなの。」
じゃあ、そこまでして綺麗になってどうするの?
そんなほろ苦いお話。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-09-28 01:33:10] [修正:2014-09-28 01:34:38] [このレビューのURL]

7点 千と万

「よつばと」のよつばちゃんが中学生になったら……的な感じの作品。
もちろんよつばちゃんとこのヒロインの詩万ちゃんとでは性格が全然違うんだけど、でも作品の全体的な雰囲気としてはやっぱり「よつばと」っぽいかな。

他の方も書いているとおり、エピソードがいちいち中学生っぽくて可愛い。
思春期真っ盛りで反抗期にも片足を踏み入れた年頃の詩万ちゃん。お父さんのすること為すことにいちいちイラッとしたりなんかして。本当に多感な時期なんですよね。コロコロと変わる表情なんかも含めてその辺りがすごく上手く描写されているなと思う。
志村貴子さんの作品みたいな特殊な思春期のお話じゃなくても、普通の子の普通の思春期の何気ないお話でも、見せ方が上手いからとっても面白い。読んでいて全く嫌な気持ちにならないのも高評価。

詩万ちゃんが可愛いな。でも一番可愛いのは那由ちゃんだったり。お父さんが25歳の時に詩万ちゃんが生まれたと仮定しても、いま詩万ちゃんは中一(13歳)なのでお父さんは38歳、その妹の那由ちゃんもやっぱり現在の私よりだいぶ年上だろな。それであの可愛さはずるい。秘訣を教えてほしい。

こういうの読んでると自分の中学生の頃とか思い出しちゃったりして本当に身につまされますよね。
お父さんお母さん、あの頃はいろいろとごめんねー。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-07-21 21:39:00] [修正:2014-07-21 21:39:00] [このレビューのURL]

これはきっと地球に似た星を舞台にして地球人の高校生に似た種族の日常を描いた物語なんだわ。
そこではきっとキスなんて挨拶どころか呼吸をするのと同じような感覚なんだわ。
恥も衒いも躊躇いも無くチュッチュチュッチュしてる彼らを見たら、なんか異文化交流って感じがしてそんなことを思っちゃう。それとも最近の高校生はみんなキスするときにドキドキしないのかしら。

女の子が可愛くて話のテンポが良くてみんな適度におバカで読みやすい作品。
少年誌掲載のラブコメとしては見事な程に及第点。
女の子のパンツがオムツみたいでも可愛いからいいもんね。

でも確かに面白いんだけど、読んでいてなんか違和感みたいなものを感じたりもする。
それは、話がどこに向かっているのか、どこを目指しているのか、何が目的なのか全くわからないこと。
例えば7人の魔女がいるのはいいんだけど、じゃあ彼女らを探し出して何をするの、っていう。
肝心のラブコメ部分もだいぶ適当だしね。だからいま一つのめり込めないかな。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-07-21 21:23:03] [修正:2014-07-21 21:28:10] [このレビューのURL]

私の大好きな作家さんの一人。
こんなに温かくて素敵なお話を描くのに、主な活躍の場がマイナー系出版社だからか、ちっともメジャーにならないのが残念で仕方ない。

まあそれは置いといて、この作品。
作者の他の作品と同様に、というより他の作品以上に温かくて素敵なお話。
疲れている時に読んだら、その優しさがとろける程に心に染みてすごく癒されます。

本当にもう、子供を描かせたらこの作者さんに勝てる人はなかなかいないんじゃないかな。
「うさぎドロップ」の前半部分が好きな人なんかだとこの作品は多分大好物なはず。

この作品は私にとって居心地が良くて落ち着ける部屋のようなものであり、そして自分の中の優しさや柔らかさが足りなくなったときにそれらを補充する大切な場所でもあり。
だからこの作品は皆さんにも読んでみてほしいな、と切に思うのです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-07-21 21:06:20] [修正:2014-07-21 21:06:20] [このレビューのURL]

要するに「マイガール+高杉さん家のおべんとう」みたいな作品。

主人公は味オンチで料理に全く興味のないタイプ。
幼稚園生の娘さんのつむぎちゃんともども食事はコンビニ弁当か冷凍食品かファミレスのみ。
本人は食に興味がないからそれで何の疑問もなかったんだけど、先につむぎちゃんがそんな食事に飽きてしまって、手作りの料理を食べたそうにしているのを主人公が察し、娘のためによーし自炊するぞ、っていうお話。

食に興味ないとか現実でもたまにそういう人いますけど、私的にはちょっとありえない。
美味しい料理を作れる人って、美味しい料理を食べたことのある人、美味しい料理を食べたいと思う人だけだと私思うんです。
だから主人公には本質的に厳しい。
で、味見役の女子高生が出てきて、3人で一緒に料理・食事をしていくことに。
現実的にはおかしな話ですけど漫画としてはごく当たり前な展開というか、その女子高生が美少女でしかも主人公に懐くのもやっぱり漫画のお約束。

感想としては、上にも書きましたけど似ている作品があって既読感が満載というか、可もなく不可もなくという感じでしょうか。
つむぎちゃんにピーマンを食べさせようとするお話とかは面白かったけど、全体的につむぎちゃんを可愛くみせようとしすぎているように思えて少し気になったかな。
一応は先が気になるような仕掛けもしてあるみたいだけど、基本的には読み急ぐ作品ではなく、一話完結でまったりと読んでいく作品。だから長期連載ではなくて短い巻数で上手くまとめて欲しいと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-10-15 21:33:25] [修正:2013-10-15 21:33:25] [このレビューのURL]

優しく感じられる短編集。
日常の中の非日常をSFを交えて描いた作品。SFと言っても本格的なものじゃなくて「すこし・ふしぎ」ぐらいな感じ。まったり暖かいファンタジーかと思いきやそうでもなく、最後のお話以外はどちらかというとネガティブな人たちがメインの鬱屈した雰囲気のお話。

2話目の表題作が一番良かったかな。
「さらば」と言いながら全然思いを断ち切れていないナオくんと、逆に次のステップに進むことができたマキちゃんと。いろいろな角度から考察すればその分答えが存在するようなお話で、何だか妙に考えさせられた。
ただ、自分では当たり前だと思っていることが世間では非常識だったりすることって誰でも1つや2つはあると思うけど、でもあのブラジャーの付け方はひどい。あまりにも現実味が無さすぎて感情移入とかあるあるネタとかそういうものを超越してるから、うまく物語に入り込めなかった。もうちょっと他のエピソードにしてくれれば良かったのに、もったいない。

どのお話もスパッと綺麗に終わらせるというよりは、ぼんやりと余韻を持たせるような形で、「あとは貴方(=読者)にお任せします」というタイプの作り。これが好きかどうかは人それぞれかも。
この短編集はタイトルが秀逸。全体的にどこか優しい雰囲気が漂っているように錯覚してしまうのも、短編集のタイトルに「やさしい」って言葉が明記されているからだと思う。言葉の力は偉大。例えば短編集のタイトルが「逆さまブラジャー」とかだったらこんなに優しい読後感にならなかったかもしれない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-10-15 21:23:12] [修正:2013-10-15 21:23:12] [このレビューのURL]

竜を追い求めてきた作者が、竜ネタをスパッと切り捨てて送り出した珠玉のショートショート。
なんと全33篇とな。

メッセージ性の強かった作者の前2作品とは違い、皮肉や毒は詰まっているけど基本的に無害で、良く言えばサクサク読みやすい、悪く言えば軽くて後に残らない印象。
でも全体の透明感と読後の爽快感が秀逸で、とにかくバランスのとれた良作短編集。
星新一が好きだった人ならものすごくノスタルジーを感じてしまうかも。
それぞれのお話で絵柄が全く違うもんだから、知らずに読むとアンソロジー集にしか見えなくて。そういうところでも読者を楽しませてくれているのかな。
私が特に好きなのは一人裁判の話とグルメvs食生活に乏しい人の話。あと記号を食べる話も。

「ひきだしにテラリウム」というタイトルは収録されているうちの1篇から取られたもの。
このタイトルがすごく素敵だと思う。
ご存知の方も多いかもしれないけどテラリウムっていうのは要するにミニチュア箱庭のこと。言葉から世界の広がりとか連想できそうな気がしません? それがひきだしに詰まっているんですよ。
だから「ひきだしにテラリウム」っていうフレーズは「ポケットの中に夢がいっぱい」とかと同義の響きがして、とても好き。
この本のカバーイラストも、そんなひきだしから楽しいことがたくさん溢れ出てきたみたいで、夢があって良いですよね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-08-08 00:29:22] [修正:2013-08-08 00:29:22] [このレビューのURL]

6点 煩悩寺

煩悩っていうよりはカオスですよね。あ、本能寺と掛けてるのかな。いま気付いた。

他の方のレビューを拝見してなるほどなーと思ったんだけど、前半は主人公の小山田くんが没個性すぎますよね。
結局のところ煩悩寺を形成しているのはお兄さんのチョイスであって、そんなお兄さんのカオスさと小沢さんの天真爛漫な無鉄砲さとでお話がほぼ構成されている気がする。

じゃあ小山田くんは一体何なのさと思ってたら、実は彼もかなり個性溢れるキャラで、途中から小沢さんに対しても読者に対してもグイグイ来始めた。
で、小山田くん要素が強くなってくると他の要素が薄れてくるのは必然なわけで、こともあろうに煩悩寺が少しずつ目立たなくなってきて、何と途中で一旦消滅! それでいいの!?

読んでてビックリしたけど、よーく考えてみると、煩悩寺ってのは単なる舞台で、この作品は要するに二人のイチャイチャっぷりとか初々しいところとかをニヤニヤしながら読むことがメインなのね。
私は煩悩寺のカオスさが好きだったから少し寂しかったけど、後半のニヤニヤまっしぐらも面白かった。
ただラブコメとして考えてみると、後半はあまりにも平穏で盤石な関係すぎて物足りなさがあったかも。本来はそういうまったりした世界観に刺激を与えるスパイスとしての存在が煩悩寺なのにね。

どうでもいいけどお兄さん煩悩寺グッズのためにお金使い過ぎ。少なく見積もっても数百万円、もしかするともう一桁多いかも…。お金持ちなのかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-08-08 00:09:43] [修正:2013-08-08 00:11:11] [このレビューのURL]

作者のデビュー作となる短編集。2012年かなり話題になった短編集だそうですね。
全6編+おまけで、うち半分以上が冠婚葬祭な感じ。
このレビューはなるべくネタバレを避けているつもりですが、鋭い人なら何か察してしまうかもしれません。ご容赦ください。あと偉そうな文章でごめんなさい。


1編目は、結婚式を翌日に控えたとある女性と男性の平凡で平穏なエピソードを描いた表題作。
式を目前にして焦り出す女性と、どっしり悠然と構えている男性。その対比が面白くて読みやすく、「やっぱり前日だとこんな感じなのかな」なんて思いながら読み進めていくものの、話自体は実に平凡。
でも突如として話の全体像がガラッと一変し、「あれれれれ?」と慌ててもう一度頭から読み返してしまう、そんなお話。
実は初めて読んでいる時に妙な違和感をほんのりと感じていたんだけど、それが作者の仕掛けだったのね。で、その違和感の正体が判明してすぐに読み返し、巧妙な仕掛けだったことに気付く。しかも「さーて、どんでん返ししますよー」って話でもなくて、自然な感じでコロッと小気味良く引っ掛かる。
それがまた素敵。そうだよね、よく考えたら式の前日だもんね。タイトルも含めてよく出来ているなあ。
引っ掛かってなお暖かい気持ちになれる良作。

2編目は、夏の暑い昼間のとある幼い少女と父親の平凡で平穏なエピソードを描いたお話。
これもまた話自体は実に平凡。でも読みやすくて普通に読んでいるうちに、また「あれれれれ?」ってなっちゃう。
今度のお話は1編目とは違って特に違和感も無く(一応あることはあるけど)、不意打ちな感じでどんでん返しがやって来る。
斬新な視点が印象的だった1編目とは対照的にこちらは古典的な仕掛けでタイトルも微妙だけど、やっぱり暖かくて心地良くなれる。


ここまで読んで、話の構成の上手さと巧みさ、そして平凡な導入部から突如訪れる鋭いどんでん返しの存在に、この短編集はそういうものだと読者は想定してしまうかもしれない。
でもこの後の収録作は平凡な話が平凡なまま終わる、普通の平凡な短編集。
どんでん返しも盛り込まれてはいるんだけど、あまり効果的に機能しなくて。悪い話ではないのに、最初の2編で読者の中のハードルが上がってしまっているので、特に平凡に感じる。それが残念。

これ個人的には掲載順が失敗したのかなーなんて思ってしまう。
もちろん短編集なので最初の話が面白くなければその後のお話を読んでもらえない危険があるわけで、最初に面白い話を持ってくるのは当然かもしれないんだけど。
でも最初の2編を後ろの方に持ってくれば、全体的にバランス良くもっと面白く読めたかな、と。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-01-05 23:36:16] [修正:2013-01-05 23:37:45] [このレビューのURL]

王道の青春漫画にクイズというニッチなテーマを掛け合わせたような作品。
絵は綺麗で、内容も読みやすくそれなりに熱血もしていて面白いし、クイズに関する雑学知識も楽しい。

ただ、登場人物は主人公もヒロインもよくある感じというか、ベタベタでコテコテな学園漫画。
そう考えるとこの作品の面白さって何なのかなってちょっと感じてしまう。

例えば、比較対象として他の方も挙げている、同じく王道+ニッチなテーマの作品「ちはやふる」。
ちはやふるも凄く面白い作品なのだけど、ちはやふるはテーマがカルタでなくてもきっと面白い。あの迸るような熱さはテーマが例えバスケだろうが吹奏楽だろうがきっと変わらない気がする。
でも、この作品はクイズを扱っているから物珍しさもあって面白いように思えてしまう。それは突き詰めればマイナー競技であるクイズというものに対する興味。だからもしこの作品のテーマがよくある将棋とか料理とかだとしたらどうだったかなって。

もちろんそのクイズというテーマを上手く描き出しているのは確かだし、クイズの魅力を際立たせるために敢えてストーリーをベタにしているのかもしれない。
でも私なんかはもっとキャラに他に無いような個性とか魅力が欲しかったなあなんて思ってしまう。
ということで、クイズ漫画としては楽しいけど、青春漫画としては別に普通かなーなんて思ってしまうのでありました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-01-05 23:15:18] [修正:2013-01-05 23:28:59] [このレビューのURL]