「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

史実を大きく外れた漫画的な展開や人物の評価が偏っているところに多少疑問は感じるものの、歴史をベースにした長編作品としては抜群に出来が良い。各人物は旧来のイメージを壊すことなく、かつ新しい人物像で生き生きと描かれており、様々な人物が複雑に絡まりあってできた幕末の潮流を絶妙なバランスで再現している。
特に人斬り以蔵や武市半平太、新撰組や亀山社中の面々には並ではない愛が感じられる。と言っても溺愛ではなく、それぞれの光と闇をしっかり分別して描いているのが評価できる。

序盤に「身分差別への反発」というテーマが強烈なインパクトとともに突き付けられ、この骨格を非常に明確に示していることが作品全体に説得力を与えている。
また要所のやりとりは創作とは思えないほどリアリティーがあり、重要な場面とそうでない場面の描き分けが上手い。
歴史の授業ではある種ミステリアスな印象を与えられる竜馬が、この作品の中では誰よりも人間味に満ちた竜馬なのだ。

最大の見せ場である薩長同盟成立以降の展開が少しだれるが、大河ドラマの必然なので仕方ないところ。
よくここまでやり切った! と素直に賛辞を送りたい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 15:30:08] [修正:2007-06-21 15:30:08] [このレビューのURL]

このシリーズの魅力は奇妙な世界観であり、独特の絵であり、様々な方面へのオマージュである。この色合いは王ドロボウ時代よりも強くなったと思う。
ストーリーを楽しむ要素はかなり低くアクの強い作風なので、合わない人には何の魅力も感じられないだろう。

画力に関しては超一級品。あらゆる時代の美術や映画の影響を感じさせる繊細な線とトーンは、芸術品と見まがうほどの圧倒的な個性と美を放っており、高い次元で完成されている。
文学作品からの引用や言葉遊びを多様したセリフ回しや世界設定も見もの。オムニバス方式で様々なエピソードがその都度世界・時間軸を変えて語られるため、いろんな隠し要素を見つけることができる。
ただこれも分からない人にはちっとも面白くないかもしれない。

漫画としての評価は低いが、一つの作品として見たときの価値は高いのではないかと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 08:00:37] [修正:2007-06-21 08:00:37] [このレビューのURL]

9点 地雷震

ある重要人物の死を境に前半と後半でかなり話の見せ方が変わっており、それに伴って話の主題も変化している特殊な作品。(ちなみに絵柄も同じ時期を境にかなり変化している)

前半は主人公である飯田が積極的に捜査に関与しているため主観的に話が進んでおり、また扱う事件も犯罪者の異常心理や麻薬、催眠といった「犯罪色」の強いものが多い。
この時期の事件内容自体は比較的ありがちとも言えるが、飯田が犯人を追い詰める過程にハードボイルド小説的な面白さがある。

後半は飯田が捜査そのものに絡むことは少なくなり、犯罪者自身やそれに関わる第三者を中心として、より客観的に事件が展開する。扱うテーマは連載当時の時代背景を反映した「社会問題」が意識的に取り上げられており、作者の関心の高さが伺える。
虐待が虐待を呼ぶ悪循環、いじめ問題、自殺の美徳化、酒鬼薔薇聖斗事件を思わせるような未成年者による惨殺事件、脳死や魂の在り処…といった非常に現実味のある問題が独自の切り口で描かれている。
特にこの後半に多く見られる「セリフ」ではなく「空気」にものを言わせる描写の鋭さは圧巻の一言。

どのエピソードも重い内容ながら、少なからず現代社会に身近に存在する「心の闇」について考えさせられる。一見大人向けの作品だが、ぜひ高校生ぐらいの人に読んでもらいたい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 06:57:34] [修正:2007-06-21 06:57:34] [このレビューのURL]

オタク向けの作者だという先入観を持っていたが、これを読んで印象が変わった。

毎日の何の変哲もない出来事がつづられているだけなのに、ひとたび主人公よつばの手にかかると全てが発見や冒険の連続になる。幼い子供を中心にした切り口は今までありそうでなかったんじゃないかな。
読んでる側の誰もが常識として知っていることをよつばが覚えていく様子と、彼女を取り巻く友達や大人たちとのコミカルなやりとりがいちいち新鮮に映り、思わず笑みが漏れてしまう。

また、ひとコマひとコマの使い方が上手い。
何気ないコマが実は後のエピソードへの布石になっていたり、話のオチが分かったところでページを戻してみるとちゃんとラストにつながる細かい描写が見つかったり、と至るところに読者を楽しませる工夫が凝らされている。

しばらく忘れてた気がする日常の素晴らしさを思い出させてくれる作品だ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 06:17:07] [修正:2007-06-21 06:17:07] [このレビューのURL]

「ヘタウマ」とはこの作者の絵のことを言うのだと思う。

一般的に見れば間違いなく下手な部類になるいびつな絵だが、この絵の歪みがあってこそ作中繰り返される過剰とも思える心理描写の複雑さが際立って見える。
追い詰められたときの人間心理、疑心暗鬼の中での極限の駆け引きが非情な現実を伴って描かれていて、常に先が読めない展開にハラハラさせられた。

単純なルールのゲームをここまで奥深い展開に昇華できるのは素直にすごい。心理戦を描かせればこの人の右に出る作者はいないんじゃないかと思う。

ただこれでもかと人間の汚い部分を見せ付けてくれるダークな内容なので、万人にお奨めできる作品ではない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 05:36:23] [修正:2007-06-21 05:36:23] [このレビューのURL]

10点 SLAM DUNK

初めて読んだとき、これほど「はやく先が知りたい」と思った漫画はない。

展開は終始スリリングで、事前にストーリーを知らなければ最後までどう転ぶか分からない。こと試合の場面はそれまでの漫画になかった圧倒的なリアリティーを以て描かれており、汗のしぶき一つに至るまで会場の熱気が、躍動が肌に触れて伝わってくるよう。
特に綾南戦と山王戦の終盤の展開は圧巻。

登場人物たちの個性はそれぞれ際立っており、作者の関与しないところで勝手に喋ったり行動しているようにも感じられる。
また日常の生活と非日常の世界との描き分けが文句なしに上手く、物語にメリハリとリズムを与えていて読む者を飽きさせない。

結末に関しては賛否両論あるが、個人的には過不足なく最高の形で締めくくれてると思う。
僕の知る中では数少ない「万人に薦められる」素晴らしい作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 04:20:31] [修正:2007-06-21 04:20:31] [このレビューのURL]

確かにキャラクターも、ストーリー性も、絵柄や手法も、全てが好みの分かれる作品。読む前に良い先入観を持っている人は少ないと思う。

しかし一度読み始めれば、そんな好みを超えて有無を言わさず強引に先を読ませるような不思議な引力に満ちている。
第一部からスティール・ボール・ラン(実質第七部)に到るまで100巻に届こうかという超長期連載。しかも「こち亀」のようなオムニバス形式ではなくて長編戦闘マンガとしてのスタンスを崩すことなく、且つ中だるみもほとんどなく今なお描き続けられていることに僕は敬意を表するッ!
「人間賛歌」のテーマのもとに繰り出されるストーリーには非常に筋の通ったものがあるし、それが作者の一貫した人間観に基づいていることが感じられる。

独特のセリフ回しや斬新な戦闘描写(特に第三部において)も魅力の一つで、ジョジョにまつわるネタは数知れず。この作品が漫画界に与えた影響は計り知れない。
日本の漫画史上最も偉大な作品の一つだと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 03:53:27] [修正:2007-06-21 03:53:27] [このレビューのURL]

今さら少年誌で相撲という(おそらく編集部がやらせた)無茶な題材でもちゃんと熱い王道展開に持っていくつの丸先生の技量はさすが。
しかしやはり時代の並には抗えなかった。
面白いんだけど、舞台や内容の規模が微妙すぎてジャンプの中で明らかに浮いてる。4巻のあたりから徐々に末期臭が漂ってきたかな・・・と思ってたら案の定打ち切られました。
惜しい漫画だとは思うが、もし他の掲載紙だったら・・・もし打ち切られずにいたら・・・と考えてもこれ以上どうしようもなかったような気がする。テーマが合わなかったということだろう。

作者は後の展開への伏線のつもりだったんだろうけど、デブが最後までただの超絶ヘタレのままだったのは泣ける。一応ラストで横綱になっるあたり余計泣ける。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-08-20 10:51:22] [修正:2008-08-20 10:51:22] [このレビューのURL]

得点は暫定。

今回の舞台は西部劇。主人公の得物はもちろん銃だけど、最近なにかとよく目にする弾丸乱射しまくりな銃撃戦とは違い、一瞬の抜き打ちが勝負を分ける渋い戦闘シーンが良い。
キャラクターや設定などは良くも悪くも皆川先生の十八番という感じで、さて、ここからどう料理していくのか楽しみ。アクションシーンに派手さこそ少ないものの、スピード感溢れる描写はさすがの一言。
カイルが良いキャラしてます。期待。

08.08.20追記
2巻が出てたので感想。
「・・・あれ? これってこんなノリだったっけ?」

フツーに旅をして、フツーに敵が襲ってきて、フツーに切り抜けて、フツーに新キャラが出てきて、新たなフツーっぽい謎が・・・。
なんとも締まりのない展開。
とりあえず死ぬかもしれない危険な場面でみんな冷静すぎて、逆にこっちが不安になってきた。

なんだか雲行きが怪しくなってきた気がするけど、期待してます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-01 00:43:42] [修正:2008-08-20 09:20:23] [このレビューのURL]

今最も注目してる漫画。「特にこのシーンが!」というのはないけど、ストーリーの完成度の高さは歴代ジョジョの中でも一、二を争う出来じゃないかと思う。

第五部あたりから気になり始めた構図・コマ割りの見づらさから一歩抜け出し、かっしりとした絵柄に落ち着いた。ここぞの場面の迫力はさすがで、静動のメリハリが利いた非常にリズム感のある構成になった印象。
驚いたのはヘタレだったジョニィの変貌ぶり。単に戦闘能力・乗馬能力が向上しただけでなく、精神面での成長が確かに伝わってくる。

序盤〜中盤はセルフパロディーや単純な戦闘がメインなためマンネリも感じたが、「遺体」争奪戦が激しくなってきたあたりからの緊張感が凄い。以前よりもスタンドが直接戦闘に影響する度合いが薄くなり、より精神面の駆け引きが描かれるようになった。これを地味と感じるか、熱いと感じるか。僕は後者だ。

今はまだどういう結末が待っているのか見当もつかない。だからこそわくわくする。
物語の本当のゴールがどこにあるのか明確に示されていないのが、今までのジョジョと最も違うところかもしれない。
(08.5.20改筆)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 16:53:05] [修正:2008-05-20 15:07:59] [このレビューのURL]