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7点 大日本天狗党絵詞
作者の初連載とは思えないほど、新人とは思えない話の方向性と独自性をもった作品です。それでいて、序盤こそ盛り上がりに欠けるものの、2巻でZ氏が登場してからの流れには新人がもつ特有の勢いをしっかり発揮しています。(最近の新人さんにも、ぜひこれほどの気概を持った方が現れるといいなぁ。)
物語は終始天狗の謎を追う展開ですが、そこには天狗に限らない、天狗を比喩とした社会風刺を感じ取ることもできます。
最高の力を持つ天狗、Z氏の姿が外人であること。
泥人形と、それを愛する者。
師弟関係。
天狗の本質:自分を天狗だと思い込んだ強いアイデンティティをもって初めて天狗となりえること。
そして何より、人間にも天狗にもなりきれないシノブの存在と結末。
こうした様々な要素を基に、自分がこの作品に何を照らし合わせて楽しんでいくかは、人それぞれでしょう。それだけ比喩になりえる多くの物事が、たった3巻(新装版)の中に詰まっています。
作中の人物は皆、自分のアイデンティティを失いかけながらも、最終的にしっかりと「自分」を取り戻していきます。
テングを見せつけられても確固としたアイデンティティで動揺もせず天狗としての気概を取り戻した師匠
人間にも天狗にもなりきれないシノブが、様々な経験を経て、何かを悟り、前向きに進もうとするラスト
しのぶに隠してきた過去を話、しっかり向き合おうとする教授
有吾堂も比良井も幸南も、不本意な結末を迎えながらも、しっかりと自身のアイデンティティを取り戻しています。
こうした登場人物たちのモラトリアムを楽しむ作品でもあるのです。
水墨画とも劇画とも思える筆のタッチも新鮮。迫力を引き出しながらも、細かい表情までしっかり書きこまれています。
とにかくどこをとっても独特な漫画ではあるのですが、その独特さが長所とも短所とも言えてしまう嫌いがあります。最近の漫画に馴れ過ぎた人には読みにくさを感じるでしょうし、テンポの遅さも気になるかも知れません。漫画らしいエンターテイメント性を発揮しているのですが、盛り上がりに欠けたり古臭く感じるかも。
一般受けする作品ではありませんが、もし漫画に娯楽以上の何かを求めるのであれば、一度は読んでみてはいかがでしょうか?
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-04-11 18:00:23] [修正:2010-04-11 19:35:11]
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