「ジブリ好き!」さんのページ

総レビュー数: 343レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年12月10日

手塚思想の集大成「火の鳥」と逆の視点で救いを描いた短編集。

巻末で作者も言っているけど、そんなにスケールの大きな話でもないし、どちらかといえばオーソドックスな話が多いです。けれど一貫して、生ではなく死に、「生きろ!」ではなく「生きない」に、希望を見出すプロットは、年を跨いで発表された短編集であるにもかかわらず強い想いを感じられます。

全5章のうち、第3章の話が琴線に触れました。
孤高のF1ドライバーとそれに憧れる売人が入れ替わる話。
厳しい「プロ」の世界で生きる幸せ
「アマ」のまま生きる幸せ
そこには違いこそあれど上下はない…
そして
「勝つためには限界まで踏み込まなければいけない、だけどどこが限界かは、愛する者がいるから見えるんだ…」
このセリフは本当に上手い。

第5章も集大成的な位置づけとして非常に良いです。
ある意味王道的なプロットかもしれないけれど、演出や見せ方が素晴らしい。

荒い画だけど、女性はかわいらしく、物語は力強く描かれてます。
テーマ性の割に重くなく気軽に読めるのもgood!

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[投稿:2011-02-27 15:19:22] [修正:2011-02-27 15:19:22] [このレビューのURL]

話自体は悪くないのですが、ばんばんモブを殺していくのはちょっと…
人の命を軽く見る作品が嫌いってわけじゃないけれど、話の展開や説明のためだけにゴミのように人が死んでいくのはいかがなものかと。
何より…流風の思考が理解できない。あれだけ次々と大切な人を奪っていく流水をいつまで庇い続けるのか…ジーンたちは結構あっさり倒したくせに。
克之にしろ流風にしろ、流水を倒すチャンスはいくらでもあったのに。
双子愛ってやつか…わからないなぁ…

伝書バトから最終決戦まで全て展開のために人の生き死にが作者の手でコントロールされすぎてる印象が嫌悪感を与えてしまい、残念でした。

あと、文庫版1,2巻の寄せ書きとかネタバレしすぎで困る。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-21 22:50:38] [修正:2011-02-21 22:50:38] [このレビューのURL]

大好きな作品です。

ライオンさんが良いです。

ライオンさんのいないふたスピなんてふたスピじゃねぇ!ってNHKの実写ドラマをけなしていましたが、いざ見てみたら感動しちゃいました。
ライオンさんがいなくても面白い。
つまりこれ、宇宙飛行士を目指す若者たちの青春ものだったんですね。感動に媚びた感じが拭えませんが、それでもこの作品の世界に浸っていたいと思えます。

ドラマでは熱さが目立ちましたが、原作はほんのりと暖かい雰囲気。その源は優しいタッチの画で、淡くもの寂しくもふわふわとして温かい、独特の魅力がこもった画です。
こんな優しい画から想像もできないほどシリアスな内容ですが、その本質は青春ドラマ。そう気付いて読み直すと、幾多の葛藤と苦難の末に夢を掴み取ったあすみの姿に感動してしまう。秋やマリカのエピソード自体じゃなく、それを乗り越えたあすみの姿に…

印象的な場面が数多くあるけど、やっぱり一番は、最後あすみが選ばれた時のシーン。
あのあすみの表情…その後の教室の空気感や差し込む光の効果なども良い!
嬉しさと寂しさと、そこにいる他者を蹴落として勝ち取った栄光と周囲への申し訳なさ、そしてそれまでの苦難の数々。全てが詰まってます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-12-11 02:17:51] [修正:2011-02-13 16:10:59] [このレビューのURL]

アニメ版の第一話無料配信を見たときは、あまりのつまらなさに絶句してしまったが、蓋を開けてみれば原作はこんなにも魅力的で練られた作品だったのかとまたしても絶句。

巫女ものに恥じず、日常パートのほんわかさを萌え画やデフォルメで描き、ひとたびストーリーパートに入れば墨で描いた劇画のような迫力ある画に変化。それがまた、妖怪のおどろおどろしさを際立たせ、シリアス調にも合っていて素晴らしい。
「ぬらりひょんの孫」もこんな感じの変化に富んだ画で妖怪ものをやっているけれど、画や雰囲気の変幻自在さはこちらが遥かに勝っていると思う。(ちなみに両者では妖怪の定義が異なっていて、「ぬらりひょんの孫」は目に見えた実体的なものだが、「朝霧の巫女」では実体ある「気」として扱われている)

キャラも決して多すぎず、各キャラがしっかり立っていて、見ていて楽しい。「巫女萌え!」と読み始めた人には凝り過ぎた内容だが、シリアスとの緩急もあいまって、萌え漫画として読んでもクオリティが高いと思う。パンチラは少なくエロシーンもないので、純粋にストーリー勝負してきているのもわかる。

さて、肝心のストーリーなんだけども、ごまあぶらさんの言うように間違いなくEVAを意識している。特に5巻の後半の演出法なんかは顕著。
EVAがキリスト教や聖書をモチーフにした洋の作品だとすれば、こちらは日本神話をベースとした和の作品。そのため日本の神話の知識がないと理解が厳しいが、加筆された6巻の冒頭で説明が入るので、めげずに読んでみてほしい。
6巻以降の忠尋は鬼太郎と目玉おやじ化してしまうが、そうなっても日常やギャグのノリは変わらない。

ストーリー・画ともに目を惹くものがあり、遠近感・見せ方・構図など表現法も素晴らしく非の打ちどころがないのだが、展開自体は巻き込まれ型やセカイ系に良く見られるものなので、食傷気味の方も多いと思う。
だけど5巻が余りにも素晴らしいので是非そこまでは読んでみてもらいたい。カラーページの素晴らしさもさることながら、幽世の世界観があまりに完成されていて凄すぎる。

短編集「妖の寄る家」での補完もお忘れなく。

(追記 7巻まで)

さて、7巻。残すもあと2巻ですが、皆様ついてこれましたでしょうか?
雑誌連載が終了し、収入安定のため単行本は守りに入るかとも思いましたが、杞憂でしたね。それどころか、結構な人数がここで脱落するのでは?
自分は古文に明るくないので、回想での会話はほとんど理解できませんでしたが、とにかく大局だけはと必死に読みました。アヤタチとククリの絆の深さ…これだけ理解できればとりあえず読めます。
ストーリー、知識、構図、そして画力…この作者、間違いなく、本物の天才。
ともすれば作者の陶酔と評されそうですが、話の大きな展開自体は見慣れた感じなのが救いですね。
脱落しないよう、どうにか喰らいつきながら、最後まで見届けたい。怪作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-03 15:41:02] [修正:2011-02-10 00:43:21] [このレビューのURL]

呪われた一族の呪縛から逃れるため、その謎を解明しようと奔走する主人公。
一種のミステリーかと思いきや、かなりオカルトな話へ傾いて行くこの作品。その向かう先は、一族の呪いの謎をやっとの思いで解き明かし、無事婚約者と幸せな生活を送る…そんな単純なハッピー・エンドではなかった。

この作品の内容とテーマは、最後の最後で突然方向を変えます。
ぶれることなく進んでいったベクトルが、何の前触れもなく急転換。
ラストから外伝にかけて、「戦争や戦い、テロにしても、礼儀や道理はあるものだ」といったことを主張しているように感じました。

後半までは特に山場がなく進みますが、それでも読ませてしまうのはベテランの技。
人物関係がわかりにくいので、ちゃんと整理しながら読まないといけないのが難点。画は古い少女漫画全開です。

テーマ的にも展開的にもかなり独特。
テロが騒がれる今日へ向けた主張なのかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-29 19:50:04] [修正:2011-02-09 16:52:46] [このレビューのURL]

なんか、全体的に、志村さんっぽくないような、志村さんっぽいような…

放浪息子のあとがきで、魔女っ子もの描きたいって言ってたけど、実現したようで。ファンタジーじゃなかったのが残念。それでこその志村節か。

「とあるひ」って短編、東急東横線の駅名がキャラの名前になってるやつ、あれに出てくるネーム書いてる漫画家さんはやっぱり本人?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-09 11:52:56] [修正:2011-02-09 11:52:56] [このレビューのURL]

まさに「りぼん」って感じの画、子供向けの世界観

しかし、なかなかどうして、ギャグはハイレベルで面白い。
マニアックネタを多用せず、11巻もの間シュールネタを貫く。キャラも基本3匹(ヤマナミ除く)と一人で固定。抜群の安定感。
これぞ、実力派です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-08 21:45:35] [修正:2011-02-08 21:45:35] [このレビューのURL]

歴史において、善悪って単純に勝敗で決まっちゃう。
だから歴史が動いたとき、それまで善だった新撰組も、悪って括りの中へ入ってしまうのかもしれない。
でも、関係ない。善悪なんて、関係ない。
人殺しだの、壬生浪だの、なんと罵られようが、彼らは京の町のために戦う。ただ、彼らはそれだけのために戦うのだ。

幕末の時代を駆け抜けた史上最強にして最後の剣客集団、新選組。
ガンガンにて連載されていた「新撰組異聞PEACE MAKER」の続編、池田屋事変以降の、終わりへ向かう物語。


前作前半のほんわかムードが一転して崩れ、前作後半からの流れをそのままに激動の展開、さながら鬱展開が続きます。
史実では存在しない、オリジナルキャラクター:スズが壊れてしまい、かつての友情関係が崩れてしまった悩める主人公。新撰組にも危機が迫り、主人公にも決断が迫られ…
登場する全てのキャラクターが人間らしく、かっこよく、彼らの生き様には学ぶことやエネルギーを感じます。

(2010年11月、5年間の充電を経て再開)

物語も一気に加速、さすがに新撰組は強い。
鈴を狂わせたまま終わらせず、決着の時が近付く…今後が非常に楽しみ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-12-11 01:39:21] [修正:2011-02-08 15:16:09] [このレビューのURL]

8点 方舟

降り止まない雨なんかない
物理的にも精神論でも、確かにそうなのだろう
でも、その雨が一体いつ降り止むのかは、誰にもわからない


何日も降りしきる雨に、すぐやむさ、必ずやむさと、明日も明後日も当たり前のように考えて、また明日が来る
止まない雨は、やがて全てを飲み込み始める
それでも思う、雨は止むと
だけど、10階のマンションのベランダから目の前に広がる光景を見て、初めて絶望を認識し始める

絶望の中にいて愛や未来への希望にすがって諦めない方舟の人達
そんな彼らに、「おまえらみんなバカか!!」と叫ぶ若者
終焉を受け入れ故郷に戻り、家族で最後の時を過ごす者達

そして雨は止んだ
想像力の欠如した者たち全てを飲み込んで
太陽の光を浴びることができた、いかだの上のカップル
でも、いかだは方舟なんかじゃなかった
終焉のビジョンをもっていた二人もまた、終焉の中に取り込まれゆく…


降り止まない雨なんかない
その雨が降り止んだのは、人も街も全て飲み込んだ後だった
あまりにも静かな終末の形
こんなにも救いがないのに、なんて美しいラストなのだろう

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-18 14:27:41] [修正:2011-02-08 15:01:13] [このレビューのURL]

結局記憶の継承が嘘なのか本当なのかはわからない。
単純に、母と子が口裏合わせただけなのかもしれない。
するとこれは単なる主人公の失恋話になるのだけれど、彼が最後に救われた気持ちになることには変わりない。この作品がSFであろうがなかろうが、誰にとっても思い出は大切なものなのだ。

もちろんこの作品はSFなのだろう。わかりやすく、答えや解釈も非常に説得力があった。ただ、この世界観にのめりこむには少し短すぎたかな。

芸術って、風景画の場合、そこに含意なんてなくてただ純粋に画家の見た世界に浸ることに意義があるようで。つまりその風景を見たいだけならそこに行けばいいけれど、その風景が画家の目にはどう映っていたか、風景を介して画家の感性を共有することに意義がある。
それになぞらえると、この作品の芸術性って、原作小説の世界観やエマノンの人物像を鶴田氏がどう見てるか、表現しているか、なのかも。原作者の絶賛に関わらず、読み手が感じて決めること。
自分は原作小説を読んでないからこの作品の芸術性うんぬんは良く分からないけど、鶴田氏が非常に丁寧な仕事で作品に命を吹き込んだことはとても感じられました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-08 13:52:28] [修正:2011-02-08 13:52:28] [このレビューのURL]

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