「ジブリ好き!」さんのページ

総レビュー数: 343レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年12月10日

前作以上のパニック・サバイバル漫画。
舞台は豪華客船。
新しさは今のところないけれど、安定した立ち上がりと言った感じ。
このジャンルが好きな方は是非どうぞ!

若干「少年漂流EX」もしくは「バイオハザード」臭さがありますが、今後どうオリジナリティを出していくかが評価の分かれ目かと。
あと、「鬼燈の島」以外の作者の他作品に見られるような猟奇的なシーンが多く(作者の趣味?)、少し嫌悪感を覚えるかも。

「鬼燈の島」の登場キャラ(?)も出てくるので、前作ファンにも嬉しい内容!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-23 21:03:23] [修正:2010-10-23 21:03:23] [このレビューのURL]

読み手の恐怖感覚や感性によって、各話の面白さが異なると思う。
「このエピソードはだれが読んでも面白いだろう」ってよりは、「自分はこれに惹かれる」といった話が詰まった「怪奇漫画」の短編集。

不安の立像→「恐怖漫画」寄りの話。些細な好奇心から出会った恐怖によって、日常の退屈さから逃げだせた男の話。(7点)

子供の遊び→意識のすり変わりは諸星作品ではよくあるのだろう。この短編集でも、最初と最後で考えや意識が全くすりかわってしまうエピソードが多い。その中でもこれは最も典型で秀逸なエピソード。表面的な恐怖だけでなく、深層部分にも刻まれる恐怖感。(8点)

復讐クラブ→どんでん返しというほどではないだろうが、オチは良い。「人を呪わば穴二つ」ということを、説教臭くなくシニカルに描いた話(8点)

海の中→美しくも生臭い、怪奇談(4点)

ユニコーン狩り→ファンタジー作品と評するだけあって、恐怖や怪奇を描くというより、夢を見せてくれる作品です。それでもやはり、異様さはあるのだけれども…(7点)

真夜中のプシケー→まさしくホラー漫画といった感じ(5点)

袋の中→人間の残忍さ・猟奇性が具現化されたものが、袋の中の怪物なのだろう…(5点)

会社の幽霊→ホラー性よりユーモアな表現が勝っていて、皮肉のこもったギャグ漫画にも読める作品。(6点)

子供の王国→これは怖い。そして興味深い。子供を嫌い批判していたつもりが、知らぬ間に子供世界にはまり込んでしまっていたという皮肉。おそらく最初からの子供批判な態度は、永遠に遊び続ける子供への憧れや羨望の裏返しであり、命がけで「子供の遊び」を体験したことでその深みにはまってしまったのだろう。このオチを知ってしまった後には、何とも言えない気持ちになってしまうだろう…(9点)

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[投稿:2010-10-22 16:33:03] [修正:2010-10-22 16:33:03] [このレビューのURL]

(2010年10月、レビュー全改変、他作品のネタバレも含むので注意)

「なるたる」なんて柔らかいタイトルと、明るい1巻の表紙から、いったい誰がこんな残酷な物語を想像できたでしょうか。
あるいは、アニメから入った人は、いかにも子供向けな感じのほのぼのなOPに騙されたことでしょう。
今では予備知識なしに手を出してはいけない鬱漫画の代名詞です。

淡々としたテンポなのに、重い。
暗く残酷な展開と、何気ない日常のシーンの温かさ。
天真爛漫な主人公・シイナと、その周りの殻や闇をもった子供たち。
こうした対極的な要素が調和して、より残酷な運命が生まれていきます。

いわゆるセカイ系という分類に入るので、その筆頭である最終兵器彼女やEVAと似たラストを迎えますが、その本質は全く異なります。
EVAの旧劇場版でのラストでは、シンジとアスカが残りましたが、他の人間は「補完」という死とはまた違った状態になります。
一方こちらは全滅ですので、サイカノ寄りのラストと言えますが、サイカノでは人が死に絶えた地球から「船」で脱出し「二人だけの」世界に入って終わります。それに比べてこの作品は、嫌いなら作りなおせば良いという思想の下、人類の再生が行われます(アルゲマイネ原野さんがおっしゃるように、涅の「命は代替がきくから命たりえる」という言葉が肝でしょう)。
EVAの(人の心の隙間を埋め完全となるための)人類補完、サイカノのキミとボク「だけ」の世界、そしてなるたるの、「珠たる子」として選ばれた涅と秕の二人の乙姫が地球の脳神経として地球の代わりに行う破壊と再生。
三者とも、似てるようで違うラストです。
面白いのは、人類を再び生むという点でなるたるが一番アダムとイヴの役割を果たしているはずなのに、生き残った二人はイヴとイヴ。EVAもサイカノも男と女が生き残るのに、決定的に違います。

また、EVAや他のファンタジーと異なるのが、主人公が少女であること。
そしてそれ故に、圧倒的に無力であることです。
行動的で正義感もあるシイナは、竜の子の事件に積極的に関わっていくけれど、シイナの力で竜の子を止めたり、何かが解決したりはしません。
シイナを守ろうとする周りの手によって事態に変動は起きますが、そのたび自分の無力を味わい、救いのない方向へ進む…。貝塚ひろ子の回など特徴的です。
追い詰められた人間のとってしまう行動、それが悲しいくらい響き渡る。
貝塚の絶望と最後のシイナの絶望。スケールの大小の差はあれど、根は同じ。
悪いのは自分なのか世界なのか?いじめの原因はいじめられる側にあるのか、いじめる側にあるのか?
盲目的にマスコミの情報を受け取ってしまった人々によるデビルマンのようなラストシーンも含め、竜の子がもたらす悲劇だけでなく日常の闇・人間の闇も強く描かれます。


秀逸な伏線の数々と独特の魅力で、憑かれたように読み耽りました。
キャッチコピーは「未来に贈るメルヘン」
まさにshinpe-さんのおっしゃる通りで、僕は現代の新しいメルヘンの形として、この作品を高く評価させていただきます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-12-15 02:45:22] [修正:2010-10-17 02:25:58] [このレビューのURL]

(2010年10月更新)
自分は漫画もアニメも小説も全部おいしくいただきました。面白さは漫画=小説>アニメって感じです。結構読み返した数少ない漫画。

カタルシスってだけの終わり方ではなく、死の中にも救いを見ることができる。死を意識することで、否が応にも各自の特別な事情のある日常と決着をつけるために現実と向き合って成長していかねばならない子供たち。

確かにチズやカナのエピソードでは、泣かせようって意図も見えなくもないけど、重要なのはチズのラストエピソードとカナを通したウシロの成長。
「自分の命をかけてまでこの世界を守る価値はあるのか?」
「命懸けで得た力を、何のために使うのか?」
好き嫌いはあれど、こうしたテーマをこうも独特(鬼畜)な設定で、巧みで自然な伏線と抜群の構成力で描き上げる漫画家は、彼くらいなものです。

何故パイロットが子供なのか?
そこにはパイロットの残りの生命力に比例して強くなるという設定や鬼頭さんのロリータな趣味(笑)もあるだろうが、一番の理由は、打算で動いてしまう大人たちより、純粋に「大切なものを守りたい」と覚悟を決めて大きく成長していく子供たちの方が強くたくましいからだろう。
実際、コモ戦やウシロ戦では敵側の大人たちは自分の地球を見限っている。
精神的成長は大人以上に、子供の方が飛躍的。
戦いの前の、子供たちの「成長」のエピソードを、じっくり大切に読んでみてほしいす。


以下余談
・ナカマの話が一番好き!ナカマニア!
・11巻につくオマケ編はマニアックなギャグです(アニメ版の中の人を知らないときついものも)。
・画集は、後日談も付いてますが、ファン以外買う必要はないと思います。
・ガイドブックはストーリーに深みを持たせる話題もあるので、興味があれば是非!
・ぼくらののセルの移動の概念は、なるたるの竜の子の再生・複製の概念に匹敵。鬼頭作品は設定に一貫したリンクがあるそうです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2009-12-10 19:59:19] [修正:2010-10-17 02:04:55] [このレビューのURL]

ファンタジー系RPG型の作品は苦難の末のハッピーエンドが相場だけど、これは安易にハッピーとは言えない気がする。
決して長い作品ではないけれど、数多くのキャラクターが登場し、そしてモブ・サブ・メイン敵味方関係なくみな平等次々と退場していく。
それでも皆きちんと美徳を与えられて死んでいくから、残酷な鬱展開というよりは壮絶という言葉がふさわしいと思う。

約束のためとはいえ夜叉王が一族を捨ててまで阿修羅をとった理由も共感できず、最期までこの二人の見せ場では感動できませんでした。
夜叉王に限らずみんなして一族より自分の意志を尊重しちゃってるのはどうかと思ったけど、話自体がキャラではなく内容で作られている感じだからそれで良かったのかもしれない。
他にも帝釈天の迦陵頻伽への仕打ちなど、プロデビュー作だからか無理やりな部分も多かったけれど、毘沙門天の間者の伏線などは流石。

個々のエピソードも十分楽しめるけど、終盤の怒涛の展開が凄まじいので、通し読みでどうぞ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-17 00:16:26] [修正:2010-10-17 00:16:26] [このレビューのURL]

すさんだ家庭から逃げ出し出会った4人の子供たち。
心に傷をもつ彼らは寄り添い、社会から「はみだし」て生きてゆく…
「いじけ者!ひねくれ者!ロクデナシ!はみだしっ子!!何とでも言うがいいサ!ボクたちも言ってやろう、きれいな衣をまとった人よ、さようなら!ザマアミロ!!」
行く先々で様々な人に出会い、寝床を提供してもらい、時に裏切られながらも、彼らは彼らを愛してくれる人を求め旅する。
そして同時に、彼らは内なる漂泊の旅へも出発する。どこまでも深い心の世界へ。延々と続く葛藤の世界へ!
あまりにもロジカルに、妥協なく続く内面の描写には、一切の綺麗事がない。愛情、憎悪、不安、信頼、トラウマ、家族、殺人、裁判…社会の矛盾を、環境の不遇を、自分の存在を、嘆きながらも面と向かって逃げずに問い続ける。
「ボク達仲良しのどん底にいるみたいで・・」
「手伝ってよ雪だるま!ボク一人じゃママを運べない…。行け!!!行ってママを連れて来い!……」
しかし少女漫画らしいレトリックを多用したって、答えには至らない。多くの省略を補ってみても、それが結論とはならない。
そう、いくら考えたって正しい答えなんかない。
でも、それでも考え続けなければならない。
考えて考えて、それでも考え続ける。それが思春期の子供たちの、自分ではどうすることもできない社会や現実といった大きな存在への唯一の反抗なのだ。

できることなら点数なしでレビューだけしたかった作品。
自分は今までこのサイトの採点基準を一切無視して、自分の好みで点数を付けてきたけれど、この作品だけは自分でも、好きなのか嫌いなのかわからない。だから点数を付けられない。
ならば、と、このサイトの採点基準に則ってみた。面白さうんぬんはさておくも、「漫画というメディアを越えて魂を揺るがす」作品は自分の中でこれ以外ない。

目だけで訴えかけてくるほどの表現力がある画に、小説並の尋常じゃないほどのセリフと心内語の量。
空気感で訴えかけるあだち作品などとは、全く正反対の作品。
セリフや振る舞いに溶け込ませた伏線もすごい。

内容は、徹底的に救いが無く、難解な話。
(雪山の極限状態のなかでの殺人。必死の隠蔽。どうにかその場を切り抜けるも、罪を背負い孤立していく心…やがて養子の誘いを受け、安定した生活を得られても、その傷は消えない。そんな自分たちが、裁判で暴行罪を裁くという滑稽さ。果たせぬ目論見にすれ違う心…)
けれど、決して暗い作品ではない。彼らの言葉には、報われない結果ややりきれない現実の中でも、前向きに生きようという意志が感じられる。
「光へ向かって行くんだ!影をひきずってでも」
「消えてしまいそうに感じる時は、生きることの意味の有無なんか問うな。もし無意味だと思ってしまったら本当に消えてしまうだろうから」
心に突き刺さる言葉の数々。僕らが現実世界であれこれ思い悩むようなことから哲学的なものまで様々だ。

しかし、これらは魅力であり短所でもある。
小説が苦手な人、漫画をサクッと読みたい人などには不向き。あまりに文字数が多く、例え活字慣れしていても、重く濃い内容なので、読むのに根気がいるから(終盤1ページ丸々文だったり)。
そしてこの作品、子供のころの感性で、大人並みの語彙力・読解力を必要とする。4人組の幼少から青年になるまでのこの物語を読み解くと、その本質はあくまで少年期の苦悩・葛藤がテーマ。BSマンガ夜話で「今読むと恥ずかしい」と馬鹿にしてファンの恨みを買ったそうだけど、少年時代の思いが強い人でないとほとんど楽しめないのかもしれない。

はまれば漫画どころか映画や小説を含めたすべての作品の中で自分の一番の宝物になる、ともいわれるほど。その支持者は何も読み手だけでなく、書き手、すなわち漫画家にも多数。
田村由美→最も影響を受けたとか。田村作品の心理描写の原点はココ。
くらもちふさこ→作中登場するほど
他、川原泉、市川ジュンなど。

エヴァの心理描写をもっと深くした感じのこの作品、一気読みは無謀。是非少しずつ噛みしめながら味わってみてください。


<2010年9月更新、【文庫版全6巻所持】、以下読んだ方向け>
賛否両論な締め方について(オクトパス・ガーデンは難解すぎるので置いておき…)
守られる側の存在であったマックスとサーニンは、救いがない結末ながらも前向きな姿勢を見せています。
問題はアンジーとグレアムですが、グレアムが雪山事件を暴露したので、何らかの決着をみるはず。そしてアンジーもすれ違いの原因は雪山事件だから、グレアムとの関係に決着がつくはず。
年齢的に青年となる二人。その二人の枷は、少年期最大の負の遺産「雪山事件」。この決着によってこそ、彼らは初めて少年から青年になれるのだろう。
彼らがどんな形で青年になるかはわからないけれど、ジャックたちは彼らを見捨てたりしないはず。ならば彼らは今後も養子として暮らしていくわけで、決してもうはみだしっ子などではない。
そう、はみだしっ子としての物語は、すべて描かれきっているのだ。
これが彼らの激動の少年期を描いた物語ならば、確かに完結した、と自分は思っています。

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[投稿:2010-08-05 16:12:44] [修正:2010-10-13 00:01:14] [このレビューのURL]

ブームはとっくに過ぎてしまいましたが、楽しめました。
小説を原作とし、ドラマ、映画、そしてコミックと多メディアで話題になりましたが、自分の周囲で評価が高いのがドラマ版。
しかしこのコミック版も、短く無駄なくまとまっていて、入門には適していると思います。

まるで自分たちの愛の深さを試されているかのよう。
共感できたか、感情移入できたか等々じゃなく、純粋に切なくて感動できた作品でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-04 11:30:41] [修正:2010-10-04 12:47:30] [このレビューのURL]

遺跡や伝説をモチーフに、遺産や謎を巡って敵対組織と戦っていくのですが、その中身は実に少年漫画的です。

話の導入部では実際の神話や歴史が語られ、最新鋭の武器などでドンパチやっていますが、展開がストーリー的にもバトル的にもファンタジーに入っていくので、他の少年漫画との差別化がなく、毎回単調さが目立ってしまってます。
主人公もよくいる正義の熱血漢で、主人公サイドは強者揃い。
今の自分にはもうこういった話はお腹一杯で辟易してしまったけど、作品全体の青年漫画にも似たかっこいい雰囲気には、小学校高学年から中学くらいの間に読んでれば陶酔してしまったかも。

ベテラン作家の画に加え、各エピソードには安定したクオリティがあり、全エピソードの中に少なくとも1つ以上は楽しめる回があると思います。個人的には後半になるにつれ良かったです。

【廉価版で収集後売却】

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[投稿:2010-10-04 11:52:56] [修正:2010-10-04 12:42:49] [このレビューのURL]