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8点 新世紀エヴァンゲリオン
(最新12巻読了、漫画版の感想が主ですが、少し映像版も混ざっています)
レイにアスカ、ミサトにリツコといった魅力的な女性キャラの誰よりも、物語の鍵を握るゲンドウが固執し、主人公シンジが愛されたのは、母:ユイだった。
息子らしい扱いをしてもらえず、避けながらも、父に認められたいという思いももつシンジ。
光を与えてくれたユイを溺愛するがあまり、ユイの愛情を一身に受けたシンジを妬むゲンドウ。
それでもEVAと化したユイが(パイロットとして)選び、守ったのは、シンジだった…
このいびつな親子関係が自分にとって衝撃的で魅力的だったのが、エヴァンゲリオンだ。
この作品のそこかしこに出てくる愛の形。愛に満ち溢れた作品ともいえるかもしれないが、その愛は総じて歪んでいる。そして何より、報われないのだ。
アスカの「認められたい」という気持ちは、狂った母親から娘として見てもらえなかった過去から生まれたもの。加持を愛するも叶わず、(母親の化身である)EVA弐号機とのシンクロ率が下がり、更に使徒の精神攻撃で廃人と化す。それでも立ち直りA.T.フィールドが母親の愛の形であると悟るも、ロンギヌスの槍に貫かれて果てる。それは彼女が受けた母親からの愛の脆弱さを物語っているのかもしれない。アスカほど愛に飢えたキャラクターはいない。
レイはユイの代わりに作られたもの。シンジと距離を近づけるたび、戦いの中で死に「次のレイ」に代わってしまう。ゲンドウからの愛も、レイに対してではなくユイに対するもの。
ミサトはセカンドインパクトを通じて初めて父からの愛に気付く。その後の加持との愛が父を映していると思い別れるも、次第にヨリを戻しかけていく。しかし加持は死に、自身もシンジを庇って死ぬ。ミサトさえも、愛を実現することはできなかった。
リツコは母子そろってゲンドウにふりまわされる。利用されていると知りつつも、ゲンドウへの愛から凌辱さえ甘んじて受けるほど。「女としての自分はいらない」、「女としては母を憎んでいる」という言葉とは裏腹に、ゲンドウへの愛は強く、MAGIを母親として見ていたりもする。
他にもトウジと委員長など、男女愛、親子愛、いずれもねじれていながら人間臭くもある(カヲルの同性愛も)。現代的といえばそうかもしれないが、こうも救いがないというのも珍しい。
本編の内容は、エンターテイメントとしては言わずもがな、細かいところに聖書やキリスト教を絡ませているのが遊び心満載で、奥深さも醸し出している(カバラの樹やロンギヌス、死海文書やネルフの葉のロゴなど)。
ストーリーは難解だが、アニメ版や旧劇場版はエンターテイメント性を重視せざるを得ない商業事情があったと庵野監督は言っている。そのためアクションシーンや演出は素晴らしいが、心理や内容説明が甘い。
ここで漫画の出番。
漫画版はアニメ版とは逆にアクションシーンの盛り上がりは(映像より)欠けるものの、心理や内容が充実したため物語をより楽しめる。(結論的には、両方合わせて楽しむのがベストだけど)
漫画版のポイントはアニメや旧劇場版をどこまで掘り下げて見せていけるかにかかっている。とくに漫画版が旧劇場版に追いついた今が、アニメを越えれるか否かの別れどころだ。旧劇場版は内容的にはかなり敷居が高く、エンターテイメントとしては良くても、内容はカオスだという評価が多い。至る所に聖書やキリスト教の知識が絡むが、それだけで物語やテーマが完全に理解できるわけではなく、肝心の人類補完計画も情報が少ないため自分なりの解釈しかできない(それはそれで楽しめると思うけど)。
そんなわけで、漫画に期待するものはどうしても大きくなってしまうが、エヴァの楽しみは内容だけではない。例えば上で述べた人間ドラマだけでもかなりのクオリティをもっている。難解な本編を解説しろとやっきになるよりも、せっかく漫画版で心理描写が細かく描いてくれているのだから、そちらも存分に楽しもうではないか。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-05-04 19:39:08] [修正:2010-05-04 20:00:24]
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