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10点 はみだしっ子
すさんだ家庭から逃げ出し出会った4人の子供たち。
心に傷をもつ彼らは寄り添い、社会から「はみだし」て生きてゆく…
「いじけ者!ひねくれ者!ロクデナシ!はみだしっ子!!何とでも言うがいいサ!ボクたちも言ってやろう、きれいな衣をまとった人よ、さようなら!ザマアミロ!!」
行く先々で様々な人に出会い、寝床を提供してもらい、時に裏切られながらも、彼らは彼らを愛してくれる人を求め旅する。
そして同時に、彼らは内なる漂泊の旅へも出発する。どこまでも深い心の世界へ。延々と続く葛藤の世界へ!
あまりにもロジカルに、妥協なく続く内面の描写には、一切の綺麗事がない。愛情、憎悪、不安、信頼、トラウマ、家族、殺人、裁判…社会の矛盾を、環境の不遇を、自分の存在を、嘆きながらも面と向かって逃げずに問い続ける。
「ボク達仲良しのどん底にいるみたいで・・」
「手伝ってよ雪だるま!ボク一人じゃママを運べない…。行け!!!行ってママを連れて来い!……」
しかし少女漫画らしいレトリックを多用したって、答えには至らない。多くの省略を補ってみても、それが結論とはならない。
そう、いくら考えたって正しい答えなんかない。
でも、それでも考え続けなければならない。
考えて考えて、それでも考え続ける。それが思春期の子供たちの、自分ではどうすることもできない社会や現実といった大きな存在への唯一の反抗なのだ。
できることなら点数なしでレビューだけしたかった作品。
自分は今までこのサイトの採点基準を一切無視して、自分の好みで点数を付けてきたけれど、この作品だけは自分でも、好きなのか嫌いなのかわからない。だから点数を付けられない。
ならば、と、このサイトの採点基準に則ってみた。面白さうんぬんはさておくも、「漫画というメディアを越えて魂を揺るがす」作品は自分の中でこれ以外ない。
目だけで訴えかけてくるほどの表現力がある画に、小説並の尋常じゃないほどのセリフと心内語の量。
空気感で訴えかけるあだち作品などとは、全く正反対の作品。
セリフや振る舞いに溶け込ませた伏線もすごい。
内容は、徹底的に救いが無く、難解な話。
(雪山の極限状態のなかでの殺人。必死の隠蔽。どうにかその場を切り抜けるも、罪を背負い孤立していく心…やがて養子の誘いを受け、安定した生活を得られても、その傷は消えない。そんな自分たちが、裁判で暴行罪を裁くという滑稽さ。果たせぬ目論見にすれ違う心…)
けれど、決して暗い作品ではない。彼らの言葉には、報われない結果ややりきれない現実の中でも、前向きに生きようという意志が感じられる。
「光へ向かって行くんだ!影をひきずってでも」
「消えてしまいそうに感じる時は、生きることの意味の有無なんか問うな。もし無意味だと思ってしまったら本当に消えてしまうだろうから」
心に突き刺さる言葉の数々。僕らが現実世界であれこれ思い悩むようなことから哲学的なものまで様々だ。
しかし、これらは魅力であり短所でもある。
小説が苦手な人、漫画をサクッと読みたい人などには不向き。あまりに文字数が多く、例え活字慣れしていても、重く濃い内容なので、読むのに根気がいるから(終盤1ページ丸々文だったり)。
そしてこの作品、子供のころの感性で、大人並みの語彙力・読解力を必要とする。4人組の幼少から青年になるまでのこの物語を読み解くと、その本質はあくまで少年期の苦悩・葛藤がテーマ。BSマンガ夜話で「今読むと恥ずかしい」と馬鹿にしてファンの恨みを買ったそうだけど、少年時代の思いが強い人でないとほとんど楽しめないのかもしれない。
はまれば漫画どころか映画や小説を含めたすべての作品の中で自分の一番の宝物になる、ともいわれるほど。その支持者は何も読み手だけでなく、書き手、すなわち漫画家にも多数。
田村由美→最も影響を受けたとか。田村作品の心理描写の原点はココ。
くらもちふさこ→作中登場するほど
他、川原泉、市川ジュンなど。
エヴァの心理描写をもっと深くした感じのこの作品、一気読みは無謀。是非少しずつ噛みしめながら味わってみてください。
<2010年9月更新、【文庫版全6巻所持】、以下読んだ方向け>
賛否両論な締め方について(オクトパス・ガーデンは難解すぎるので置いておき…)
守られる側の存在であったマックスとサーニンは、救いがない結末ながらも前向きな姿勢を見せています。
問題はアンジーとグレアムですが、グレアムが雪山事件を暴露したので、何らかの決着をみるはず。そしてアンジーもすれ違いの原因は雪山事件だから、グレアムとの関係に決着がつくはず。
年齢的に青年となる二人。その二人の枷は、少年期最大の負の遺産「雪山事件」。この決着によってこそ、彼らは初めて少年から青年になれるのだろう。
彼らがどんな形で青年になるかはわからないけれど、ジャックたちは彼らを見捨てたりしないはず。ならば彼らは今後も養子として暮らしていくわけで、決してもうはみだしっ子などではない。
そう、はみだしっ子としての物語は、すべて描かれきっているのだ。
これが彼らの激動の少年期を描いた物語ならば、確かに完結した、と自分は思っています。
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[投稿:2010-08-05 16:12:44] [修正:2010-10-13 00:01:14]
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