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お嬢様なのに何故かアパートの大家である少女ジゼルはある日何でも屋を始めようと思い立つ。お嬢様ゆえか世間知らず、でも好奇心いっぱいでまっすぐなジゼルは家賃滞納を理由に仕事を手伝わされるエリックを始めとしたアパートの住人を巻き込みながら危なっかしくも活躍していくというストーリー。

序盤ではミステリアスな美少女という印象だったジゼルだが全くそんなことはなくて実はただの冒険好きのお転婆なお嬢様ということがすぐに明らかになっていく。お嬢様の遊びといった感じなので仕事にも関わらず平気で自分の感情で横道にそれたり依頼と異なった行動をしてしまうのですが、そのまっすぐな行動が意外にうまくいったりたまには失敗することだってあります。
何といってもジゼルのころころ変わる表情が魅力的です。ジゼルは何でも屋の仕事を通して色んな人に出会い、色んな体験をしていく。お嬢様のジゼルにとってはどんな仕事や体験でも新鮮な経験で、新しいことを得ていく彼女の喜怒哀楽を見ているのはとても楽しい。それは運動の後の飯をはおいしいといった些細なことだったりするのだが…19世紀ヨーロッパお嬢様版よつばとというと分かりやすいかもしれない。

絵は新人にしては破格の上手さ。その画風とエマと同様のヨーロッパという舞台なのでよく森薫と比べられて、時にバッシングまで受けてるのは気の毒に感じます。短編集ではそんなに似ているように感じないのでなおさらね。たまにバランスがおかしかったりトーンが気になったりする部分はありますが、精密で美しい絵を描ける作者だしまだ伸びしろはあると思うのでこれからも楽しみですね。
2巻では絵はさらに良くなって、ストーリーにも深みが出てきた。今後の課題はじいさんの描き方(笑)。短編でも感じたことですが、ばあさんに比べると下手に感じるので頑張って欲しい。

よつばと!の四葉やそれ町の歩鳥と同様ジゼルという人物を好きになれないと恐らく楽しめないであろう作品。その性格上仕方ないとはいえ、依頼と真逆のことをしたり自分の思うよう勝手なことをしてしまうキャラを微笑ましいと見るか苛立たしく思ってしまうか…
私は純粋で好奇心たっぷりなジゼルが大好きだけど、こればっかりは好み次第だと思う。話の途中で脈絡なく突然「子どもの前で煙草を吸うのはやめろ!」と怒鳴った所などいくつか違和感のあるシーンは私でさえあったので。
ただ、作者もここは分かっているようで2巻ではジゼルが仕事へのプロ意識のなさを指摘される場面が出てきます。へこみながらも彼女なりに何でも屋として努力する所は愛らしいです。とはいえあまり固い人間になってもあれなので魅力が損なわれないようなジゼルの成長を気長に見守っていけたらいいなと思います。

多少の欠点はあってもそれを十分に補う美しい絵と個性豊かな人物が登場する愉快な話は魅力的です。本屋で見たときに表紙とタイトルに惹かれるのは必至なのでぜひジャケ買いしちゃってください。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-07-13 18:20:59] [修正:2011-08-01 19:29:04]