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ヘルタースケルター。

つくづく秀逸なタイトルだと思う。
りりこがすべり台に乗って一直線へ破滅へ向かっていく様、その混沌、そして発表後に世間に衝撃を与えたという点でもこの作品を上手く表したタイトルと言える。

本作はりりこが煩悶の末に虎になるまでを描いた作品ではない。
本作はりりこが煩悶の末に内から生まれた虎に食い殺されるまでを描いた作品だ。

破滅が目に見えていてもそこに向かって疾走していくりりこ。
女性的な価値観への風刺、りりこと対照的な存在の吉川こずえ、全てがりりこの花火のような鮮烈さを際立たせる。

正直私はこの作品があまり好きではない。岡崎京子のすさまじい才能が、表現力がほとばしりすぎていて物語に乗り切れないのだ。才能をコントロールできていない、あるいはしていないのかもしれない。

ヘルタースケルターを分類するとしたら悲劇だろう。でもそこに悲壮感はあっても絶望はない。この作品はそれでも生きろと背中を押す、いや強烈にぶん殴ってくれる作品だから。
重松清の「疾走」と同じくらい”ひとり”でも、ヘルタースケルターはあくまで前向きだ。

吉川こずえは最終話でこう言う。「あ、”ヘルター・スケルター”じゃん。この曲大好き。」
何てことはない。私もりりこに魅かれていたんだ。

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[投稿:2011-09-04 18:02:01] [修正:2011-09-06 01:43:39]