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「闇夜に遊ぶな子供たち」の続きも読みたいけど、出ても同人になりそういうのは実に残念な話。
ホラーMがなくなったのはやっぱり痛い。
10点、9点…個人的なバイブル、名作。
8点、7点…お気に入りの作品。
6点、5点…十分楽しめた作品。
4点以下…うーんって感じの作品。わりと適当。

うーん、これは良かった。間違いなく傑作。
アラン・ムーア作品に代表されるような海外の優れた作品は日本の漫画が1番なんて幻想をぶち壊してくれる。アランの戦争もそんな作品の一つ。日本の中だけに鎖国しているのはもったいないです。
バンドデシネ(BD、ベーデー)はフランスの漫画のことで、描かれた帯という意味。フランスの第九芸術とされ、メビウスやエンキ・ビラルは大友克洋や荒木飛呂彦を通して日本の漫画にも大きな影響を与えている。
BDは日本でもユーロマンガを皮切りに2年前くらいから地味に盛り上がっていて、例えばこのアランの戦争は国書刊行会のBDコレクションというおもしろい企画の第三弾にあたる。
アランの戦争は表題にあるようにアラン・イングラム・コープの回想録だ。誰よそれ?っとなるかもしれない。それは当たり前で、アランは有名人でも何でもなく至極普通の人だから。
タイトルを見ると誤解しそうだが、戦争駄目とかそういう作品ではない(そもそもアランは直接的な戦闘はほとんどしていない)。アランが戦争に行き、戦友や戦争で行った地域の人々と交流したり、通信兵として学校で勉強したり、戦車の掃除などの行軍中のくすっとくるエピソードがあったり、帰ってきて仕事を探したり、結婚したり、何が起こるわけでもなく時系列にそってただただアランの人生が綴られていく。
アランにとっての戦争ははだしのゲンほど悲惨なものではなかったにしろ彼の人生に確実に影響を及ぼした。彼の一生は必ずしも順調ではなかったようだ。
ここで語られる話はほとんどが大きな意味を持っていない些細なことで、別にストーリーがあるわけでもない。しかしそもそも人生で起こるほとんどのことは些細なことだし、人生にストーリーなんてないのだ。
「存在を証明する絵画を描くためには人生のどんな瞬間も思いだされる価値があると思わないかい?」アラン・イングラム・コープ
作者のエマニュエル・ギベールの仕事はすばらしい。余計な装飾なんて全くなく、ここにあるのはアランの生、それだけだ。
そして抒情的な美しい絵。何でもない風景になぜかほろっときて驚いた。この作品で彼は水彩画の技法を使っていて、これまたすごく良いのだ。youtubeにアップされているし、アランの戦争でググれば見れるはずなのでぜひ見て欲しい。井上雄彦が筆を使ったことが話題になっていたけど、世界は広い。
一人の人間の生を描いた作品としてアランの戦争は屈指の出来だろう。それをどう受け取るかは読む人が決めることだ。誰かの人生というのは他人のためにあるものではないのだから。人生は無意味の連続で、そこに価値を作るのは私達次第、つくづくそう思う。
アランは歴史的に偉人ではないかもしれないけど、とても魅力的で素敵な人だった。これからも長く読み返すだろう傑作。
ぜひアランの人生を体験してみて欲しい。
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[投稿:2011-09-28 19:03:53] [修正:2011-09-28 22:53:22]
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