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「闇夜に遊ぶな子供たち」の続きも読みたいけど、出ても同人になりそういうのは実に残念な話。
ホラーMがなくなったのはやっぱり痛い。
10点、9点…個人的なバイブル、名作。
8点、7点…お気に入りの作品。
6点、5点…十分楽しめた作品。
4点以下…うーんって感じの作品。わりと適当。

8点 放浪息子
フロム・ヘルなんかとはまた違った意味で、本当に読んでいてしんどかった。もちろんおもしろくないとか下手だからではなくて、志村貴子がすごいからなのだけれども。
何でそんなにしんどかったのかというと、ハチクロの台詞でいう“自分が苦労して脱ぎ捨ててきたもう見たくないものを、強制的に見せられている”感じに近い。読んでいて、あぁぁぁーってなっちゃう。
女の子になりたい男の子と男の子になりたい女の子の話、といえばもちろん正しいのだけれど、性同一性障害を描いた物語かというと少し違う。恐らく志村貴子が描きたいのは、それよりもう少し広いもの、成長するにつれてカテゴライズされていく子供たちの姿だ。
作中に、女モンの下着を持ってるのか?と聞かれて肯定した二鳥くんと友達のこんな会話がある。「女の服着るだけならまだ、てゆーかそれもアウトだけど、でもまだマシだけど、下着は完全アウトだろ」「それを何でおまえが決めるんだよ」
もちろん私は二鳥くんのような、女の子になりたい男の子ではなかった。でも成長するにつれて自分を取り巻く“線”を少しずつ感じ取っていくのは決して二鳥くんような子だけの話ではなくて、誰もが経験することだと思う。私が中学生の時、学校ではズボンを腰まで下げるのが流行していたし、校則違反だけれど眉を剃るのは格好良いとされていた。二鳥くんは何でおまえが決めるんだよ、と言ったがやっぱり人によってアウトとセーフの線は異なるし、その線を決めるのは周りの人間なのだ。子どもはそういう雰囲気にすごく敏感だから、自分はどこまでズボンを下げていいのか、眉を剃っていいのかを考えて、出来るだけ線からはみ出さないようにする。
でも時にはその線からはみ出したくなるときもあるんだよね。いつもより気張った髪型をしてみたり、思い切った服を着てみたり。しかし大体な所、自分の線をはみ出した結果、何となく決まりの悪い思いをしたり、友人に馬鹿にされたりすることになる。二鳥くんが女の服を着たいということは、こういう誰もが経験することの延長線上にあるのであって、決して普通の人と関係のないことではないのだ。
もちろん男と女ってだけじゃなくて、子どもと大人、可愛い人と可愛くない人、だったり人は色んなカテゴライズをされていくわけだけれども。ただ二鳥くんを取り巻く線は、成長するにつれて少しずつ狭くなっていく。制服によって男と女は形式的に分けられるし、第二次性徴期によって否が応にも自らの性別を実感することになる。これは苦しいよなぁ。
成長するにつれて、あんまり人ははみ出さなくなる。線をはみ出ることで苦労をするより、その中でやっていく方が精神的に楽だから。二鳥くんはどうやら高校生になっても、おっかなびっくりしながら線をはみ出し続けていくようだ。それが多分タイトルの“放浪”息子ということなのだろう。
多分思春期をこういう風に描いた人って志村貴子以外にいなかった。よしながふみの根底にも似たものがあるとは思うのだけれど、志村貴子は噛み砕く前のものを見せてくれる。だから青臭くて、照れくさくて、読むのがしんどいのだ。いや本当に佐々ちゃんという清涼剤がいなかったら読めなかったかもなぁ。志村貴子はやっぱりすごい。
志村貴子は様々な放浪を見せてくれる。人によって自分を取り巻く線は違う。ちーちゃんのように異様に広い人もいるし、高槻くんみたいな人もいる。色んな線のはみ出し方があって、線をはみ出すことには相応のリスクだってある。
二鳥くんの放浪はどこに行き着くのか、それとも放浪し続けるのか。読むのはしんどいけれど、それ以上に楽しみなのであります。
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[投稿:2012-02-10 23:47:53] [修正:2012-02-10 23:47:53]
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