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総レビュー数: 343レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年12月10日

9点 BASARA

(2010年7月、読了につき全改変)

名シーン・名台詞がこれでもかと詰まった作品であるから、感動シーンも当然多い。
四道・錵山の最期、朱里と更紗の対面、大仏内で朱里が更紗の手を引くシーン、晒される太郎、そして揚羽…
幾多とある感動場面の中でも、自分は朱里と柊の決闘のシーンでグッときた。
初めから引きこまれっ放しだったが、中盤少し敵が間抜けすぎかなぁと失速しかけていた時、この22巻の対決場面で猛烈に感動。些細なことはもうどうでも良くなった。

最強の暗殺者・柊との一瞬の斬り合い。
たった一太刀で決着がついたこの場面の、何が自分を熱くさせたのか?


スターウォーズという映画がある。
ご存じ、フォースやライトセイバーを利用した、男なら熱くならずにはいられないバトルが魅力の映画だ。個人的には、ネタが銀河鉄道999のパクリだという論に同調しているので、大好きとは言い難いのだが、それでも壮大なストーリーや世界観、そして何よりボス級の敵とのアクションシーンは心躍る。
ライトセイバーで何度も何度も斬り結び、長い時間たっぷりと手に汗握る決闘が繰り広げられる。そう、長い間…
少年漫画の多くもそうで、ラスボスともなれば1回や2回でバトルは終わらない。本当に長いこと激戦を繰り広げる。

それに対してどうだろう、最強の敵・柊とは、たったの一太刀で勝負がつく。バトルが主体ではないとは言え、例えばナウシカだって土鬼皇帝との対決で何度か切り結んでいる。それに比べてこちらはただの一瞬、はたしてスターウォーズ以上の魅力はあるのだろうか?

山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」という映画がある。
そのクライマックスシーンで、武士の二人が斬り合う場面がある。
斬り合うと言っても、何度も刀を交えるわけではない。お互い、張りつめた空気の中、間だけを測って動きあう。
そう何度も無意味に刀を振ったりしない。それが命取りになると知っているから。
派手な斬り合いのシーンなんて一つもない。一度でも切られれば致命傷になる。家の中をひたすら動き回り、相手と自分の間合いを測り合い、一瞬の隙を狙う。剣道の有段者の闘いが、動いた一瞬で決着がつくように、一度刀が振りかざされればどちらかが死ぬことを知っている。
その緊張感たるや、見ているこちらにとっても凄まじい。

北野武監督の「座頭市」で、終盤の用心棒とたけしの居合抜きでの決闘のシーン。
目の見えないたけしが構えたのを見て、凄腕の用心棒がより早く抜ける構えをとる。
そこで勝利を確信した用心棒は、思わず笑みを漏らしてしまい…結果、素早く構えを取り直し斬りかかったたけしに敗れる。
ここにも、構えから始まる一太刀の中に、命をかけたやり取りがある。熱い。この一瞬の刹那の中に、互いの想いが、人生が、輝いて消える。そんな様が、何よりも熱い。

西洋の騎士は盾と剣を持つ。盾は相手の攻撃を防ぐためにあり、更には鎧も着る。勝負が一瞬で、一撃で決するより、何度も討ち合う中で決着が付くのだろう。
しかし、日本の武士は、侍は防具一切なくただ刀だけを持つ。
彼らの闘いには、最初から2撃目などないのだ。

一瞬で決まる勝負。
そこにはなんの派手さも、何度も混じり合う剣が奏でる音もない。
沈黙の空気。そして内に秘められた静かで熱い闘志があるのみ。
自分はこんな戦いが好きだ。
スターウォーズのような派手さよりも、少年漫画のような長い長い決闘よりも、この一瞬で輝いて消えゆく戦いが好きだ。何よりも手に汗握り、何よりも熱くさせてくれる。

朱里は鎧を纏っていたからどんな戦いになるか心配だったが、田村由美先生が選んだラストバトルは、ジパング伝説の名にふさわしい、一撃決着の斬り合いだった。一太刀の中の、ほんのわずかな動きも漏らさず描かれていた。
心が燃えるようだった。
その斬り合いにも、その一瞬に込められた朱里の、柊の、今帰仁の想いにも、感動した。浅葱の叫びも心に染みわたり、目頭が熱くなるのを止められなかった…


この漫画は、少年漫画を超えたスケールで描かれた少女漫画として認識されている。別に宇宙どころか外国とも少ししか関わらないけれど、日本全国端から端まで一つ一つに地域にまで及んで描かれた作品はこの漫画以外に私は知らない。だから確かに、少年漫画以上のスケールを持っているのは確かだろう。
しかし、自分にとっては、少年漫画を越えた部分はスケールだけではない。
この熱さ、戦い、想い!
志半ばで散る者、生きて苦しみもがく者、その全てを包み込んでの大団円!
いつまでも色褪せない名作、ここにあり!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-05-25 01:46:51] [修正:2010-07-07 02:15:57] [このレビューのURL]

東京の闇、人の闇…あなたは「東京」がきらいですか?


「聖伝」「魔法騎士レイアース 」とこの「東京BABYLON」は、衝撃的なラストが印象的だとファンの間では言われている。
特にこの作品、確かに、漫画に救いを求めている人には向かないだろうが、最終話以外のエピソードが非常に出来が良いのでぜひお勧めしたい。
特にCLAMP嫌いの人に。

自分も最近のCLAMP作品は大っ嫌いで、あの狙いすましたキャラやら雰囲気やらが鼻についてしょうがなかった。長編化も辛い。
でもこの作品には、キャラからしてその嫌らしさがない。
星史郎には若干そんな感じがあるかもしれないが、(演技とはいえ)彼のゲイっぷりと裏表の顔のきっちりとした使い分けのおかげで気にならない。
巻数も少なく、コマ割りのためか見た目の分量よりサラッと読めるのも◎(それでいて決して無駄なコマ割りや大ゴマが連発しているわけではなく、非常に効果的なコマ割りをしていると思う)。
初期の頃の作品のため、キャラの動きがあまり感じられず未熟だが、ストーリー・キャラ・表現・演出どれをとっても高レベル。
よくある切り口から、多岐な展開・結末が描かれる。
ハッピーエンドとは程遠い話が多いのもCLAMPの持ち味だ。娘を殺された母親が復讐をしようとしてるのを諭すため、娘の霊を呼び寄せる話の結末とか良かったです。

この作品の魅力はやはり、東京に潜む闇をあぶり出し、解決はできないまでも妥協点をみつけて向き合っていくところだろう。3人の登場人物の彼らなりの考え方・向き合い方には共感できるものも多々。

毒のある話がオムニバス形式で詰まったこの作品、ぜひラストの猛毒まで読んでみてはいかが?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-01 01:48:55] [修正:2010-07-01 01:54:55] [このレビューのURL]

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