「blackbird」さんのページ

総レビュー数: 185レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年03月31日

原爆が残したものの大きさや、哀しみの連鎖が、淡々とつづられるからこそ、どんどんやるせない思いや戦争の愚かさが浮き出てきます。
人間は何をしたいのでしょうね。

普通に、ただ普通に暮らしていたはずなのに、生きて幸せをつかむことがいけない事、と思わせてしまう。
被害者なのに、まるで自分が加害者であるかのように、死ななかった事や誰も助けられなかったことを、自分でずっと責めていかなかればならないというのは、一体何なんでしょう。

原爆を使うと決めた人は、あくまでも戦争を終結するための最終手段で、その為の多少の犠牲はつきものと言い、投下後の惨状は知ってはいたかもしれない。でも亡くなった人だけでなく、生き残った人の心さえも、こんなに何十年も蝕むことは、これからも知ろうとはしないでしょう。

それにしても、原爆症に苦しむ人の話も知っているはずなのに、こんなに急激に発症して、あっという間に死んでしまうなんて。
被爆した人たちが常に怯え、発症するとなすすべもなく受け入れ、死を迎える。正に人生や世界がすべて狂わされてしまったとしか言えません。

まだ自分もだけど、日本人が知らなければいけないことがあると思いました。好き嫌いはあっても、読むべき作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-05-24 18:49:50] [修正:2011-05-24 18:49:50] [このレビューのURL]

食材があれば、どんなものでも作ってくれちゃう食堂なんて、あったらいいですね。
さぞかしいろいろ美味しいものを頼むかと思えば、赤いウィンナやら二日目のカレーやらお茶漬けやら、貧乏くさいものが多いのがまたいい。

また、この漫画の魅力は、食べ物が美味しそうというのとはまた別に、訪れる人の、バラエティに富んだキャラでしょう。

なかなか楽しい人生を歩んでいる、ひとクセもふたクセもあるような人たちが、ここに来た時だけは、過去や凍った心が解放されるような、そんな温かみを感じます。

店主があっさりとしているのがまた良いです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-05-16 17:38:04] [修正:2011-05-16 17:38:04] [このレビューのURL]

オムニバス形式で、色々な「おひとりさま」女性の心情を優しく描く。
おひとり様といっても、独身気ままな人、仕事に悩む人、おひとり様生活を満喫する人、別れておひとりになってしまった人・・・と、様々。
女性なら、今までの人生の中で、ここに出てきた女性の誰かのような思いをしたことがあって、共感できそうです。

お一人=寂しいを感じたとしても、そこで終わらせずに、お一人でも楽しみがあるよ、一人のようで一人じゃないよ、といったような温かみが随所に感じられるので、切なく、ほろっとしながらも、読後感がすっきりしています。

三巻の時点で、同じ女性が3回出てきました。また今度出てくるのかな。
三巻では、初めて男性が主体になったこともあります。こういう設定で来たか、という感じ。

谷川さんは、こういうちょっと切ないお話を作るのが本当に上手です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-25 22:50:38] [修正:2011-05-13 23:40:19] [このレビューのURL]

看護師の様々な思いや状況がよく描かれている作品。

桂子の、患者や同僚、家族や、恋愛を巡っての話がじっくりと描かれます。桂子が普段ポーカーフェイスなので、たまに押さえきれない思いが噴き出てくると、こちらまで辛くなってきます。この作者は別れとか、一人暮らしの想いとか、心にブレーキをかけてしまう思いなど、切ない思いを描くのが上手ですね。

一方で、同僚の事なども丁寧に、配属されてから一人前になるまでじっくりと時間をかけて描いているので、自分もこの病院でみんなと過ごしたような気分になる。
どうしても病院の話は、死の影や涙がまとわりついてしまうけど、それでも何かの形で気持ちが報われるエピソードも盛り込んでくれます。

幾つかの恋愛の山が来ても、なかなかハッピーエンドにならなかった桂子。幸せになってほしいなと思いながら、長く続いたのに、ここで終わり?という切れ方だったが、作者の闘病があって中断していたとのこと。

最近になってようやく作者が復帰し、めでたくエンディングを迎えました。文庫本の最終巻では、懐かしい人も出てきて、ちょっと意外な終わり方。でもブランクがありながら、ほとんど絵柄が変わらず終わったので良かったですね。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-05-11 23:24:55] [修正:2011-05-11 23:24:55] [このレビューのURL]

作者お得意の「女の自立」物語?

周りと同じようにOLをして、いずれ結婚して子供を産んで・・・というコースが当たり前と思っていた眞子。
リストラをにおわす転勤の辞令を機に、初めて自分の力で歩きだす怖さと勇気にぶち当たり、でも自分で生きているという充実感と自信を見出す。
こういう風に、自分で立ってこそ一人前という事を作者は特に最近強く主張するが、それがちょっと鬱陶しいかもしれない。話の進み方もとてもご都合主義だし。

でもゆらゆら揺れて、何から手をつけていいか迷ってしまう眞子の気持ちは、多くの女の子が分かると思う。そして、周りを気にせず自分が思った通りに行動できてしまうともちゃんは、自由でいいなあと思いながら、実際にそばにいたらいらっと来るかも。

まっすぐで裏表のないメガネ男子、まっちゃんがいいですね。突き放すようだけど、暖かい。

それにしても、最近の作者の絵に対する思いってどうなっているんだろうか。ライフスタイルばかりに意識がいってしまって、肝心の絵がおざなり。目力だけ強くすればいいってもんじゃないし、少なくともデッサンの狂いは何とかしてほしい。他の作品のレビューでも書いているが、折角綺麗な絵で魅せていた作者だけに惜しいです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-05-08 21:53:42] [修正:2011-05-08 21:55:25] [このレビューのURL]

ヒミコ(この物語では日女子と書かれます)が、かなり凶悪に書かれている珍しい作品。

「聞こえさま」という特殊な能力があるか無いか・・・これがこの物語の中心にあります。
日女子が、日女を貶めてまでもしがみついたその地位。
時折この能力の片鱗をのぞかせる壱与は、あくまでこの能力が「ない」ことを主張し、最後には島へ帰る事を望みます。そして最後にはクロヲトコであるシビとの人生を選ぶ結末が、結構喜ばしかったです。
人の死を扱う職業を、尊いものだと断言した壱与、辛い人生の中から真実をしっかり見つめる目を養ったんですね。

欲を言えば、シビ、もう少し恰好良く描いてほしかったなあ。そんな美男である必要はないんだけど。かなり男っぽくていい奴なんですが。
(余談ですがクチヒコが石田衣良とクリソツなのは有名な話)

面白かったのは日女子の歯と老化の話。
胎児の・・・というのはぞっとしますが・・・まあ、分からないでもない話です。

相変わらず夢に出てきた残酷な場面や、日女子の最期などはかなりの恐怖感を持って描かれます。こういうところは本当にうまいです。
また、この資料のない時代の事を、見てきたかのように描ききる作者の力量は、いつも感嘆するしかありません。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-05-02 20:10:50] [修正:2011-05-02 20:10:50] [このレビューのURL]

原作は読んでいないが、雰囲気をそれほど損ねず、いい感じの漫画化となっている様子。
原作者がそこまで考えていないことも絵にして見せないといけないので、原作がしっかりした文学を漫画化するのは結構大変かも。

谷口氏の絵柄や雰囲気と、先生と元教え子の微妙な空気感がとても合っていて、ツキコさんの言う「センセイから出る放射」的な暖かさのようなものが伝わってくるよう。

感情がなかなか外に出ない(出せない?)センセイが、時々ちょっと違うテンションになる時、自分でも気持ちを持て余しているのかな、自信がないのかなと、老齢なのに不思議な感じ。逆にブレーキをかける力が強くなるから、時々溢れてしまうような。

一方ツキコさんも、格好いい同級生には違和感を感じ、親ほどに年齢が離れたセンセイには安心してしまう。傍から見れば気持ち悪いといわれかねないが、お互いで一緒にいる空気感に包まれる存在に出会えたという事は、すごく幸せなことですね。たとえそこに死の影がつきまとっていても。

クライマックスから最後が本当に数ページで終わってしまうのも、逆に余韻が大きく、儚さを残している。
個人的には、キノコ狩りでセンセイが山に消えそうになる話が好きでした。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-27 14:03:14] [修正:2011-04-27 14:03:14] [このレビューのURL]

いやあ、この点数は「ザ・少女マンガ」の王道ということで。
設定もすごいわ、ジェットコースター的展開、何でもありです。
名作というか・・・色々な意味ですごい漫画です。

親に捨てられ、知らぬ間に恋したのは実は父親だったり、怪我でモデルはあきらめるわ、謎の金持ちが出現して彼女をデザイナーに仕立てるとか、婚約直後に判明した事実とか。もう、出るわ出るわ・・・衝撃的事実のオンパレードです。

設定もすごいけど、やはりキャラや70年代的背景がこれまたすごい。

「コンツェルン」の跡継ぎに英才教育を施された朱鷺は、なんと18歳。
それなのにレミーマルタンを愛飲し、すごい家具(何調っていうのかな)にクッションなんていう椅子で仕事をこなし、アッチ系的ねっとりした秘書に甘え、ネグリジェのような恰好で寝て、クラシックカーやF1カーみたいな車まで乗り回す。
話す口調も時代がかってますね。

一方、亜美を1年でデザイナーにするべくスパルタ教育をするフランス人の一団もすごい。
縦ロールやロッカーみたいなすごい「外人」さんに特訓される亜美も、フランス語堪能だったの??・・・なんて事は言ってはいけないんでしょう。

デザインされる服も、フリルやフレアたっぷりのワンピースやら、ザ・70年代!バー(?)も、床に座ってドラッグでもやっちゃいそうなアヤシイ雰囲気です。

まあ、このようにツッコミどころ満載なんですが、話としてはおそらく当時の少女マンガの世界ではかなり衝撃的で大人の雰囲気を持ったというか、ただの恋愛ものではない、ある意味骨太な作品だったに違いないでしょう。
デザイナーという、常に最先端を走り、流行を作り出していかねばならないプレッシャーに潰されそうな職業を突き進む母親。最後に1から出直すそのプロ意識に、華やかだけではない厳しさを感じた人も多いでしょう。
そして、ラストも結構ショッキングだったのでは。

昼ドラにもなったようですが、話の展開としてはまさにそんな感じです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-25 23:50:13] [修正:2011-04-26 08:28:51] [このレビューのURL]

歌舞伎という珍しく、型にはまった世界を扱って、ここまで引き込ませるとは。
素直に感心しました。

何度か舞台を見ても、筋を追いかけてその型を楽しむだけで精いっぱいだったので、もしまた見る機会があったら違う視点で楽しみたいと思わせる。

実際の歌舞伎ではこんな即興的なことはありえないのだが、そうだったら実に魅力的なものになるだろう。歌舞伎の話が複雑なものも多いところ、読者が入りやすいようにかいつまんでストーリーを組み立てている所もうまい。

しかし何よりこの画力にぐいぐい引き込まれる。
クライマックスではいきなり縦横が変わったり、筆などにタッチが変わり、一瞬時が止まる感覚すら与える。「連獅子」なんて芸術的で、緊張感もびしびし伝わってくる。

「四谷怪談」での異様な盛り上がりは、観客でなくとも息をのむ。
それだけに、結末はあっさりと急いでまとめすぎ。大人の事情があったのかはわからないが、「第一部」とあったのでぜひ第二部も続けてほしいと思いつつ、これ以上の話は書けないだろうなあ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-16 17:36:13] [修正:2011-04-21 23:38:01] [このレビューのURL]

敷居の高いクラシック、小難しそうな作家の顔ばかり見ていた大音楽家たち。それが生き生きと描かれ、「べとべんさん」などと馴れ馴れしく呼ばれ、ピアノやオケが演奏を始めると音が聞こえるようで、随分敷居が低くなりましたね。

ギャグの相性はあると思うし、お世辞にも上手とは言えない絵だけど、個性的なキャラが立ち、男女関係なく楽しめる作品だったと思う。
恋愛は絡んだけど恋愛漫画ではないし。

だからこそ多く書かれているように、最後まで丁寧に、千秋・のだめ双方の成長と成功、共演を描いてほしかったなあ。
付け足しのようなエンディングは悲しすぎる、ということでこの点数。
ああ、もったいない!!

後半は完全に映像化された方が勝ち・・・では、漫画の価値がね・・・。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-17 16:48:05] [修正:2011-04-17 16:48:05] [このレビューのURL]