「boo」さんのページ
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「闇夜に遊ぶな子供たち」の続きも読みたいけど、出ても同人になりそういうのは実に残念な話。
ホラーMがなくなったのはやっぱり痛い。
10点、9点…個人的なバイブル、名作。
8点、7点…お気に入りの作品。
6点、5点…十分楽しめた作品。
4点以下…うーんって感じの作品。わりと適当。

9点 絶対安全剃刀
私が一番好きな短編集。高野文子のデビュー作。
まずタイトルからビビッと来る。絶対安全剃刀…何だろう?、読むと本当に電気が走る。すごいものに出くわした時の衝撃。
広い漫画界だから天才と呼ばれる人は少なくないし、色んな天才がいる。その中でも高野文子に関しては例え好きじゃなかったとしてもその才能を否定できる人はいないと思う。30年前の作品なのに未だ失われない革新性、影響力。多分こんな作品はさらに30年後にも色あせないのだろう。
絶対安全剃刀は17編からなる短編集。一番短いものは3ページ、一番長いものでも20ページしかない。でもそこに込められた密度は凄まじい。
どうもさっきから最高だの密度だの抽象的なことしか書けていない。私の力不足もあるのだけど、そんな作品群なのだ。形容できない、言葉に出来ないものだからこそ限りなく深い。でも出来るだけ表現してみよう。
この絶対安全剃刀の中でもほぼ全ての読者の目が行くのは「田辺のつる」。わがままな幼い子どもの話かと最初は思う。でもそれはつるの中の自意識。周りの家族が違うものを見ていると気付いた時にはちょっと震える。これぞ漫画の醍醐味だし、漫画でしか出来ないこと。
どれもこれも珠玉という安売りされている言葉が本当にふさわしい短編なのだけど、個人的にお気に入りなのは以下の三つあたり。
「ふとん」は死後の世界での、亡くなった女の子と観音様のとぼけた会話を描いたお話。悲壮感がないからこそ、その女の子のいじらしさと観音様の何ともいえないのん気さが哀しさを際立たせる。泣いた。
「あぜみちロードにセクシーねえちゃん」は行間を楽しむ作品のお手本。いい子と言われていてもね、内心色々あるよ。
「午前10:00の家鴨」は幸せの一つの形をブラックに描いている。何も欲しがらなければ足りなくなることはない。少しぼくんちを彷彿とさせる。
後「うしろあたま」なんか女性が読んだらすごく共感するんじゃないかな。男の私はあまりぴんと来なかったのだけど。
コマわり、絵柄から何から何までこの人の表現技法は幅が広く底が見えない。それが斬新なテーマ性とあいまってとんでもない短編集に仕上がっている。
漫画だからこそ、短編集だからこその魅力が絶対安全剃刀にはいっぱい詰まっている。
本当に言葉に出来ない凄さ、魅力。人間の心情っていうのは形容できないほど奥深いものがある。今後も長くお付き合いさせてもらうであろう名作。
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[投稿:2011-10-09 15:54:49] [修正:2011-10-10 17:31:32] [このレビューのURL]
8点 キック・アス
ごく普通の男の子がコスチュームを着てヒーローになろうとするとこんな凄惨なことになってしまうのね。
いやー、本当に血みどろ。バイオレンス。
内臓とかそういうのはないからそこまでグロくはないけどなかなかにえぐい。アメリカは日本よりかなり表現規制が厳しいんじゃなかったかな?よくパス出来たなぁと思いつつ読めるのはありがたいです。
私達が生きる現代の世の中、コミックオタクの少年デイヴはこう思った。”これだけヒーローコミックがあふれているのに、なぜ誰一人本当にヒーローを目指そうとしないんだ?”
何となく分からなくもない気もする。そう思うだけならね。
しかしこのデイヴの一味違う所は、いくら現実に不満で、現実と向き合いたくなかったとしても、本当にヒーローになろうとしてしまう所だ・・・そう、キック・アスに!
デイヴに超人的な力なんてない。というかコミックオタクでスポーツをしているわけでもない彼のことだから恐らく平均的な高校生より運動能力は低いだろう。コスチュームだってブルース・ウェインのように金持ちではないからウェットスーツに自作の改造を施しただけのものだ。
そんなデイヴが街の自警団として不良やマフィアに立ち向かった時にどうなるのか、そして彼は殺し屋少女ヒット・ガールに出会って何に巻き込まれていくのか・・・という物語。
最高に刺激的で、素直に楽しめる作品。最初から最後まで興奮しっぱなしですよ。
アメコミは作家の思想性が強く出てて、しかも文字数が多いから比較的日本の漫画に比べて読むのに時間がかかる作品が多い。でもこのキック・アスはエンタメ性が強くてすごく読みやすい上に、それでいてマーク・ミラーの工夫だったり新しいヒーローものの形の模索というのは上手く表現されているからもう脱帽するしかない。さすがは現代アメコミ界希代のヒットメーカー。
そもそも冒頭から話にすごく引付けられる上にその後の展開もおもしろいんだよなぁ。やっぱり先が読めないって大事だよ。すごく楽しいしわくわくする。ヒットガール登場あたりからはもう一気にぐわぁぁーーとね。
普段あまりアメコミを読まない方にも自信を持っておすすめできる作品。
上に書いたように非常に読みやすい上に、わりと日本の漫画に近いと思うから。美少女(幼女か?)が悪人を銃や剣で殺戮するというのもそこはかとなく日本的だよなぁ。ということでヒットガールはもちろん私のお気に入り。何とも可愛くて、凄惨で、悲しきヒーロー。
しかし何気にオタクに対して相当手厳しい気がする。デイヴは結局強くなるわけでもないし、大きく成長した様子は見せない。オタクはずっとオタクで、ヒーローはずっとヒーローだ。それは当たり前だけど、何となくさびしい。
ちなみにマーク・ミラーはキック・アス2を描いているらしいです。映画の続編も決まったことだし、その公開と併せて邦訳が出てくれることを切に期待します。
ヒットガールは出るのか?、レッドミストはどうするのか?、わくわくは尽きない。
【追記】
書き忘れてたけど、映画も傑作。同じ素材でも調理によってここまで違う料理になるのかと。セットで読むとよりおもしろいのでおすすめです。
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[投稿:2011-10-01 01:59:52] [修正:2011-10-09 16:09:09] [このレビューのURL]
6点 少女椿
ひどく趣味が悪い。そして趣味が悪いものを好きな人はけっこう多い。
花売りだったみどりちゃんは、母親が亡くなってしまって独りぼっちに。困って親切だと思っていたおじさんを訪ねると、見世物小屋の芸人にされてしまう。異形のものを見世物とする尋常ならざる世界に足を踏み入れたみどりちゃんはどうなってしまうのか。
陵辱、エログロ、幻想、そして畸形畸形畸形畸形…。
兎にも角にも猟奇、そして猟奇は耽美に昇華されていく。
これぞ丸尾末広だよなぁ。もう完璧にやりきっちゃってるよこの人。
江戸川乱歩の怪奇小説の正当後継者とも言える猟奇漫画に仕上がっているわけだけど、思っていたほど読みにくくはない。それは私が乱歩の小説をそこそこ読んでいたり、事前に丸尾版の芋虫を読んでいたというのはあるかもしれない。
でも結局これは美少女が残酷な運命に翻弄される物語、薄幸の美少女の物語だ。そのように基本プロットは普遍的なものなのである程度猟奇系に耐性があれば楽しめると思う。薄幸ってレベルじゃないけどさ。
ただやっぱり存分に楽しめるのは丸尾末広の猟奇趣味が気に入っている人なのだろう。
私は乱歩の猟奇系の作品は嫌いではないけど好きでもなくて、性的倒錯を扱った人間椅子やひとでなしの恋が好みだったりする。ティム・バートンの映画にしても奇形への愛をもろに押し出したバットマン・リターンズはそれほど好きではなくて、シザーハンズやビッグフィッシュのような美しく奇形をリファインした作品の方が好きだ。
そういう人間だから私は少女椿が大好きというわけではないし、私はあなたと逆だよ、という人にこそ特に強くおすすめ出来る作品かもしれない。私だってその耽美を感じる部分が大いにあるのはもちろんだけど。
猟奇好きの人にはバイブルとなりうる作品だと思う。別に好きじゃないよという人も、もしかしたら自分の知らなかった嗜好を発見することになるかもしれない。
ああ、みどりちゃん…。
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[投稿:2011-10-07 23:15:12] [修正:2011-10-07 23:15:12] [このレビューのURL]
6点 JOKER
ジョーカー好きのジョーカー好きによるジョーカー好きのための…とにかくジョーカー尽くし!
ブライアン・アザレロによって一冊丸々使ってジョーカーが描かれるというファンにはこれ以上ない作品。逆に言うと何でこいつこんなにジョーカー連呼してんだなんて思った人には用はない作品でもある。
今までのバットマンコミックだったり映画「バットマン」、「ダークナイト」でジャック・ニコルソンや故ヒース・レジャーのジョーカーに魅せられた人はこのジョーカーに触れる価値が確実にある。そしてそんな人はけっこう多いはずだ。アメコミの数多いヴィラン(悪役)の中でも彼は間違いなく1番だから。
アーカム・アサイラムからジョーカーが出所する所から物語は始まる。ジョーカーがいない間に彼の縄張りはマフィア達によって山分けされていた。出所するや否やジョーカーはマフィアを次々に殺して縄張りを取り戻していく。
ビッグな大物に憧れジョーカーに付き従うチンピラ、ジョニー・フロストの視点で話は進む。ジョニーは、私達はジョーカーの何を見て何を思うのか。
ジョーカーを主題とした作品で避けては通れないのがアラン・ムーアのキリングジョークだろう。キリングジョークはムーアがジョーカーを徹底的に分解することで狂気の裏側、理屈に裏づけされた読者にも理解しうる狂気というものを見せてくれた。矛盾する言い回しのようだが、それをやってのけたのがムーアの離れ業というもの。
ではこのJOKERはどのようなジョーカーを見せてくれるのか。それは全くもって理解できないジョーカーだ。ある意味キリングジョークの真逆とも言えるジョーカー。
上で述べたようにJOKERは一介のチンピラ、ジョニーの視点で話は進む。ジョーカーはマフィアを殺す。金のためか?そうではない。権力のためか?そうでもない。ただ酒を得るために店の店員を殺したりもする。ジョニーと共に私も叫ぶ。「何で?何でよ?」
このブライアン・アザレロ版ジョーカー、引き裂けた口などビジュアル面でダークナイトとの類似点を指摘されているが全くの偶然ということ。しかし驚くほどに似ている。
でも似ているのは外見だけではなくて、その描かれ方も同様なのだ。ダークナイトにおいてバットマンへの執着を除いては彼の行動原理は語られないし、ジョーカーが語る彼の過去はその時々で全く異なる。何もかも理解できないジョーカー、そういう意味でも実に似ている。
だからJOKERはダークナイトからジョーカーだけを抽出してそのキャラクター性を楽しめるようにした作品とも言えるかもしれない。
リー・ベルメホのアートワークも見所の一つであり、またトゥーフェイスを始めとする他のヴィランの連中も独自のアレンジがなされているものが多くておもしろい。
個人的に気になったのはやっぱりハーレイ。だってハーレイ&アイビーで馬鹿かわいい感じだった彼女がこんな寡黙な美女になっちゃってんだもん笑。てかハーレイはアニメイテッドのオリジナルかと思いきや原作にも逆輸入されてたのね。今後も見れたらいいな。
ジョーカー好きには必須のバイブル。特にダークナイトが好きな人にはおすすめです。
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[投稿:2011-10-04 20:52:05] [修正:2011-10-04 20:56:23] [このレビューのURL]
8点 駅から5分
駅から5分の町、花染町を舞台に描かれる連作短編集。色んな意味で超濃密。
やはりくらもちふさこはすげぇーよ、と思わせてくれる。いや、技巧的な意味だけではなくね。
連作短編集ということで、短編によって主役は異なる。ある短編では主役でも、他の短編では脇役だったり、脇役とも言えない端役だったり、短編によって視点と人間関係はどんどん変化する。例えば知人や友人という直接的なものから落し物を拾った程度の些細なものまで色んな形があるし、もちろん登場しないことだってある。
別にこの技法はくらもちふさこのオリジナルというわけではなくて、映画や小説、時に漫画でも同様の技法が使われているものはけっこうある。陰日向に咲くなんてまだ記憶に新しい人も多いだろう。
しかし、くらもちふさこの凄さはこの複雑な技法を完璧に使いこなしている所。短編を一つ読むと、この人はこんな感じなんだなと考える。しかし読んでいくうちに、視点が変わるうちにどんどん色んなキャラクターの印象が変わっていく。まるで万華鏡のように見る角度によって色んな人の違う面を見せてくれる。1巻、2巻、3巻、そして読み直すごとにそれはどんどん深化して、変化が止まることはない。
本当に刺激的な漫画体験。読めば読むほどにおもしろい。
くらもちふさこは別にみんなが主役、なんて言いたいわけではなくて、一人の人間を掘り下げて描くためには一つの視点では足りないと考えただけだと思う。私がイメージしたのは連立方程式の、あの2つの式で一つの点が決まる感覚。もちろん人間はそんなに単純じゃないから絶対的にこういう人だ、と決まることはない。でもその点に近づいていく感覚が楽しいのだ。
一つ一つの短編を見ても十分おもしろい。やはりくらもちふさこが描く妄想劇は気づかぬうちに引きずり込まれてしまう。共感するというかもう本当にそのキャラクターの内面に引きずり込まれる感じ。
表現技法も相変らず新しいというか、すごいわ。文字や言葉に頼らない濃密な心理描写は相も変わらず見事の一言だけど、インターネット掲示板のイメージとかおもしろいよね。
実験的なために人は選ぶかもしれないが、くらもちふさこが天才と言われる理由を肌で感じられる作品。読むとひどく疲れるくらいに。
ちなみにスピンオフの「花に染む」の連載のために現在駅から5分は休載中。セットで読むとより理解が深まると思うのでおすすめです。あちらも同じくらいおもしろいし、やっぱりくらもちふさこはすごいな。
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[投稿:2011-07-18 01:28:47] [修正:2011-10-03 17:47:33] [このレビューのURL]
8点 Sunny
もう何かたまらんなあと思う。
どこまで進化するんだよ松本大洋。
親元で暮らせない子供達のための施設「星の子学園」。そこに生きる子供たちを描く物語。
松本大洋自身、かつてこういう施設で暮らしていたそうで、だからこそデビュー当初から温めていた作品だったらしい。でも自分の中の体験となかなか折り合いがつかなくて、ようやく40代になった今描くべき物語と感じて執筆に至ったと。
まさにこの作品は松本大洋の少年期への落とし前なのだ。
学校に来る子どもは彼らにとって2種類に分かれる。「施設の子」と「家の子」だ。施設に暮らす彼らは決して不幸ではない。施設の運営する人々は優しいし、ここではみんなが家族だ。
でも、それでも決して割り切れないものがある。家の子を認めたくなかったり、どうしても羨ましく思ってしまったり、施設にいる自分を認めたくなかったり、色んなやつの色んな思いがひしひしと伝わってくる。
彼らの思いを体現するのがSunnyだ。Sunnyとは星の子学園の敷地内にある今は使われない廃車。どうしようもなくなった時彼らはここに来る。彼らはSunnyで旅に出る。何とも切なくてたまらない夢。これこそが本当のファンタジーなのかもしれない。
ピンポン以降、松本大洋は革新的な表現技法や二つとない物語でたくさんの傑作を生み出してきた。
でもこのSunnyには装飾が全くない。松本大洋らしさはあっても平々凡々な物語。でもだからこそ松本大洋の核が見えてくる。いつも彼の作品の根底にあったのは心の奥底に訴えかけてくる力。今までにないほどそれははっきりとしていて強い力を持っている。
本当に泣ける、というのはこういうことだ。
また絵柄は少し変化した。過去の情景を思い出しているような、少しぼやけてかすれた叙情的な絵。日本の作家でここまで多彩な線やトーンに頼らない黒を突き詰めているのはこの人くらいじゃないかな。
いつまで松本大洋は進化し続けるのだろう。止まらないからこそ彼やくらもちふさこはここ数十年漫画界のトップを走ってきた。本当にすごいよ。
めちゃくちゃ切なくて愛おしい少年達、彼らはどこへ向かうのか。
松本大洋の新たなる代表作の誕生、見逃すのはもったいない。
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2011-10-03 00:35:15] [修正:2011-10-03 01:09:54] [このレビューのURL]
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