「souldriver」さんのページ

総レビュー数: 110レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月21日

7点 Damons

原作は知らないし、これが初の米原作品になる。
友人に薦められ何の先入観も持たずに読み始めたが、なるほど、よくできてるし面白い。

一貫して主人公ヘイトの「憎しみ」「復讐」を中心に話が進み、それ以外の思想や心理は徹底的に排除されている。そのため所詮は単純な戦闘漫画であると言えるかもしれないが、断片的に描かれるヘイトの過去や憎しみの背景は切実なリアリティーを以て訴えてくるし、シリアスな展開には燃える。
これは最近の「バガボンド」にも感じたことだが、余計な要素を排して描きたいことを一点に絞った作品というのは、それがうまくいっているうちは物語を前に推し進めるストイックなエネルギーに満ちている。
この話が復讐劇の終わりを以て完結するのか、それとも別の展開が用意されているのかは分からないが、少なくともヘイトがこの復讐を成し遂げるまではどんどん力強く進んでいくだろう。

個性的な絵柄に慣れるのに少し時間がかかったが、見慣れると荒木飛呂彦先生の描くキャラクターのような不思議な魅力があると思った。
戦闘描写は迫力満点。熱い漫画を求める人に是非お奨めしたい作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-22 02:03:56] [修正:2007-06-22 02:03:56] [このレビューのURL]

僕の世代ではギャグマンガの2大頂点とされる稲中とマサルさんが両方こんな位置に甘んじていることに、時代の変化を感じずにはいられない。

有無を言わさず突っ走る意味不明なエネルギーに満ちた展開に、フーミン(一応主人公?)ごと読者も置き去りにされること請け合い。
その訳の分からない変態さに徐々に染まって行ってしまう周りの人物を見ていると、ある種の哀愁とともに笑いがこみ上げてくる。そして自分もいつの間にかその仲間に。
あの謎のエネルギーと発想はどこから来ているのか、多分作者自身もよく分かってないのだろう。

とにかく言葉で表現するのが難しい部類のギャグだが、全編通してあざとさは一切感じられず、ネタがないときは本当にやる気なく話が進む。
そして最終話の壮絶な終わり方。すごい。誰にも真似できない。

いろんな意味でギャグマンガに革命を起こした作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 20:35:37] [修正:2007-06-21 20:35:37] [このレビューのURL]

自衛隊の新鋭イージス艦「みらい」がそのまま太平洋戦争真っ只中のミッドウェー沖にタイムスリップし、アメリカ軍と壮絶な戦いを繰り広げる…。
戦争や兵器に興味があるなら誰もが一度は夢想したであろうこんな活劇が、この作者の手にかかると深い倫理観を内包した複雑な群集劇に変化する。
今まで歴史を扱った作品は数あれど、こういった形で大戦を振り返った切り口はある意味で斬新。

また実在の人物の捉え方には卓越したものがある。彼らと「未来人」である主人公たちの接触によって生まれた変化はリアリティーに満ちており、良い意味で非常に思い切った歴史の改変がされている。
各者の思考は互いに影響力を持っており、常に先が読めない展開にドキドキしっ放し。

問題は「沈黙の艦隊」でも感じた、主要人物たちのキャラの薄さ。それはもう、しばらく読んでないと名前すら思い出せないほど。(今思い出せない)
むしろ現代人ではない草加の方が圧倒的に存在感が大きく、しかし草加は行動や思考の全てが明らかにされない「鍵を握る人物」として描かれているため、強力に感情移入させられる対象が見つからず、読者が宙ぶらりんな状態に置いて行かれる。
もっとも今作の場合は第三者的な視点に置かれることではじめて見えてくるものもあり、それが作者の狙いなのかもしれない。

非常に今後の展開が気になる作品の一つ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 19:12:13] [修正:2007-06-21 19:12:13] [このレビューのURL]

現代世界を舞台にした漫画で、これほどまで大きなスケールで描かれた作品を他に知らない。

核問題、東西冷戦、南北問題、国家と民族の尊厳、大国のエゴ、戦争と平和、国連の在り方、世界経済の行方、真のネットワーク社会とは……
現代世界を語る上で避けては通れない社会的要素を余すところなく盛り込み、一つの物語として完結させている作者の知識の豊富さと先見性、構成力はすごいの一言。
潜水艦をメインとした話だが、海戦よりもむしろ頭脳戦や情報戦の緊迫感がスゴイ。
多くの政治家や軍人、民間人が関わってくるが、その一人一人がきちんと独立した考え方を持っており、展開には必然性のようなものが感じられた。(作者の主観的な描写も目立つが)

結末には少し納得がいかなかったが、そこにも理想主義的観点ではなく、現実のもとに立って見た一つの未来の形がしっかりと示されていたと思う。

ただ、これだけ高い完成度を誇るにもかかわらずもう一つ作品の中に入っていけない要因は、主人公である海江田のあまりに人間離れした感覚にある。
神のごとき所業をことごとく平然とやってのけるので、彼の行動の整合性が頭では分かっていても、どうしても非現実を感じずにはいられなかった。この海江田に対比した「もう一人の主人公」として登場する深町もやや影が薄く、感情移入がしにくかったというのも大きい。

もう少し魅力的な人物を描けていればこの作品の評価も大きく変わっていたのではないかと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 18:33:06] [修正:2007-06-21 18:33:06] [このレビューのURL]

まず、この漫画にストーリー性を期待してはいけない。
初期の低年齢を意識したものから中期以降の大人っぽい作風まで、ストーリー自体に面白みを見出すことは一度もなかった。

よく雰囲気重視の作品だという評価が下されるが全くその通りで、先人への尊敬と愛を以て描かれる幻想的な世界観や遊び心に満ちたセリフ回し、独特の画の表現方法は古い叙景映画の手法に近いものがある。
ここに魅力を見出せるかどうかによって見る者の印象はがらりと変わってくる。

かといってオタク的なウケ狙いの要素が無駄に強調されている訳でもなく、あくまで作者の頭の中に存在する奇妙な世界の一片が豊富な知識よって自由に描かれており、大衆的な他の作品とは一線を画するものがある。
かなり低年齢層向けのボンボンという雑誌上でこの不思議な作品が成立していたことは今考えても奇跡としか思えない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 17:38:16] [修正:2007-06-21 17:38:16] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

言わずと知れた少年漫画の金字塔。

果てしない力のインフレ、「死」の持つ重みのなさ、数々の矛盾点など、穿った見方をしようと思えばいくらでもできるが、その全てを補って余りありすぎる魅力に溢れている。
一番良かったと思うのはいわゆる「Z」初期のサイヤ人来襲のあたり。サイヤ人の持つ圧倒的な強さとそれに果敢に立ち向かう地球人たち。一度は絶望の底に叩き落され、悟空の登場で盛り返し、最後は全員の力を合わせて撃退に成功する。
これほど熱い展開は他に類を見ない。リアルタイムで読んでたならさぞかし毎週ワクワクしただろうなぁ…。

とにかく敵味方問わずキャラクターの立ち具合が尋常でなく、シンプルな構図ながら圧倒的な迫力のある画力によって展開する戦闘シーンはもうそれだけで大満足。他の欠点は全てどうでもよくなってしまう。
純粋なエンターテイメントとして見たとき、これを上回る作品は現時点では存在しないと思う。
史上最も偉大な作品の一つであることは間違いない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 16:39:36] [修正:2007-06-21 16:39:36] [このレビューのURL]

史実を大きく外れた漫画的な展開や人物の評価が偏っているところに多少疑問は感じるものの、歴史をベースにした長編作品としては抜群に出来が良い。各人物は旧来のイメージを壊すことなく、かつ新しい人物像で生き生きと描かれており、様々な人物が複雑に絡まりあってできた幕末の潮流を絶妙なバランスで再現している。
特に人斬り以蔵や武市半平太、新撰組や亀山社中の面々には並ではない愛が感じられる。と言っても溺愛ではなく、それぞれの光と闇をしっかり分別して描いているのが評価できる。

序盤に「身分差別への反発」というテーマが強烈なインパクトとともに突き付けられ、この骨格を非常に明確に示していることが作品全体に説得力を与えている。
また要所のやりとりは創作とは思えないほどリアリティーがあり、重要な場面とそうでない場面の描き分けが上手い。
歴史の授業ではある種ミステリアスな印象を与えられる竜馬が、この作品の中では誰よりも人間味に満ちた竜馬なのだ。

最大の見せ場である薩長同盟成立以降の展開が少しだれるが、大河ドラマの必然なので仕方ないところ。
よくここまでやり切った! と素直に賛辞を送りたい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 15:30:08] [修正:2007-06-21 15:30:08] [このレビューのURL]

前作「プラネテス」で作者の思想的な面での主張はあらかた描き切ってしまったのか、今のところ一転してエンターテイメント性が高い活劇といった印象。

練り込まれた人物像や細部にまでこだわった世界観や設定は今作も秀逸で、一人一人の登場人物に分かりやすい魅力を感じることができる。
この時代の「正義」とは己の力を信じることであり、力のない者は死んでも仕方ないものとして描かれている。人を殺し、略奪をすることに微塵の罪悪感も覚えない野蛮な民族の世界だが、それこそがヴァイキングの持つ魅力なのであり、余計な心理描写や宗教色を排した展開には好感が持てる。

そんな中にあって作者の投げかける「愛」の観念がどのような影響をもたらし、どのような答えを導き出していくのか、今後の展開に注目。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 15:03:00] [修正:2007-06-21 15:03:00] [このレビューのURL]

あの長大で解読困難な原作を少年誌上で最後まで描き切っただけでも相当な評価に値すると思う。

アクの強い絵柄によるキャラのデフォルメや設定の大幅な変更は最初こそ違和感を感じたが、そもそも原作の設定を維持したままやることが無理な話で、限られた条件の中でうまくまとめた。
絵も手を抜くところと描き込むところは意図的に分けられており、あえてあの軽い雰囲気を作り出していたのだと思う。見慣れてくると封神はこの絵じゃないとダメだと思うから不思議。

終盤の展開も原作を知る者としては「そう変えたか」と思わせられるような突飛な発想の連続で、飽きを感じなかった。
むしろ原作を読んでからの方が楽しめる作品なのかもしれない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 08:42:38] [修正:2007-06-21 08:42:38] [このレビューのURL]

このシリーズの魅力は奇妙な世界観であり、独特の絵であり、様々な方面へのオマージュである。この色合いは王ドロボウ時代よりも強くなったと思う。
ストーリーを楽しむ要素はかなり低くアクの強い作風なので、合わない人には何の魅力も感じられないだろう。

画力に関しては超一級品。あらゆる時代の美術や映画の影響を感じさせる繊細な線とトーンは、芸術品と見まがうほどの圧倒的な個性と美を放っており、高い次元で完成されている。
文学作品からの引用や言葉遊びを多様したセリフ回しや世界設定も見もの。オムニバス方式で様々なエピソードがその都度世界・時間軸を変えて語られるため、いろんな隠し要素を見つけることができる。
ただこれも分からない人にはちっとも面白くないかもしれない。

漫画としての評価は低いが、一つの作品として見たときの価値は高いのではないかと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 08:00:37] [修正:2007-06-21 08:00:37] [このレビューのURL]